有価証券報告書-第99期(令和3年4月1日-令和4年3月31日)

【提出】
2022/06/21 14:06
【資料】
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【項目】
128項目

研究開発活動

デンソーグループ2030年長期方針では、スローガン「地球に、社会に、すべての人に、笑顔広がる未来を届けたい」を宣言し、「環境」「安心」「共感」の3つをキーワードに、「環境」「安心」の提供価値を最大化することに加え、社会から「共感」頂ける新たな価値の提供を通じて、笑顔広がる社会づくりに貢献していきます。
2020年より「環境」「安心」分野での成長戦略の立案・実行と、環境変化に左右されない「引き締まった強靭な企業体質への転換」を同時に推進する変革プラン「Reborn(リボーン)21」を起動し、2021年を達成の年として推進して参りました。更に「環境」と「安心」の軸はぶらさず、当社が貢献する領域を、「モビリティ」と「モノづくり」から、新たに「ソサエティ」まで広げ、より多くのお客さまのお役に立てるよう、新しい選択肢・新しい価値の創造に挑んでいます。
「環境」分野では、2035年までに二酸化炭素(CO2)排出を実質的にゼロにするカーボンニュートラルを実現することを目指し、「モノづくり」「モビリティ製品」「エネルギー利用」を重要3領域と定め、「工場から排出されるCO2をゼロにする取り組み」「HEV・BEV・FCEVからe-VTOL(空モビ)に至る全方位の技術」「CO2を回収・再利用する技術」の技術開発を進めて参りました。「モビリティ製品」領域では、航続距離の延長や、充電時間の短縮、バッテリーの長寿命化等、電気自動車の実用性向上に貢献する製品を開発し、5月に発売されたTOYOTA「bZ4X」および2022年半ばに発売予定のSUBARU「ソルテラ」に採用される予定です。今回、新たに開発した電動化製品は、電流を検知する電流センサー、充電・電力変換・電力分配の各機能を集約したESU(Electricity Supply Unit)、大気中の熱をエアコンの熱源とする高効率エコヒートポンプシステム、乗員の膝元を温める輻射ヒーターです。その他にも、当該電池の温度・電圧を検知するセンサー、電池の状態をモニタリングする電池監視ECU、情報を集約しエネルギーを制御するBEV ECU等も採用されます。また、株式会社BluE Nexusの「新型eAxle」に当社製のインバーターが搭載されています。カーボンニュートラルを実現するためには、クルマの電動化に貢献し、CO2を可能な限り削減することが重要です。引き続き当社は、電気自動車が社会やユーザーにとって新たな価値や選択肢となるよう、これからも電動化技術の開発を推進していきます。
「安心」分野では、社会に「安心」を提供するリーディングカンパニーを目指すべく、「交通事故ゼロ」「快適空間」「働く人の支援」を安心の3本柱として、技術開発を進めて参りました。例えば当社は、車両の周辺環境を認識し、安全性能向上に貢献する「Global Safety Package 3」を開発しました。2021年8月に発売された「日野レンジャー」、2021年10月に発売されたLEXUS「NX」、2022年1月に発売されたTOYOTA「ノア」「ヴォクシー」に搭載される予防安全システム向けの製品として採用されています。「Global Safety Package 3」は、車両や道路等の形状を検知する「ミリ波レーダー」と、カメラで自車の前方環境を検知する「画像センサー」を組み合わせることで、ドライバーの運転を支援するシステムで、今回の製品は第3世代に該当します。交通事故をなくし、自由な移動を実現するためには、安全製品をさらに進化させ最先端の技術を車両に搭載していくこと、また価格面でも魅力ある製品を開発し、より多くの車両に普及させることが重要です。引き続き当社は、高度運転支援に関する技術開発を推進し、ドライバー、歩行者をはじめとする、世界中のすべての人にとって安全で自由な移動の実現に取り組んでいきます。
最後に「ソサエティ」に関する事例として、学校法人東海大学、国立大学法人豊橋技術科学大学、学校法人中部大学、当社は、国立研究開発法人日本医療研究開発機構の支援のもと、新型コロナウイルス検査機器の開発に取り組んでおり、新しい仕組みのバイオセンサーを開発し、新型コロナウイルスの検出に成功したことを2021年8月に発表いたしました。今後は、感染症の早期診断に貢献することを目指し、実用化に向けた開発を加速していきます。
当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費は497,556百万円(資産計上分含む)、その内、日本セグメント444,467百万円、北米セグメント26,179百万円、欧州セグメント11,270百万円、アジアセグメント14,804百万円、その他836百万円となっています。日本セグメントが占める比率は約89%となっており、研究開発活動の中心を担っています。