有価証券報告書-第156期(平成31年4月1日-令和2年3月31日)

【提出】
2020/06/26 16:16
【資料】
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【項目】
92項目

事業等のリスク

当社グループの戦略・事業その他を遂行する上でのリスクについて、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性があると考えられる主な事項を以下に記載しています。
なお、当社グループではグループ経営上のリスク全般につき、潜在リスクの洗い出しと優先順位付けをしたうえで、リスク対応方針の審議決定を行う「リスク管理委員会」により、リスクを整理・管理しています。
また、2020年3月期終盤に発生した新型コロナウイルス感染症の感染拡大対応として、まずは2020年2月25日に、当社グループのリスク管理体制の一環である「感染症危機初動対応マニュアル」及び「BCM実施要領」に基づき、緊急対策本部を設置しました。同本部内の初動チームは危機初動対応を目的として設置され、主要なミッションとして従業員の安全確保と、それに伴う人事・IT施策等の推進、足元の事業影響(販売、サプライチェーン等)に関する情報収集、課題の整理及び初動対応を実施しています。また、事業リカバリープラン検討をミッションとする経営施策チームを設置し、新型コロナウイルス感染症の影響拡大によりグローバルベースでの社会活動に甚大な影響が及んでいる中、リスクと機会をしっかりと整理し、中長期視点をもって、事業の早期リカバリーを中心とした経営施策を策定するために活動を実施しています。
なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
① 事業環境の急激な変化
映像事業の主要製品であるデジタルカメラの市場は、全体として縮小が続いています。2020年3月期の途中から、想定を超える市場の縮小や競争激化を受け、対応として、生産販売拠点等の最適化、徹底したコストダウン、SCMや物流などの各種改革といった事業構造改革を断行し、一定の収益が得られる体質への転換を進めています。しかしながら、新型コロナウイルス感染症の世界的な流行及びそれによる各国での規制強化により、外出禁止や小売店での営業停止、イベント中止などによる顧客の購買行動への制約、減退が想定されます。それにより、想定以上の市場縮小、特にターゲット層であるプロ・趣味層セグメントの縮小が進む場合には、より厳しい状況に追い込まれる可能性があります。当該リスクが顕在化する可能性、時期については、消費者動向、社会情勢により大きく左右されるため、具体的に予測することは困難であります。
精機事業が扱うFPD露光装置の需要は、ディスプレイ市場自体は安定的に需要が見込める市場ですが、大規模設備投資の反動や足元の消費抑制により供給過剰となった場合には露光装置の需要も落ち込む可能性があります。対応として、そのような環境下でも、一定の事業部利益を確保するため、新規露光装置およびサービスビジネスによる収益拡大やトータルコスト低減を進めています。
半導体露光装置の対象市場である半導体市場は中長期的に大きく成長が見込まれるものの、先端プロセス開発のEUVLへの移行度合により、液浸露光装置の需要が急激に減少する可能性があります。対応として、収益性重視の事業戦略の下、既存ユーザー以外の顧客開拓を進めるとともに、サービスビジネスを拡大していきます。
精機事業全体として、新型コロナウイルス感染症の世界的な流行及びそれによる各国での規制強化により、出荷遅延・停止による顧客との信頼関係棄損、需要減退による投資凍結、販売激減などが想定されます。対応として、顧客とのコミュニケーションの強化、立上げ・サービス要員の現地対応促進などをより一層強めていきます。
全体として、新型コロナウイルス感染症の感染拡大に関するリスクは一部顕在化しつつありますが、その規模、時期については社会情勢により大きく左右されるため、緊急対策本部により、回復の時間軸を複数置いてシミュレーションし、各事業による対策を検討、実施しています。
② 新事業領域の立ち上げ
当社グループは、2019年5月に発表した中期経営計画(2019~2021年度)期間において持続的企業価値の「成長基盤構築」を目指し、「新たな収益の柱の創出」として材料加工事業を位置づけ、積極投資を続けていますが、本計画期間である2021年度までに期待される規模への成長に届かない可能性があります。
