有価証券報告書-第122期(令和3年4月1日-令和4年3月31日)

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研究開発活動

当社グループ(当社及び連結子会社)は、世の中の役に立つ新しい価値を生み出し、提供しつづけることで、人々の生活の質の向上と持続可能な社会づくりに積極的に貢献することを基本理念としております。
2021年度は、新型コロナウイルス感染症の世界的まん延が継続し、更に、半導体不足、各種材料不足、輸送手段の高騰など年度初めには予想できなかった事態により、根本的な事業構造の変革を迫られる年度になりました。その状況の中でも研究開発分野においては、アフターコロナを見据えた変革加速として、「OAメーカーからの脱皮」及び「デジタルサービスの会社への変革」に力をいれてまいりました。
当社グループの2036年ビジョン「“はたらく”に歓びを」の実現に向け、デジタルサービスの会社として、ワークプレイスを変化させていく商品やサービスを提供してまいります。
体制面では、CTO(Chief Technology Officer)のもと、技術面・経営面の両面から技術開発に取り組んでおりますが、2020年度からCDIO(Chief Digital Innovation Officer)を配置し、社内外でのデジタルとデータを活用した基盤及び価値創出の機能を強化しております。カスタマーサクセスを当社グループの提供価値と定め、既存ビジネスの深化と新たな顧客価値の進化、及びこれらを持続的に可能にする社内外でのデータ活用基盤、機能を強化しております。グローバルに広がる約140万社の顧客基盤を生かし、デジタルサービスの会社としてさらなる拡大を目指しております。
これまで当社では中長期的な研究開発及び要素技術開発は本社研究所機能にて集約的に行い、それらの成果を基に事業実施区にて製品設計に応用する研究開発体制を取ってまいりました。2021年度から導入された社内カンパニー制下においては、事業ドメインごとのビジネスユニットそれぞれが受け持つお客様・商品毎に向けたリソースを集約運用するという考え方から、研究開発についても将来に備えた中長期的な研究から直近の製品開発・設計・生産までを一貫として事業分野毎に集約した体制へと変更いたしました。
上記の体制変更に伴い、本社研究開発の役割・内容も変更しております。
本社での研究領域として、当社の現事業ドメイン以外での中長期的な成長を支える技術戦略として「ワークプレイスではたらく人の働き方を進化させるデジタルツイン」と「マスカスタマイゼーション時代のデジタルプリンティング」の2つの領域を定めました。これらの実現に向けた研究開発及び当社グループの共通基盤技術開発に集中・特化した「先端技術研究所」を設立いたしました。
また共創プラットフォーム「 RICOH Smart Integration (RSI)」 を支えるデジタル基盤技術の研究開発を行う「デジタル戦略部」を設立いたしました。AI/ICT技術の開発や“はたらく”をデジタル化する技術の開発、それらに携わるデジタル人材の育成・強化を担いデジタルサービスの会社としての拡大を支えます。
更にこれらの本社研究所の技術開発からの事業インキュベーションに向け、2021年度から組織を新設し、開発体制の強化を行っております。
研究開発の進め方としては、グローバルに拠点間の連携を深めながらそれぞれの地域特性を活かした市場ニーズの調査・探索、研究・技術開発を行っております。また、世界各地にテクノロジーセンターやカスタマーエクスペリエンスセンターを開設し、お客様のサポートを通じて直接把握したニーズを製品開発へフィードバックする仕組みにより、お客様と一体となった価値共創活動を展開しております。
オープンイノベーションにおいては、大学・研究機関、企業の力を積極的に活用し、最先端技術の開発を効率的に進めております。
また、スタートアップ企業や社内外の起業家の成長を支援して事業共創を目指すアクセラレータープログラム「TRIBUS(トライバス)」を2019年度より実施しております。3年目になります2021年度では195件の応募の中からコンテストを実施し、選出された優秀なテーマには当社グループ内に登録されている約250名のサポーターをはじめとした様々なリソースを活用可能とし、チャレンジする人の支援・育成、新規事業の創出を促進する文化のさらなる醸成を目指しております。
IFRSの適用に伴い、当社グループでは開発投資の一部について資産化を行い、無形資産に計上しております。無形資産に計上された開発費を含む当連結会計年度の研究開発投資は 96,721百万円です。
(1) デジタルサービス
当社グループでは、お客様への提供価値を「EMPOWERING DIGITAL WORKPLACES」と定め、働く現場のデジタルトランスフォーメーションを支援することで、お客様の業務効率化や生産性向上に貢献しております。
