有価証券報告書-第123期(平成31年4月1日-令和2年3月31日)

【提出】
2020/06/24 14:19
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【項目】
173項目

事業等のリスク

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりである。
なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものである。
(1) 個別受注案件のリスク
当社グループでは、主力事業であるごみ焼却発電施設のEPC(設計・調達・建設)をはじめ、個別受注案件が多く、受注時の見積コストを上回る費用の発生、工程遅延による納期遅れ、あるいは技術・製品トラブル等に伴うペナルティが発生した場合には、収益の悪化により当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性がある。
当社では、これらの個別受注案件に伴うリスクの回避及びリスクが顕在化した場合の損失の最小化のため、次のとおり徹底したリスク管理に取り組んでいる。
① 受注段階におけるリスク管理体制
個別受注案件の見積段階において、関係各部門が、技術、コスト、納期、契約条件等に関するリスクの抽出及び評価を行った上でその対策を検討し、計画どおりに工事を完遂するためのリスク検討会を行う等、受注前にあらゆるリスクを検討した上で受注の可否を判断している。
■受注までのリスク管理プロセス
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② 受注後におけるリスク管理体制
当社グループの主要な大型受注案件については、次のとおり受注後も継続的にフォローする体制をとり、徹底した収益管理を行っている。
イ.工事期間中は、各事業部において、月次フォロー会議を開催し、工事の進捗状況・収益見込みについて継続的なモニタリングを行うことで課題の抽出、対応策を検討し、リスクの発生防止、影響の最小限化に努めている。特に重要な案件については、取締役社長が議長を務めるトップマネジメント・レビュー会議で進捗状況等を報告し、必要に応じて経営幹部による指示・助言を行っている。
ロ.工事完工後は、プロジェクト成果報告会を開催し、各工事における成果、課題等を水平展開することで、現在進行中及び今後の工事案件の収益強化及びトラブルの未然防止を図る。
③ 海外子会社受注案件のリスク管理体制
当社連結子会社のうち、Hitachi Zosen Inova AG、Osmoflo Holdings Pty Ltd、NAC International Inc.等の主要な海外子会社の受注案件については、その案件規模や契約条件等に鑑み、大きなリスクが想定される場合には、当社の事前承認を得ることを義務付けている。
さらに、Hitachi Zosen Inova AGについては、プロジェクトの進捗状況、収益状況等をタイムリーに把握し、適時に適切な対応を講じるための組織を当社内に設置しており、個別工事のリスク管理体制を強化している。
(2)事業環境等に関するリスク
当社グループを取り巻く事業環境等に関しては、次のとおりリスクを認識しており、各リスクに対する種々の対応策をとっているが、それらの対応策が有効に機能しない等によりリスクが解消できず、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性がある。
① 価格競争
当社グループの主要な製品・事業であるごみ焼却発電施設、舶用原動機、自動車用プレス機械、圧力容器等各種プロセス機器、橋梁等は成熟市場にあり、市場内に競合企業が多く、受注価格が下落傾向にある。当社グループでは、新技術の開発、アフターサービスの充実を図ること等により他社との製品差別化を図るとともに、人件費、経費等の固定費削減、固定費構造の変革による競争力の向上に取り組んでいるが、新規案件の減少に伴う競争激化によって受注価格がさらに下落する可能性もあり、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に悪影響を与える可能性がある。
② 素材価格の高騰
当社グループでは、鋼材、ステンレス等の非鉄金属製品、石油製品等を使用する製品・工事が多く、資材調達機能の集中化、グループ調達・共同購買の強化による資材費圧縮に取り組んでいるが、鋼材、非鉄金属、原油をはじめとした素材価格及びその二次製品の価格が上昇した場合、コストアップによる収益悪化や、価格面における競争優位性が得られなくなる等により、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に悪影響を与える可能性がある。
③ 海外事業、カントリーリスク
当社グループでは、環境・プラント事業の主力製品であるごみ焼却発電施設については、当社と当社連結子会社のHitachi Zosen Inova AGとの間で事業活動領域を区分し、当社は、東南アジア、中国、インド地域を、Hitachi Zosen Inova AGは、ロシアを含む欧州全域を主な事業活動領域としており、また、プロセス機器、使用済核燃料保管・輸送機器等の機械事業においては、全世界を事業活動領域として事業活動を展開している。現地のカントリーリスクに関しては、事業の計画段階で情報の収集に努めているが、事業開始後、予想外の政情不安、米中貿易問題、文化や法制度の相違、特殊な労使関係等によりリスクが顕在化した場合は、円滑な業務運営が妨げられ、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に悪影響を与える可能性がある。
