有価証券報告書-第203期(平成31年4月1日-令和2年3月31日)

【提出】
2020/06/25 15:19
【資料】
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【項目】
190項目

事業等のリスク

(1)リスク管理に関する当社グループの基本方針
当社グループでは,リスク管理を経営の最重要課題の一つととらえ,グループ全体で強化に取り組んでいます。
リスク管理の基本目的は,事業の継続,役員並びに従業員とその家族の安全確保,経営資源の保全,社会的信用の確保です。そして,次のとおり行動指針を定め,これに沿ったリスク管理を行なっています。
①IHIグループの事業継続を図ること
②IHIグループの社会的評価を高めること
③IHIグループの経営資源保全を図ること
④ステークホルダーの利益を損なわないこと
⑤被害が生じた場合には,速やかに回復を図ること
⑥事態が発生した場合には,責任ある行動をとること
⑦リスクに関する社会的要請を反映すること
(2)当社グループのリスク管理体制
当社グループでは,リスク管理全般にかかわる重要事項を検討する機関として,CEOを議長とするリスク管理会議を設置し,取り組み方針や年次計画,是正措置などの重要事項を検討しています。
重点的に対処すべきリスクを「IHIグループリスク管理活動重点方針」として定め,当社の各部門及び海外を含む関係会社は,この方針に沿って主体的・自立的にリスク管理活動を進めています。
グループ全体に共通するリスクについては,主に当社のコーポレート部門から構成されるグループリスク統括部門が専門性を活かした情報提供や教育を実施し,各部門のリスク管理活動を支援しています。また,内部監査部門は,グループのリスク管理体制の整備状況及び運用状況について監査を実施し,適正性確保に努めています。
民間航空機エンジン整備事業にかかわる不適切な品質検査問題を受け,2019年度より,コンプライアンス体制の強化,品質保証体制の強化,事業運営そのもののリスク管理の強化,及び再発防止に向けた取り組みを進めています。また,複数のディフェンスラインによる強固なリスク管理を行なうため,コーポレート部門・事業領域・事業部門(関係会社を含む)の役割と責任を明確化し,3段階のリスク管理体制を構築しました。関係会社を含む事業部門は,第1段階としてリスクの特定と直接対応にあたります。事業領域は,第2段階として,第1段階のリスク管理活動に対する監視及び指示と,新しいリスクの予兆検知を担当します。当社のコーポレート部門は,第3段階として,第1・第2段階によるリスク管理活動に対する評価及び助言,未認識リスクへの注意喚起,新しいリスクの予兆検知,発生したリスク事象の水平展開を担当します。
(3)2020年度のリスク管理活動
2020年度の「IHIグループリスク管理活動重点方針」では,重点テーマとして,次の事項について注力することとしています。
①コンプライアンスへの取り組みの深化
②品質保証体制の定着
③事業面の重要リスクへの対応力向上
コンプライアンス及び品質保証体制については,2019年度に制定した「IHIグループ行動規範」,「IHIグループ品質宣言」を定着・浸透させる活動により,過去の教訓を風化させない職場環境づくりを進めるとともに,内部通報制度の運営強化などの取り組みを進めています。また,事業面の重要リスクについては,新型コロナウイルス感染拡大による影響への対応を含め,当社グループを取り巻く事業環境が大きく変化していることを鋭敏に捉えた上で,4つの事業領域がそれぞれの戦略を遂行するにあたって阻害要因となるリスクに迅速・的確に対応するべく,重点的な管理を進めています。
また,事業計画に潜むリスクを網羅的に確認するため,100項目を超える事業関連リスクについて,対応計画と実施状況を継続的に評価・確認し,必要に応じてリスク評価を含めた対応計画の見直しを進めています。
(4)事業等のリスク
事業の状況,設備の状況,経理の状況に記載した事項のうち,当社グループの経営成績,株価及び財務状況等に影響を及ぼす可能性のあるリスクには以下のようなものがあります。
文中における将来に関する事項は,当連結会計年度末(2020年3月31日)現在において当社グループが判断したものです。当社グループは,以下のリスクを認識した上で,必要なリスク管理体制を整え,リスク発生の回避及びリスク発生時の影響の極小化に最大限努めています。
なお,2020年1月以降は,世界的な新型コロナウイルス感染拡大により,製造業の一時的な操業停止や,人の往来制限による消費の落ち込みが生じ,国内及び世界各国の経済は急速に悪化し,極めて厳しい状況にあります。特に,世界の旅客需要については,2020年は前年比で約5割減少するとの予測を国際航空運送協会(IATA)が出しており,急激な減少が航空業界に深刻な影響を与えています。また,自動車需要に関しても,2020年の世界自動車販売台数は前年比で約1~2割減少するとの民間調査会社の予測も出るなど,当社グループの主力事業である民間航空機エンジン事業,車両過給機事業において大きな影響を受ける可能性があります。また,その他の事業においても,お客さまの設備投資判断や計画の見直し,需要の落ち込みなどによって影響を受ける可能性があります。
