有価証券報告書-第41期(平成31年1月1日-令和1年12月31日)

【提出】
2020/03/26 14:29
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【項目】
148項目

研究開発活動

当社グループは、「見えないものを、見るしごと。」の実現を果たすために、世の中の様々な課題やニーズに対してその解決方法を提案し、顧客満足度の向上を目指して研究開発を進めております。
センシング技術に加え、照明技術やさまざまな要素技術を取り入れ、変化や状態を「見る」、見えないものを「視る」、観察し判断する「観る」を包含した「見る」技術を進化させ、多様化するお客様に価値ある提案を行い、新たなソリューションを創造してまいります。
当連結会計年度の研究開発費の総額は2,761百万円であり、対売上高比率は7.4%となっております。
(1) 防犯関連
防犯関連におきましては、国内では東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会に向けて、多数の訪日客を想定し、あらゆる公共機関等での防犯対策強化が進んでおります。海外では、テロへの不安、移民問題等により社会不安は増大し続けており、如何にいち早く異常を察知し安全を維持出来るかが課題となっております。このような背景のもと、各国では空港・発電所等の重要施設のみならず事業所・商業施設等の民間施設でも防犯カメラシステム、侵入警戒システムへの投資が活発化しております。当社はこのような社会インフラと住環境の安全・安心への要求に対し、より信頼性が高く、防犯カメラシステムとの親和性も高いセキュリティシステムの研究、開発をベースとしたソリューションを提供しております。
当連結会計年度の主な成果は、次のとおりです。
① 屋外防犯センサー 「WX-Shieldシリーズ」
一般住宅や商業施設、事業所での屋外広域警戒を目的とした「WX-Shield」を開発いたしました。防犯対策への要求が益々高まる屋外警戒センサー市場において、顧客ニーズは多様化しており、2018年に開発いたしました「WX-Infinity」の上位機種として市場投入しラインアップ強化を図りました。当製品は建物や敷地の壁に設置され、180°の広範囲を警戒し、建物に近づく侵入者を検知すると同時に、警備会社及び監視センター並びに警報システムに通知し、不正侵入を早期に発見することで犯罪の抑止に繋げ、更に居住者の自衛を促すことができるセキュリティ製品です。また、追加機能として、高所設置、画策検知機能※を搭載いたしました。
※ 防犯センサーが作動しないように手を加える妨害行為を検知する機能
② 屋外防犯センサー 後付けWi-Fiカメラ 「VXI-CMOD」
主に一般住宅向けの屋外警戒、画像確認を目的とした「VXI-CMOD」を開発いたしました。一般住宅においては、犯罪をいち早く察知し対処したいというニーズが高まっており、更に屋外センサーのユーザーからは、検知時の状況を確認したいという要望を多く頂いた為、人気シリーズのVXIセンサーに後付けできるWi-Fiカメラユニットを開発いたしました。当製品は、センサーが検知した際のカメラ画像をスマートフォンで確認できる機能が搭載されており、犯罪の早期発見・対処を促すことができるセキュリティ製品です。
③ 画像確認ソリューション 「Intelligent Visual Monitoring」
主に海外の商業施設、事業所での屋外警戒における画像確認を目的としたサービス「Intelligent Visual Monitoring」を開発いたしました。海外の警報監視システム導入先では、ユーザーの機械操作ミスや防犯センサーの誤動作などが原因で誤報が多発しています。現場には防犯センサーと監視カメラが設置されているにも関わらず連動していない為、警報を受信した警備会社は真報か誤報かを判断せずに警察に出動を要請することがあります。欧米諸国では、この様な誤報により警察の無駄な出動が増え、本来の業務に支障をきたしたり、ユーザーに罰金が科せられるなど、現状の警報監視システムに対する問題点が指摘されています。当サービスは、戦略的提携先である米国「チェクト社」の画像確認ソリューションを組み入れた中継器を利用しており、警備会社は常に警報信号とリンクしたカメラ映像を受信し、現場の正確な状況確認が可能となります。更に、業界標準規格のネットワークカメラに接続可能なシステムを構築しているほか、クラウド型で使いやすく、安価なオペレーションソフトを搭載しており、高度なITスキルが無くても導入できます。これにより、従来主流であったセンサーの単品売りだけでなく、システムの提供による継続収入型ビジネスへの展開を推進してまいります。
