有価証券報告書-第77期(平成30年4月1日-平成31年3月31日)

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2019/06/27 16:46
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事業等のリスク

当社グループの事業等に関連するリスクにおいて、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性ある事項は、以下のとおりです。ただし、これらは当社グループに関する全てのリスクを網羅したものではありません。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社が判断したものであります。
a.当社グループの事業と業績は半導体産業の顕著に変動する需要に影響されます。
当社グループの事業は、半導体設計製造会社(IDM)、ファブレス半導体企業、ファウンドリーおよびテストハウスの設備投資に大きく依存しております。これらの企業の設備投資および一般投資は、主に半導体に対する現在および将来の需要、ならびに半導体を利用した製品に対する需要によって決定されます。かかる需要は世界経済の全体的な状況の影響を大きく受けます。
今日までの経験として、半導体業界の不況時において、一般的に半導体メーカーのテストシステム投資を含む設備投資は、半導体の世界的な出荷額の減少率よりも大きく減少します。半導体業界では、過剰在庫の時期が繰返し発生するなど今まで周期的な動きを示しており、そのことが当社グループの製品を含め、半導体業界のテストシステムに対する需要にしばしば深刻な影響を与えてきました。
世界的な半導体市場は、2016年は、スマートフォンの高機能化と販売台数の拡大などにより、前年比1.1%の増加となりました。2017年は、幅広い電子機器向けの半導体に対する旺盛な需要により、前年比21.6%の増加となりました。2018年は、後半に息切れした感はあるものの、前年からの高成長を維持したことにより、前年比13.7%の増加となりました。
SoC半導体の世界的売上は、2016年は、スマートフォン向けの設備投資等が堅調だったため、前年比1.3%の増加となりました。2017年は、自動車電装化の進展を背景に、車載半導体やデータセンターの需要が堅調だったため、前年比9.6%の増加となりました。2018年は、スマートフォンのさらなる高機能化に伴う旺盛な需要により、前年比7.3%の増加となりました。
メモリ半導体の世界的売上は、2016年は、夏場以降にスマートフォンや高速サーバー向けに需要が高まったものの、前年には及ばず、前年比0.6%の減少となりました。2017年は、データセンター関連の半導体に対する旺盛な需要により、各メモリ半導体メーカーの設備投資が積極的に行われたため、前年比61.5%の増加となりました。2018年も前年からのデータセンターへの投資が継続し、前年比27.4%の増加となりました。
半導体市場の顕著な需要の変動は、以下の様々な要因から影響を受けます。
· 世界経済の全体的な状況
· 半導体業界の動向
· 通信インフラ投資の水準およびスマートフォンおよびウエアラブル機器などの通信機器端末の需要の動向
· パソコンおよびデータサーバ業界の需要
· テレビ、ゲーム端末、VR(バーチャルリアリティ)/AR(拡張現実感)機器を含むデジタル・コンシューマー機器に対する消費者の需要
· 自動車、ロボティックスおよび医療機器などの産業機器市場の動向
2016年度の当社グループは、顧客の投資意欲が大きく改善したメモリ半導体関連の新規需要獲得を中心に、業績向上に向け取り組みました。その結果、売上は円高による減収影響を受けながらも前年比3.8%減少の155,916百万円となりました。損益面については、前期比減収となったものの、採算性の良い製品の売上高比率が前期に比べ上昇したこと、繰延税金資産の計上などにより、親会社の所有者に帰属する当期利益は14,201百万円となりました。前連結会計年度は、伸長著しいメモリ半導体や車載半導体向けの試験装置需要の取り込み、および半導体試験周辺機器の一層の拡販に努めました。また、足元の急峻な製品需要の伸びに追随すべく、生産能力の改善にも取り組みました。その結果、売上高は前年比32.9%増加の207,223百万円となりました。損益面については、採算性が良い製品の売上高比率の低下、ナノテクノロジー事業における棚卸資産評価損の計上などで売上総利益率は前期を下回ったものの、事業効率改善に努めたことにより、親会社の所有者に帰属する当期利益は18,103百万円となりました。当連結会計年度は、半導体試験装置業界でもっとも充実した製品ポートフォリオを有する強みを発揮し、幅広い顧客から新規の製品需要を取り込み、市場シェアを伸ばしました。その結果、売上高は前年比36.3%増加の282,456百万円となりました。損益面については、採算性が良い製品の売上高占め率の上昇や、当社および国内子会社従業員の年金制度の一部を確定拠出年金制度へ移行したことに伴う清算益2,530百万円など一過性の利益35億円を計上したことにより、親会社の所有者に帰属する当期利益は56,993百万円となりました。
