有価証券報告書-第85期(平成27年4月1日-平成28年3月31日)

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2016/06/30 11:06
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業績等の概要

(1)業績
当連結会計年度における我が国経済につきましては、円安を背景とした輸出企業の海外での収益増加や原油安によるコスト低下により企業収益は改善され、景気は緩やかな回復基調で始まりました。しかし、7月以降は中国経済の減速等を背景に輸出や生産が伸び悩んだことに加え、年末には米国の金利引き上げ懸念により新興国の経済が減速し、年明けには円高が急速に進行したことなどから、景気は足踏みの状態になりました。
このような経営環境の中、当社グループは、平成25年に発表した5ヶ年中期経営方針に基づく3ヶ年中期事業計画の第二次成長戦略である「既存事業の強化」、「グローバル化の推進」、「事業領域の拡大」に沿い、長い間に培ってきた有形・無形の資産を「改良」するだけではなく「革新」し、独自の付加価値と圧倒的な競争優位を継続的に生み出し、国内外の新市場を開拓し新事業を創出して持続的に成長し、中長期的な企業価値を向上させ、ステークホルダーの期待と要請に応えるべく取り組んできました。具体的には、「既存事業の強化」につきましては、防衛・通信機器事業は、カンパニー制の狙いであるスピード経営を実現し、顧客志向を強化して変化やニーズへ迅速且つ柔軟に対応させるため、「電子システムカンパニー」から官需事業とは特性の異なる民需事業を独立させ、一段と自律性と効率性が向上し、開発から生産、販売、サービスまでの一元管理体制を強化した「通信制御システムカンパニー」を平成27年4月から新たにスタートさせました。「グローバル化の推進」につきましては、船舶港湾機器事業は、マーケティング活動を更に充実させるため、平成27年4月にシンガポール駐在員事務所をシンガポール支店に昇格させ、油空圧機器事業は、調達リスクの分散を目的とした国際分業を加速させるため、ベトナム社会主義共和国に設立した現地法人「TOKYO KEIKI PRECISION TECHNOLOGY CO. , LTD.」の新工場を、計画通り平成27年5月に完成させ、小型電磁切換弁に加え、中型電磁切換弁の生産も開始しました。「事業領域の拡大」につきましては、流体機器事業は、新商品の開発や生産に利用するほか、短管付き超音波流量計等の新商品により新市場を開拓し、流量計の校正請負業務により新事業を創出するため、新実流量試験設備を建設しました。最終的なJCSS(Japan Calibration Service System)の認証取得は平成28年度下期を予定しています。また、防衛・通信機器事業の中の通信制御システムカンパニーは、トンネル掘削マシン用FOGコンパス(光ファイバージャイロコンパス)をベースに船舶用FOGコンパスを開発し、船舶港湾機器事業の中の舶用機器システムカンパニーと協働で実船での実証実験を終了しました。舶用機器システムカンパニーは、この船舶用FOGコンパスを平成28年度の下期に市場投入し、オフショア船等の高付加価値船市場へ新たに参入する計画にしています。なお、通信制御システムカンパニーは、農機用自動操舵システムの開発を加速するため、建設機械市場で機器制御のノウハウを有する油圧制御システムカンパニーと協働して商品化を促進し、市場への早期投入を目指しています。これ以外にも、全社組織である「事業領域拡大委員会」を通して、カンパニー制の縦割り組織からは生まれにくい新商品の開発、新市場の開拓、新事業の創出を推進してきました。
以上の結果、当社グループの当連結会計年度における売上高は、船舶港湾機器事業の海外市場、並びに油空圧機器事業のプラスチック加工機械市場及び海外市場が低調であったものの、流体機器事業の官需市場が堅調であったことに加え、防衛・通信機器事業も海上自衛隊関連の修理工事と部品販売、並びに海上交通関連機器の本牧向けVTSを納入したことなどから、全体では43,439百万円と前期比68百万円の増収になりました。
損益面では、原価率の悪化に加え、販売費及び一般管理費の増加等により、経常利益は1,979百万円と前期比1,153百万円の減益になり、親会社株主に帰属する当期純利益も、1,252百万円と前期比1,059百万円の減益になりました。
セグメントの業績は、次のとおりであります。
[船舶港湾機器事業]
当事業の商船市場では、新規受注案件は減少しているものの、一括注文案件等により、受注、売上ともに前期を上回りました。
内航船市場では、老齢船の代替建造は依然として低迷していることに加え、新造船の増加が見られないことから、受注は前期を下回りましたが、在来船向け機器の販売増加により、売上は前期並みとなりました。
海外市場では、韓国及び中国の造船所の新規建造船受注の減少が続きキャンセルや納入延期となった案件は増加し、欧米向けOEMジャイロコンパスの販売が減少したことから、受注は前期を大きく下回り、売上も前期を下回りました。
船舶関連機器の保守サービスは、修理工事及び部品販売が共に順調に推移したことから、受注、売上ともに前期を上回りました。
この結果、当事業全体として売上高は9,901百万円と前期比42百万円(0.4%)の減収、営業利益は696百万円と前期比110百万円(13.7%)の減益となりました。
[油空圧機器事業]
