有価証券報告書-第95期(平成28年4月1日-平成29年3月31日)

【提出】
2017/06/23 12:54
【資料】
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【項目】
61項目

研究開発活動

(1)目 的
当社では、市場からの要求や将来を展望した戦略を実現させていくために、「KYBグループ機能一体活動により、世界のお客様の信頼と受注を獲得 A GLOBAL KYB – CHALLENGE & INNOVATION –」のスローガンの下、研究開発活動を精力的に推進しています。
現行製品の性能向上はもとより、高機能化やシステム化への対応、及び軽量化や省エネルギー、環境負荷物質削減などを通して世界中の至るところで地域の人々の暮らしを支え、安心・安全・快適さを提供するために製品開発を進めるとともに、これらを支える生産技術力の強化も図っています。また、グローバル化の加速に伴い、国際感覚を身につけた人財の育成や標準化されたマネジメントシステムの構築を進め、グローバル生産・販売・技術の一体活動でイノベーションを起こすことによってKYBの新しい価値を創造し、業界No.1、企業価値の向上、持続的成長という次なるステージへの成長を目指します。
(2)体 制
当社では、基盤技術研究所と生産技術研究所を中核として、独創性に優れた先行技術の研究開発を行っています。
製品開発においては、研究所が基礎研究や要素技術開発を、各事業の技術部門は新製品、及び性能向上や低コスト化など商品力向上のための開発を担うとともに、全社を横断して研究所と技術部門が一体となったプロジェクト活動も実施しています。また電子機器については、設計・評価技術を電子技術センターに集約することで開発力を高め、製品開発から試作評価、そして量産までをスムーズかつスピーディに実施できるような体制を整えています。更にモノづくりにおいては、生産技術研究所ならびに各工場で培われたノウハウを工機センターに集約し、先進性にあふれ、信頼性の高い設備や治工具の内製化を強力に推進しています。
当社グループを構成する関係会社は、主に自動車機器・油圧機器・電子機器の製造販売を行っています。関係会社では現行製品の改良開発を主軸にしていますが、課題の解決にあたっては当社の2つの研究所や2つのセンター、各技術部門が支援する体制をとっています。
製品の高機能化・システム化に対しましては、独自開発に加えて、顧客あるいは関連機器メーカーとの共同研究開発を推進しています。また、産学交流による先端技術開発にも積極的に取り組んでいます。
(3)成 果
当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発活動の金額は76億21百万円であります。
① AC(オートモーティブコンポーネンツ)事業
AC事業本部は、2017年4月1日付で各事業(製品群)の責任者及び利益責任を明確にするとともに、組織を細分化することで管理レベルの向上と意思決定、戦略実行のスピード向上を図ることを目的として、サスペンション事業部・ステアリング事業部・モーターサイクル事業部に小事業化し、開発から製造、品質管理、販売に至るプロセスを全てカバーできる体制を整え、世界のお客様からの信頼と受注の獲得を目指します。
また、モータースポーツ部を新設してモータースポーツ活動の一層の強化を図り、技術の向上、技術者の育成、KYBブランドの認知度向上に繋げて行きます。
サスペンション事業部(四輪車用緩衝器)の製品開発においては、電子制御を用いてリアルタイムに減衰力(地面からタイヤを介して衝撃を吸収する力)を変化させて乗り心地と操縦安定性を両立させるセミアクティブサスペンション用緩衝器の量産を開始しています。また、欧州のお客様から緩衝器に加え制御ソフトウエアと電装系制御機器を含むシステムを受注し、KAMS(KYB Advanced Manufacturing Spain, S.A.U.)で生産準備を進めています。生産技術開発の分野では、軽量化のために主要構成部品であるピストンロッド(軸部品)を中空化したストラット式ショックアブソーバの量産を開始しています。この内製化ラインには製造品質のリアルタイム監視システムを組み込み、高い生産性と安定した品質を実現しています。