以上のように当社グループの業績は、引き続き半導体業界の顕著な需要変動に大きな影響を受けると考えられます。そのため、半導体業界における大規模な不況が発生した場合、当社グループの財務状況と事業成績に、悪影響を及ぼすこととなります。
b.当社グループの事業は、国際的な事業展開に伴う経済的、政治的またはその他のリスクを有します。
当社グループは世界中で部品の調達、製品の生産および販売を行うため、その事業は国際的な事業展開に伴うリスクを有しております。当社グループの当連結会計年度の総売上高に対し、台湾、中国および韓国への売上が大半を占めるアジア地域(日本を除く)は87.4%、米州は4.8%、欧州は2.5%を占めております。海外事業での売上高は、今後も継続して売上高全体の大きな割合を占めると予想されます。また、当社の販売・サポートの子会社は米州、欧州および台湾、シンガポール、韓国、中国等のアジア諸国に展開し、サプライヤーや生産工場も韓国やマレーシアなどの海外に展開しております。したがって、当社グループの将来の業績は、以下を含む様々な要因から悪影響を受ける可能性があります。
· 部品を調達し、製品を生産および販売する国における政治的、経済的な混乱、紛争、自然災害、疫病またはその他のカントリー・リスク
· 政治、経済、技術の覇権争いあるいはテロ・戦争等における国家間の関係悪化等による社会的・政治的混乱が発生するリスク
· 貿易保護政策と輸出入の許認可制度
· 税法の改定による潜在的なマイナス影響
· 移転価格税制等の国際税務に関するリスク
· 事業展開が広範囲に及ぶための人事・管理面の困難性
· 異なる知的財産保護制度
· 遠隔地であることおよび法規制が異なることによる売上債権回収の困難性
· サプライヤーや生産工場が、機械加工および組み立てのインフラのレベルが発展途上の国にある場合の調達および生産における品質低下のリスク
· サプライチェーンにおいて低品質品および模造品が混入した場合の、コストの増加や納期の遅延および商品修理費用が発生するリスク
c.当社グループが顧客の技術面の要求に応える新製品をタイムリーにかつ競争力ある価格で投入しなかった場合、既存の製品が陳腐化し、財務状況と業績に影響を及ぼします。
当社グループは、技術変化が激しく、新製品・サービスの導入が頻繁であり、製品ライフサイクルが不定で予測しにくく、業界基準が常時進歩するいくつかの業界に向けて製品を販売しております。当社製品への将来の需要の大部分は、現在設置されているシステムでは十分に対応できない、新しい試験ニーズを生み出す半導体の技術革新によるものであると、予測しております。このような技術革新に対する顧客のニーズと市場環境に対応した低コスト化や高効率化の顧客のニーズは、以下のとおりであります。
· より高度なメモリ半導体、ロジックまたはアナログ回路を搭載したSoC半導体に対応したソリューション
· 大小のモーター駆動を制御するパワー・デバイスのテスト・ソリューション
· TSV(Through-Silicon Via)技術により、三次元に高集積化されたICや小型化、高性能化を実現するためにRF、ロジックおよびメモリチップを一つのパッケージに収めた複合ICに対応したソリューション
· より高速に、正確に、安定的にデバイスを搬送するメカトロニクス関連製品
· 半導体チップに組み込まれる自己診断回路を用いた試験技術に対応したソリューション
· 試験チップ周辺回路に搭載される診断回路を用いた試験技術に対応したソリューション
· 最終製品の性能を保証するシステムレベルテストのソリューション
· 試験環境を動的かつ繊細にコントロールするテスト温度ソリューション
· 故障時の迅速な対応と修理に要する時間の最短化
· 顧客のテストコストを削減できるようなトータル・ソリューション
· 最先端フォトマスクのパターン寸法計測、および欠陥観察に対応したソリューション
· IC試作のターンアラウンドタイム(TAT)の短縮、および高付加価値デバイスの少量生産に対応したソリューション
また、当社グループは、半導体・部品テストシステムをはじめとする当社製品への需要が、パソコンや高速無線および有線通信のデータ・サービスならびにデジタル・コンシューマー機器、先進運転支援システム(ADAS)、さらにスマートフォンおよびウエアラブルなどの通信端末およびデータサーバに対する需要の水準に、強く影響されると考えています。これらの製品とサービスに使用されている技術の発展により、新しいテストシステムが必要となると思われます。当社グループが新技術を用いた機器を試験、測定できるテストシステムを迅速に投入しなければ、既存の製品とサービスは時間の経過につれ技術的に陳腐化します。
