有価証券報告書-第127期(平成31年4月1日-令和2年3月31日)

【提出】
2020/06/25 15:27
【資料】
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【項目】
167項目

研究開発活動

当社グループは、世界市場におけるVOC(Voice Of Customer、顧客の声)を捉え、本社、並びに米国・欧州における子会社の各技術部門等で、積極的な研究開発活動を行っております。また、新技術の早期確立のために、内外の外部研究機関との交流を活発に行っております。特に広帯域波長に対応できる光学応用技術、GNSS(Global Navigation Satellite System)技術やOCT(Optical Coherence Tomography)技術を含む計測・センシング技術、画像処理などの画像応用技術等のコアコンピタンス研究開発に注力するとともに、近年注目されているAI技術による新たな機能の開発やIoTの将来的な普及を見据えた、クラウドコンピューティング技術などのITソリューションによる事業領域拡大に向けた研究開発投資を行い、各事業分野における技術アドバンテージの強化を目指しております。
当年度におけるグループ全体の研究開発費は、15,979百万円(前年度比14.0%の増加)であり、セグメント毎の研究目的、研究成果、及び研究開発費は次のとおりであります。なお下記のほか、全社共通費用として先端研究開発を行っており、その研究開発費は2,162百万円であります。
(1) スマートインフラ事業
スマートインフラ事業は、自社保有技術の高度化・高機能化への研究開発を鋭意継続すると共に、他に類を見ない高付加価値差異化商品を他社に先駆け市場に投入すべく、新たな技術の研究開発と、そのIT応用に関する研究開発を行っております。
当年度における研究成果は次のとおりであり、当セグメントに係わる研究開発費は、1,807百万円であります。
・世界初、回転式レーザースキャナーを搭載したトータルステーション『GTL-1000』を発売しました。今回発売した『GTL-1000』は、トータルステーションとスキャナーの作業を同時に行う事ができる為、点群計測の作業の時間と人員を1/2に削減でき大きな変革を起こす製品です。当社はこれからも、建設現場の生産性を向上する製品の開発・販売を通じ、建設業界の働き方改革促進に貢献してまいります。
・レイアウトナビゲーター(通称:杭ナビ)の2代目モデル『LN-150』を発売いたしました。土木・建築現場における測量作業の中で大きな比重を占める、杭打ち・墨出し作業を「誰でも簡単に1人で素早く」行うことをコンセプトとして、作業効率の大幅向上のみならず、手軽に3次元データを活用する事ができ、土木現場においてはi-Constructionの導入機として好評いただいています。従来機に比べ測定距離、並びに高さ方向の測定範囲を大幅に拡張しました。作業範囲は、従来比約5倍となります。操作はスマートフォンで、各ソフトメーカーの専用ソフトにも対応しておりますので現場用途に合わせてアプリケーションを選ぶことができます。
・3D点群データの処理サービスの業務内容を拡充し、新たに設計データの作成サービスを開始いたしました。国土交通省が推進する『i-Construction』で必要不可欠な3次元設計データの作成・処理は、専門的な知識や経験が必要であり、かつ多くの時間や手間が掛かる業務ですが、この業務をアウトソーシングすることにより、お客様の働き方改革にも貢献できると考え、トプコングループでは今後もサービスの拡充を図り、i-Constructionの普及に向け更なる支援を行ってまいります。
※「i-Construction」は、国土交通省国土技術政策総合研究所の登録商標です。
(2) ポジショニング・カンパニー
ポジショニング・カンパニーは、最先端のGNSSコア技術、マシンコントロール(MC)技術、IMU応用技術、精密農業(AG)技術、土地測量応用技術、ウェブ・クラウドコンピューティング技術を基幹として、各事業分野に幅広い製品とサービスを提供するために世界の18拠点で研究開発活動を展開しております。
当年度における研究成果は次のとおりであり、当セグメントに係わる研究開発費は、8,344百万円であります。
・MC分野では、自動制御機能を搭載したマシンコントロールショベルシステムをリリース致しました。自動制御機能により熟練操作者の技量に頼ることなく、視界が悪い場所でも設計図通りの高精度施工を実現しました。また、建設現場をリアルタイムに施工管理するSiteLink3Dシステムに新たにダンプトラック運行管理機能を追加致しました。建設現場で稼働するダンプトラックをリアルタイム管理する事によりコスト削減と作業効率向上を実現しました。
引き続き、建設現場での生産性・安全性・品質の改善に貢献する製品の開発を行ってまいります。
・GNSS分野では、アンテナ一体型GNSS受信機『HiPer VR』『GRX3』を日本市場でリリース致しました。多彩な衛星測位システムに対応し、上空視界の狭い急峻な地形等の環境下であっても安定した測位で、作業の生産性を向上させます。また、測量土木のトータルソリューションソフトウェア『MAGNET』シリーズをバージョンアップしサービスの拡充を行いました。現場にいてもオフィスの設計データに容易にアクセスすることが可能となり作業効率を向上させます。
・AG分野では、トラクターなど農作業を行う農業機械のデータをクラウド上で一元管理できるプラットフォーム『TAP』に接続できるモデムCL10とCL55をリリースいたしました。CL10はトプコンディスプレイへの接続によるエントリーレベル用、CL-55はあらゆる農業機械ブランドに接続可能であり、自動データ収集だけではなく作業分析/工程管理といった包括的なIoTソリューションに対応いたします。今後も農業の効率を高め食糧安保を強化するために革新的な研究開発を続けています。
(3) アイケア事業
世界では人口増加と共に高齢化が急速に進展し、高齢化に伴う眼疾患の増加、医療コストの高騰、医師不足など様々な問題が発生しています。アイケア事業では、これらの課題を解決すべく、主に「検査」「診断」「治療」領域で、“人の目の健康への貢献”、特にQuality of Vision(見え方の質)の向上を目指し、眼科医向け及び眼鏡店向けの検査・診断用機器、治療機器、そのIT応用に関する研究開発を行っております。
当年度における研究成果は次のとおりであり、当セグメントに係わる研究開発費は、3,508百万円であります。
・DRI OCT TritonのOCT Angiography機能において、画質の改良を行い、臨床の現場で重要となる定量化機能を搭載しました。OCT Angiographyは眼底の血管像を、造影剤を使用せず、非侵襲的に且つ表層や深層といった層ごとに観察することができます。疾患やその進行度によって、それぞれの層における血管の密度や形状が変化することが研究結果として報告されており、この変化を定性的ではなく定量的に評価することが可能となり、診断の材料にすることができるようになりました。
・スリットランプ SL-D4 LEDをリリースしました。 主に欧米地域で高評であるこのタイプのスリットランプにLED光源を採用することで照度が高く、これまでよりも更に明るい観察画像を得られることができ、特に前眼部の病変部分をより鮮明に捉えることが可能となりました。また、新光学系「ブルーフリーフィルタシステム」を搭載したことにより、角膜や涙液の状態観察の診断に加えて、症状の経過観察のための画像取得にも貢献します。
・レーザ光凝固装置 PASCAL Synthesis用スリットランプ SL-PA04をリリースしました。 PASCALはパターンスキャンニングレーザのパイオニアであり、独自のパターンスキャニング技術を搭載し、Precision Spotと呼ばれるパターンスキャンを行う為の合理的かつ画期的な独自技術により、均一性の高い光凝固を実現しています。今回の改良は、現行機種Synthesisのレーザーコンソールにトプコン独自の新光学系と新照明系を専用スリットランプとして組み合わせることで、更なるユーザビリティの向上を実現しました。