当該リスクが顕在化する可能性を最小化するため、対応として、当社グループは、材料加工事業の立ち上げを最優先と位置付け、社内リソースのシフトを実施しています。また、戦略投資につきましても、買収、合併のみならず、他社との業務提携、戦略的投資といった複数の形態で関係を構築しての事業拡大を進めています。
③ 競争力維持強化のための新製品開発力及び開発投資
当社グループの主力事業は厳しい競争下にあり、高度な研究開発の継続による新製品の開発が常に求められています。そのため、当社グループの収益の変動にかかわらず、製品開発のための投資を常に継続する必要があります。投資の成果が十分に上がらず新製品、次世代技術の開発や市場投入がタイムリーに行えない場合や、当社グループが開発した技術が市場に受け入れられなかった場合、ゲームチェンジなど抜本的な変化により当社の技術が不要となる場合、企業価値が低下し、収益が減少する可能性があります。当該リスクが顕在化する可能性を最小化するため、対応として、当社グループでは、技術戦略委員会にて、これからの社会や市場動向を踏まえ、ニコンが注力すべき新領域の開拓や、既存事業の競争力向上につながる技術戦略と、その実現に向けた研究開発計画を策定し、グループの技術可視化、適正化を図っています。
④ 調達
当社グループは、それぞれの事業において、原材料、基幹部品、生産委託した製品完成品等を仕入先と密接な関係を保ちながら、安定的な調達を行っています。地震等の天災地変、暴動・テロ・戦争・感染症等による社会の混乱、品質問題、特定仕入先の政策変更や倒産・経営破綻等により調達に重大な支障をきたした場合や仕入価格が高騰した場合には、当社グループの収益と財政状況に悪影響を及ぼす可能性があります。具体的には、新型コロナウイルス感染症の世界的な流行による調達先・地域の規制強化、操業停止、倒産などによる調達品の遅れが一部顕在化しています。今後、当該リスクの規模、時期は社会情勢により大きく左右されるため、具体的に予測することは困難です。
対応として、当社グループでは、可能な範囲での複数購買および代替調達先候補の把握とともに、天災事変等の混乱時には、全事業部の調達状況の情報収集を実施し、速やかに経営に状況を報告するとともに、代替品の調達可能性、設計変更等による代替措置など、複数の視点からの対応策を実施しています。
⑤ 人材・情報の流出
当社グループは、高度な技術等専門知識及び能力を有する社員によって支えられており、市場での激しい競争に打ち克つにはこうした人材の確保がますます重要になっております。これらの主要な人材が退職し、その知識・ノウハウが社外に流出する可能性があります。こうした知識・ノウハウの流出の影響を最小限にするべく、具体的な習得カリキュラムを組み、社内における固有技術・技能の伝承と標準化・共有化を推進しています。
また、当社グループは、技術情報等の重要な情報や取引先の企業情報並びに多くの顧客またはその他関係者の個人情報を保有しております。これらの情報が漏洩するリスクが顕在化しないよう、これらの情報への外部からのアクセス制御の徹底や保管セキュリティレベルの向上を図るとともに、情報取り扱いに関する社内規程の整備、従業員教育等を実施しております。
⑥ 環境問題
当社グループは、気候変動や天然資源の枯渇、廃棄物問題、有害化学物質による汚染などの環境問題を自社の存続にも関わる問題と捉え、さまざまな対策を講じるとともに、地球環境に配慮した経営を行っています。
気候変動については、それに起因する異常気象や洪水、渇水などの自然災害や感染症の拡大により、開発・生産拠点および調達先などに甚大な損害が生じた場合、操業に影響が生じたり、生産や出荷が遅延したりする恐れがあります。こうしたリスクを低減するため、BCP(事業継続計画)の策定と並行して、気候変動の緩和に向け、サプライチェーン全体での温室効果ガス削減に取り組んでいます。
環境法規制等への対応が十分でないと、行政処分などによる生産への影響や課徴金、社会的信用の失墜など会社経営に甚大な損害を与える可能性があります。着実な実行に繋げるため、社内の規程類を整備し、担当者の教育などを実施することで、管理体制を強化するほか、規制の変更などのタイムリーな把握と対応に努めています。また法規制よりも厳しい自主基準値を設けることで環境汚染の未然防止に努めています。