当社グループが顧客の技術面の要求に競争力のある価格で応えられない場合、または適合性のある製品をタイムリーに提供できない場合、競合先の製品または代替の技術ソリューションにより置き換えられる可能性があります。また、回復局面において業容に合わせた人員を十分に確保できなかった場合や、顧客が要求した性能基準を満たした製品を受入れ可能な価格で提供できないと、その顧客による評価が大きく損なわれることになります。かかる評価の低下により、将来その顧客に対する製品やサービスの営業活動に悪影響を及ぼす可能性があります。
d.部品および部分品に関して独占的または少数のサプライヤーへの依存を原因に、製品をタイムリーに提供できない、あるいは市場の急拡大に伴う需要に対応しきれない場合には、将来の市場シェアおよび業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、その製品の製造に関し、組立作業の一部をサプライヤーに委託しております。また、当社グループの半導体・部品テストシステムおよびメカトロニクス関連製品における多くの部品は、サプライヤーが当社グループの仕様に沿って製造したものであります。サプライヤーへの依存により、生産工程に対する管理は届きにくく、生産能力の不足、出荷遅れ、基準未満の品質、労働力の不足、高コストなど、重要なリスクに直面することになります。さらに、当社グループは、一部の部品または部分品に関して、1社または少数のサプライヤーに依存しております。当社グループは、ほとんどのサプライヤーと長期間の供給契約を結んでおらず、ほとんどの部品および部分品を個別の発注で購入しております。サプライヤーが部品または部分品を必要な数量または満足できる価格で提供できなくなった場合、サプライヤーの事業の撤退等により既に採用または今後採用するカスタム部品および汎用部品の生産もしくは販売が中止となった場合、あるいは大規模な災害や電力不足が発生した場合、条件に合った代替品を見つけて仕入れなければならず、それができなければ、テストシステムの供給能力が損なわれる可能性があります。これまでサプライヤーは、製造ラインおよび人員削減による生産能力の適正化を実施してきました。そのため、今後半導体・部品テストシステムおよびメカトロニクス関連事業の市場が急激に拡大した場合には、回復局面を活かすために人員増を含む生産能力を大幅に増強することや、需要が増加する部品を、サプライヤーから適時適切に確保することが必要となってきます。半導体または特殊部品の市場においては、過去に需要に対し供給が不足した時期がありました。また、大規模な災害や電力不足が発生した場合も部品が不足する可能性があります。サプライヤーを選び、適切な代替部品または部分品を選定するのは時間のかかる作業であるため、顧客の要求に合った製品をタイムリーに提供できなくなる可能性があります。当社グループは過去において、サプライヤーが当社グループの仕様に合った部品を提供できなかったこと、またはその他の部品不足を原因にスケジュールどおりに製品を出荷できなかったことがあります。また、経済環境の悪化によりサプライヤーの財政状態が悪化した場合や製品需要の大幅な増加に対応しきれない場合、既存の大口顧客を失う、または今まで取引関係の少なかった、あるいは全く無かった潜在的な大口顧客と強い関係を築く機会を失う結果となる可能性があります。このような機会損失は、当社グループの将来の市場シェアおよび業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
e.当社グループは激しい競争に直面しており、シェアを維持、拡大できない場合は、ビジネスが損なわれる可能性があります。
当社グループは世界中で激しい競争に直面しております。当社グループの主要な競合企業は、半導体・部品テストシステムの市場においては、Teradyne, Inc.、Cohu, Inc.、YIK Corp.、UniTest Inc. および EXICON Ltd.等があります。メカトロニクス関連の市場においては、テスト・ハンドラでは、Cohu, Inc.、TechWing Inc.、および Hon. Technologies, Inc.等、デバイス・インタフェースでは、TSE Co., Ltd.、Semes Co., Ltd.、SL-link Co., Ltd. および Techwing Inc.等と競合しております。一部の競合企業は当社グループよりも多くの資金、その他の資源を有しております。
当社グループはその事業において、テストコストの削減につながる半導体・部品テストシステムおよびメカトロニクス関連製品を望む顧客からの圧力が強まるあるいは顧客によるテストシステムの内製化など、多くの課題に直面しております。デバイス・インタフェースについては、競合企業にコア技術部品の供給ベンダーが買収されたり、PCB製造技術が流出した場合、顧客のテストコストの削減や、製品の性能の実現が困難になります。