ステアリング事業部の四輪車用パワーステアリング機器では、自動運転普及に向け、冗長性を備えた電装品開発を進めています。また、海外特殊車両用でシングルピニオンの電動パワーステアリングを受注し、今後も幅広くステアリング製品の拡販活動を継続してまいります。
モーターサイクル事業部(二輪車用緩衝器)においては、前記の四輪車用と同様な電子制御によるセミアクティブサスペンション用フロントフォーク、及びリヤクッションユニットの開発を進めています。また、2016年はフランスのロードレースチームのTECH3と契約し、Moto2レース全18戦に参戦するとともに、レースのサポートも実施しました。ロードレースのノウハウを蓄え、最高峰のMoto-GPへの参戦復帰に向け活動を継続してまいります。
当セグメントにおける研究開発費の金額は47億70百万円であります。
② HC(ハイドロリックコンポーネンツ)事業
建設機械用油圧機器では、7~9トン油圧ショベル向けに開発したピストンポンプPSVL-84に続き、スプリットフローオープンポンプのPSVD2-42、スプリットフローロードセンシングポンプのPSVL2-42を開発し、株式会社クボタ殿、および中国メーカー(SUNWARD等)への納入を開始しました。これらは、PSVL-84の従来比約7%の効率向上、及び静粛性を維持しつつ、省エネモードと通常モードの設定が可能な2段階の出力特性と、エンジン過負荷防止としてポンプの消費馬力を一定にする馬力制御機能に電磁比例弁で設定を変更できる機能を追加するなど、高機能を付加したポンプです。
また、7~9トン油圧ショベル向け油圧機器として、ポンプ、バルブ、シリンダ、旋回モータ、走行モータのシステムとしてセット供給を可能にするため、油圧式走行モータMAG-50VP-1100Fを開発しました。この走行モータは、従来品と同じ外形寸法ながら20%の出力アップを図るとともに、低コスト化を実現しています。
一方、クローラキャリア向けに油圧ダイレクト制御方式を採用したポンプ・モータ分離型走行用油圧式変速機(HST)を開発しました。ポンプは油圧ダイレクト制御によりエンジン回転数と負荷圧力の両方に対応して走行速度を制御できるため、オペレーターの操作レバーとポンプ斜板を機械的に切り離すことができ様々な制御の設定が可能になりました。更に、スピードセンシングと組み合わせることで、エンジンのトルク性能を最大限に活用した馬力制御を行うことも可能です。モータは自動2速機構を内蔵しており、設定負荷圧力に上昇すると自動的に1速に切替わり、設定負荷圧力以下になると再び2速に切替わります。この機構により変速操作が不要になり、オペレーターの疲労低減や作業効率向上につながります。
当セグメントにおける研究開発費の金額は21億51百万円であります。
③ 特装車両事業、航空機器事業、システム製品および電子機器等
(特装車両事業)
2016年12月から、新構造フレームの開発で80kgの軽量化を実現した軽量型コンクリートミキサ車MR5030Lの販売を開始しました。積載量増大により輸送効率が向上し、都市再開発や2020年東京オリンピック関連工事需要に対応して行きます。
(航空機器事業)
2017年3月に航空自衛隊殿向け次期輸送機C-2の開発が全て完了し、量産初号機が航空自衛隊美保基地に配備されました。当社では、2000年よりC-2に搭載される装備品の開発に着手し、厳しい軽量化等の要求にも対応して製品化を実現しました。脚揚降システムや内舷スポイラシステムといったシステム対応品を含め、多岐に亘る製品群計57アイテムを納入しています。
(システム製品および電子機器等)
電子機器製品では、特殊車両向けに各種入出力信号を制御する車載コントローラの量産を開始しました。また新技術では、低消費電力型の近距離無線規格仕様を採用した通信コントローラを開発しました。この無線規格は手軽に近距離ネットワークを実現できることから、様々な分野への応用が期待されます。
当セグメントにおける研究開発費の金額は7億円であります。