有価証券報告書-第155期(平成31年4月1日-令和2年3月31日)

【提出】
2020/06/19 16:33
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【項目】
86項目

研究開発活動

当社グループ(当社および当社の関係会社)における研究開発は、新規事業の創出と“グローバルニッチトップ”(GNT)、“エリアニッチトップ”(ANT)製品の開発という方針を掲げ、さまざまな産業分野での市場ニーズを捉え、それをNittoグループの全技術で解決することを目指しています。「粘着技術」「塗工技術」「高分子機能制御技術」「高分子分析・評価技術」の4つのコア・テクノロジーをベースに様々な技術を組み合わせて新たな価値を提供しています。
全社技術部門は、研究開発本部、新規事業本部、核酸医薬開発本部の3つの本部を軸としており、これらと知的財産本部とプロセス技術本部が密接に連携し、将来の事業とそれを支える技術を育成しています。さらに、部門内にイノベーションマーケティングセンターを設置し、早い段階から市場を見据えた取り組みを行っています。
研究開発拠点として、大阪府茨木市の“inovas”(イノヴァス)を中核に、海外に日東電工テクニカル(米国-オーシャンサイド)、日東バイオファーマ(米国-サンディエゴ)、日東電工アジアテクニカルセンター(シンガポール)、日東(青島)研究院(中国-青島)を配置しています。
全社技術部門では、オープンイノベーションに積極的に取り組み、様々な新製品・新技術開発を加速しています。特に情報通信領域において高速大容量通信を変革するプラスチック光ファイバーケーブルの開発では、外部技術とNittoが保有する光学材料の設計技術を融合し、20年度の量産開始に向け大きく進展しました。
また、ライフサイエンス領域においては、ドラッグデリバリー技術を強みにして核酸医薬開発の新しい展開を進めています。当連結会計年度、地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪国際がんセンターの研究所内に新規核酸医薬品の開発を目的とした共同研究部(名称:Nitto核酸創薬共同研究部)を設立し、難治がん・希少がんの新規分子標的治療法及びがん免疫療法をになう核酸医薬品の創薬研究に着手しました。
これらの技術を戦略的な特許出願やモノづくりで支えながら、着実に事業につなげていきます。
当連結会計年度の研究開発部門の人員は、当社単体で917名、グループ全体で1,512名です。また、当社グループの研究開発費の総額は33,765百万円です。このうち、各事業セグメントに直接関連しない全社技術部門の研究開発費は6,203百万円です。
セグメント別の研究開発活動成果は下記のとおりです。
(1)インダストリアルテープ
粘着テープ製造工程での有機溶剤削減やバイオマス材料の利用促進などの検討を進めています。環境配慮型製品として「有機溶剤フリーの両面接着テープ」で、2019年度の第46回環境賞の優良賞を頂きました。(国立環境研究所・日刊工業新聞社共催、環境省後援)
引き続きESG、SDGsを見据えたサステナブルな環境配慮型の製品開発に注力していきます。
半導体分野において、ウェハ表面の凹凸を埋め込むプロセステープを新規に開発しました。半導体製造プロセスの高度化に伴い、必要とされるプロセステープの特性進化は必須であり、継続的に新製品開発を進めていきます。
フッ素系の機能性材料を用いた製品の用途拡大を進めており、半導体や電子部品、モバイル機器分野に新たな機能を付与した製品の開発に注力していきます。
トランスポーテ―ション分野では、自動車・鉄道車両・航空機などの輸送機の性能向上に貢献する新製品の開発を推進しています。電動車両の急速な市場拡大や電装部品の搭載数増加を見据えて、モーター用絶縁材料や電装部品用の内圧調整材料の製品拡充が進みました。また自動運転市場の本格的な到来に備えて、レーダー用電波吸収材料の展開を進めています。さらにCASE関連市場での新規事業創出のために、全社次世代モビリティ推進センターとのコンバージェンスで新たな価値創造に取り組んでいます。
当連結会計年度における研究開発費の金額は7,110百万円です。
(2)オプトロニクス
大型ディスプレイ用途関連では、PID(パブリックインフォメーションディスプレイ)、モニター、ノートPC、タブレットなど液晶ディスプレイ(LCD)やOLED-TVに代表されるように有機ELディスプレイ(OLED)の大型化への対応に加え、それぞれの要望に応えられる製品開発を行っています。モバイルディスプレイ用途関係では、OLEDの表示品位の向上に加え薄型要望とフレキシブル化が進んでおり、これまで以上の光学性能を有し、かつ薄型や折り曲げ可能な偏光板の製品開発を行っています。
自動車業界では自動運転化技術の発展に伴い、車内のディスプレイ数の増加および大型化が見込まれています。車載用途では用いられる偏光板に高耐熱・低収縮が求められるため、その要望に応える製品を開発しています。加えてHigh-End向けの車内の内装デザインの自由度を高める曲面・異形状ディスプレイで用いられる偏光板製品に必要な性能を有する製品開発にも注力しています。
さらに、偏光板以外のディスプレイ周辺光学材料としてディスプレイ層間充填粘着剤、OLED工程材などの開発にも注力し、ディスプレイとそれを組み込む機器のお客様への価値提供を行っています。
プリント回路製品は、感光性ポリイミドおよびセミアディティブ法による回路形成技術を応用した高精度基板を、ハードディスク(HDD)とは異なる新市場へ展開を進めています。当連結会計年度、補聴器用ワイヤレス充電システムやスマートフォン用部品などに採用され、売上に寄与し始めておりますが、さらに新しい要望に応えるべく、製品開発に注力しています。
当連結会計年度における研究開発費の金額は9,918百万円です。
(3)ライフサイエンス
医薬品関連では、非定型抗精神薬が2019年6月に審査当局からの承認を受け、商業レベルの製造を開始しました。9月より大日本住友製薬株式会社様より日本国内市場への販売が開始されました。
医療衛生材料関連では社内他事業部門との協業に加え、社外協業体制を強化して、新領域での事業開発と、新しい市場及び地域への展開を推進しています。
当連結会計年度における研究開発費の金額は4,221百万円です。
(4)その他
世界的な水環境の変化として、排水・廃液をゼロ化(ZLD;Zero Liquid Discharge)して再利用する動きが進んでいます。逆浸透膜製造工場である滋賀事業所にて排水・廃液を再利用する技術検証を行い、2019年度には再利用用途向けの新製品群を市場投入しました。今後も社会的ニーズにあわせた製品開発を進めるとともに分離技術で水資源の再利用化の促進に貢献していきます。
当連結会計年度における研究開発費の金額は6,312百万円です。