当社グループが競争に打ち勝ち、シェアを維持、拡大していくためには、継続的にそのビジネス・プロセスを改良して製品コストを削減する、あるいは全体的なテストコストを低減させる必要があります。また、競合他社が今後も価格と性能の向上した新製品を投入し、そのカスタマ・サービス/サポートの提供を増強し続けたり、新規参入企業による低価格テスタの投入などが予想されます。競争が大幅に激化した場合、当社グループの利益が減少する可能性があります。
f.当社グループは、策定した戦略や中長期の経営目標を達成できない可能性があります。
中長期の経営目標等の達成は、当社グループや顧客に影響を及ぼす経済や市場の動向、競合状況、設備投資水準、当社グループ製品の需要と為替レートの変動を含む様々な内外の要因に影響されます。したがって、戦略や中長期の経営目標値(適時修正される)は、将来の業績予測として見なすべきではありません。中長期経営目標達成のための戦略の実行が成功する、その実行が意図する結果をもたらす、中長期経営目標またはそれ以外の目標(定量的、定性的を問わない、適時修正される。)が期限までに達成される、あるいはそれらの目標が将来経営陣によって変更されないという保証はありません。
g.当社グループの売上高は、上位顧客の数社が大きな割合を占めるため、これらの1社または数社を顧客として失うことや設備投資の変動が、当社グループの事業に影響を及ぼす可能性があります。また、これらの上位顧客の財務状態が悪化した場合、売上債権の回収リスクが発生します。
当社グループの成功は、重要顧客との関係を継続的に発展させ管理することにかかっております。現在ではこれらの少数の顧客が売上高の大きな割合を占めております。顧客上位5社による売上高は、前連結会計年度の売上高全体の約37%および当連結会計年度の同約37%を占めております。これら主要顧客の1社または数社を失うことや主要顧客の設備投資の変動あるいは主要顧客の主要な製品の敗退が、当社グループの事業に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。また、多額の債権を有する顧客の財政状態が悪化し、期限どおりの支払が得られない場合、当社グループの事業、業績および財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
h.当社グループの製品は価格低下圧力を受けております。
当社グループが事業において受けている価格低下圧力は、営業利益率に悪影響を及ぼしております。半導体の需要が数量ベースで増加している時においても、半導体価格の低下は進行しているため、半導体・部品テストシステム事業およびメカトロニクス関連製品に対する価格低下圧力が続いております。顧客である半導体メーカーや、ファウンドリーおよびテストハウスは、急激な半導体価格の低下が起きている時期に、生産能力を増強しようとしながらも、設備投資額を抑えようとします。デジタル・コンシューマー機器とパソコン市場に加え、スマートフォンおよびウエアラブルなどのモバイル機器市場、データサーバ市場および車載半導体市場における競争激化により価格が低下し、それにより当社グループの製品にも強い値下げ圧力がかかります。半導体価格の低下が止まらない場合、顧客は既存の設備の改造や使い方の工夫により、新品の設備投資を抑える可能性もあります。今後、価格低下圧力がさらに強まれば、当社グループの将来の財務状況と事業成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
i.為替変動が収益性に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループの売上高の大半は日本国外の顧客への販売によるものです。当連結会計年度の売上高の94.7%は、海外顧客への製品売上によるものです。当連結会計年度の売上高のうち約58%は、米ドルを主とする円以外の外貨によるものです。当社グループが販売にあたり使用する外国の通貨(主に米ドル)が円高に転じた場合、必ずしも製品価格に転嫁することは出来ないため、当社グループの売上に悪影響を及ぼす可能性があります。
なおユーロについては、現状ユーロ建ての売上よりも費用の発生額の方が大きいため、円安水準で推移した場合、収益性に悪影響を及ぼす可能性があります。
さらに、円と外貨(特に米ドル)の間の大きな為替変動により、海外において円建てで販売される製品価格を引き下げなければならない場合や、また米ドルやその他の外貨建てで販売される製品売上の円相当額が減少した場合には、収益性に影響を及ぼす可能性があります。これらの変動により、製品価格が相対的に高くなり、潜在的な顧客による発注の取消しまたは先送りが生じる可能性があります。過去において、当社グループが販売にあたり使用する外貨と円との間の為替レートに、大きな変動が生じたことがあります。