影響が長期に及ぶことが想定される中,その対策として,設備投資・研究開発費等の一時凍結・抑制や,総費用・固定経費,棚卸資産の圧縮,成長分野・ライフサイクル事業への機動的な人材リソースシフトなどに取り組んでいきます。
1.競争環境と事業戦略
当連結会計年度におけるわが国経済は,年度後半までは,設備投資の緩やかな増加や雇用・所得環境の改善に支えられ,総じて安定的に推移しました。世界経済については,全体としては緩やかな成長が続いたものの,中国や欧州の景気に減速傾向がみられたことに加え,米中貿易摩擦,英国のEU離脱問題,地政学的リスクの高まりなど,政治面においても不安定な状況が続きました。
このような事業環境下において,当社グループは,事業の集中と選択,経営資源の集中投入を進めるとともに,グローバルな事業運営を加速しています。しかし,世界経済の成長鈍化,業界再編に伴う競争環境の急激な変化,さらには事業環境の大きな変化などのリスクが顕在化し,競合企業と比較して当社グループの製品・サービスが性能・品質・価格面で十分な競争優位性を得られなくなり,当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
本項目については,当社グループを取り巻く事業環境の大きな変化として,気候変動への対策の動きや脱炭素への世の中の流れが想定以上に加速していること,また新型コロナウイルス感染症による世界経済の先行きに関する不透明感が増していることから,重要度が上昇していると認識しています。
なお,技術トラブルによる建造工程の混乱などにより多額の損失を計上することとなった当社の持分法適用関連会社であるジャパン マリンユナイテッド株式会社については,建造工程の混乱が生じている事業所へリソースを集中投下することで,工程混乱の早期収束と,品質・納期などの正常化を図っております。同社は,厳しい造船市況が続く中,今治造船株式会社との資本業務提携効果を最大限発揮できるよう,技術優位性を活かした環境規制対応,生産効率向上のための抜本的改革,リソースの集約へ向け取り組んでおり,これを加速できるよう当社からも支援を行なってまいります。
2.他社との連携・M&A,事業統合
当社グループは営業協力,技術協力,生産協力や事業合弁の形で多くの他社との共同事業活動を行なっています。また,成長市場への事業展開の加速,要素技術の補完,シナジーの創出などを目的としたM&Aなども有効に活用しています。しかし,経済環境の変化,法的規制,予期せぬ費用増加等の影響により,当初期待された効果を出せない可能性があります。また,当初期待した効果を享受できないと判断された場合は,他社との連携による事業統合の中断,解消を決断する可能性があり,その結果として業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
3.カントリーリスク
当社グループの調達・生産・輸出・販売・建設等の諸活動は,米州やヨーロッパ,アジア・オセアニア地域等グローバルに展開されていますが,それぞれの地域・国において政治・経済の混乱並びにそれに起因する為替取引の凍結・債務不履行・投資資産の接収,想定していなかったテロ・労働争議の発生等のカントリーリスクが存在します。また,政情不安やデフォルト等により事業の継続や拠点経営が困難になる可能性があります。これらリスクに対し,貿易保険の付保徹底やカントリーリスクに関する情報の収集とグループ内の啓蒙に努めてはいますが,リスクが顕在化した場合は当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
また,当社グループの業績等への影響を現時点では見通せないものの,世界的な新型コロナウイルス感染拡大によって各国で様々な影響が生じており,本項目については重要度が上昇していると認識しています。
4.資材調達
当社グループはキーとなる主要部品を自社グループ内で製造するよう努めている一方で,複数のグループ外調達先より原材料・部品・サービスの供給を受けています。主要な原材料・部品の市況動向については日頃から情報収集して安定調達に努めるとともに,調達先の品質・納期等の管理を徹底し,特定の調達先への過度の集中・依存をさけるべく調達先の分散化等を進め,リスクの低減に取り組んでいます。しかしながら,原油・資機材価格等の急激な変動,特殊鋼などの需給バランスの変化や国際情勢の急変に加え,新型コロナウイルス感染拡大に伴う当社グループのサプライチェーン途絶等の問題が生じた場合,コストアップ,品質管理上の問題,納期遅延等の問題が生じる可能性があり,その結果として業績の悪化を招く可能性があります。