当事業のプラスチック加工機械市場では、自動車関連設備の需要が減少したことなどから、受注、売上ともに前期を下回りました。
工作機械市場では、国内及び北米向け需要が一般機械を中心に堅調であったことから、受注、売上ともに前期並みとなりました。
建設機械市場では、北米向け需要及び国内向け復興需要が増加したことから、受注、売上ともに前期を上回りました。
海外市場では、中国、台湾、韓国向け成形機の需要が低調だったことから、受注、売上ともに前期を下回りました。
油圧応用装置は、水素ステーション用水素圧縮装置が順調に推移したものの、バルクキャリア船用ハッチカバー開閉装置及び一般産業機械向け機器が減少したことなどから、受注、売上ともに前期を下回りました。
このような状況の中、小型ユニットTJ-PACシリーズ、可変容量ベーンポンプ、超音波厚さ計UTM-110、ホールIC型ストロークセンサー、動的再構成プロセッサDAPDNA-IM2Aを市場投入しました。
この結果、当事業全体として売上高は12,356百万円と前期比472百万円(3.7%)の減収、営業損失は9百万円(前期営業利益752百万円)となりました。
[流体機器事業]
当事業の官需市場では、期末の大型案件等により、受注、売上ともに前期を上回りました。
民需市場では、船舶接岸速度計の注文が遅れたことなどから、受注、売上ともに前期を下回りました。
海外市場では、韓国・東南アジア向け流量計の需要が順調に推移したことから、受注、売上ともに前期を上回りました。
この結果、当事業全体として売上高は2,282百万円と前期比53百万円(2.4%)の増収、営業利益は265百万円と前期比33百万円(14.1%)の増益となりました。
[防衛・通信機器事業]
当事業の官需市場では、F-15主力戦闘機搭載品用地上支援器材やF-15主力戦闘機用レーダー警戒装置の開発があり、機動戦闘車搭載機器の注文があったことなどから、受注は前期を大きく上回り、海上自衛隊向け艦艇搭載機器の修理工事及び部品販売が増加したこと、海上交通関連機器である新型半導体レーダーや本牧VTSシステムを納入したことなどから、売上も前期を上回りました。
センサー機器市場では、受注は前期を下回りましたが、トンネル掘削マシン用姿勢方位検出装置TMG-12F及びTMG-32B、無人機用運動計測システムが堅調であったことから、売上は前期並みになりました。
通信機器市場では、放送関連機器、中継ヘリコプター用アンテナスタビライザーの数量減等により、受注は前期を下回りましたが、移動体衛星通信用アンテナスタビライザーの数量増により、売上は前期を上回りました。
この結果、当事業全体として売上高は14,969百万円と前期比418百万円(2.9%)の増収、営業利益は240百万円と前期比367百万円(60.5%)の減益となりました。
[その他の事業]
検査機器事業は、円安によるフィルム、インクなどの原材料費高の影響を受け設備投資が低迷したものの、機械メーカー経由案件の増加や大型案件を獲得したこと、海外市場では既存客先からのリピートオーダーが増加したことなどから、受注、売上ともに前期を上回りました。
防災機器事業は、立体駐車場での需要は順調に推移したものの、「ガス系消火設備の容器弁の安全性に係る点検」が消防庁告示で期限が延びたことにより対象物件の点検が一時停滞し、前期にあった大型改修物件がなかったことから、受注、売上ともに前期を下回りました。
鉄道機器事業は、大手私鉄向けレール探傷車が次期に繰り延べとなったことから、受注は前期を下回りましたが、前期から繰り延べとなったJR西日本向けのレール探傷車を納入したほか、除雪用データ・デポシステムの販売、役務工事全般が好調であったことから、売上は前期を上回りました。
このような状況の中、鉄道機器事業においてデジタル超音波探傷器SM-20Rを市場投入しました。
この結果、当事業全体として売上高は3,930百万円と前期比111百万円(2.9%)の増収、営業利益は749百万円と前期比181百万円(31.8%)の増益となりました。
なお、当連結会計年度より、「企業結合に関する会計基準」(企業会計基準第21号 平成25年9月13日)等を適用し、「当期純利益」を「親会社株主に帰属する当期純利益」としております。
(2)キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という)は11,955百万円と前期比1,376百万円(13.0%)増加しました。各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果得られた資金は4,703百万円(前期は2,568百万円の獲得)となりました。その主な収入要因は、税金等調整前当期純利益1,954百万円、売上債権の減少2,465百万円及び減価償却費894百万円、支出要因は、その他の資産の増加416百万円及び仕入債務の減少314百万円によるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は1,781百万円(前期は1,102百万円の使用)となりました。その主な要因は、固定資産の取得による支出1,708百万円によるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果使用した資金は1,542百万円(前期は501百万円の使用)となりました。その主な要因は、長期借入金の返済による支出944百万円及び配当金の支払376百万円によるものです。