また、子会社の報告通貨の外国為替レートが円に対して変動した場合、当社グループの連結財務諸表に影響を及ぼす可能性があります。外国為替レートの変動は、連結財務諸表の報告通貨である円に換算する必要のある外貨建ての金額に影響し、為替変動の向きによっては当社グループの財政状態、経営成績および純資産の状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
j.当社グループは新製品の開発コストを回収できない可能性があります。
既存製品の改良と新世代製品の開発は、ほとんどの場合多額な費用を必要とします。さらに、半導体・部品テストシステムおよびメカトロニクス関連製品の購入決定は高額な投資を伴うため、一般的に販売活動に要する期間が長く、販売に至るまで多大な支出と営業活動を必要とします。当社グループが製品を改良し新世代の製品を投入したとしても、顧客ニーズの変化、競合他社による新技術・新機能搭載製品の投入、顧客による異なる試験機能を必要とする新製品投入、または顧客の製品が当社グループの期待する速度、レベルで成長しないことにより短期間で時代遅れとなれば、開発と営業の費用を上回る売上高を上げられない可能性があります。場合によっては、業界動向を先取りし、顧客側の製品実用化よりも先に製品の開発を行わなければならないため、革新的技術によるビジネス上の実現可能性を判断する前に、多額の投資を行わなければなりません。したがって、顧客がそれらの製品を迅速に投入できない場合や、またはそれらの製品が市場に受け入れられない場合、当社グループは販売量の増加による製品開発投資のコストの回収に失敗する可能性があります。
k.当社グループの主な製品の市場は極めて集中しており、販売機会が限られているため、製品の売上を拡大できない可能性があります。
半導体・部品テストシステム事業の中でも、特にメモリ半導体用テストシステムの市場は極めて集中したものであり、少数の大きな半導体メーカーとファウンドリーおよびテストハウスが業界全体の売上に大きな割合を占めております。このような業界状況は、近年の半導体業界において、大手の半導体メーカー、ファウンドリーおよびテストハウスによる企業の買収や事業の統廃合などの再編が進むことにより、一層加速していると考えられます。当社グループの売上の増加は、大口顧客から受注を獲得し増加させることができるかどうかに大きく依存します。また、半導体メーカーの統廃合により過剰な設備が中古市場に流れた場合や、あるいは製品が個別仕様への対応に遅れをとった場合にも、製品の販売機会を失うリスクがあります。
l.企業買収により生じるのれんおよび無形資産は、多額の減損損失を計上し、当社グループの業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。
有形固定資産、のれんおよび無形資産については、減損の兆候が存在する場合に、減損テストを行っております。のれんについては、減損の兆候が存在する場合のほか、年次で減損テストを行っております。
減損損失は、資産、資金生成単位(CGU)またはCGUグループの回収可能価額が帳簿価額を下回った場合に認識しております。特に企業買収により生じるのれんおよび無形資産においては、期待されるシナジー効果が出せずに多額の減損損失を計上した場合、当社グループの業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。
m.主要な研究開発施設、生産施設、情報技術関連施設、製造委託先またはサプライヤーの施設が巨大な損害を被った場合、業績に重大な打撃を受けることになります。
当社グループの半導体・部品テストシステムおよびメカトロニクス関連事業の主要な研究開発施設、生産施設ならびにサービスの拠点は、群馬県、埼玉県および宮城県にあります。また、主要な基幹システムサーバーとネットワークのハブは、ISMS(情報セキュリティマネージメントシステム)の承認を受けたシステムセンタに設置され、さらに、日本の一部の事業所にもローカルにネットワークサーバーが設置されております。
日本は地震が起こる可能性の高い地域であり、これらの施設、特に半導体・部品テストシステムの工場が地震等による巨大な損害を受けた場合、事業に支障を来し、製造、出荷および収益に遅れが生じ、施設の修理または建て直しのために巨額の費用が発生します。当社グループは、地震以外の原因によるほとんどの潜在的な損失をカバーする保険に加入しておりますが、これらの保険は起こり得る損失すべてを十分にカバーしない可能性があります。また、製造委託先、サプライヤーの施設、または情報サービス網の施設が同様の重大な損害を受けた場合も、当社グループの事業に支障を来す可能性があります。
