有価証券報告書-第95期(平成29年4月1日-平成30年3月31日)

【提出】
2018/06/20 14:30
【資料】
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【項目】
62項目

研究開発活動

当社は、2017年10月に策定した「デンソーグループ2030年長期方針」で掲げる目指す姿を実現するための道筋として「デンソーグループ2025年長期構想」を策定しました。スローガン「地球に、社会に、すべての人に、笑顔広がる未来を届けたい」を宣言し、「環境」「安心」「共感」の3つをキーワードに、従来から注力している「環境」「安心」の提供価値を最大化することに加え、社会から「共感」頂ける新たな価値の提供を通じて、笑顔広がる社会づくりに貢献します。
2025年度の成長目標として、電動化、自動運転の実現に伴うモビリティの新領域で成長することで、売上収益7兆円、営業利益率10%を実現します。そのために、「経営改革 5本の柱」を定め、経営改革を推進するとともに、「電動化」「先進安全・自動運転」「コネクティッド」「非車載事業(FA/農業)」の4分野を注力分野として取り組みます。
電動化に向けて、マツダ株式会社、トヨタ自動車株式会社及び当社は、市場動向に柔軟かつ迅速に対応するため、幅広いセグメント、車種をカバーできるEVの基本構想に関する技術を共同で開発することに合意しました。また、今後の高精度、高付加価値のモータの技術開発には、高いレベルの技術革新と機電一体製品を中心とした車両視点での製品開発が必要と考え、アスモ株式会社、当社それぞれが培ってきたモータ技術の強みを融合することでこれを実現することを目的に、2018年4月に事業統合しました。また、京都大学発ベンチャー株式会社FLOSFIAと資本提携し、電動化車両に搭載されるインバータの低損失、低コスト、小型軽量化が期待できるコランダム構造酸化ガリウムの車載応用に向けた共同開発を開始することを決定しました。
レクサス新型LSに搭載された障害物検知や白線認識など安全性能の向上に貢献する製品として、新型のステレオ画像センサ及びミリ波レーダを開発しました。新型のステレオ画像センサは、デンスステレオマッチング技術と呼ばれる3Dによる画像処理技術を用いることで、歩行者や車両、ガードレールなど、形状が異なる様々な障害物の検出に加えて、車両が走行可能な路面(フリースペース)の検出が可能となりました。これにより緊急時の自動ブレーキに加えて、操舵制御による障害物回避の実現に貢献しています。またカメラの高性能化により、夜間の歩行者認識を可能にしました。また、ミリ波レーダは照射回数を増やす事で歩行者検知性能の向上と照射角度の拡大で小型化の両立を実現しています。
コックピットの進化やコネクティッド技術の進展に伴い、車室内に搭載される製品同士の連携が複雑さを増しており、車載製品のより効率的な開発が必要となっています。当社とNECプラットフォームズ株式会社は車載用の情報通信機器を開発する合弁会社「株式会社デンソーネクスト」を設立し、当社が自動車市場で培った“高度な技術力とモノづくり力”と、NECグループがICT事業で培った先進技術と豊富な実績を生かし、高度な車載機器の迅速な開発を推進します。また当社とBlackBerry Limitedは自動車のコックピット内の情報マネジメントを行うHMI技術として、世界初となる統合HMIプラットフォームを共同開発しました。この統合HMIプラットフォームは特性の異なる複数のOSを独立化させ、1つのマイコンで統合制御することで、HMI製品同士の連携、協調を可能にし、必要な情報を、適切なタイミングで適切な機器に表示できます。
非車載事業としては、自動車関連部品で培ってきた技術をベースに、HEMS(Home Energy Management System)や世界で初めて製品化したエコキュート、家庭用蓄電池などを通じて住宅におけるエネルギーの最適利用を促進し、低炭素社会の実現に取り組んでいます。また産業用UAV(ドローン)の技術開発を行い、測量や橋梁点検の実証実験を積み重ね、姿勢安定性・耐風性などの機体性能と、AIを活用した画像解析技術の向上に取り組んでいます。
当社は高度運転支援及び自動運転、コネクティッド分野の研究開発を行う拠点として、東京に新たなオフィスを開設し、またイスラエルでも自動運転やサイバーセキュリティ、AIなどの先端技術に関する研究開発を新たに開始します。現地企業や大学と幅広くパートナーシップを開拓して共同研究を行うことで、より競争力のある技術開発を加速させます。また、新しいモビリティ社会を牽引する上で、クラウド、オープンソースソフトウェアの活用など情報通信技術(ICT)を強化し、電動化、先進安全・自動運転、コネクティッドなどの事業を推進する取り組みの1つとして、グローバルなソフトウェアプロダクト開発リーダーとして多くの実績を持つ及川卓也氏と技術顧問契約を締結しました。
連結会社は、世界各地域でその社会に貢献する製品とサービスを提供していくことを目指しています。
当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費は447,378百万円(資産計上分含む)、その内、日本セグメント395,053百万円、北米セグメント26,838百万円、欧州セグメント12,271百万円、アジアセグメント12,108百万円、その他1,108百万円となっています。日本セグメントが占める比率は約88%となっており、研究開発活動の中心を担っています。