近年、時間や場所にとらわれない多様な働き方が求められており、新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止対策をきっかけに、その要望は飛躍的に大きくなっております。当社グループでは、オフィス業務のペーパーレス化だけでなく、企業間取引業務を支援するトレードエコシステム、遠隔機器による現場作業支援など、様々なワークフローにおいて、デジタルトランスフォーメーションによりお客様の課題解決に貢献できるサービス開発に取り組んでおります。
当社グループでは、クラウドサービス等と親和性の高いMFPをはじめとした各機器がつながり、お客様がいつでも最新のサービスを利用可能な統合プラットフォーム「EMPOWERING DIGITAL WORKPLACES プラットフォーム」を提供しております。このプラットフォームを中心とした「RICOH Digital Processing Service」では、お客様の基幹システムや業務システムと「スクラムパッケージ」を連携させることで、手作業に頼っていたアプリ間のデータ受け渡しを自動化し、お客様の業務効率や生産性を向上いたします。お客様の働く環境をトータルにサポートすることで、お客様の生産性向上、多様な働き方に寄与する価値提供を目指しております。
2021年度は、お客様のワークフローをデジタル化するコンテンツ管理ソフトウエアの「DocuWare」を提供するDocuWare GmbHの全株式取得(2019年度)に続き、企業の業務プロセス自動化を支援するプラットフォームやアプリケーションを開発・販売するAxon Ivy AG(本社:スイス)の全株式を取得しました。当社グループの強みである顧客接点力やこれまで培ってきた製品や技術、ノウハウなどを組み合わせることで、さらなる顧客価値の創出に取り組むとともに、デジタルサービスの会社への変革を加速させてまいります。
当連結会計年度の主な成果は次のとおりです。
自然言語処理AIでデータを分析し、業務効率化や新しい価値の創造に貢献する「仕事のAI」を提供開始
~業種業務ごとにラインアップを拡充し、デジタルトランスフォーメーション(DX)を支援~
・これまで業務に精通した人が行ってきた「問題の発見」「課題解決策の策定」「新たな価値の創出」といった付加価値の高い業務を、デジタルの力でよりスムーズに、人の判断によるばらつきを抑えて行える支援を実現
・第一弾として、食品業界の大手・中堅企業向けに「RICOH 品質分析サービス Standard for 食品業」を発売。コールセンターやヘルプデスクに集まる膨大な問い合わせ情報を自然言語処理AIで分析し、重要度順に表示することで、迅速な顧客対応や品質改善によるリスク低減に貢献
世界最薄・最軽量42インチ電子ペーパーを使ったソリューションを提供開始
~図面などの大型用紙を使った作業が必要な現場のデジタル化を後押し~
・世界最薄・最軽量*、世界初防塵・防水(IP65対応)*の42インチ電子ペーパーデバイス「RICOH eWhiteboard 4200」と、ソフトウエア、クラウドサービスを組み合わせた商品・ソリューションを発売
・バッテリーを内蔵し、建設現場や工場をはじめとした、電源が確保しにくい場所での長時間利用を実現
・手書き入力文字のテキスト変換や、専門用語などをカスタム辞書に登録した即時変換が可能
・クラウド対応することで「RICOH eWhiteboard 4200」同士で離れた場所で相互書き込みや、遠隔共有が可能
*42インチ電子ペーパー製品で、バッテリー内蔵の入力・表示装置において(2021年7月現在、当社調べ)
映像や音声のリアルタイム配信機能を提供する「RICOH Live Streaming API」を提供開始
~APIを活用した機能提供によるビジネスモデルを構築~
・API連携により、アプリケーションやWebサービスに短期間で埋め込み可能
・テレビ会議・Web会議システムなどで培ってきた動画や音声などのメディア帯域制御の技術により、高品質と低遅延を両立し、4Gなどのモバイルネットワーク環境においても安定した接続が可能
・当社の360度カメラ「RICOH THETA」などとの組み合わせで、臨場感あるライブストリーミングも実現
2022年1月施行の改正電子帳簿保存法に対応する「RICOH 証憑電子保存サービス」を提供開始
~様々な証憑をひとまとめに。手軽に手間なく始められる電子保存サービス~
・様々な証憑を版管理方式(削除・修正の履歴による方式)でクラウド上に法定年数に応じた長期保存が可能
・電子帳簿保存法のスキャナ保存・電子取引要件に準拠した検索が可能
・電子帳簿保存法改正で求められる「取引先名」「取引金額」「取引日」の項目の入力代行サービスも用意