(2) 自動ドア関連
自動ドア関連におきましては、公共施設、オフィス、店舗や工場施設などで人々が安全・安心・快適に通行できる自動開閉扉用センサーを開発、販売しております。創業以来培ってきた独自のセンシング技術で業界最高水準の安全性と、あらゆる設置環境下でも安定したパフォーマンスを発揮すべく研究開発を行っております。
現在、国内におきましては、自動ドアセンサー分野は約6割、工場や倉庫の高速シャッターセンサー分野は約7割と高い市場シェアを維持し、海外におきましては、開口部周辺の安全要求が各地域の法令として定義されるなか、当社が得意とする光技術を軸としたセンサー投入により、シェアは堅調に増加しております。また昨年度、高速シャッター向けに開発いたしました「OAM-EXPLORER」は、検出能力に加え携帯端末アプリによる設定機能が欧米市場でも評価され、OEM供給及び協業案件が数多くスタートし、売上は堅調に推移しております。
当連結会計年度の主な成果は、次のとおりです。
① Beacon機能搭載センサー 「OAB-215V」開発
Beaconは近距離を得意とする信号発信装置であり、この信号を受信する携帯端末アプリと組み合わせることで目標を定めた情報発信や立ち寄り先履歴など、ユーザーの有益情報をタイミングよく提供することができるサービスツールとして注目されています。自動ドアセンサーは出入り口に設置され、通行者、施設利用者との距離も近くBeacon情報の発信源として理想的ポジションにあることから、当社はセンサーにBeacon機能を内蔵した「OAB-215V」を開発いたしました。センサーに内蔵することで、電池交換、持ち去りなどこれまでの課題を解消し、継続的に安定した情報発信を可能とするBeaconとして各種サービス提供企業様より期待の声を数多くいただいております。
② 欧州 避難経路規格適合センサー「OAM-DUAL TE」開発
欧州の避難経路用自動ドア装置は、災害等発生時、建物内の人々を脱出させるためドアを素早く開放させることや、定期的にドアシステムの自己診断を行い、診断結果に異常項目が確認された場合速やかにドアを開放維持することが要求されています。しかしながら、ドアシステムとセンサー間の接続方式が複数存在しており、配線の煩わしさが長年の課題となっていました。当社は欧州の避難経路規格に併せて、各種接続方法を1モデルに統合した「OAM-DUAL TE」を開発いたしました。この機種の投入により施工性の向上が評価され、欧州で売上を堅調に伸ばしております。
また、自動ドア・シャッター業界は欧州安全規格の世界的波及や、センサーでの自動開閉による、通行の効率化、衛生面への配慮など「安全」「安心」「快適」が求められる中、当社は「お客様の感動」という次のフェーズに向け新製品・新サービスの投入を行うことで、更なるオプテックスファンの獲得を図ってまいります。
(3) その他
その他のSS事業におきましては、液体の色や濁りを素早く正確に測定する水質計測用センサーなど、安全・品質・衛生管理の特殊な計測ニーズに対応した製品の開発を行っております。
また、独自のセンシング技術に新たな要素技術を融合させた、客数情報カウントシステムの開発・販売及び画像処理技術も手掛けております。客数情報は、店舗運営や経営に必要な基礎データで、このデータに基づき、店舗経営分析や効果測定、人材不足の課題対応オペレーションなど、広範囲にご利用いただいております。近年、高精度な人数情報は、多種多様なIoTデータを扱う上で、更に重要性が増してきております。
当連結会計年度の主な成果は、次のとおりです。
① 低濁度チェッカー「TC-Mi」、簡易水質測定システム「WATER it」
水質計測分野におきましては、上水道やプールなどきれいな水の濁度を簡易に測定するセンサー、低濁度
