訂正内部統制報告書-第116期(平成26年4月1日-平成27年3月31日)

【提出】
2019/05/14 16:37
【資料】
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財務報告に係る内部統制の基本的枠組みに関する事項

取締役社長カルロス ゴーン及び最高財務責任者ジョセフ ピーターは、当社の財務報告に係る内部統制の整備及び運用に責任を有しており、企業会計審議会の公表した「財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準並びに財務報告に係る内部統制の評価及び監査に関する実施基準の設定について(意見書)」に示されている内部統制の基本的枠組みに準拠して財務報告に係る内部統制を整備及び運用している。
なお、内部統制は、内部統制の各基本的要素が有機的に結びつき、一体となって機能することで、その目的を合理的な範囲で達成しようとするものである。このため、財務報告に係る内部統制により財務報告の虚偽の記載を完全には防止又は発見することができない可能性がある。

評価の範囲、基準日及び評価手続に関する事項

財務報告に係る内部統制の評価は、当事業年度の末日である平成27年3月31日を基準日として行われており、評価に当たっては、一般に公正妥当と認められる財務報告に係る内部統制の評価の基準に準拠した。
本評価においては、連結ベースでの財務報告全体に重要な影響を及ぼす内部統制(全社的な内部統制)の評価を行った上で、その結果を踏まえて、評価対象とする業務プロセスを選定している。当該業務プロセスの評価においては、選定された業務プロセスを分析した上で、財務報告の信頼性に重要な影響を及ぼす統制上の要点を識別し、当該統制上の要点について整備及び運用状況を評価することによって、内部統制の有効性に関する評価を行った。
財務報告に係る内部統制の評価の範囲は、会社並びに連結子会社及び持分法適用会社について、財務報告の信頼性に及ぼす影響の重要性の観点から必要な範囲を決定した。財務報告の信頼性に及ぼす影響の重要性は、金額的及び質的影響の重要性を考慮して決定しており、全社的な内部統制の評価結果を踏まえ、業務プロセスに係る内部統制の評価範囲を合理的に決定した。
業務プロセスに係る内部統制の評価範囲については、各事業拠点の前連結会計年度の売上高(連結会社間取引消去後)の金額が高い拠点から合算していき、前連結会計年度の連結売上高の概ね2/3に達している事業拠点を「重要な事業拠点」とした。選定した重要な事業拠点においては、企業の事業目的に大きく関わる勘定科目として売上高、売掛金及びたな卸資産に至る業務プロセスを評価の対象とした。
さらに、選定した重要な事業拠点にかかわらず、それ以外の事業拠点をも含めた範囲について、重要な虚偽記載の発生可能性が高く、見積りや予測を伴う重要な勘定科目に係る業務プロセスやリスクが大きい取引を行っている事業又は業務に係る業務プロセスを財務報告への影響を勘案して重要性の大きい業務プロセスとして評価対象に追加している。

評価結果に関する事項

下記に記載した財務報告に係る内部統制の不備は、財務報告に重要な影響を及ぼす可能性が高く、開示すべき重要な不備に該当すると判断した。したがって、当事業年度末日時点において、当社の財務報告に係る内部統制は有効でないと判断した。