当社グループは、大規模災害等の危機発生時に備え、各部門で対応手順書を定めておりますが、さらに、基幹事業を停止させないこと、停止した場合でも重要な設備を含め可能な限り短期間で再開させることを目的として、事業継続計画(Business Continuity Plan)を策定し実施しております。しかしこの事業継続計画が有効に機能しない場合には、大規模災害等の危機発生時に基幹業務が停止し、再開に長期間を要する可能性があります。
n.当社グループは、設備投資を回収できない可能性があります。
当社グループは、設備投資を継続的に行っています。2012年度から2013年度にかけては、韓国の大手顧客への販売シェア拡大のため、韓国に新工場を建設し2013年5月に操業を開始しました。このような設備投資に対して、顧客の設備投資の抑制により想定した販売規模を達成できない、あるいは競合他社との激しい競争による製品単価の下落などにより、設備投資を回収することができない、または回収できるとしても想定より長い期間を要する可能性があります。そのような場合、当該資産が減損の対象になり、当社グループの収益性に悪影響を及ぼす可能性があります。
o.当社グループの財務状況および事業成績は、その営業・販売力およびブランド力に関係する要因からマイナスの影響を受ける可能性があります。
当社グループの財務状況および事業成績は、その営業・販売力およびブランド力に関係する以下のような要因からマイナスの影響を受ける可能性があります。
· 半導体・部品テストシステムおよびメカトロニクス製品の長期間にわたる販売プロセス
· 半導体・部品テストシステムおよびメカトロニクス製品市場の比較的に少ない総販売台数
· 顧客側による発注キャンセルまたは設備投資の先送り
· 顧客の財務状況を原因とする売掛金回収の遅延や貸倒れおよび貸倒引当金の増加
· 製品保証費や棚卸資産評価損の増加
· 製品の性能または信頼性の事実上または風評上の低下、またはそのことによるブランド力の低下
p.利用している化学物質に対する規制が強化され、その対策に多額の費用が発生する可能性があります。
当社グループが利用している化学物質の中で、その製造、処理および販売に関し、日本の政府機関や外国の様々な業界組織、またはその他の規制機関の環境関連法と規則が適用されるものがあります。そしてこれらの規制機関は、当社グループが使用する化学物質に対して、適用される既存の規制強化や、新たな規制に乗り出す可能性があります。当社グループは、製品に組み込む部材に含まれる有害物質の排除を進めておりますが、製品の信頼性の確保を優先するため、電子部品の取付けにおいては、一部の製品を除き鉛を含むはんだを使用しております。また、半導体・部品テストシステムやメカトロニクス関連製品の冷却方式では、使用に関わる法的規制を受けていないフッ素系液体を一部使用しております。当社グループは、製品の安全性や信頼性の確保を第一に、製品の環境対策を進め、化学物質の使用における規制を遵守していると考えておりますが、特定の国において規制要件が変更された場合には、かかる変更に対応しなければなりません。新しい要件への対応のために多額の費用がかかる可能性があります。関連する政府または業界規制への対応ができない場合、販売の継続または拡大の妨げとなる可能性があります。
q.第三者がその知的財産を当社グループによって侵害されたと主張する可能性があり、その結果高額な賠償、裁判費用またはライセンス料を支払わなければならなくなり、製品を販売できなくなる可能性があります。
当社グループは意図しないまま第三者の知的財産権を侵害し、その結果侵害の責任を負わされる可能性があります。今日まで、当社グループに対して知的財産権侵害に関わる重大な申立てが行われたことはありません。しかし、特許またはその他の知的財産権の侵害をめぐる裁判は、多大な出費と時間を伴い、経営陣または重要な人材が事業運営に注力できなくなる可能性があります。当社グループが勝訴できなかった場合、多額の賠償金の支払、ライセンス料の支払、製品または工程の変更、製品の製造中止または工程の使用中止などを余儀なくされる可能性があります。ライセンスは非常に高価な場合もあり、または全く取得できない場合もあります。第三者の知的財産権を侵害しないように製品または工程に変更を加えることは、多大な出費を要する場合や、実行不可能な場合があります。
r.当社グループの知的財産権を侵害している疑いのある製品を入手し調査することは困難なため、知的財産権を保護できない可能性があります。
当社グループは、その独自の権利を保護するために、各国で取得した特許権、実用新案権、意匠権、商標権および著作権などに依存しております。例えば、デバイス・インタフェース市場において、模造品を販売するメーカーに対して特許権および実用新案権に基づく法的手段を講じ、場合によっては販売を差し止めてきました。知的財産権が侵害された場合、当社グループの市場シェアや業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
