有価証券報告書-第57期(平成26年4月1日-平成27年3月31日)

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2015/06/26 15:25
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業績等の概要

(1)業績
業績の全般的概況
当連結会計年度の世界経済は、原油価格の下落や欧州景気の停滞などの懸念材料がありましたが、景気拡大が続く米国や緩やかに景気回復を続ける日本、また依然として高い成長率を維持する中国などに牽引され、景気は総じて堅調に推移しました。
地域別には、米国では、堅調な鉱工業生産や住宅市場などに支えられて雇用情勢や個人消費の改善が持続し、景気は回復傾向が続きました。ヨーロッパでは、南欧経済の長期低迷に加えて、前半はドイツ経済が伸び悩むなどしましたが、英国景気が回復傾向となり、またドイツ経済も後半は持ち直し傾向となりました。アジア地域では、中国で住宅市場の不振などから景気の伸びに鈍化が見られた一方で台湾やインドなどが回復傾向となり、全体として景気は堅調に推移しました。日本では、前半は消費税増税や天候不順が個人消費に悪影響を及ぼしたものの、雇用情勢や企業収益の改善が続いたことから、全体として景気は緩やかな回復基調をたどりました。
エレクトロニクス業界におきましては、自動車関連市場が、米国や欧州などでの販売が堅調なことやエレクトロニクス製品の実装率向上により好調に推移したほか、産業機器市場やスマートフォン市場も堅調に推移しました。PC市場については、前半はタブレットPCを中心に堅調に推移したものの、後半は調整局面となりました。
このような経営環境の中、ロームグループにおきましては、中長期的に成長が期待される自動車関連市場や産業機器市場向け製品のラインアップ強化を進めたことに加え、将来的な業績拡大も視野に①ラピスセミコンダクタ株式会社とのLSIシナジー、②SiCなどのパワーデバイスやモジュール製品、③オプティカルデバイス、④センサ関連製品を「4つの成長エンジン」と位置づけ、カテゴリー毎に新製品の開発に取り組みました。また前年に引き続き、海外市場での販売体制の強化や既存製品のラインアップ強化にも継続して取り組みました。
具体的には、自動車関連市場において、車載用マイコン向けに低消費電力の各種電源LSIや高電圧タイプツェナーダイオードなどの製品ラインアップの強化を引き続き進めました。スマートフォンやタブレットPC向けには、世界最小トランジスタ、超小型部品「RASMID®」シリーズ(※1)、小型・高機能センサ、電源LSIなどの開発と製品シリーズ拡充に努めたほか、タブレットPC向けに受注が好調なインテル®Atom™プロセッサ用パワーマネジメントLSIの生産体制の強化や次世代タブレットPC向けのLSIの開発も進めました。
産業機器市場や今後の成長が期待されるIoT(※2)市場向けについても、EnOcean(※3)対応のシステム開発キット、電力線搬送通信「HD-PLC」Inside(※4)準拠のベースバンドLSI、「Wi-SUN」(※5)対応通信モジュールやBluetooth Smart(※6)対応の無線通信LSIの開発を進めました。
また、インドでのデザインセンター設置やフィンランドでのセンサ関連のソフトウエア開発拠点開設など顧客サポート体制の強化にも努めました。生産体制については、リードタイムの短縮やより高品質な製品づくりを目指したRPS活動(※7)をロームグループ工場で展開したほか、将来の市場の拡大に備えて生産体制の強化にも取り組み、前工程(ウエハプロセス)においてはローム本社、ローム浜松株式会社やラピスセミコンダクタ宮城株式会社などでの生産能力の拡大を進めました。また、後工程においては、タイ、マレーシアの各生産拠点において新工場建設計画を進めました。
このような状況のもと、当連結会計年度の売上高は3,627億7千2百万円(前期比9.6%増)となり、営業利益は388億円(前期比64.2%増)となりました。
経常利益につきましては、為替差益の寄与もあり592億1千8百万円(前期比64.9%増)となり、当期純利益は452億9千6百万円(前期比41.1%増)となりました。
※1.「RASMID®(ROHM Advanced Smart Micro Device)」シリーズ
