有価証券報告書-第156期(平成31年4月1日-令和2年3月31日)

【提出】
2020/06/26 16:16
【資料】
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【項目】
92項目

研究開発活動

当社グループでは、全社の技術戦略を統括する役員を選任し、中長期計画と連動した技術戦略を立案し、研究開発の全体最適化を図るとともに、各事業部門の開発担当部門が光学本部、研究開発本部、生産本部、次世代プロジェクト本部と連携しながら研究開発を推進しております。
既存事業領域だけでなく、2019年5月公表の中期経営計画において定めた長期成長領域、「デジタルマニュファクチャリング」、「ビジョンシステム/ロボット」、「ヘルスケア」に対しても、これまで培った「光利用技術」と「精密技術」の2つの中核技術に加え、他社との共同研究開発等を通じて新たな技術を取り入れることで、成長戦略の実現を目指していきます。
当連結会計年度の研究開発投資は62,294百万円でありました。なお、当社グループは開発投資の一部について資産化を行っており、研究開発投資には無形資産に計上された開発費を含んでおります。
当連結会計年度における主な開発状況は次のとおりであります。
① 映像事業
ニコン初のDXフォーマットミラーレスカメラの「Z 50」を開発しました。有効画素数2088万画素、像面位相差AF画素搭載のCMOSセンサーと画像処理エンジン「EXPEED 6」により、常用感度ISO100~51200の広い常用感度域でノイズの少ない高画質を実現しました。「Z 7」「Z 6」の洗練されたデザインや操作性、信頼性を継承し、高い剛性と耐久性を保ちながら軽量化を実現しました。また、「ミドルレンジシャープ」や「Creative Picture Control」の搭載により「Z 7」「Z 6」と同等の画づくりを実現し、タッチ操作可能な3.2型約104万ドットのチルト式画像モニターや、スマートフォンと同様の感覚で使えるタッチキーの搭載によりシンプルで直感的な操作性を実現しました。また、動画撮影はフルフレーム 4K UHDに対応しました。
交換レンズでは、ニコンFXフォーマットデジタル一眼レフカメラ対応の超望遠ズームレンズ「AF-S NIKKOR 120-300mm f/2.8E FL ED SR VR」を開発しました。光学系には、EDレンズ、蛍石レンズに加え、新開発のSRレンズ(SR:Short-wavelength Refractive)を採用し、色収差を大幅に抑えた描写を可能にし、優れた光学性能を実現しました。また、NIKKOR Fレンズにおいて初めて「アルネオコート」を採用し、可視光全域で安定した超低反射率を実現しました。入射光に起因するゴースト、フレアを極めて効果的に低減し、光源が画面内にある場合でも抜けの良いクリアーな画像が得られます。また、モーターの駆動制御アルゴリズムを強化し、急激な速度変化のある被写体へのAF追従性能も向上しています。
なお、当事業に係る研究開発投資の金額は21,180百万円であります。
② 精機事業
FPD露光装置分野においては、お客様の更なる高精度・高精細化、生産性向上の他、多様なニーズに応えるため、露光装置、サービス、両面において技術開発、アプリケーション開発などを継続しました。
また、半導体露光装置分野においては、液浸露光装置「NSR-S635E」で、お客様プロセス条件での重ね合わせ性能と生産性を更に向上するための改良開発に着手しました。また「Litho Booster」では、お客様プロセスでの歩留まり向上、重ね合わせ精度向上を目的としたアプリケーション開発などを進めました。
なお、当事業に係る研究開発投資の金額は19,534百万円であります。
③ ヘルスケア事業
バイオサイエンス分野においては、データ管理を一元化するニコンの画像統合ソフトウェア「NIS-Elements」専用のモジュール、AIの一種であるディープラーニングを活用した「NIS-A NIS.ai」を開発しました。画像処理や解析の判断基準となる教師データを学習させることで、研究者のワークフローを改善します。AI技術を用いて、短い露光時間で鮮明な顕微鏡画像を取得する「Enhance.ai」と、非染色の細胞画像から蛍光画像を生成する「Convert.ai」、ターゲットとする細胞を素早く抽出する「Segment.ai」の3機能を有します。
眼科診断分野においては、SS-OCT付き超広角走査型レーザー検眼鏡「Silverstone」を開発しました。「Silverstone」は、瞳孔を広げる散瞳剤を用いることなく、網膜中心部から周辺部までの状態や、さらに網膜の断層の状態を可視化することで、眼球組織内の微細な病変をとらえることができます。また、眼底の約80%の領域の眼底画像と、任意の位置での断層画像を1台の装置で撮影できるため、検査のワークフローを大きく改善し、眼疾患の早期発見や治療、経過観察をサポートします。
なお、当事業に係る研究開発投資の金額は6,743百万円であります。
④ 産業機器・その他
産業機器事業部においては、大型サンプル向けのX線CT装置を開発、販売しました。
この装置は強固なベースフレームに各種線源、検出器に可動範囲1mを超えるマニピュレータを組み合わせる事により、これまで高精細CTが困難とされていた大型部品に適したX線CTソリューションを提供します。
可動式の線源、検出器を多彩な計測アルゴリズムで制御する事により、自動車用エンジンブロックに代表される大型部品内にある微細な欠陥検出を分単位の短い検査時間で実現しました。
また、産業用途以外の文化財、遺跡品などの学術研究調査まで幅広いサンプルのCT計測ニーズに応えます。
なお、これらの事業に係る研究開発投資の金額は14,982百万円であります。
(注) 事業別に記載している研究開発投資の金額には、内部消去額を含んでおります。