本項目については,適切なサプライチェーンの維持・再構築の必要性がこれまで以上に高まっているため,重要度が上昇していると認識しています。
5.保証債務等
当社グループは,事業活動を営む上で必要かつ合理的と確認したものについて,債務の保証等を行なっていますが,経済環境悪化の長期化や事業の失敗等により債務者の財務状態が悪化した場合,保証の履行を債権者より求められる可能性があります。保証債務等に係る情報は第5「経理の状況」1「連結財務諸表等」の「注記事項」(連結貸借対照表関係)に記載しています。
6.受注契約
当社グループは,個別にお客さまと受注契約を締結した後に製品を生産する場合が多く,請負金の大きい工事については受注契約締結前に多面的な社内審査を行なっています。しかし,契約締結後に当初想定できなかった経済環境の変化や検討不足,予期しないトラブル,JV等のパートナー企業の経営悪化等により見積コストを上回る工事の発生,お客さまから要求された性能・納期の未達によるペナルティーの支払い,追加費用の発生等の可能性があり,その結果として業績の悪化を招く可能性があります。また,お客さま都合による受注契約の取り消しのケースでは,受注契約条件の中で違約金条項を設定する等そのリスク回避に最大限努力しているものの,必ずしも支出したコストの全額を回収できない可能性があります。
プロジェクトのモニタリングについては,全社レベルのモニタリングの継続・強化,有識者によるリスクレビューの徹底に取り組んでいます。その結果,中小規模案件においては下振れ事案が発生しましたが,大型案件の下振れについては歯止めがかかっています。引き続き徹底したプロジェクト管理を中小規模案件においても強化していきます。
なお,当社グループが北米で遂行中のプロセスプラント案件について,納期の未達によるペナルティーの支払いに関する情報は第5「経理の状況」1「連結財務諸表等」の「注記事項」(連結貸借対照表関係)に記載しています。
7.技術契約
当社グループは,国内外において多岐にわたる機種・技術分野を取り扱うため,他社との間に技術供与・導入に関する契約を締結する場合があります。締結前には,当社グループに不利若しくは履行不能な条件が無いか,必要条件の欠落が無いか等,十分な社内審査を行なうよう努めています。しかし,事前の検討不足や契約条件の理解不足等により計画を超える保証・補填・ペナルティーが発生する,あるいは事業上の制約を受ける等の可能性があり,その結果として業績の悪化を招く可能性があります。
8.生産・製造
当社グループは第3「設備の状況」の2「主要な設備の状況」にあるとおり,各地に生産拠点を有しますが,生産施設に影響を及ぼす自然災害,新型コロナウイルス感染症などの感染症の拡大に伴う生産遅延・停止・サプライチェーンの途絶,停電,あるいは生産活動に影響を与える資機材の入手困難,電力制限が,事業継続計画(BCP)の想定範囲を超える可能性があります。また,生産量が当社グループの想定以上に急激に変動した場合,生産能力調整が十分にできない可能性もあります。これらの結果,業績の悪化を招く可能性があります。
本項目については,サプライチェーンの維持を含めた適切なBCP再構築の必要性がこれまで以上に高まっているため,重要度が上昇していると認識しています。
9.品質保証
当社グループは,調達品等の品質不良・不具合の発生防止を含め,製品の品質確保に努めるとともに,お客さまに安全に使っていただくため,製品安全・機械安全を確保するよう設計時のリスクアセスメントの徹底及びお客さまへの注意喚起と情報提供に努めています。また,当社グループの製品は,品質や安全に関するさまざまな法的規制による制約を受けているため,これらの規制の遵守に努めるとともに,製造物責任賠償保険(P/L保険)に加入する等の対策を講じています。しかし,大規模な事故やクレームの発生及び製造物責任賠償につながるような製品の欠陥は,多額のコストに加えて当社グループの社会的評価に重大な影響を及ぼすことが考えられ,これによって当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
10.知的財産
当社グループは保有する知的財産の適切な保全(特許・実用新案・先使用権の取得)に努めています。しかし,機種や技術分野は多岐にわたるため,第三者による当社グループ製品・技術の模倣や解析調査等技術的に当社グループに影響を与えるような動きを完全に防止することが困難な場合があります。
また,当社グループが将来に向けて開発している製品・技術が,意図せず他社等の知的所有権を侵害してしまう場合や,従業員の発明に対して適切な対応を行なわない場合に損害賠償等を求められ,当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
11.研究開発
