有価証券報告書

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2020/06/26 13:48
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事業等のリスク

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクには、以下のようなものがある。これらの主要なリスクは、10年以内に顕在化する可能性があり、特に「(1)新型コロナウイルス感染症の感染拡大」及び「(2)三菱スペースジェットの開発遅延」は、既に顕在化し、当社グループへの影響が大きいリスクである。また、これらの主要なリスクの中には、より中長期的な観点で、当社グループを取り巻く事業環境や社会構造の更なる変化をもたらす可能性があるものも含まれており、当社グループは、先々を見据え、そのような動きに対応できるよう、先んじて対策を取っていかなければならないと認識している。
なお、記載事項のうち将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものである。
(1) 新型コロナウイルス感染症の感染拡大
ア.世界的な感染拡大と経済の失速
新型コロナウイルス感染症は、2019年末以降、中国国内での感染を発端として、イタリア、イラン、韓国等での感染者の爆発的増加が報じられた上に、欧州や米国でも急拡大するなど、世界的な感染拡大(パンデミック)に発展している。新型コロナウイルス感染症の感染拡大により、地域封鎖や移動制限といった厳しい公衆衛生上の措置が実施されるなど、各国で経済活動が大きく制限されたことから、世界経済は急激に失速し、また、日本経済も、世界経済と同様に大幅に下押しされる状況となり、いずれの先行きも非常に見通しが悪い状況にある。
イ.経営成績等の状況に与えうる影響
当社グループは、日本のみならず世界各地で事業を展開しており、このような新型コロナウイルス感染症の感染拡大による影響を受けている。当社グループの売上の約3分の2を占めるインフラ関連企業及び官公庁向けの受注品事業では、海外案件を中心に既に受注した案件の進捗遅延による売上計上時期の遅れ、渡航制限やサプライチェーンの停滞、契約交渉や受注プロセスの遅延等の影響が出始めている。また、民間航空機関連事業では、旅客便需要の大幅減少に伴う航空会社の設備投資削減等を受け、当社グループの生産やサービス事業に関して影響を受けている。さらに、自動車関連の中量産品事業では、複数の国・地域で操業停止や生産調整を行っている。その他の中量産品事業でも、サプライチェーンの停滞や操業度の低下といった影響が顕在化してきている。これらの影響を確実に予想することは難しく、かつ、悪化又は長期化するおそれがあり、当社グループの経営成績等の状況に重要な影響を与える可能性がある。
ウ.リスクへの対応策
当社グループは、これらの影響を低減するため、人員対策を含めた固定費の圧縮、従業員の一時帰休、工場稼働率の見直しや生産調整、外部流出費用の削減、投資計画の見直し、余剰リソースの有効活用、各国の助成制度の活用等の対策を進めている。
(2) 三菱スペースジェットの開発遅延
ア.開発遅延と市場の不透明性
三菱スペースジェットの開発は、型式証明取得の遅れにより、全体スケジュールを精査する必要性が生じていたところ、その後の新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴って、最新かつ型式証明可能な機体である飛行試験機10号機の米国へのフェリーフライトの遅れや、米国での飛行試験の実施にも影響が生じたほか、顧客である航空業界各社も深刻な打撃を受けて危機的な経営状況にある。
イ.経営成績等の状況に与えうる影響
三菱スペースジェットの開発については、上記のような事業環境の激変等により、更なるスケジュールの遅延、費用の増加や、事業計画の見直しなどの可能性も否定はできない。これらにより、既に受注した機体の販売契約に関する売上計上時期の遅れや顧客からの契約解除、顧客やパートナー企業その他の関係者からの損害賠償の請求等、当社グループの経営成績等の状況に重要な影響を与える可能性がある。
ウ.リスクへの対応策
当社グループは、これらの影響を低減するため、今後の市場動向を注視しながら関係者との情報共有・関係維持に努めつつ、引き続き開発スケジュールの精査を行うとともに、予算についても適正な規模で推進するなどの対策を進めている。
(3) 各種の災害
ア.自然災害や戦争・テロ等の発生
地震、津波、豪雨、洪水、暴風、噴火、火災、落雷、感染症の世界的流行(パンデミック)等の自然災害の発生や、戦争・テロ、政情不安、反日運動、人質・誘拐等の犯罪、社会インフラの麻痺、労働争議、停電、設備の老朽化・不具合等の人為的な要因により、様々な物的・人的被害が生じ、円滑な経済活動が阻害され、さらには社会基盤が破壊されるといった事態が考えられる。
