有価証券報告書-第36期(平成26年1月1日-平成26年12月31日)

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2015/03/30 10:23
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110項目

研究開発活動

当社グループは、センシングテクノロジーをベースに人々の暮らしや産業社会に「安全・安心・快適」の実現を果たすため、世の中の様々な課題やニーズに対してその解決方法を提案し、顧客満足度の向上を目指して研究開発を進めております。同時に、基礎研究を通してマイクロウェーブ、レーザー、加速度といったセンシングに関わる要素技術や通信技術を確立させ、それらモジュールの内製化を進めることにより、製品の差別化や付加価値を高めるなど、新たな事業機会を創出しております。また、複数の部門が共同で新製品開発を進める「コンカレント開発体制」の整備を進め、従前から展開してきました開発情報の共有システムを活用して、調達・設計・生産技術・品質管理、そして国内外の営業など各部門が協力することで、開発スピードが向上し、大幅なコストダウンを実現いたしました。
当社グループにおける研究開発活動は、当社、国内関係会社であるオプテックス・エフエー株式会社、技研トラステム株式会社、株式会社ジーニック、ジックオプテックス株式会社及びセンサビジョン株式会社、海外関係会社であるFIBER SENSYS,INC.、OPTEX(DONGGUAN)CO., LTD.及びRAYTEC LIMITEDにおいて行っております。
当連結会計年度の研究開発費の総額は17億46百万円であり、対売上高比率は6.8%となっております。
<センシング事業>(1) 防犯関連
近年、テロや凶悪犯罪など人々の生活を脅かす犯罪が増加する中、遠隔監視による機械警備システムの有効性を高めるため、不審者が建物への侵入後に検知する「事後通報」から、侵入を未然に防ぐ「事前抑止」が重視されています。そのため、高い信頼性を有する屋外用防犯センサや画像監視カメラが組み込まれたシステムが普及しております。
住宅・事業所・店舗・商業施設はもとより、世界的な需要として、港湾・空港・発電所など、社会インフラに関わる重要拠点や公共施設への防犯対策が求められており、当社では、様々な防犯ニーズに応えたセキュリティシステムの研究、開発に取り組んでおります。
当連結会計年度の主な成果は、次のとおりです。
①照明(L-11000シリーズ、Raytec Vario)
パーキング照明市場の更なる事業拡大をめざし、L-3400SC100/L-6000SC100/L-11000SC100の3機種を発売いたしました。『必要なときに、必要なあかり』をコンセプトに発売開始し、ご好評をいただいております。
これらには今までに培われた、ワイドで均一な配光を可能にする光学技術を継承し、『ここ(場所/目的)に使うなら、あの照明(OPTEX LED)』をコンセプトに、設置場所に適した照明を提供することで、コインパーキング等の小規模駐車場市場のみならず、ゲート式の中・大規模駐車場照明市場にも対応し、業界ニーズにお応えすることで事業拡大を目指してまいります。
セキュリティ用CCTVカメラ照明メーカーとして世界で確固たる地位を保持する当社子会社の英国RAYTEC社製品であるRaytec Varioのラインアップ拡充を行いました。現在発売中の9モデルに加え、最大3倍の大光量と広域照射を可能とするモデルなど、新たに15機種を発売いたしました。これらの製品により、近距離から長距離まで、スポットカメラからPTZカメラなどあらゆる用途のCCTVカメラに対応することが出来ます。
②iVision+
民間での防犯意識がさらに高まる北米市場向けに、従来より屋外ビデオインターコム「iVision」を販売しておりましたが、この後継機種「iVision+」を発売しました。この製品では従来品からの機能向上に加え、簡易防犯機能及び外部機器連動機能を追加しています。さらに弊社製品、無線アナウンシエーター機器「Wireless2000」と連動する機能を搭載しています。外部機器連動機能としては、市販の電気錠や電動シャッターと接続することにより、手元のハンドヘルドモニターユニットから任意のタイミングで門扉やガレージの開錠を行うことができます。