「DocuWareバージョン 7.4/7.5」を提供開始
~より安全かつ高速にデータ、プロセス、ドキュメントを管理するための継続改善~
・ライブコラボレーション機能の追加、ドキュメントとデータ検索の高速化を提供(バージョン7.4)
・言語追加、Webhook機能による外部連携、自動ドキュメント処理機能を提供(バージョン7.5)
再生可能エネルギートラッキングの実証事業を開始へ
~蓄電池に充放電した再生可能エネルギーの環境価値を担保し、取引できる仕組み構築を目指す~
・日本ガイシ株式会社と、再生可能エネルギーの発電から消費及び余剰発電の電力貯蔵用NAS®電池への充放電も含めた全てのプロセスのトラッキング(追跡)を行う実証実験を、2022年度から開始
・発電した再生可能エネルギーをその環境価値が見える形で最大限活用するため、当社が開発するブロックチェーン(分散型台帳)技術を活用した再エネ流通記録プラットフォームを用いて、再生可能エネルギーの発電、蓄電、消費のトラッキングについて恵那電力株式会社を実フィールドとして検証実施
なお、当連結会計年度の当事業分野に係る研究開発投資は 11,890百万円です。
(2) デジタルプロダクツ
新型コロナウイルス感染症の影響が長期化し、世界的なワークスタイルの変化が著しい中、オフィスにおいてはワークフローのさらなる効率化、そして在宅ワークにおいては安心して利用できるデバイスや機能のタイムリーな提供が求められております。これらのご要望にお応えするプリンティングやスキャニング環境を迅速に実現するための技術開発、また、外部環境変化の影響を受けずに安定して製品をお届けできる生産プロセス構築に力を注いでおります。
当社のデジタルサービスを実現するための特徴的なクラウド型統合プラットフォームである「EMPOWERING DIGITAL WORKPLACES プラットフォーム」との親和性を重視したオフィス機器の開発など、時間や場所の制約を受けずに働くための環境を実現するクラウドサービスへのご要望にもお応えしてまいります。
複合機やプリンターにおいては、電子写真技術、サプライ技術、光学設計技術、画像処理技術、次世代作像エンジン要素技術、常に最新の機能をご利用いただけるソフトウエア技術「RICOH Always Current Technology」の新バージョンなど、各領域での設計・技術開発を継続して行っております。また、インタラクティブホワイトボード(電子黒板)、プロジェクターなど、働き方改革を実現するためのスマートコミュニケーションデバイスの商品開発にも引き続き注力してまいります。
2021年度においては、原料価格の高騰、半導体部品の不足、ロックダウンによる生産停止など、数々の困難に直面しました。そのような外部環境変化に左右されないものづくり体制を構築し、お客様へ必要な製品を安定的にお届けできるよう、設計面と生産面で様々な施策を打ちました。たとえば、有事において切り替えに時間を要する部品については、製品の開発段階からあらかじめ代替候補を選定した上で設計するようにプロセスを変更しました。
さらに、再生材料の使用促進など、近年重要となっている脱炭素社会や循環型社会の実現へ貢献するための技術開発も進めております。
当連結会計年度の主な成果は次のとおりです。
デジタルモノクロ複合機「RICOH IM 6000/5000/4000/3500/2500」を新発売
~充実の基本性能と最新のクラウドサービス対応でユーザーの業務効率化に貢献~
・オフィスワークの自動化・省力化を推進する「RICOH Intelligent WorkCore」に対応
・多様なワークフローに対応できる後処理オプション、高速出力により高い生産性を実現
・デジタルサービスとの連携に不可欠となる紙文書のスキャナ機能を強化し、OCR(光学文字認識)処理速度も向上
・導入後も基本機能を最新の状態にアップデートできる「RICOH Always Current Technology」に対応
クラウド対応複合機の基本機能をアップデートする「RICOH Always Current Technology Version 2.0」を提供開始
~スマホライクな拡張性で最新機能に対応し、使いやすさやセキュリティを向上~
・最新のセキュリティ機能に対応したほか、ファクスやスキャンに関連するニーズの高い機能の追加・改善が可能に
・サブスクリプション型商品のラインアップを拡大し、お客様の業務環境変化に柔軟に追従できる便利な追加機能を提供
A4 カラーレーザープリンター/複合機「RICOH P C200L/C200SFL」を新発売
~小型・軽量で小規模オフィスや在宅勤務にも最適~
・一人でも持ち運び可能な軽さを実現する一方、印刷速度は24枚/分に高速化
・国際エネルギースタープログラム、グリーン購入法、エコマークなど各種環境基準に適合