イ.経営成績等の状況に与えうる影響
当社グループは、製品・サービスを提供するための拠点を世界各地に有しているが、特に日本やタイなどに生産拠点が集中しているため、これらの国・地域において、大規模な地震・津波・洪水といった災害が発生した場合、当社グループの生産能力に重要な影響を及ぼす可能性がある。具体的には、生産設備の毀損・滅失、サプライチェーンの停滞・混乱、生産に必要な材料・部品等の不足やサービスの提供停止、生産拠点の操業低下・稼働停止等のほか、代替となる生産設備や取引先の喪失、損害保険等で補填されない損害の発生等の可能性がある。また、テロや感染症の世界的流行等の突発的な事象の発生は、旅客数の減少といった製品・サービスの需要縮減を招き、民間航空機事業やその他関連事業の損益を大幅に悪化させる可能性がある。これらの影響に伴う受注や売上の減少、生産能力の低下等により、当社グループの経営成績等の状況に重要な影響を与える可能性がある。
ウ.リスクへの対応策
当社グループは、これらの影響を低減するため、災害対策支援ツールの活用、連絡体制・事業継続計画(BCP)の策定・整備、工場の点検や各種訓練の定期的な実施に加え、各国の情勢や安全に関する情報収集等の対策を進めている。
(4) 事業環境の変化
ア.当社グループを取り巻く事業環境の悪化
当社グループを取り巻く事業環境は、非常に速いスピードで変化している。例えば世界経済に関しては、米中貿易摩擦の激化や保護主義的な貿易政策の推進といった経済環境の変化が生じている。また、我が国においては、社会構造の変化として、人口減少・少子高齢化の一層の進展による人材不足の深刻化、廃業の増加、技術・技能の断絶、製造現場の空洞化等が懸念されている。当社グループに密接に関連するものとしては、全世界的に経済発展と環境負荷低減の両立が社会的な課題となっており、様々な分野で環境規制が強化されている。特にエネルギー分野では、新興国経済の発展や電気自動車の普及等をはじめとした電化の進展により、今後、世界の電力需要はますます伸びていく一方、地球温暖化を契機とした低炭素化・脱炭素化の動きが加速していくことが予想されているなど、当社グループの置かれている環境は、大きく変化している。
イ.経営成績等の状況に与えうる影響
火力発電システム、化学プラント、製鉄機械、コンプレッサなどの事業において、環境意識の高まりによって、製品・サービスの需要が減少し、事業規模が縮小する可能性や投下資本の回収が困難となる可能性がある。特に火力発電システム事業は、化石燃料由来の電力需要の低下や競合他社との競争激化の影響も考えられ、これらにより建設工事やアフターサービスなどの受注が減少するおそれがある。さらに、当社グループは、各種製品事業において、他社とのM&A・アライアンスを行っているが、市場環境の変化、事業競争力の低下、他社における経営戦略の見直し、その他予期せぬ事象を理由として、これらのM&A・アライアンスが目論見どおり実現できない場合、資産の評価見直しなどによって、減損損失等を計上する可能性がある。このような事業環境の変化は、当社グループの経営成績等の状況に重要な影響を与える可能性がある。
ウ.リスクへの対応策
当社グループは、これらの影響を低減するため、性能・信頼性・価格面の競争力を向上させるべく、研究開発や設備投資を通じた製品競争力の維持・強化を図っている。また、社外の知見も取り入れて市場の動きを先取りした新たな機能やソリューションの提案に注力している。さらに、2020年4月に成長推進室を設置し、既存の事業部門では対処しにくい新しい領域の事業開拓や既存事業の組合せを通じた事業開発等の対策を進めている。
(5) 製品関連の問題
ア.製品・サービスに関連する品質・安全上の問題、コスト悪化等
当社グループは、ものづくりとエンジニアリングのグローバルリーダーとして、造船をはじめ、交通・輸送システム、民間航空機、発電システムなどのインフラ、宇宙システムなど、幅広い分野で高度な技術力を活かしてソリューションを提供している。当社グループは、製品の品質や信頼性の向上に常に努力を払っているが、製品の性能・納期の問題や製品に起因する安全上の問題が生じる可能性がある。また、製品の仕様変更や工程遅延等に起因するコスト悪化、材料・部品等の調達や工事に伴う予期しない問題の発生、納期遅延や性能未達による契約相手方からの損害賠償請求等、契約相手方の財務状況の悪化等の問題が生じる可能性がある。また、サプライヤーとの間でも、製品・サービスなどに起因して、これらと同様の問題が発生する可能性がある。
イ.経営成績等の状況に与えうる影響
