有価証券報告書-第118期(平成28年4月1日-平成29年3月31日)

【提出】
2017/06/29 9:53
【資料】
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【項目】
144項目

研究開発活動

当社グループは、将来にわたって持続性のある車社会の実現に向けて、環境や安全など様々な分野での研究開発活動を積極的に行っている。
当連結会計年度における当社グループ全体の研究開発費は4,904億円であった。
当社グループの研究開発体制及び活動成果は次のとおりである。
(1) 研究開発体制
当社グループの日本における研究開発は、日産テクニカルセンター(神奈川県厚木市)を中心に車両開発を日産車体(株)、(株)日産テクノ、日産ライトトラック(株)、ユニット開発を愛知機械工業(株)、ジヤトコ(株)などの関係各社が担当し、当社と密接な連携のもとで推進している。
米欧地域においては、米国の北米日産会社、メキシコのメキシコ日産自動車会社、英国の英国日産自動車製造会社、スペインの日産モトール・イベリカ会社において、一部車種のデザイン及び設計開発業務を行っている。また、米国の日産総合研究所シリコンバレーオフィスにおいて、自動運転車両の研究、最先端のICT(Information and Communication Technology)技術開発を行っている。
アジア地域では、中国の日産(中国)投資有限公司、東風汽車集団股份有限公司との合弁会社である東風汽車有限公司、台湾の裕隆汽車製造股份有限公司との合弁会社である裕隆日産汽車股份有限公司、タイのアジア・パシフィック日産自動車会社及びインドのルノー日産テクノロジー&ビジネスセンターインディア社において一部車種のデザイン及び設計開発業務を行っている。
また、南米地域のブラジル日産自動車会社、南アフリカの日産サウスアフリカ会社においても現地生産車の一部開発業務を行っている。
ルノーと当社は、経営資源の効率的な活用を目指し、両社間で行う次世代技術の研究領域における役割を分担し、共通プラットフォームの採用、共通パワートレイン戦略の策定・実行、そして世界中の実験施設の適正化を加速させている。また、ダイムラーとの戦略的協力関係においては、パワートレインやプラットフォームの共用に取り組んでいる。
(2) 新商品の開発状況
国内にて、同一車線自動運転技術「プロパイロット」搭載の新型「セレナ」を発売、「ノート」にe-POWERモデルを追加した。海外では、北米において新型「アルマーダ」、欧州において新型「マイクラ」、中国において新型「ティーダ」、ヴェヌーシアブランドからSUV「T90」、南米ではクロスオーバー「キックス」を発売した。また、インフィニティブランドから新型「Q60」を発売、ダットサンブランドからアーバンクロス「redi-GO」を発売した。
(3) 新技術の開発状況
環境面においては、中期環境行動計画「ニッサン・グリーンプログラム2016」の3つの重点領域である、「低炭素化」「再生可能エネルギーへの転換」「資源の多様化」を推進するための活動として「ゼロ・エミッション車の普及」「低燃費車の拡大」「カーボンフットプリントの最小化」「新たに採掘する天然資源の最小化」「環境マネジメントの推進」という5つのテーマを掲げ、技術開発を行っている。
「ゼロ・エミッション車の普及」では、48ヵ国・地域に投入されている「日産リーフ」の販売台数は着実に増加している。2017年3月時点で、「日産リーフ」のグローバル累計販売台数は26万台を突破、「e-NV200」とヴェヌーシア「e30」を含めた電気自動車全体のグローバル累計販売台数では28万台を超えた。2015年度には航続距離280km(JC08モード)を実現する容量30kWhのリチウムイオンバッテリーを搭載した「日産リーフ」が日本、米国、欧州で販売された。加えて日産の電気自動車2車種目の「e-NV200」が、2017年3月現在、欧州や日本を含む26ヵ国で発売されている。スペインのバルセロナやオランダのアムステルダムでは「e-NV200」タクシーが運行を始めており、日本でも都市部の貨物配送事業者や地方自治体などさまざまなビジネスシーンで使用されている。
EVが送電網(グリッド)とつながり社会と融合することは、エネルギー供給のグリッド全域での最適化に貢献する。現在日本では、「Vehicle to Home(V2H)」の取り組みとして、5,800世帯以上が家庭のエネルギー消費の管理にEVを活用している。また日本と欧米では、「Vehicle to Building(V2B)」の取り組みとして、数百台のEVが建物への電力供給に利用されている。