A3 カラープリンター「RICOH P C6000L」を新発売
~世界最小クラス*のコンパクトボディに多様な機能を凝縮~
・オフィスのデスクサイドから店舗窓口まで、様々な場所への設置が可能
・無線LANを標準搭載するとともに、幅広い用紙サイズに対応
*A3カラーLED/レーザープリンターの設置面積(A3用紙使用時)において(2021年12月現在、当社調べ)
「RICOH Interactive Whiteboard A6500-Edu」を新発売
~学びの質を高める機能が充実の、シンプルで使いやすい電子黒板~
・「映す・書く・つながる・共有する」でコラボレーションを促進する教育現場向けモデル
・65インチで4K対応(3840×2160pixels)の高精細なディスプレイで地図や映像などのコンテンツを細部まで表示可能
・難しい操作をせずに直感的に使えるホワイトボードアプリケーションを内蔵
・児童・生徒のパソコン/タブレットからの無線投影機能を標準搭載
なお、当連結会計年度の当事業分野に係る研究開発投資は 34,684百万円です。
(3) グラフィックコミュニケーションズ
当社グループは、現場で働くお客様の課題をデジタルトランスフォーメーションにより解決し、お客様のビジネス拡大をサポートする総合パートナーとなることを目指しており、コンサルティングから印刷、デリバリーに至るお客様のバリューチェーン全体の生産性向上に寄与するソリューションを提供していきます。
商用印刷事業分野においては、印刷業のお客様に向けて、生産性向上に寄与する印刷機やゴールド、シルバーなど高付加価値を可能にする特色トナー、上流から下流まで工程を統合的に管理するワークフローソリューションを組み合わせた提案を行っており、Offset to Digitalを加速して、お客様の現場プロセスのデジタル化・働き方改革を牽引していきます。
そのために、電子写真技術、サプライ技術、光学設計技術、画像処理技術、インクジェット技術、次世代作像エンジン要素技術、最先端ソフトウエア技術の開発を継続して行っております。
また印刷DXを推進するハイデルベルグ社(ドイツ)との長年のパートナーシップや、多様な印刷物を支える加工機ベンダーなどとのアライアンス、お客様と連携してソリューションを開発する取り組みを通じて、印刷のトータルソリューションを提供していきます。
当連結会計年度の主な成果は次のとおりです。
「RICOH Pro VC70000」がFogra認証を取得
~連帳インクジェット印刷機として、業界初のFogra認証取得~
・Fograは印刷業界をリードする認証機関
・Fogra認証取得は、「RICOH Pro VC70000」が業界最高水準に準拠していることを示し、一貫して優れた印刷品質を提供することでお客様のビジネス拡大に貢献
・Fograは以下2つの異なる印刷条件で「RICOH Pro VC70000」がISO 12647-8標準に準拠することを認定
-Fogra59(最新の広色域プリンタ向け基準での印刷)
-Fogra51(ISO 12647-2:2013に準拠したプレミアムコート紙への印刷)
印刷事業者のビジネス拡大を支援する「RICOH BUSINESS BOOSTER」を国内展開
~印刷事業者、ビジネスパートナー、リコーグループによる共創活動を強化~
・「RICOH BUSINESS BOOSTER」は、当社グループで北米・欧州を中心に2014年から展開している印刷事業者やビジネスパートナーの方々との共創活動の総称
・お客様である印刷事業者の課題ごとに当社のプロダクションプリンターや各種ソフトウエア、サービスと、ビジネスパートナー各社の機器、ソフトウエア、サービスを組み合わせたソリューションを3つの軸で最適化して提供
・既存の製品やサービスの組み合わせでは解決できない課題に対しては、価値共創プロジェクトを立ち上げ、印刷事業者やビジネスパートナーとともに新たなソリューション開発に取り組む
・リコージャパン株式会社ではこれまでも、印刷事業者、ビジネスパートナー、当社グループによる課題解決活動を行ってきましたが、この度新たに、価値共創プロジェクトを推進する専門組織を設立し、「RICOH BUSINESS BOOSTER」の活動を加速
産業印刷事業分野においては、産業用インクジェットヘッド技術の開発、製品化に注力し、製品ラインアップの拡充に取り組んでおります。高耐久性と幅広いインク対応力でお客様よりご好評をいただいているMHシリーズヘッドに加え、MEMS (Micro Electro Mechanical System) 技術を活用した小型・高精細印刷に対応するTHシリーズヘッドのフラッグシップモデルを新たに発売し、多様なアプリケーションへの対応力を強化しております。