チェッカー「TC-Mi」を投入し、日本のみならず中国・インド・東南アジアを中心に全世界で展開を始めており、他社との提携を強めています。今後、下水処理場など汚い水の測定から上水などのきれいな水の測定まで、より幅広い分野で水質を簡易に測定できるような製品開発をしていく予定です。
また、2017年に発売した下水処理場や河川などあらゆる現場の水質をセンサーで簡易に測定し、データ収集までを自動化する簡易水質測定システム「WATER it」は、独立行政法人国際協力機構の中小企業海外展開支援事業としてベトナムのODA案件として正式に導入され、2019年11月から本格的な調査が開始されました。
② 客数情報カウントシステム
客数情報センサーを使用した、広い範囲における人の移動を追跡処理するシステムを開発いたしました。
また今後の高度センシング処理に対応する為、パワーアップしたセンシングプロセッサを開発いたしました。更に人と人以外の動きを見分けるアルゴリズム開発により、複合的な情報提供の実現を目指しております。今後は、AIを用いたセンサー基礎開発や、幅広いニーズに対して、クラウドを使って情報提供する為のシステム開発やソフト開発も進めてまいります。
③ 画像処理技術
画像処理技術におきましては、電子式ブレ補正技術のハードウェア開発に着手いたしました。従来の電子式ブレ補正では捉えることのできなかった霧や暗所での特徴点を抽出することで、より高い映像安定性を提供いたします。既に有しております鮮明化技術、鮮鋭化技術と組み合わせることで、画像センシングにおいて、より高度な「見える化」への要求に対応いたします。
FA事業におきましては、さまざまな製造業の工場における製造ラインの自動化・省力化に不可欠なFA用センサー(産業用センサー)の製品開発、研究に取り組んでおり、可視光や赤外光を用いた光電センサーのみならず、距離を計測する変位センサー、カメラを用いた画像センサー、LED照明機器、非接触温度計など、センサー及びその周辺機器を幅広く開発しております。
当連結会計年度の主な成果は、次のとおりです。
① センシング同軸照明 90°回転タイプ 「OPX-SVシリーズ」
省スペース化を実現する90°回転タイプ同軸照明を開発いたしました。標準タイプの同軸照明は、カメラの設置を含めると高さ方向のスペースが必要になりますが、OPX-SVシリーズは、カメラの設置方向を90°曲げることができ、検査面に対して並行に設置可能です。従って、標準タイプに比べ高さ方向のスペースが削減可能なため、ラインの下など限られたスペースへの設置に有効です。また、ハーフミラーの表面反射を利用するため、高精細撮像に適しています。
なお、当社センシング対応LED照明コントローラとの併用で、照明の明るさ、及び温度をモニタリングでき、IoTによる照明の予知保全を実現することができます。
② センシング マルチリング/ドーム照明 「OPM/OPDシリーズ」
ローアングルからハイアングルまで1台で対応可能なマルチリング照明、及び光沢や凸凹の影響を抑えることが可能なドーム照明にセンシング機能を搭載いたしました。これらは、グループ会社であるシーシーエス㈱のラインアップを流用して開発した製品であり、両社のシナジーを発揮した製品となっています。
③ フィールドネットワーク接続ユニット 「UC1-EC, -EP」
ファイバアンプの情報をフィールドネットワークのEtherCAT、Ethernet/IPに接続して提供する、UC1-EC及びUC1-EPを開発いたしました。昨今ニーズが高まっております、IoT並びにIndustry 4.0対応を、当社ファイバアンプのD3RFシリーズ、そして変位センサーのCD22シリーズ、TD1シリーズを本製品と接続することで実現いたしました。
④ 白色ファイバアンプ 「D3WFシリーズ」
包材のマーク検知、並びにワークの色の濃淡で検知が可能なD3WFシリーズを開発いたしました。世界最速のファイバアンプ、D3RFをベースにし、マーク検知や濃淡検知に特化した機能を搭載し、より高速化する生産ライン、特に三品(食品・医薬品・化粧品)業界向けに拡販してまいります。
⑤ IO-Link対応汎用光電スイッチ 「Z4シリーズ」