一方、「低燃費車の拡大」では、日本、中国、欧州、米国で販売する日産車の燃費改善を進めている。「リチウムイオンバッテリー」「インテリジェントデュアルクラッチコントロールハイブリッドシステム」「エクストロニックCVT(無段変速機)」の3つをコア技術と位置づけ、車室内空間、用途、価格を考慮しながらクルマに最適な低燃費技術を採用し市場に投入する。2016年度は、中国に投入した「マキシマ」、「ティーダ」がクラストップとなる燃費(*1)を実現した。日本に投入した「ノート e-POWER」では、100%モーターで動力を制御し、エンジンは発電のみに特化することで最も効率の良い運転条件で発電が可能となり、クルマが使われる頻度の高い市街地走行時において従来型ハイブリッドシステム車に対し、クラストップの燃費(*2)を実現している。
燃費向上のための車両軽量化も推進している。日産は、高強度と高成形性を両立できる世界初1.2G級を含めた高張力鋼板への置換によって、薄肉化による軽量化を実現している。これまでに発売したインフィニティ「Q50」(日本では「スカイライン」)、北米「ムラーノ」に続き、2016年にはインフィニティ「Q60」にも高張力鋼板への置換を拡大した。この高張力鋼板への置換を今後も推進し、2017年以降発売する新型車で高張力鋼板の適用率を25%まで拡大していく計画である。
安全面においては、日産車がかかわる死者数を2015年までに1995年比で半減させることを目指し、日本、米国、欧州(英国)で達成している。現在は、2020年まで日本、米国、欧州(英国)でさらに半減させるという高い目標に向かって活動を続けており、死者数を実質ゼロにすることが日産の究極の目標である。目標の達成に向けて、事故そのものの削減が重要と考え、「クルマが人を守る」という考え方“セーフティ・シールド”に基づき、人を危険に近づけないようクルマがサポートする技術開発を進めている。特に前方車両との衝突回避を支援する「エマージェンシーブレーキ」の採用拡大を進めており、2015年度末時点で、日本国内のほぼすべてのカテゴリーで搭載を完了するとともに、主要車種への標準装備も完了した。加えて、ビジネスをサポートする商用車についても、積極的に先進安全装備を採用することで、事故の低減によるドライバーの安全確保に取り組んでいる。2015年2月の「NV100クリッパー」、2016年1月の「NV350キャラバン」に続き、2016年11月には「NV150AD」に「エマージェンシーブレーキ」を採用拡大した。
米国では、米国新車アセスメントプログラム(US-NCAP)にてインフィニティ「QX60」、日産「アルティマ」「マキシマ」「パスファインダー」が最高評価となる5つ星を獲得した。米国道路安全保険協会(IIHS)にて、日産「アルティマ」「マキシマ」「ローグ」が最高評価となる「2017トップセーフティピックプラス(TSP+)」を獲得した。欧州では、欧州新車アセスメントプログラム(ユーロNCAP)にて、インフィニティ「Q30」が最高評価となる5つ星を獲得した。
さらに、交通事故低減に大きな効果が期待できる自動運転技術の投入スケジュールを発表し、2016年8月には、高速道路上の単一レーンの自動運転技術「プロパイロット」を新型「セレナ」に搭載した。「プロパイロット」は、渋滞走行と長時間の巡航走行の2つのシーンで、アクセル、ブレーキ、ステアリングのすべてを自動で制御し、ドライバーの負担を軽減する。新型「セレナ」における、2016年8月の発売から2017年2月末までの「プロパイロット」装着率は56%で、約3万6,000台が同技術搭載車となっている。2018年には高速道路上の複数レーンで危険回避や車線変更を自動的に行う自動運転技術を投入する予定である。2020年には、十字路や交差点を含む一般道でドライバーの操作介入なしに走行できる自動運転技術を導入する予定である。また、2015年10月より、国内と米国において高速道路・一般道を含むルートを目的地まで自動運転で走行する実験車両での公道テストを開始した。
当社グループは、今後も競争力のある商品、将来に向けた先端技術等のための研究開発活動に積極的に取り組んでいく。
*1: 発売時点。「マキシマ」は、7.8L/100km、「ティーダ」は、5.3L/100km(中国基準)
*2: 発売時点。「ノート e-POWER S」は、37.2km/L(日本基準)