来訪者の画像記録に加え、センサ連動することにより、ホームソリューションシステムとしての新提案をすすめてまいります。ドアカメラユニットとハンドヘルドモニターユニットの一対からなる基本パッケージに加え、機能拡張用のゲートウェイユニットと追加ユニットの個別パッケージを用意し、国内と異なる住宅事情にも対応しました。
北米市場での展開を踏まえ、今後、当社の販売網を活かして他市場での展開も模索してまいります。
③新CE対応(2.7GHz対応)
欧州市場に流通するセンシング事業防犯関連のすべての機器に対し、新しい欧州の「警報システムEMCイミュニティ要求規格」(EN 50130-4:2011)への適合を平成26年6月までに完了しました。
「新警報システムEMCイミュニティ要求規格」とは、住宅、商業施設、産業施設でなどで使用される機械警備システムに関係するEMC規格標準です。EMCとは電気機器などが備える、電磁的な不干渉性および耐性を意味します。今までの欧州の規格標準では、80MHzから2.0GHzまでの周波数範囲に対して耐性が必要でした。新しい規格標準では周波数範囲の上限が2.7GHzまで引き上げられ、より厳しい基準に対応する必要があります。この背景には、無線LANや携帯電話など、より高い周波数帯域で動作する機器が普及したためです。それらの機器により機械警備システムの正常な動作が阻害されないように規格標準が改訂されました。今後も規格に準拠した信頼性の高い製品を通じて、「安全・安心・快適」を社会に提案し続けてまいります。
(2) 自動ドア関連
自動ドア分野におきましては、公共施設、オフィス、店舗や工場などで人が安全・安心・快適に出入りできる自動開閉扉用センサを開発、販売しております。創業以来培ってきました独自のセンシング技術で常に業界最高水準の安全性を維持しつつあらゆる設置環境下における安定動作を実現すべく研究開発を行っております。
これにより、現在では国内の自動ドア・シャッターセンサ分野におきましては、約6割のシェアを確保し、海外におきましては安全要求が各地域の法令として明確に定義されるなか、これらへの適切なアプローチを行うことで、シェアは堅調に増加しております。
当連結会計年度の主な成果は、次のとおりです。
①OA-215シリーズ
これまで高機能製品に搭載されていました「ドア作動部の安全補助エリア」を今回汎用センサOA-215シリーズにも標準搭載し国内市場に投入しました。またこのシリーズは、①進入者検出による起動、②極限定的なエリアを構成し、ここに手や体を進入させることによる起動、③ワイヤレス受信機を組込み、すでに販売しておりますワイヤレス送信機からの信号による起動の3機種を統一デザインで展開いたしましたことで高い評価をいただき採用が拡大しました。
②欧州歩行者用自動ドア規格(EN16005)対応センサ
世界的にも安全に対する牽引市場である欧州市場におきまして、2013年4月に欧州統一規格である歩行者用自動ドア規格EN16005が施行されました。当社が国内及び海外市場で長年培ってきたセンシング技術の一つである赤外光を用いた検出技術は、『安全性能』が競合他社と比較して高い優位性をもち、当該規格施行のタイミングに合わせた製品ラインアップと以降の強化策を推進してまいりました結果、欧州市場における顧客の好評を博し当社製品の採用が拡大しております。今後は、欧州主要市場において継続した製品投入と技術サポート体制を更に充実させることにより、顧客満足度を高めシェア向上を図ってまります。
また、北米市場におきましても「ドア作動部の安全補助」を目的とする当社独自の検出技術が高い評価をいただき、販売台数を伸ばす結果となりました。昨今、センシングエリア構成が欧州の規格要求に倣う傾向が出始めており、この機会を確実に捉え「赤外光による検出技術」を軸にグローバル市場において、「安全」をキーワードとした継続的なセンサの投入を行い、シェア向上を図ってまいります。
(3) その他
その他のセンシング分野におきましては、触らず、素早く、安全に物体の表面温度を計測する非接触温度計や、液体の色や濁りを素早く正確に測定する水質計測用センサなど、安全・品質・衛生管理の特殊な計測ニーズに対応した製品の開発を行っております。
またドライバーの継続的な安全運転をサポートする自動車向け製品の開発も行っております。
