有価証券報告書-第20期(令和3年1月1日-令和3年12月31日)

【提出】
2022/03/30 15:04
【資料】
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【項目】
131項目

研究開発活動

(1) 研究開発活動の体制および方針
当社グループの研究開発活動は、現在から近い将来にかけて必要とされるデバイス、ソフトウェアおよびシステムなどの開発において、車載制御、車載情報に関する製品はオートモーティブソリューション事業本部が、産業、インフラストラクチャーおよびIoTに関する製品はIoT・インフラ事業本部が担当して取り組んでおります。デバイス・プロセス技術、実装技術、設計基盤・テスト手法などの部門横断的な共通技術については、各事業本部と生産本部とが協力しながら担当する体制としております。
加えて、コンソーシアムや外部研究機関などへの研究委託や、幅広い分野やお客様へ最適なサポートを行うためのサード・パーティの活用など、自社の研究開発リソースのみならず社外のリソースも必要に応じて活用しております。
家電製品や自動車などあらゆるモノがネットワークに繋がり、相互に情報交換しサービスが提供される超スマート社会では、これまで当社が強みとしてきたマイコンやSoC(System-on-Chip)といったデジタル製品が担う演算機能、アナログ製品が得意とする人の目・耳・鼻などに相当するセンシング機能、さらにパワー製品が得意とするモータ等を動かすためのアクチュエータ機能が有機的に繋がり連携する必要があります。当社グループは、センシングからアクチュエータ機能まで幅広くサポートするための製品ポートフォリオを拡充し、アナログ製品とデジタル製品を組み合わせたソリューション(ウィニング・コンビネーションと呼称)を強化するとともに、アプリケーションごとに共通して使用できるIP(設計資産)やOSなどのソフトウェアをプラットフォームとして提供するための研究開発活動を行うことにより注力する市場での成長を実現してまいります。
(2) 主な研究開発の成果
① 次世代ハイブリッド車や電気自動車を構成するアーキテクチャに対応する「RH850/U2B」を発表
当社グループは、28ナノメートル(注)プロセス技術を採用した車載用マイクロコントローラ「RH850/U2B」を発表しました。本製品は、2022年4月からサンプル出荷を開始する予定です。
近年、地球温暖化対策の一環として、各国がCO2排出規制を強化する中、CO2排出量を削減できるxEVは、環境に優しく、安全で暮らしやすい持続可能な社会の実現に貢献するものとして、その普及拡大が急がれています。
そして、自動車システムの設計は、今後、次世代E/Eアーキテクチャに向かうことが見込まれ、これを実現するための車載用半導体が求められています。
本製品は、当社グループのRH850ファミリの中で最もハイエンドに位置づけられるマイクロコントローラで、高い性能、スケーラビリティ、仮想化対応、セキュリティ機能など、優れた特長を備えています。そのため、自動車システムに要求される厳しい要件に応えることができるほか、パワートレイン制御やインバータ制御など、次世代E/Eアーキテクチャの要となるゾーン・ドメインコントロール、コネクテッドゲートウェイなどに最適です。
当社グループは、今後も、安心・安全なクルマ社会の実現に向けて、業界をリードしていきます。
(注)ナノメートル:1ナノメートルは、10億分の1メートルです。
② 次世代の車載中央コンピュータ向けに、新開発のゲートウェイ用SoC「R-Car S4」とPMICを組み合わせた車載ゲートウェイソリューションを発表
当社グループは、次世代車載中央コンピュータ向けに、新たなゲートウェイ用SoC「R-Car S4」とパワーマネジメントIC(PMIC)を開発し、これらを組み合わせた車載ゲートウェイソリューションを発表しました。
本ソリューションは、自動車のE/Eアーキテクチャが今後進化することにより求められる高い要件を満たすとともに、性能も高く、複数の多様な高速ネットワークに対応し、高いセキュリティ機能と機能安全レベルを備えています。
本ソリューションを構成するR-Car S4は、既存のソフトウェアを再利用することを重視して設計されており、シームレスに動作するPMICとあわせて使用することで、ユーザの開発効率の向上を実現することができます。また、PMICは、超低消費電力による動作を実現し、12ボルトという自動車バッテリの電源入力に対応するとともに、周辺機器などが必要とする電源電圧を降圧し、最大で11チャネルを出力することができます。
両製品のサンプル出荷は、既に開始しており、本ソリューションの評価ボードの提供も開始しました。本ボードには、R-Car S4とPMICのほか、当社グループ製タイミングIC「Autoclock RC2121x」が搭載されており、ウィニング・コンビネーションのひとつとなります。
当社グループは、本ソリューションを提供することにより、ユーザによる製品設計の開発効率化や開発期間の短縮などに貢献します。
③ 基地局・データセンタにおける通信インフラソリューションを発表
当社グループは、5GビームフォーミングICのポートフォリオを拡充し、5Gおよび広帯域無線向けに最適化したミリ波デバイス2製品を発売しました。
本製品は、送受信可能な8チャネル高集積トランスミッタ・レシーバで、n257周波数帯(26.5GHz~29.5GHz)対応の「F5288」と、n258/261周波数帯(24.25GHz~27.5GHz)対応の「F5268」が含まれます。ユーザは、本製品を使うことで、各種基地局だけでなく、固定無線アクセスポイントやユーザ構内設備、その他様々な無線インフラ向けに、広帯域の信号に対応することができ、コスト効率の高いフェーズドアレイシステムを設計することが可能となります。
また、当社グループは、本製品を用いたウィニング・コンビネーションとして、アップダウンコンバータ「F5728」や広帯域ミリ波シンセサイザ「8V97003」、PMICと組み合わせた「基地局アンテナ・フロントエンドソリューション」の提供を開始しました。本ソリューションにより、通信業界の顧客は、長距離無線用に費用対効果の高い基地局などを設計することが可能になります。
④ 屋外空気質センサプラットフォーム「ZMOD4510」向けに、新たに超低消費電力を実現するオゾン検知特化型ファームウェアをリリース
当社グループは、屋外空気質(Outdoor Air Quality : OAQ)センサプラットフォーム「ZMOD4510」を拡充し、超低消費電力を実現するオゾン検知特化型ファームウェアをリリースしました。
高濃度のオゾンガスは、空気環境を悪化させ、健康リスクをもたらす重大な原因となっており、米国環境保護庁(EPA)のAir Quality Index (AQI)をはじめ、各国や地域で様々な空気質指標に用いられています。
本ファームウェアは、AIを活用したアルゴリズムの採用により、オゾンガスのみを選択的に測定することができます。また、本ファームウェアとZMOD4510を組み合わせることにより、200µW以下という超低消費電力で動作することが可能となるため、バッテリ駆動の機器での使用にも適しています。これらにより、スマートウォッチやスマートフォン、ガス探知機などの小型モバイル機器で、手軽に空気質を測定することができます。
当社グループは、本プラットフォームをビルディングオートメーション照明に付加するためのウィニング・コンビネーションを提供し、ユーザによる製品設計を支援し、市場への投入を早めることを支援します。
(3) 研究開発費
当社グループでは開発費の一部について資産化を行い、無形資産に計上しております。無形資産に計上された開発費を含む当連結会計年度の研究開発費は、1,563億円となり、前連結会計年度の1,351億円と比べ212億円増加しました。これは主に、製品設計、システム開発、デバイス開発、プロセス技術開発、実装技術開発に使用しました。
なお、当社グループの研究開発は、大半が自動車向け事業および産業・インフラ・IoT向け事業の双方に係るものであるため、セグメントごとの記載は省略しております。