また、衣料印刷市場向けには、北米・欧州地域でご好評を得ているクラス最高の印刷生産性を実現したガーメントプリンター「RICOH Ri 2000」を日本市場向けに発売しました。エントリークラスの「RICOH Ri 100」と合わせ、お客様の用途に応じた製品提供を行っております。
当連結会計年度の主な成果は次のとおりです。
産業用インクジェットヘッド「RICOH TH6310F」を新発売
~高ギャップ印刷対応とインク循環機能を備えたフラッグシップモデル~
・MEMS技術を活用した独自の高集積設計により、100×8列×2モジュールの1,600ノズルを配列、2.6インチ印刷幅を実

・吐出不良のリスクを大幅に軽減するインク循環構造を採用し、吐出信頼性を確保
・UV、溶剤、水性のすべてに対応したインクにより、サイングラフィックス、テキスタイルなど幅広い用途に対応
・2階調時には周波数80kHz、4階調時には新機能により周波数40kHzの圧倒的な吐出性能を実現
高速ガーメントプリンター「RICOH Ri 2000」を国内市場に向けて発売
~ガーメントプリント市場で求められる高い生産性と使いやすさを両立~
・2つのキャリッジを搭載。ホワイト用キャリッジで下地となるベースレイヤーを印刷した上に、カラー用キャリッジ
でカラーレイヤーを連続して印刷することで高速印刷を実現
・自動ヘッド清掃機能による簡単メンテナンス、テーブルの自動高さ調整による高い操作性、定期自動クリーニングに
よるダウンタイムの低減など、お客様の使いやすさを重視した機能を搭載
なお、当連結会計年度の当事業分野に係る研究開発投資は 25,300百万円です。
(4)インダストリアルソリューションズ
サーマル事業分野においては、世界で圧倒的なシェアを占める高付加価値サーマルペーパー(感熱紙)をはじめ、高い品質の製品・サービスを提供し、さらなるお客様の信頼獲得を目指しております。
高付加価値サーマルペーパーは、近年の環境意識の高まりから、社会課題解決型商品(環境負荷低減:フェノールフリー化)の欧州市場販売を皮切りに、2021年度は日本市場においても販売を開始しました。2022年度は北米市場で販売を開始し、順次、グローバル展開を進めてまいります。
また、長年にわたり培ってきた光学系の独自技術を生かし、半導体レーザー光を用いた「リライタブル レーザーシステム」と「高速印刷ソリューション(FC-LDA Printer)」を事業展開し、人手不足が深刻な物流現場における省人化や製造業における自動化の進展に貢献しております。
リライタブル レーザーシステム「RICOH Rewritable Laser System L3000/C3000」を、2021年4月に日本、7月に北米、中国で発売いたしました。発売以降コンビニ、日用品卸等のお客様において「環境負荷低減」、「自動化省力化実現」が評価され導入が進んできております。製造業のお客様では特に食品業界において「ラベルごみゼロによる衛生環境実現」、「異物混入防止」の実現のため導入が図られております。また本製品と他社製品、システムとの組合せによるソリューションの展開も順次図っていく予定でおります。
産業プロダクツ事業分野においては、これまで培ってきた光学技術、電装技術、画像認識などの最先端技術を融合し、自動車、物流・建機車両の自動制御や安全補助をするステレオカメラの開発を様々なパートナーと進めております。
2021年度は、フォークリフト作業現場の複雑な環境下において、周辺の障害物の中から人、物を立体的にとらえ、高精度に検知することを可能とする後方作業者検知運転支援システムを株式会社豊田自動織機との共同開発にて量産を開始しました。
また、生産技術とIoT、AI、画像認識などの最先端技術を融合し、データ認識処理による情報変換を通じた情報の見える化により、様々な生産設備のインテグレーション、車体・外装部品等の塗装外観を中心とした検査ライン、近年では成長著しい車載リチウムイオンバッテリー生産における安全・信頼性を高める検査ラインの生産・販売を行って現場における少人化、自動化に貢献しております。今後、これら検査設備等から得られるデータの活用により、お客様への新たな価値提案へと繋げていく予定でおります。
当連結会計年度の主な成果は次のとおりです。
生産工程向け高速印刷ソリューション「RICOH FC-LDA Printer 500」を発売
~大量生産ライン内での印刷業務効率向上と省資源化による環境負荷の低減に貢献~
・世界最高出力*の2000Wレーザーマーカー
-10万分の1秒ほどの短時間照射で熱反応を起こして、高速にサーマル印字が可能
・192chレーザーアレイを80kHzで独立変調
-チャンネルごとに最高毎秒8万回変調制御するレーザードライバーを独自に開発し、高速・高精細な印字を実現
・透明性の高いサーマルメディア層