従来とまったく違う工法を用いて、これまでに無い超小型化と高い寸法精度(±10μm)を実現したロームグループ独自の世界最小電子部品シリーズ。製品例として03015(0.3mm×0.15mm)サイズのチップ抵抗器、0402(0.4mm×0.2mm)サイズのダイオードなどがある。
※2.IoT(Internet of Things)
IoTはパソコンなどのIT機器以外のさまざまな機器(モノ)をインターネットで接続する技術。家電のみならずメディカル・ヘルスケア、インフラ、産業機器などの分野でセンサや通信関連デバイスの市場拡大が期待されている。
※3.EnOcean
エネルギーハーベスト技術を活用し、小さい電力を用いて情報を無線で伝送する次世代無線通信規格のこと。電源不要、配線不要、メンテナンス不要をメリットとしHEMSやBEMSでの導入が期待されている。ロームグループは規格推進団体「EnOcean Alliance」の主幹メンバーであるプロモーターに就任しており、技術開発および製品販売に注力。
※4.「HD-PLC」Inside
既存の電力線を使用した高速伝送の通信ネットワークを構築する通信規格で、家庭内LANなどへの普及が期待されている。
※5.Wi-SUN(Wireless Smart Utility Network)
サブギガヘルツ帯と呼ばれる900MHz前後の周波数帯の電波を使用する国際標準通信規格で、最長で500m程度の距離の通信が可能。スマートメーターからの情報収集などスマートコミュニティ構築に最適な通信規格としての活用が期待されている。
※6.Bluetooth Smart
Bluetoothとはデジタル機器用の近距離無線通信規格の一つで、数mから数十m程度の距離の情報機器間で、2.4GHz帯の電波を使う情報のやりとりに使用される。PC(主にノートパソコン)などのマウス、キーボードをはじめ、携帯電話、PHS、スマートフォンでの文字情報や音声情報といったデジタル情報の無線通信を行う用途に採用されている。Bluetooth SmartはBluetooth規格を省電力化した規格のBluetooth® Low Energyに対応していることを示すブランド名のこと。
※7.RPS(Rohm Production System) 活動
ロームグループの各生産拠点で進めている生産改善活動で、より高品質なモノづくりを進めるとともにリードタイムの短縮や在庫などあらゆるムダを徹底的に排除する活動。段違い(ダントツ)の高効率、高品質生産体制を構築することで利益体質の強化をはかる。
業績のセグメント別概況
当連結会計年度の売上高は1,699億1千6百万円(前期比10.2%増)、セグメント利益は222億8千6百万円(前期比141.8%増)となりました。
自動車関連市場では、エレクトロニクス製品の実装率向上により各種汎用電源LSIやLEDドライバLSI、LCDドライバLSI、カーオーディオ向けシステム電源LSIなどの売上が増加しました。産業機器市場においても、各種電源LSIの売上が増加しました。
IT関連市場においては、タブレットPC向けの電源LSIが、大きく売上を伸ばしました。またスマートフォン向けに、カメラモジュール用のレンズドライバLSIや照度センサ、ホールセンサが売上を伸ばしました。
AV機器分野では、デジタルスチルカメラ市場の低迷が続いたことからカメラ用電源LSIなどの売上が低迷しましたが、オーディオ向けシステムLSIは好調に推移しました。テレビ市場についても韓国・中国向けに電源LSI、タイミングコントローラLSIなどの売上が回復傾向となりました。
ゲーム機器市場についても、一部の顧客向け需要が増加したことなどにより電源LSIなどの売上が堅調に推移しました。
また、汎用品においても電源ICやEEPROM(※8)などの売上が増加傾向となりました。
ラピスセミコンダクタ株式会社については、一部ゲーム機市場向けメモリLSIの売上が減少しましたが、自動車関連及び産業機器市場向けのDRAMや、各種低消費電力のマイコンやスマートメーター用無線通信LSIの採用が進みました。
※8.EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memoryの略)
データ保持に最適な不揮発性メモリ。
<半導体素子>当連結会計年度の売上高は1,290億4千7百万円(前期比9.6%増)、セグメント利益は159億9百万円(前期比12.9%増)となりました。