従来のZ3シリーズをIO-Link ※1 対応したZ4シリーズを開発いたしました。IoTやIndustry 4.0 ※2 で求められる、センサーの見える化をローエンド汎用光電スイッチでも提供いたします。単にIO-Linkに接続する機能を追加しただけでなく、新機能のメンテナンス時期予測機能や、検出安定度モニタ機能を搭載し、更には個体ばらつきを大幅に減らし、新世代の汎用光電スイッチとして幅広く活用していただけるものと確信しております。
※1 センサーと制御システムの間で各種データ交換を行う通信技術のこと。設備の予知保全等に役立つ。
※2 ドイツ政府が推進する製造業の高度化を目指す国家プロジェクトのこと。工場内のあらゆる機器類を
インターネット経由で一括管理することにより、生産性と収益性の向上に役立つ。
MVL事業におきましては、様々な製造業の検査工程で使われるMachine Vision Lighting用LED照明や関連機器の開発・研究に取り組み、多彩な製品を提供しております。
昨今、検査品質向上、人手不足解消、生産性向上を目指して、お客様のニーズが高度化・多様化しております。このようなニーズに応えるため、AIを用いた画像解析などソリューションの拡充に務めるとともに、近赤外光等の目に見えない光やLED以外の新しい光源を利用した今までにない照明を商品化しております。2019年4月8日にシカゴで開催されたVision Systems Design 2019 Innovators Awards では、シーシーエスグループの新製品が3賞を受賞し、高い評価を獲得することができました。
当連結会計年度の主な成果は、次のとおりです。
① 画像処理検査用 フラットドーム照明「LFXVシリーズ」
フラットドーム照明は、水平方向に配置したLED の光を導光板表面でワーク方向に拡散させることにより
ドーム効果を得ます。薄型で製造装置内に設置がし易いことから、電子部品や金属、医薬品、包装パッケージの検査など、多くの製造現場でご好評をいただいております。
新しい「LFXV シリーズ」は、従来シリーズの光学系を全面的に見直し、高品質な画像を得られるようにいたしました。キーとなるのは導光板ですが、表面に最適化された形状の微細なディンプル(凹み)を設けるとともに、使用素材に異物や気泡が混入しないよう、サプライヤーとの協力のもと製法にも工夫を重ねました。その結果、従来シリ―ズよりもクリアで明るい視野を確保でき、画像も極めて明瞭になりました。製品ライン
アップとしては、導光板が25×25(mm)から300×300(mm)の10サイズ、LED発光色は赤・白・青・赤外の4色になります。
② 新ブランド「CCS-LT」の第一弾 有機ELを活用した検査用照明「OLF-LTシリーズ」
新ブランド「CCS-LT」のLT はLeading Technology の略であり、先進的な技術にチャレンジし、その技術を活用した製品をスピーディにお客様に提供することを目的として誕生いたしました。
その第一弾である「OLF-LT」シリーズは、検査用照明では国内初となるOLED(有機EL)を光源とする全く新しい照明です。OLEDならではの薄く軽い形状と放射輝度の高均一性に加え、発光層を重ねることで発光効率を高め、検査用照明に必要とされる長寿命と高輝度も実現いたしました。形状に関しては、従来のLED照明では薄さ6~8(mm)が限界でしたが、約3(mm)という新次元の薄さを達成し、照明設置範囲の自由度を拡大することに成功いたしました。
③ UV(紫外線)硬化用の高出力ライン型LED照射器と電源
UV-LEDは、UVランプに比べ、応答性が良い、省電力、長寿命、水銀を使わないため低環境負荷といった特徴があり、印刷インクの乾燥、ハードコート塗装、部品の接着分野などで急速に普及が進んでおります。
高出力ライン型LED照射器は、新開発した独自の放熱構造により大電力の投入を可能にし、業界最高クラスの出力を実現しております。また、モジュール構造を採用し、最大2,000(mm)まで連結可能です。更に、ご利用のUV硬化材料に応じて4種類のLED波長を選ぶことができます。
専用ハイパワー電源PSCUは、回路単位(発光面10(mm)ごと)の調光が可能で、均一な放射照度分布を実現いたします。また、調光とON/OFFの情報を8パターンまで記録し、読み出せる機能を搭載いたしました。更に、LEDの故障、コネクタ挿抜、照射器温度異常、ファン停止・減速エラーなどの異常検出機能が充実しており、照射器のメンテナンスや交換時期の予測に役立てることができます。