有価証券報告書-第111期(平成28年4月1日-平成29年3月31日)

【提出】
2017/06/28 13:39
【資料】
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【項目】
117項目

研究開発活動

当社グループは、当社技術本部及び連結子会社の各技術部門を中心に、相互連携を図りながら、担当分野に係る新技術・新製品等の開発活動を進めております。当連結会計年度の研究開発費の総額は、82億7千4百万円となっており、セグメント別の研究開発活動の状況は次のとおりであります。
(1) シール事業
「環境」、「安全」及び「IT化対応」を重点として、継続的に技術・製品開発を進めております。環境関連では、低摩擦損失による省エネルギー効果に寄与する製品、ハイブリッド(HEV)・電気自動車(EV)・燃料電池自動車(FCEV)に対応するクリーンな製品の開発を進めております。
安全やIT関連では、自動車制動関連の製品や電子部品との複合等による高付加価値製品の開発に取り組んでおります。
オイルシールにおいては、しゅう動抵抗の低減によって省エネルギーに貢献する低摩擦技術、具体的には低摩擦コーティング,低摩擦ゴム材料ならびに子会社のNOKクリューバー(株)と共同開発したシール専用の低摩擦グリースの市場投入を積極的に進めています。これら低摩擦技術群はLe-μ’sという商標で登録し、NOKグループの保有する低摩擦技術のさらなる普及を図っております。また、海外の新興国に向けた過酷な道路環境に対応する耐ダスト性が向上した製品も市場投入しております。
Oリングにおいては、環境対応エンジンに対する高圧用シール、組立性向上コーティング、燃料電池用水素ガス対応シールを市場投入する一方で、熱マネジメント用シールの開発を進めております。
新商品関連では、EV/HEV/FCV(燃料電池自動車)に代表されるエコカーのニーズに対し、従来のシール製品群に加え、電子機器や電動ユニット向けにFPC一体シール部品、および放熱をサポートする熱伝導性ゴムを開発しております。さらに燃料電池の中核を成すセルスタック向けに低反力・省スペースのシール部品を開発し、一部顧客向けに量産を開始しております。
また、自動運転に代表される先進運転支援システム(ADAS)が注目を集めております。それには運転者の状態を判断する「ドライバモニタリング」も必要とされており、我々の開発した生体信号を測定できるゴム電極は心電、筋電位、脳波等のモニタリングが可能であり、運転者の疲労や眠気の検知への利用が期待されています。
自動車以外の分野においては、新たな分野・市場への参入に向け、ゴムや樹脂のモールド技術を用いて耐候性や耐衝撃性を向上させたICタグ、医療・バイオ分野に向けた機能性ゴム部品など、より付加価値の高い製品開発を進めております。
化学合成品関係では、環境負荷の低減に対応した素材の開発や、フッ素系機能性化合物製品の開発とそれらの新規製造法を検討するとともに、生産プロセス面からも資源・省エネルギーや環境に配慮した商品開発を推進しております。
なお、当事業に係る研究開発費は62億9百万円であります。
(2) 電子機器部品事業
スマートフォン/タブレットなどの小型携帯電子機器向けをはじめ、今後の成長電子市場である車載向けや医療・ヘルスケアに向けたフレキシブル配線板(FPC)のプロセス/材料/部品実装開発及びFPCの新商品開発を推進しております。開発概要は、FPCの高精細/高機能化やモジュール化を実現するコア技術の確立であります。
小型携帯電子機器に向けては、配線の高密度化に対応するために、サブトラクティブ工法による更なる配線の高精細化に取り組むと共に、超微細配線の形成に向けたセミアディティブ工法の開発を推進し、顧客試作に向けたプロセス構築を進めております。また、配線微細化と同時に必要となるビアの小径化に対し、レーザ加工技術において、新技術の適用および量産適用の推進、更なる小径化対応を進めております。
信号の高周波化・高速化、データの大容量化への対応に関し、ベース樹脂にLCP(液晶ポリマー)フィルムを適用した高周波対応FPCの開発、および顧客対応を進めております。用途として小型携帯電子機器の他、車載向けに、近い将来登場することが確実な自動運転化に伴う各種センサー等の高速伝送化に対応する技術開発を推進しております。また同様に、自動車の電化に伴う取り組みとして、FPCとケーブル、FPCと機器間の高信頼性接続技術を開発し、各顧客への技術紹介を推進しております。
医療・ヘルスケア市場向けには、従来の曲げ・屈曲に加えて関節やジョイント部に適用可能な伸縮性を持つプリーツ型成形FPCの商品化を進めております。現在、ロボット・マイクロメカトロニクス分野への展開を推進しております。
また、基材のエラストマーと配線の両方が伸縮性を持ち、肌への密着に関し違和感のない透湿性、装着感を備え、精度の高いバイタルデータセンシングを可能とするストレッチャブルFPCの開発を推進し、顧客向けの試作及び量産対応への準備を開始しました。今後市場が拡大するウエアラブル電子機器、医療・ヘルスケア用途への適合性があるものとして、更なる開発推進とともに、大学等との共同研究も継続致します。
なお、当事業に係る研究開発費は17億1百万円であります。
(3) ロール事業
事務機業界では、最近の市場動向として中国・ASEAN地区への生産二極化の進展、また低価格分野向けを中心にローカル部品メーカーの参入などが顕著な動きとなってきています。
一方、事務機の機能トレンドである高速化、高画質化を目的として新タイプトナーへの変更等の開発が進められており、使用される部品についても従来仕様以上の機能を要求されております。弊社は引続き顧客要求に合わせた開発推進を行ってまいります。併せて、品質向上、開発工期の短縮と共により安定した生産体制の構築に努めてまいります。
なお、当事業に係る研究開発費は2億3千3百万円であります。
(4) その他事業
潤滑剤関係では、省エネルギーや快適性向上に寄与する、材料調達リスクや法規制を先取りした新商品開発を推進しております。また、自動車業界や一般産業機械業界向けオイル・グリース・コーティングの更なる高機能化を目的として、摩擦摩耗現象や低摩擦化メカニズムの解明、新素材の探求等の研究開発に注力しています。
なお、当事業に係る研究開発費は1億2千9百万円であります。