有価証券報告書-第96期(平成29年4月1日-平成30年3月31日)

【提出】
2018/06/22 13:00
【資料】
PDFをみる
【項目】
58項目

研究開発活動

(1)目 的
当社では、モノづくりを通して豊かな社会づくりに貢献する信頼のブランドを確立していくため、「 A GLOBAL KYB – CHALLENGE & INNOVATION –」をスローガンとしてKYBグループ一丸となり研究開発活動を精力的に推進しています。
現行製品の性能向上はもとより、高機能化やシステム化への対応、及び軽量化や省エネルギー、環境負荷物質削減などを通して世界中の至る所で地域の人々の暮らしを支え、安心・安全・快適さを提供するための新製品開発と革新的なモノづくりに挑戦し続けています。また、グローバル化の加速に伴い、国際感覚を身につけた人財の育成やマネジメントシステムの構築も進め、グローバル生産・販売・技術の一体活動でイノベーションを起こすことによってKYBの新しい価値を創造し、企業価値の向上に繋げ、技術の持続的成長を目指します。
(2)体 制
当社では、基盤技術研究所と生産技術研究所を中核として、独創性に優れた先行技術の研究開発を行っています。
研究所では基礎研究や要素技術開発を、各事業の技術部門は新製品、及び性能向上や低コスト化など商品力向上のための開発を担うとともに、全社を横断して研究所と技術部門が一体となったプロジェクト活動も推進しています。また、研究開発からモノづくりまでを無駄なく連続的に、スムーズかつタイムリーに実施していくために、長期的な環境変化とそれに伴う社会ニーズや顧客ニーズの調査、分析、予測に基づいた将来技術のあるべき姿とそこに向けた持続的成長戦略を、ロードマップとして明確に定める活動を進めています。更にモノづくりにおいては、生産技術研究所ならびに各工場で培われたノウハウを工機センターに集約し、先進性に溢れ信頼性の高い設備や治工具の内製化、IoT(Internet of Things)の活用を強力に推進しています。
当社グループの関係会社は、主に自動車機器・油圧機器・電子機器の製造販売、及び製品の改良開発を行っています。そして、課題の解決にあたっては、当社の技術研究所や技術センター、各事業の技術部門が支援する体制をとっています。
製品の高機能化やシステム化におきましては、当社の独自開発に加えて、顧客あるいは関連機器サプライヤとの共同研究開発を推進するとともに、産学交流やオープンイノベーションによる最先端技術開発にも積極的に取り組んでいます。
(3)成 果
当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発活動の金額は81億2百万円であります。
① AC(オートモーティブコンポーネンツ)事業
自動車業界が100年に一度と言われる大変革期を迎える中、AC事業本部(サスペンション・ステアリング・モーターサイクルの各事業部で構成)は、欧州向け自動車用部品の開発機能の拡充を目的に、ドイツミュンヘン市内に欧州テクニカルセンターを設立し、2018年4月3日より業務を開始しました。欧州顧客ニーズをいち早く取り入れた製品開発力を強化し、欧州におけるOEMビジネスの拡充を図るとともに、次世代自動車技術開発に向け、欧州における先行技術情報の収集機能の強化を図ります。
四輪車、及び二輪車用の緩衝器については、乗り心地と車体安定性の更なる向上を目指した高機能化、及び電子制御サスペンションシステム、アルミニウムや樹脂化による軽量化の開発を推進するとともに、サスペンションモジュールやシステム、車両軸での評価技術を強化していきます。
四輪車用電動パワーステアリング機器では、システムの一部に問題が生じたとしても機能停止することなく動作し続けられるよう(フォールトトレラント設計)、冗長性を備えた電装品開発を進めていきます。また、乗用車用以外のカテゴリーでも幅広くステアリング製品の拡販活動を継続していきます。
更に将来の自動運転車に向けては、電子制御サスペンションと電動ステアリングの技術を融合した統合システムの開発を進めていきます。
当セグメントにおける研究開発費の金額は52億58百万円であります。
② HC(ハイドロリックコンポーネンツ)事業
建設機械用油圧機器では、世界TOPレベルの建機メーカーからの受注により、お客様が内製する減速機と組合せ可能な20~36トン油圧ショベル向けの走行用油圧モータを開発しました。36トン系用MSF-170VP-CAは2017年11月より、20トン系用MSF-140VP-CAは2018年3月より量産を開始し、お客様のグローバル各拠点への供給を予定しています。
省エネルギーに対応した製品としては、日立建機株式会社様向けに、機械効率を従来モデルより約9%の向上を実現した20トン系油圧ショベルの走行用油圧モータ(MAG-170VP-4000H)を開発しました。同じく20トン系のハイブリッド機向けには、各部の設計を見直し、圧力損失性能を従来モデルに対して約10%の低減を図ったコントロールバルブ(KVMG-270-HH)を、日立建機株式会社様と共同開発しました。
また、ヤンマー建機株式会社様の8トン系油圧ショベルのモデルチェンジ機に合せて、このクラスとしては初となる2つのポンプを独立して制御する新油圧システムに対応したバルブ回路と圧力損失低減を実現し、実車燃費で20%もの向上(客先計測値)に貢献しました。
一方で鉄道用機器としては、小田急電鉄株式会社様の新型特急ロマンスカーGSE(70000形)に、車体の横揺れを低減するための電動油圧式フルアクティブサスペンションが採用されました。
今後も、油圧機器の様々な市場に対して製品展開を図っていくとともに、社会やお客様の更なるご要求にお応えできる製品を開発していきます。
当セグメントにおける研究開発費の金額は21億63百万円であります。
③ 特装車両事業、航空機器事業、システム製品および電子機器等
特装車両事業は、アフターサービスの充実も目指し、機器のメンテナンス時期の通知や車両の状況を分かりやすく表示するモニタを搭載した、電子制御ミキサ車(eミキサⅢ)の開発をしています。
航空機器事業は、Boeing社B787-10新型機への製品供給を開始しました。その量産機が2018年5月に日本へ初飛来しました。
当セグメントにおける研究開発費の金額は6億81百万円であります。