当社グループの研究開発活動に係る情報は第2「事業の状況」の5「研究開発活動」に記載されています。これら研究開発活動は事業の性格上,多額の投資とともに長期の開発期間が必要とされるという特性があります。そのため,実用化機会の逸失や事業戦略・市場動向との不整合等により十分な成果に結びつかず,当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
12.法令・規制
当社グループは,グローバルに事業の展開を進める上で,日本のみならず各国・各地域の各種法令,行政による許認可や規制の制約を受けており,その遵守に努めています。こうした法令等に強化や改正が生じた場合,それらへの対応コストが当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。一方,各種法令等に対する理解が不十分,又は予期せぬ変更への対応が適切でない場合等に各種法令等に違反したと判定され,過料や課徴金,追徴課税等による損失や営業停止等の行政処分によって機会逸失を被る,あるいはそれに伴う社会的評価の低下によって当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
係争中の訴訟案件のうち,当社グループの経営に重大な悪影響を及ぼす可能性のある訴訟は存在しないものと認識しています。しかしながら,現時点で認識していない想定外の訴訟が発生した場合,当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
13.情報システム
当社グループは,技術情報及び事務管理情報のデータ処理のために多額の投資を行なっています。これらシステムの運用並びに導入・更新に際しては,システムトラブルや情報の外部漏洩が発生しないよう最大限の対策を講じていますが,外部からのコンピュータウィルスの感染やハッキングの被害,ホストコンピュータ・サーバ・ネットワーク機器の障害や紛失・盗難,ソフトウエアの不備等によるシステム障害の発生と業務停止,情報流出等の事態が発生する可能性があり,それに伴い当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
本項目については,近年サイバー攻撃が巧妙化している中で,新型コロナウイルスの感染拡大を契機にテレワークが急拡大したこともあり,情報流出などの脅威が増大していることから,重要度が上昇していると認識しています。
14.安全衛生
当社グループは事業所及び建設現場における安全衛生管理には万全の対策を講じていますが,万一不測の事故・災害等が発生した場合には,生産活動に支障をきたし,業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。当社グループは,各種損害保険等に加入する等の対策を講じていますが,大規模な事故や災害が生じた場合,損害の全てを保険求償できない可能性があります。
また,新型コロナウイルス感染拡大の第2波以降への備えも必要であることから,本項目については重要度が上昇していると認識しています。
15.環境保全
当社グループには,製造工程で,大気・水質・土壌汚染等の原因となりうる物質を使用している事業所・子会社等があります。これらの物質の管理には万全の注意を払い,万一外部に漏洩した場合においてもその拡大を最小限に抑えるための対策を講じています。しかしながら,想定外の事態が発生した場合には,社会的評価の低下を招くとともに損害賠償責任が生じ,当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
16.災害・システム不全
当社グループは,伝染病・感染症の世界的流行(パンデミック),地震・洪水等の大規模災害,テロ等の犯罪行為,情報システムの機能不全等によって業務遂行が阻害されるような事態が生じた場合であっても,その影響を最小限に抑えるべく,事業継続計画(BCP)の整備,非常時を想定した訓練等を実施しています。しかし,想定規模を超える災害やシステム不全が発生した際には事業を適切に遂行できず,当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
本項目については,台風等の自然災害が多発しており,当社グループの拠点においても被害が発生していること,及び新型コロナウイルス感染症による業務遂行への影響が拡大していることから,重要度が上昇していると認識しています。
17.為替動向
外貨に対して円が上昇した場合は外貨建輸出工事における円換算後の入金額は目減りし,下落した場合は現地通貨建の海外調達において円換算支出額の増加を招く等,業績に影響を及ぼします。そのため,外貨建資産と負債のポジションの不均衡に対して,一定の方針に基づき為替予約やマリーの徹底によるリスクヘッジに努めていますが,想定以上の為替変動が発生した場合には,当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