トランジスタにつきましては、自動車・産業機器関連市場やスマートフォン市場向けなどにパワー及び小信号のMOSFET(※9)が好調に推移しました。ダイオードについては、スマートフォンやタブレットPC向けに小信号ダイオード、また自動車関連市場向け等に各種パワーダイオードの売上が増加しました。
パワーデバイス関連では、SiCデバイス・モジュールがエアコンや太陽光発電装置向けに順調に売上を伸ばしたほか、自動車関連市場向けにも採用が進みました。また、今期から販売を開始したIGBT(※10)についても、自動車関連市場向けなどに採用が進みました。
発光ダイオードにつきましては、カーオーディオ市場向けは堅調に推移しましたが、アミューズメント関連市場向けが後半落ち込むなど売上は低迷しました。半導体レーザにつきましては、プリンタ市場向けを中心に売上は増加傾向となりました。
※ 9.MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistorの略)
電界効果トランジスタの一種でバイポーラトランジスタと比較して、低消費電力や高速スイッチングが可能で、各種電子機器に幅広く使われている。
※10.IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor=絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)
MOSFETとバイポーラトランジスタの長所を生かしたパワー半導体。電力制御の用途で使用される。
<モジュール>当連結会計年度の売上高は360億8千3百万円(前期比14.0%増)、セグメント利益は20億8千6百万円(前期比44.6%増)となりました。
プリントヘッドにつきましては、モバイル決済端末向けや中国市場向けのイメージセンサヘッドが好調に推移しました。
オプティカルモジュールにつきましては、ゲーム機向けなどのIrDA(※11)通信モジュールなどが低迷しましたが、スマートフォン向けの小型センサモジュールが大きく売上を伸ばしました。
パワーモジュールにつきましては、カメラ市場向け電源モジュールなどの売上が低迷しました。
※11.IrDA(Infrared Data Associationの略)
赤外線を利用した近距離データ通信の技術標準を策定する業界団体が定めた赤外線通信の規格。
<その他>当連結会計年度の売上高は277億2千5百万円(前期比0.8%増)、セグメント損失は9億円(前連結会計年度はセグメント損失7億9千6百万円)となりました。
抵抗器につきましては、スマートフォンや自動車関連市場向けの売上が好調に推移し、タンタルコンデンサについてもスマートフォンやタブレットPC向けの超小型部品を中心に売上は堅調に推移しました。
LED照明製品につきましては、センサネットワーク技術など、半導体メーカーとしての総合力を活かしてBtoCビジネスからBtoBビジネスへのシフトを進めました。
なお、上記の売上高は外部顧客に対するものであります。
(2)キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度(591億3千4百万円のプラス)に比べ132億4千7百万円収入が増加し、723億8千1百万円のプラスとなりました。これは主に、プラス要因として税金等調整前当期純利益の増加、未払金の増減額が減少から増加に転じたこと及び減価償却費の増加、マイナス要因としてたな卸資産の増減額が減少から増加に転じたことによるものであります。
当連結会計年度の投資活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度(216億2千1百万円のマイナス)に比べ790億1千7百万円支出が増加し、1,006億3千8百万円のマイナスとなりました。これは主に、マイナス要因として定期預金の増加額の増加、有形固定資産の売却による収入の減少及び有形固定資産の取得による支出の増加によるものであります。
当連結会計年度の財務活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度(39億5千4百万円のマイナス)に比べ42億1千7百万円支出が増加し、81億7千1百万円のマイナスとなりました。これは主に、マイナス要因として配当金の支払額の増加によるものであります。
上記の要因に、換算差額による増加が187億5百万円加わり、当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べ177億2千2百万円減少し、2,226億6千8百万円となりました。