-分散技術や高耐性発色技術を生かしてサーマルインクを開発。これをコーティングすることでラベル、袋、箱など様々なものをメディア化し、レーザー印字が可能に
*2020年8月19日現在、当社調べ
フォークリフト用ステレオカメラを株式会社豊田自動織機と共同開発
~フォークリフト作業における車両と人・物の接触事故の発生を抑制し、現場の安全性向上に貢献~
・広角化技術により水平角130度という広範囲の検知を実現
・3次元ベースの認識技術により不特定多数の人に対してタグ携帯なしでも検知を実現
・画像処理・電源機能をカメラ内に実装することで小型化、ワンパッケージ化を実現
・厳しい使用環境にあるフォークリフトの現場においても動作可能な高い耐環境性能を実現
なお、当連結会計年度の当事業分野に係る研究開発投資は 3,727百万円です。
(5) その他
当社グループの持つ技術力を活かして、産業向けからコンシューマー向けまで幅広い製品・サービスを提供しております。また、ヘルスケア、環境、社会インフラなど、社会課題解決に貢献する新たな事業創出を目指しております。
■デジタルカメラ事業
デジタルカメラ事業を担うリコーイメージング株式会社は22年1月に“リコーイメージングは生まれ変わります”(https://news.ricoh-imaging.co.jp/rim_info/2022/20220120_031454.html)と体制刷新のメッセージを公表しました。PENTAXとGRの2つのブランド価値をより高め、"デジタル"手法を駆使してお客様とダイレクトにつながり、"工房的"ものづくりによって両ブランドの魅力をより一層研ぎ澄ませて深化させる新しい事業体制を構築しております。
当社グループでは、100年に及ぶカメラ開発の歴史で培われた、光学設計、光学部品加工技術を柱に、最先端のデジタル画像処理技術を搭載した画像処理エンジンPRIME VやGR ENGINE 6と、高度なノイズ処理を実現するアクセラレーターユニットI, IIのコンビネーションにより、すべての感度域で優れた階調再現や質感描写を実現したデジタルカメラ製品の開発を行っております。また、これらの技術に加え、当社独自のボディ内手振れ補正機構SR(Shake Reduction)を搭載し、優れた手振れ補正性能を有するとともに、この機構を応用したローパスセレクター機能やリアルレゾリューション機能を開発しております。写真に拘りを持つユーザーの皆様へ、これらの技術を搭載したデジタルカメラを以下のシリーズで提供しております。
当連結会計年度の主な成果は次のとおりです。
APS-Cフラッグシップデジタル一眼レフカメラ「PENTAX K-3 Mark III」を発売
・高い基本性能と「PENTAX STATEMENT」を体現する製品として、こだわりの機能を小型堅牢ボディに凝縮、一眼レフカメラの本質的な価値にこだわり、写真を生涯の趣味として楽しまれている多くの方々が、撮影のプロセスまで愉しめる機能・性能を備えたカメラとして開発
KマウントAPS-Cサイズデジタル一眼レフカメラ用大口径標準ズームレンズ「HD PENTAX-DA★16-50mm F2.8ED PLM AW」を発売
・ズーム全域で開放F2.8と明るく、高い描写性能を追求した「★(スター)」シリーズのAPS-Cサイズデジタル一眼レフカメラ専用大口径標準ズームレンズ
ハイエンドコンパクトデジタルカメラ「RICOH GR IIIx」を発売
・プロフェッショナルユースにも応える高画質とスナップシューティングに最適な小型軽量ボディを両立し、新たに35ミリ判換算で40mm相当の標準画角で撮影が楽しめる新レンズを搭載したハイエンドコンパクトデジタルカメラ
■ヘルスケア事業
当社グループでは高齢化社会への対応、医療費削減、ウイルス等の感染拡大防止などが求められるヘルスケア事業を、社会課題の解決に取り組む分野の1つとして位置付けております。
統合医療介護連携システムなどの「ヘルスケアソリューション」領域、脳磁計・脊磁計などの「メディカルイメージング」領域、独自のインクジェット方式を活用したバイオプリンティング技術を生かした「バイオメディカル」領域の3つの領域を重点領域とし技術開発に取り組んでおります。
当連結会計年度の主な成果は次のとおりです。
脊磁計が国家プロジェクト(AMED)で採択 ・国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)が公募する令和3年「医療研究開発革新基盤創成事業(CiCLE)」(第6回)において「脊磁計による神経機能情報を活用した新たな診断技術の確立」で採択
■環境事業 当社グループは事業を通じて注力する重要社会課題の1つとして、脱炭素社会の実現を掲げており、国内企業で初めてRE100に参加するなど、徹底した省エネや再生可能エネルギーの積極活用に向けた取り組みを強化しております。