1.経緯
当社は、内部通報を受け、(a)当社元代表取締役兼会長であるカルロス・ゴーン氏(以下「ゴーン氏」といいます。)、元代表取締役グレッグ・ケリー氏(以下「ケリー氏」といいます。)及び両名に協力していた可能性がある者による重大な不正行為、並びに、(b)その他当社の役員報酬等の開示を含む財務報告の正確性に影響し得る事実関係(以下「本事案」と総称します。)に関する社内調査を行ってきました。
調査の結果、当社の役員報酬等の開示においてゴーン氏をはじめとする役員報酬等が過少に計上された他、ゴーン氏による会社資金・経費の私的目的の流用、予算外の支出を管理するための制度である「CEO リザーブ」を利用した不透明な支出等の事実が明らかになりました。
これを受け、当社は、平成18年3月期乃至平成30年3月期の各年の有価証券報告書における役員報酬等の開示について訂正報告書を令和元年5月14日に提出しました。
【本事案による訂正の内容】
・本事案に関連して平成31年3月期の財務情報に織り込んだ過年度に計上されていない費用の一括修正
・役員報酬等の開示に関する平成18年3月期乃至平成30年3月期の各年の過年度訂正
2.上記経緯に対する当社の認識
上記訂正報告書を提出するに至った経緯の背景は、当社の全社的な内部統制に重要な不備があったことと認識しております。当社の内部統制の最終的な責任者であるゴーン氏が自ら内部統制を無効化させたこと、当該無効化された内部統制により不適切な開示に至ったことを重く受け止めております。
その背景には、ゴーン氏への人事・報酬を含む権限の集中にありました。具体的には、代表取締役であるゴーン氏に対して権限が集中していた状況下、ゴーン氏が適切な経営理念や倫理規程から逸脱する行動が行える環境にあった、取締役会の監督機能が一部有効に機能していなかった、特定の管理部署がブラックボックス化し牽制機能が一部有効に機能しなかった、という不備があります。
これらの不備により、ゴーン氏に対する多額の報酬について額が確定していたにもかからず、その一部の金額を隠蔽して、役員報酬等の額が●億円、過少に計上されました。
また、人事本部、CEO オフィス、秘書室、法務室、内部監査室等の特定の管理部署の権限を、ケリー氏をはじめとする特定少数の者に集中させることで、これをブラックボックス化させ、会社資金・経費の利用に関する牽制機能が一部有効に機能しなかったことから、ゴーン氏による会社資金・経費の私的目的の流用がなされました。
なお、CEOリザーブ制度については、決裁権限規程に則り該当部署は申請手続を行い適切な承認手続を得る仕組みとして構築されておりました。しかしながら、CEOリザーブからなされた一部の支出については、支出の目的の適正性について実質的な検討をしておらず、虚偽の理由による申請の元に支払の承認がなされており、牽制機能が一部有効に機能しておりませんでした。
なお、当社では、全ての決裁権限が決裁権限規程により明記されています。当該規程は厳しく運用されており、それに反して資金を使用するのは困難であり、ゴーン氏が自己の利益のために使用できる資金は秘書室予算、CEOリザーブおよび一部の関連会社からの支出に限られていました。当社は、上記の重要な不備に起因する事実以外に財務報告の信頼性を損なう事実は認識しておりません。
以上のことから、本事案経営者による内部統制の無効化によるものであり当社の全社的な内部統制において、財務報告に重要な影響を及ぼす可能性があり、上記の不備は開示すべき重要な不備に該当すると判断しました。なお、上記の財務報告に係る内部統制の開示すべき重要な不備については、訂正事項の判明が当該事業年度の末日以降であったため、当該事業年度の末日までに是正することができませんでした。
3.是正への取り組み
当社としては、財務報告に係る内部統制の重要性を認識しており、開示すべき重要な不備を是正するために、以下の取り組みを実施いたしました。
1.不正を行った代表取締役2名の解任
2.代表取締役への他の取締役の報酬配分を決定する権限の付与の停止
3.当社の取締役会の事前承認を受けない子会社・関連会社からの報酬受取りの禁止
4.CEOリザーブの廃止
5.取締役会での活発な議論のためのプレミーティングの実施
6.取締役及び執行役員への行動規範教育の徹底
また同時に、さらなる是正への取り組みとして以下の対応策に着手しており、早期に完了いたします。
1.会計処理と役員報酬の明細情報の突合等、役員報酬に関する適正な会計処理のための管理体制の強化
2.株価連動型インセンティブ受領権の行使による利益を、役員報酬として追加開示することを含む適正な役員報酬開示のための管理体制の強化
3.取締役会・エグゼクティブコミッティから経理部へ新規会社設立の提案に関する情報提供プロセスの構築
4.定款改定等、指名委員会等設置会社への移行推進
上記に加え、財務報告に係る内部統制の改善を継続的に図るため、ガバナンス改善特別委員会の提言を真摯に受け止め、以下の改善策にも取り組みます。
1.取締役会の構成・機能の強化
2.指名委員会等設置会社への移行
3.内部監査による監督機能の強化
4.企業倫理の再構築
5.社内の部署の機能・権限見直し
6.内部通報制度の改革