一方で、知的財産権が侵害されていると思われる製品を入手し調査することは一般的に困難であります。そのため、保有している知的財産権によって自社の権利を十分に保護していると保証できるわけではありませんが、当社グループはその知的財産権を第三者の侵害から保護することに積極的であり、今後も引き続きその知的財産権を監視し、権利行使を行ってまいります。
s.労働力市場は競争が激しいため、当社グループが多様な専門技術スタッフや運営上の重要なスタッフを採用し維持できない場合等により、事業運営や業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、変化の激しいエレクトロニクス業界において事業を発展させるため、開発、製造、マーケティング、営業、保守サービスなどの分野において専門技術に精通した多様な人材や、経営戦略や組織運営上のマネジメント能力に優れた人材の採用および育成を継続的に行い、維持していくことが重要であると考えております。
そのため、新卒採用のみならず、経験豊かな人材をグローバルベースで幅広く採用、確保するとともに、人事諸制度の見直しや社員教育を継続的に行い、社員の定着と育成に努めております。
しかしながら、必要な人材を継続的に採用し維持するための競争は激しく、計画どおりに進まなかった場合、当社グループの事業運営や業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
t.当社グループがITシステムのデジタルトランスフォーメーション(DX:Digital Transformation)をスピーディーに進めていくことができなかった場合、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
データとデジタル技術で企業の競争力を高める取り組みであるデジタルトランスフォーメーションは、シェアリングエコノミーの実現、IoTや人工知能を駆使したデータ活用による製造現場の革新、生産設備と物流のデータ共有による新価値創出など幅広い分野で期待が高まっています。
しかし、当社グループがデジタルトランスフォーメーションを進めるにあたり、既存のITシステムの老朽化や複雑化やブラックボックス化により、データが十分に活用されない、あるいは既存システムの維持や保守に資金や人材が割かれ、新たなデジタル技術を活用するIT投資にリソースを振り向けることができない等によって、データ活用が進まなかった場合、競争力を失う、古いシステムの維持管理費が高額化する、またはシステムの保守運用担当者の退職や高齢化によるシステムトラブルやデータ滅失などが発生し、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
u.当社グループの情報技術ネットワークやシステムが被害を受けたり妨害されたり停止した場合、業務の継続を妨げ、社会的信用を失いかつ多額の費用負担が発生する可能性があります。
当社グループは、機密データや個人情報を含む電子情報の処理、送信、蓄積のために、また製造、研究開発、サプライチェーンの管理、販売、会計などを含む様々なビジネス活動およびそのサポートのために、第三者によって管理されているものも含め、様々な情報技術ネットワークやシステムに頼っています。当社グループは情報セキュリティ委員会が、情報セキュリティ対策の方針制定を行っております。また、情報技術ネットワークやシステムについては、前述の方針に基づき、IT部門が構築・運用しております。しかし、ハッカーやコンピューターウイルスによる攻撃、情報セキュリティシステムの誤用、不注意な使用、事故や災害などがあった場合には、当社が実施する防御を超え、業務の継続を妨げ、情報の漏洩やその情報が改竄される恐れがあるだけでなく、法的請求、訴訟、損害責任、罰金を払う義務などが発生し、社会的信用、業績および財務状況に重大な影響を及ぼす可能性があります。
v.当社グループは、製品の欠陥や製造物責任による顧客の信用の喪失などにより、業績および財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、ISO9001など世界的に認められている品質管理基準にしたがって製品の生産を行っておりますが、これらの製品について欠陥が無いという保証はありません。一方、製造物責任賠償については、保険に加入しておりますが、この保険が最終的に負担する賠償額を十分にカバーできる保証はありません。したがって部品の品質不良や製品の製造不良による出荷停止や納期遅延、製品の欠陥による大規模な事故の発生、製品の障害発生および不適切な障害対応により、顧客の信用の喪失、顧客対応費用の増大、損害賠償請求があった場合には、当社グループの業績および財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。