18.金利動向
金利が上昇した場合,当社グループの支払利息が増加し金融収支が悪化します。また,財務活動において借入,又は社債発行の条件が悪化する可能性があり,資金調達に悪影響を与え,ひいては当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
19.資金調達・格付
当社グループの借入金にはシンジケート・ローンが含まれており,自己資本と利益に関する財務制限条項が付されています。業績の悪化等により同条項に抵触した場合,同ローンの借入れ条件の見直しや期限前弁済義務が生じる可能性があり,当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
また,格付機関が当社グループの格付を引き下げた場合,当社グループの財務活動において不利な条件で取引をせざるを得ない,あるいは一定の取引ができなくなる可能性があり,資金調達に悪影響を与え,ひいては当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
なお,新型コロナウイルス感染拡大に伴う世界的な経済活動の停滞を背景に,当社グループにおいても資金調達の厳しさが増す可能性があり,本項目については重要度が上昇していると認識しています。これに対しては,社債等の発行や追加借り入れの実施により,十分な手元流動性の確保に努めるとともに,足元の設備投資・研究開発費等の一時凍結・抑制も行なっています。
20.税務
繰延税金資産の計算は,将来の課税所得に関する予測・仮定を含めて個別に資産計上・取崩を行なっていますが,将来の課税所得の予測・仮定が変更され,繰延税金資産の一部ないしは全部が回収できないと判断された場合,当社グループの繰延税金資産は減額され,その結果,当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
また,国境をまたぐ当社グループ会社間の取引価格の設定においては,適用される移転価格税制の遵守に努めていますが,税務当局から取引価格が不適切であるとの指摘を受けた場合,追徴課税や二重課税が生じることにより,当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
21.与信管理
当社グループは,世界中のお客さまに製品・サービスを提供しており,その多くが掛売り又は手形取引となっています。当社はこれに対し,グループ全体で与信管理体制の強化と債権保全の徹底に努めているものの,重要なお客さまが破綻し,その債権が回収できない場合には,当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
22.人材育成
当社グループの将来の成長,技能の伝承は従業員の能力による部分が大きく,高い技術力と技量を有する従業員の確保及び技能の伝承は,当社グループの経営課題の一つです。このようなキーパーソンとなりうる人員を確保あるいは育成できなかった場合には,当社グループの将来の成長,業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。また,改正労働施策総合推進法が施行されたことなどを踏まえ,当社グループでは,教育研修・モニタリングの継続・強化と,ハラスメント問題を発生させない従業員意識の醸成と職場の構築に取り組んでいます。さらに,新型コロナウイルス感染拡大を契機に,テレワークなどを中心にこれまでの就業スタイルを大きく変える取り組みを加速しておりますが,そのような状況下での人材育成方法についても合わせて検討してまいります。
第2「事業の状況」の1「経営方針,経営環境及び対処すべき課題等」に示す「グループ経営方針2019」における経営戦略の推進にあたり,関連するリスク項目は以下表のとおりです。(関連性がある項目に“○”を表示しています。)
また,上記22項目のリスクの中で前連結会計年度から,新型コロナウイルス感染拡大の影響含め,重要度が上昇しているリスク項目についても以下の表に示しています。
リスク
項目
経営戦略の推進にあたり関連する項目重要度が上昇
している項目
お客さまと共に
ライフサイクル視点で
アフターマーケット事業
展開を加速
リーン&フレキシブルな
経営体質への変革
価値創造に向けた
ビジネスモデル変革
の推進
1.競争環境と事業戦略
2.他社との連携・M&A,
事業統合
3.カントリーリスク
4.資材調達
5.保証債務等
6.受注契約
7.技術契約
8.生産・製造
9.品質保証
10.知的財産
11.研究開発
12.法令・規制
13.情報システム
14.安全衛生
15.環境保全
16.災害・システム不全
17.為替動向
18.金利動向
19.資金調達・格付
20.税務
21.与信管理
22.人材育成