このような製品関連の問題発生等を理由として、韓国における蒸気タービン発電設備の事故に関する顧客との仲裁のように、契約相手方やその他第三者からの国内外での損害賠償請求等を契機に訴訟等を提起されることがあり、当社グループは、これらの訴訟等に対応している。訴訟等においては、当社グループの主張が認められるように最大限の対応を取っているものの、当社グループにとって不利な判断が下される可能性は否定できない。また、当社グループが最終的に支払うべき賠償額等の負担が、各種の保険で必ずしも補填されるとは限らない。このように製品関連の問題は、当社グループの経営成績等の状況に重要な影響を与える可能性がある。
ウ.リスクへの対応策
当社グループは、これらの影響を低減するため、適切な品質の管理及び安全性の確保に取り組むとともに、事業リスクグローバルポリシーや各種規則の制定・運用、事業リスクマネジメント体制の整備・強化、個別案件の事前審議や受注後のモニタリング、事業部長クラスへの教育の実施、製品安全に関する講座の継続的な開催等の対策を進めている。
(6) 知的財産関連の紛争
ア.当社グループの知的財産に対する侵害、当社グループによる第三者の知的財産に対する侵害等
当社グループは、研究開発の成果である知的財産を重要な経営資源の一つと位置づけ、この経営資源を特許権等により適切に保護し、グローバルに活用している。また、第三者の知的財産は、これを尊重し、当社グループによる侵害回避に努め、当該第三者から技術導入を行うなどの適切な対応を取っている。しかしながら、当社グループの取組みに反して、第三者から知的財産を侵害していると主張されるような事態が生じる可能性がある。また、第三者が権利を有する技術を必ず当社グループが利用できるという保証はない。
イ.経営成績等の状況に与えうる影響
当社グループの知的財産の利用に関して競合他社等から訴訟等を提起されて敗訴した場合、損害賠償責任を負うほか、特定の技術を利用することができなくなり、当社グループの経営成績等の状況に重要な影響を与える可能性がある。また、当社グループが事業遂行のために必要とする技術の権利を第三者が保有している場合に、当該第三者からの技術導入を受けられず、当社グループの事業遂行に支障をきたすおそれがある。
ウ.リスクへの対応策
当社グループは、これらの影響を低減するため、製品の基本計画・設計・製造の各段階で他者が保有する知的財産を十分に調査することによる知的財産関連の紛争の未然防止、教育・人材育成を通じた知的財産部門の専門性向上等の対策を進めている。
(7) 法令等の違反や情報漏洩
ア.重大な法令等の違反、情報セキュリティ問題の発生等
当社グループは、国内外の様々な法令・規制(租税法規、環境法規、労働・安全衛生法規、独占禁止法・下請代金支払遅延等防止法・反ダンピング法等の経済法規、贈賄関連法規、貿易・為替法規、建設業法等の事業関連法規、金融商品取引所の上場規程等をいい、これらを総称して以下「法令等」という。)を遵守し、役員及び従業員にも遵守させなければならず、決してリスクとリターンをトレードしてはならない厳守事項として周知と対策を徹底している。しかし、一部の役員あるいは従業員が法令等の違反を生じさせる可能性は完全には排除できない。また、当社グループは、事業の遂行を通じて、顧客等の機密情報及び当社グループの技術・営業・その他の事業に関する機密情報を保有しており、コンピュータウイルスへの感染や不正アクセスその他の不測の事態により、機密情報が滅失又は社外に漏洩する可能性がある。
イ.経営成績等の状況に与えうる影響
法令等の違反が生じた場合、当局等による捜査・調査の対象となるほか、当局等から過料、更正、決定、課徴金納付、営業停止、輸出禁止等の行政処分若しくはその他の措置を受け、又は当局やその他の利害関係者から損害賠償を請求されるおそれがある。さらに、当社グループの事業遂行が困難となるなどの影響を受ける可能性がある。特に当社グループの事業の性質に鑑み、国内外の独占禁止法、贈賄関連法規、貿易・為替法規、建設業法、下請代金支払遅延等防止法等の違反に関しては、当社グループへの影響にとどまらず、一層重大なものとなる可能性がある。また、情報漏洩が生じると、当社グループの競争力の大幅な低下、社会的評価及び信用の失墜等によって当社グループの事業遂行に重大な影響が生じうる。また、顧客等から損害賠償請求等を受ける可能性がある。このように法令等の違反や情報漏洩は、当社グループの経営成績等の状況に重要な影響を与える可能性がある。
ウ.リスクへの対応策
当社グループは、法令等の違反によるリスクを減らすため、コンプライアンス・情報管理・ブランド戦略等の各種社内教育の充実と継続的な実施、グローバルポリシーや各種規則の制定・運用を行っている。また、サイバー攻撃によるリスクを最小化するため、CTO*直轄のサイバーセキュリティ推進体制を構築し、当社グループのサイバーセキュリティ統制(基準整備・対策実装・自己点検・内部監査)やインシデント対応等の対策を進めている。
* CTO:Chief Technology Officer