当連結会計年度の主な成果は、次のとおりです。
①温度計測
製造プロセスにおける温度管理及び制御は、製品の品質維持の観点から重要度が年々増しており、お客様のニーズも多様化してきました。このような状況の中「特定用途別非接触温度計GT/GTLシリーズ」を発売いたしました。
世界最小クラスの小型化、業界トップクラスの耐熱性能を有しつつ、あらゆる製造業でより安定した測定を実現するため高温金属用、光沢金属用、ガラス用、フィルム用など多くのバリエーションを揃えることで、お客様の製造工程における多様なニーズに対応いたします。
②水質計測
現在当社では、国内・海外の各種民間工場や公共の排水・上水処理施設向けに、濁度測定センサを中心にした水質測定センサのラインアップ展開をしており、測定精度や耐久性など高コストパフォーマンス製品としてご評価いただいております。
しかしながら、水処理施設において当社が提供できる水質測定センサは、一部プロセスのみでの使用であり、それ以外のプロセスに対し当社から一括した水質測定ソリューションを提供しきれておりませんでした。そこで、更なるラインナップ強化を目的に、主に食品工場や下水処理場での水質測定に使用される「溶存酸素センサ(DOセンサ)」を国内、海外に向けて発売いたしました。
③安全運転支援関連
ドライバーの運転挙動を判別する当社のセンシング技術が、損害保険会社から発売された自動車保険に採用されました。この自動車保険は、運転特性(加速・減速の発生状況)を計測する専用器 (*1)を使用して、ドライバーの「やさしい運転」を継続的に計測し、運転状況に基づいて保険料がキャッシュバックされる日本で初めての保険商品(*2)です。当社のセンサ技術を活用し損害保険会社と共同開発した専用器で、ドライバーの運転特性に応じた保険料の適用が可能となります。
*1当社と損害保険会社が共同開発した専用の計測器です。
*2「加速・減速の発生状況を保険料に反映」する保険商品です。(平成26年11月1日時点)
当社グループは、あらゆる製造業分野の工場における製造ラインの自動化・省力化には不可欠な光電センサを主とするFAセンサ(産業用センサ)の製品開発、研究に取り組んでおり、可視光や赤外光を用いた光電センサのみならず、距離を計測する変位センサ、カメラを用いた画像センサ、LED照明機器など、センサ及びその周辺機器を幅広く開発しております。
当連結会計年度の主な成果は、次のとおりです。
①アンプ内蔵光電センサ Z3シリーズ
最新の専用カスタムLSIを2種類新規開発し、光学系の最適化を行うことで、従来のZシリーズとの互換性を維持しながら細部にわたって性能と品質を向上させております。
②センシングバックライト照明 OPFシリーズ
センシング機能を搭載したバックライト照明を開発いたしました。当社独自の照明の輝度や温度のセンシング機能を加えた狭指向角タイプを開発することで、従来よりも外観検査の輪郭を明瞭に映し出すことが可能になりました。
③LED照明コントローラ OPPF-48シリーズ
大型サイズのLED照明を駆動するために、従来のOPPF-30シリーズの出力容量を1.6倍増強したOPPF-48シリーズを開発いたしました。これにより新しいセンシングバックライト照明の大型サイズにも対応することが可能となりました。
④コンパクト変位センサ CD22 RS485通信タイプ
小型で高性能が特色のCD22シリーズに、RS485通信タイプを追加いたしました。従来のアナログ電流/電圧出力ではなく、通信による測定値の読み出し、設定値アクセスが可能となることで、より高度で高精度な測定を実現しております。
<その他>当社グループは、独自のセンシング技術に新たな要素技術を融合させた、客数カウントシステムの開発・販売及び画像処理技術を手掛けております。
当連結会計年度の主な成果としましては、画像鮮明化技術を組み込んだ「リアルタイム画質改善ユニット」を発売いたしました。この「リアルタイム画質改善ユニット」は、撮影した低コントラストの動画像を鮮明化し、対象物の視認性を向上させる画像処理ユニットです。大型施設・設備の周辺監視、河川・道路監視、水質汚濁監視など高度な監視システムでは外光条件が霧・逆光・夜間といった不安定な環境でも視認性が良い動画像撮影が求められます。様々な要因で視認性の落ちた映像を面倒な調整操作を必要とせず、リアルタイムで人の目にやさしく鮮明化します。