製品のエネルギー効率向上、リサイクル材や植物由来原料を用いた素材開発など、技術開発を介して環境負荷の削減に取り組み、室内光で効率的に発電するエネルギーハーベストな環境発電デバイス(DSSC)を搭載したセンサーの製品化や、植物由来のポリ乳酸(PLA)を独自のCO2微細発泡技術にてしなやかさと強度を持たせたPLA発泡シート「PLAiR(プレアー)」の活用可能性を検証するテスト販売を開始しました。ビジネスパートナーや顧客にも協力を働きかけることで、バリューチェーン全体での脱炭素社会づくりへの貢献に取り組んでおります。
当連結会計年度の主な成果は次のとおりです。
電池交換・配線不要な環境センシングデバイスの新製品「RICOH EH 環境センサーD201/D202」を発売
~冷凍環境や高温・高湿度環境のモニタリングをメンテナンスフリーで実現~
・屋内の温度・湿度・照度・気圧といった環境情報を電池交換レス・配線レスで取得できる環境センサーを発売
・発電効率が従来比20%向上、マイナス30℃の低温環境下に対応など、性能アップした固体型色素増感太陽電池を搭載
・冷凍環境や高温・高湿度環境でも使用が可能。自立電源で配線レス&電池交換レスを実現
・防水・防塵機能を備えた「D202」をラインアップに追加することで、利用可能なシーンを大きく広げる
植物由来の新素材「PLAiR」のテスト販売を開始
~緩衝性・断熱性を備え、加工が可能な発泡PLAシートの活用可能性を検証~
・脱炭素・循環型社会の実現を目指し、カーボンニュートラルかつコンポスタブルな植物由来99%の新素材PLAiRを開発
・発泡倍率を変えることで、梱包材や緩衝材、各種容器などに広く使用可能
・発泡倍率15倍を長さ80mのロール状にして発売
・テスト販売を通してお客様の声を伺い、様々な用途への活用可能性を検証
■スマートビジョン事業
360度画像活用ビジネス「RICOH360」では、不動産、建設、広告、店舗などの業種業務を始めとして、様々な業界を横断するグローバルプラットフォームを構築することを目指しております。
品質に定評があるカメラ機器に加え、全天球カメラなどユニークで魅力的なハードウエアとそのデータ活用により、新たな画像・映像体験を創造していきます。
当連結会計年度の主な成果は次のとおりです。
デジタルサービスの拡大に向けて「RICOH360」プラットフォーム事業を強化
・時間や場所にとらわれない情報共有やデータ収集・活用が容易になることで、不動産、建設・建築をはじめとする、様々な業種でのはたらく現場のDX(デジタルトランスフォーメーション)を加速し、業務効率化と生産性の向上に貢献
建設現場の状況共有を効率化するクラウドサービス「RICOH360 Projects」の強化
・RICOH THETA開発の利点を活かし、競合サービスが持たない「タイムラプス機能/ライブ映像機能」を実装。さらに、建設現場に適合した独自デバイス「Wearable」の開発に向けて、モック制作やユーザー価値検証の活動を展開中
・施工管理ワークフローに適合した機能(URL共有)、UX向上(ウォークスルー)、建設DXの推進に寄与する機能(BIM連携)を拡充し、プロダクト価値を向上
・BIM連携は国交省の「イノベーション促進事業」に採択
はたらく現場を効率化する360度カメラ「RICOH THETA X」を新発売
・360度カメラ「RICOH THETA X」を海外先行発売
・2.25型の大型タッチパネルモニターを搭載し、現場で撮影した画像をすぐに確認できるほか、RICOH THETAシリーズで初となるバッテリー、メモリーカードの交換に対応したことで、ビジネスの現場においても効率よく、確実な撮影が可能
■社会インフラ事業
社会インフラの老朽化や自然災害の頻発化、激甚化が進み、インフラの効率的な維持管理が大きな社会課題となっております。当社は社会インフラの課題解決に取り組み、安心安全なまちづくりの実現を目指しております。
一般車両に搭載した独自の撮影システムとAIなどのデジタル技術を用いて自動化し、低コストで効率的な点検の提案を行っております。従来の路面・トンネルモニタリングサービス提供に加え、2022年2月から宮崎県にてのり面モニタリングシステムの大規模実証実験を開始しております。
当連結会計年度の主な成果は次のとおりです。
宮崎県と協同でのり面モニタリングシステムの大規模実証実験を開始
~安心安全なまちづくりを目指し、インフラ点検のDXを推進する新技術の実用化を加速~
・複数のラインセンサーカメラやLiDAR(3次元計測システム)を搭載した車両で道路を走行するだけで、高さや幅が広いのり面でも一度に高画質で撮影して3次元形状を計測し、AI(人工知能)でひび割れなどの変状を抽出
・撮影データの解析に加え、調書作成などの業務プロセスまでをデジタル化し、点検業務の効率化や省力化を実現