④ 当社グループの事業構造に関するリスク
当社グループの事業構造は、今後は縮小が予想される国内案件の比率が高いことから、海外比率を高めるため、海外における事業活動を推進しているが、依然として是正には至っていない。なお、国内市場においては、官需部門の環境事業は確固たる地位を確保しているが、さらに安定した事業構造とするべく、民需部門である機械事業の拡大に注力し、両部門で、アフターサービス、オペレーション、メンテナンス事業を中心としたソリューション事業の伸長を図る等により、官需・民需のバランスの取れた事業構造の構築に取り組んでいる。また、2020年度を初年度とする新中期経営計画「Forward 22」においては、製品・サービスの付加価値向上のため、先端技術を活用した新しいビジネスの創出と伸長、事業立地の転換、顧客・市場との対話の促進による事業領域の拡大に取り組むとともに、事業の選択・集中の推進とリソースの伸長分野へのシフトのため、ポートフォリオ・マネジメントの一層の推進を行っていくが、これらの事業構造改革が進まない場合には、収益の確保・向上が果たせず、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に悪影響を与える可能性がある。
⑤ 金利上昇及び為替変動
当社グループは、有利子負債の削減を軸に財務体質の強化を進めるとともに、社内管理規程に基づき、金利変動リスク及び為替変動リスクをヘッジしているが、想定以上の金利上昇や為替変動が発生した場合、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に悪影響を与える可能性がある。
⑥ 固定資産の減損
当社グループが保有する固定資産について、時価が著しく下落した場合や事業の損失が継続するような場合には、固定資産の減損損失の計上により、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性がある。
⑦ 繰延税金資産の回収可能性
当社グループは、将来減算一時差異および税務上の繰越欠損金に対して、将来の課税所得を合理的に見積もった上で回収可能性を判断し、繰延税金資産を計上している。将来の課税所得については、経営環境の変化などを踏まえ適宜見直しを行っているが、結果として繰延税金資産の全額または一部に回収可能性がないと判断し、繰延税金資産の取崩しが必要となった場合、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性がある。
⑧ 災害
当社グループは、地震、台風、パンデミック等の各種災害による損害を最小限に抑えるため、国内主要拠点における事業継続計画を策定し、定期的に訓練を実施する等有事の対応力強化に努めるとともに、緊急時に役職員(家族を含む)の安否を確認するための「安否確認システム」を導入・運用しているが、想定外の大規模な人的・物的被害が発生した場合には、事業活動の停止により、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に悪影響を与える可能性がある。
(3) 重要な訴訟等
当社が、当社連結子会社Hitachi Zosen U.S.A. Ltd.(以下、HZUSAという。)経由で、米国の土木建設会社JVに納めたシールド掘進機が、掘削工事中に停止した。同掘進機の修理を行い2017年4月に掘削を完了したが、この事態に関して、当該JVが提起した保険金請求権確認訴訟にHZUSAが原告として参加し、他方、当該JVから当社及びHZUSAに損害賠償請求訴訟が提起された。いずれも米国の裁判所で係属中であったが、本損害賠償請求訴訟については、2019年10月4日に当該JVとの間で和解契約を締結し、取り下げられた。当該和解契約には、現在係属中の上記保険金請求権確認訴訟に関する合意条件が含まれるが、当社が将来的に損失を一部回復するか、追加の損失を被るかは、上記保険金請求権確認訴訟の結果次第であり、現時点においてその金額を合理的に見積もることは困難である。詳細な合意条件に関しては、和解契約に秘密保持条項が含まれるため開示は差し控える。
また、国内・海外案件共に予期し得ない事由により、仲裁・訴訟等が提起される場合があり、これらの仲裁や訴訟手続の動向により、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に悪影響を与える可能性がある。
(4) 新型コロナウイルス感染症による影響
新型コロナウイルス感染症が当社グループに及ぼす影響については、環境・プラント部門及びインフラ部門では、公共工事の割合が大きいことや、継続的事業を含む豊富な受注済案件を確保していること、また、政府・地方自治体による外出自粛要請下においても、在宅勤務の活用により営業活動を継続してきたことから、現時点では業績に与える影響は限定的であると考えている。一方で、機械部門では、舶用原動機、自動車用プレス機械及び精密機械等、民需を中心としているため、受注時期の遅れだけでなく、受注案件自体の中止等が予想される。2020年度の計数計画については、現時点で予想される影響を織り込んで作成しているが、新型コロナウイルス感染症による影響が長期化あるいは拡大した場合には、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に悪影響を与える可能性がある。