・宮崎県が大量に保有する人手での点検結果と本システムで測定した結果を突合し、システム精度の確認や効率化の度合い等の検証を一気に行うことで、のり面点検業務のDXを推進する新技術の実用化を加速
なお、当連結会計年度の当事業分野に係る研究開発投資は 5,836百万円です。
(6) 基礎研究分野
当社グループではこれまで、商品の差別化につながる基礎研究分野として、フォトニクス技術、MEMS、画像認識・画像処理技術を融合した高度なセンシング技術・エッジデバイス技術、分析・シミュレーション等の基盤技術や検証、シミュレーション等の技術機能性材料、プリンティング技術の応用研究開発や、お客様の業務の効率化や時間、場所に捉われない新しい働き方に貢献するためのデータ収集・解析技術、人工知能を応用したシステムソリューション開発を進めてきました。
先端技術研究所では、将来に向けてこれらの技術を核として、2つの提供価値領域にフォーカスして開発を行っております。
・HDT(Human Digital Twin at Work):ワークプレイスで働く人のデジタル化技術。行動センシングやバイタルセンシン グ等の技術と、認識やAI等の技術とを活用し、働く人の創造力発揮を支援する
・IDPS(Industrial Digital Printing System):インクの代わりに機能材料を吐出する産業用インクジェット技術を発展させ、製造・生産プロセスをデジタル化し、飛躍的な改善や廃棄物削減、省エネにつなげる
分析・シミュレーション等の共通基盤技術は、引き続き当社グループの開発生産現場に展開し、さらなる効率化と品質向上を図っていきます。
協業パートナーとの共創も積極的に促進しており、2021年度では十数社の協業パートナーと価値検証を実施いたしました。共創のためのコラボレーションスペース「RICOH Collaboration Hub」では遠隔の顧客・パートナー候補に向けたオンラインセミナーを積極的に開催し、それをきっかけとした個別のオンラインミーティングを実施するなどして、直接来訪していただけない状況でも、コラボレーションの機会を継続的に創出しております。
デジタル戦略部では、お客様に最適なソリューションを提供する共創プラットフォーム「RICOH Smart Integration(RSI)」を支えるデジタル基盤技術として、当社独自のデバイスで獲得できる画像や音声などを利用したAI/ICT技術、並びに、人、システム、業務、企業同士をつなぎ、“はたらく”をデジタル化する技術開発に取り組み、新たな顧客価値創出の具現化を進めております。
これらデジタル基盤技術によって、自社やパートナーの技術をコンポーネントやマイクロサービス、コンテナとして整備することで柔軟に組み合わせ、データを活用した新たなサービスを創造するプラットフォームを実現しております。また、当社の強みである自然言語処理AI技術の研究開発からサービス化された「法務支援クラウド」や「仕事のAI」などから得られた知見をAI化することで、パートナーやお客様にAIを容易にご活用いただけるプラットフォームを目指しております。さらに、創出したサービスをお客様に継続利用いただくため、カスタマーサクセスに適した販売システムに革新していきます。
当連結会計年度の主な成果は次のとおりです。
インクジェット技術による二次電池の量産向け製造プロセス技術
~IoTデバイスなどに向けた多種多様な電池提供を目指す~
・リチウムイオン二次電池の電極材料や、安全性を付与するセラミック材料やセパレータをインク化し、狙った場所に狙った塗布量をデジタル印刷することで、高品質かつ柔軟に形状や膜厚を調整することが可能
・開発パートナーとともに、量産プロセスに適用可能なインクジェット印刷装置を開発し、電池製造に関わるお客様に製造プロセスを提案
・次世代電池として有望視される全固体リチウムイオン電池の固体電解質印刷技術をあわせて開発中
・以上の開発成果を、2022年3月の国際二次電池展で発表
プラスチック容器に直接文字やデザインをレーザーマーキングする技術
~完全ラベルレスで文字・デザインを表示し、プラごみ削減や資源リサイクル推進に貢献~
・商品名や原材料名など、食品表示法などで規定された情報をペットボトルにレーザーで直接書き込むことで、完全ラベルレスを実現
・深さ数十ミクロン程度でごく表面のみを加工し、ペットボトルの品質に影響をあたえずに描画可能
・細かい描画ができるため、成分表示などの小さな文字から、ロゴマークやイラストに至るまで幅広く表現
・描画部分がより白く見えるように光の散乱状態をコントロールすることで、視認性の高い表示が可能
・第一弾としてテスト販売用の「『アサヒ 十六茶』PET630ml ダイレクトマーキングボトル」に採用
なお、当連結会計年度の当分野に係る研究開発投資は 15,284百万円です。