有価証券報告書-第129期(令和3年4月1日-令和4年3月31日)

【提出】
2022/06/28 15:31
【資料】
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【項目】
154項目

研究開発活動

当社グループは、世界市場におけるVOC(Voice Of Customer、顧客の声)を捉え、本社、並びに米国・欧州における子会社の各技術部門等で、積極的にグローバルな研究開発活動を行っております。また、新技術の早期確立のために、内外の外部研究機関との交流を活発に行っております。特に広帯域波長に対応できる光学応用技術、GNSS(Global Navigation Satellite System)技術やOCT(Optical Coherence Tomography)技術を含む計測・センシング技術、画像処理などの画像応用技術等のコアコンピタンス研究開発に注力致します。更には、事業拡大に向けて最新のAI技術を活用した新機能の開発やクラウドコンピューティング技術による独創的なソリューション開発に対して投資を進め、各事業分野における技術アドバンテージの強化を目指しております。
当年度におけるグループ全体の研究開発費は、16,180百万円(前年度比8.5%の増加)であり、セグメント毎の研究目的、研究成果、及び研究開発費は次のとおりであります。なお下記のほか、全社共通費用として先端研究開発を行っており、その研究開発費は2,319百万円であります。
(1) スマートインフラ事業
スマートインフラ事業は、自社保有技術の高度化・高機能化への研究開発を鋭意継続すると共に、他に類を見ない高付加価値差異化商品を他社に先駆け市場に投入すべく、新たな技術の研究開発と、そのIT応用に関する研究開発を行っております。
当年度における研究成果は次のとおりであり、当セグメントに係わる研究開発費は、2,372百万円であります。
・BIM施工向けソリューションとして、レーザースキャナー搭載のトータルステーション『GTL-1200』と専用のフィールドソフトウエア『Collage Site』を発売しました。GTL-1200は、当社フラッグシップのロボティックトータルステーションにクラス最高のレーザースキャナーを搭載することにより、建物工事におけるレイアウト作業と高解像度の3Dスキャンを一台で可能とする新機軸の測量機器です。BIM施工との連携を深めるためにCollage Siteフィールドソフトウエアを新たに導入し、従来オフィスで行われていた高度なスキルを必要とする後処理工程が不要になり、フィールド完結型の省力的なワークフローを実現しています。
・建築施工向けシステムとしては、高精度位置出し機『楽位置』(らくいち)と建築施工現場で手軽に扱える超小型360°プリズム『キャンディーミラー』を同時に発売しました。スマートフォン用アプリケーションソフトウエア『楽墨』(らくずみ)との組み合わせにより、建築施工向けワンマン位置出しシステムとして、三次元設計データをダイレクトに活用し、簡単に位置出しや検査が行えるシステムとなっています。建築分野が抱える課題解決に向けたソリューションを提供するとともに、施工現場のDXを推進していきます。
(2) ポジショニング・カンパニー
ポジショニング・カンパニーは、最先端のGNSSコア技術、マシンコントロール(MC)技術、IMU応用技術、精密農業(AG)技術、土地測量応用技術、ウェブ・クラウドコンピューティング技術を基幹として、各事業分野に幅広い製品とサービスを提供するためにワールドワイドに研究開発活動を展開しております。
当年度における研究成果は次のとおりであり、当セグメントに係わる研究開発費は、8,632百万円であります。
・MC分野では、生産性の向上を実現するために自動制御機能を搭載した多様なシステムインテグレーション開発を継続しています。新たなプラットフォームとして日本のQZSS衛星、欧州のGalileo衛星及び中国のBeiDou衛星に対応したMC-X3コントローラーを発売しました。また、舗装システム向けには、アスファルト舗装のワークフローを補完するThermal Mapper (TH-M1)を発売しました。専用ソフトウエアPavelinkを導入することにより、赤外線カメラで取得したサーマルデータとGNSS受信機の位置データを結合させ、施工中のアスファルト舗装のリアルタイムでの品質管理を行うことが可能となりました。
・AG分野では、新たなテレマティクスデバイスCL-20をリリースしました。競合他社コンソールに対応し、競合ユーザーもTAP(Topcon Agriculture Platform兼IoTプラットフォーム)使用可能とする戦略製品と位置付けます。また、既存作業機コントロール製品に加え、精密に種植えを制御するRow Crop Planting Controlをリリースしました。当該製品はトウモロコシや豆に対応した種植え機に搭載するECU(電子制御ユニット)であり、農作業中のターン時にカーブの程度に応じた種植用モータースピードの補正が行われるため、常に均一な種植えを可能します。種植え機向け製品としては初になります。更に、OEM用のOPUSディスプレイシリーズに追加となるOPUS B3 Ecoをリリースしました。自動操舵、計画、作業機を操縦可能な最新のHorizonソフトを搭載しており、耕作、種まき、スプレー、収穫作業の効率化を実現します。今後も農業の効率を高め食糧安保を強化するために革新的な研究開発を続けて参ります。
(3) アイケア事業
世界では人口増加と共に高齢化が急速に進展し、高齢化に伴う眼疾患の増加、医療コストの高騰、医師不足など様々な問題が発生しています。アイケア事業では、これらの課題を解決すべく、主に「検査」「診断」「治療」領域で、“人の目の健康への貢献”、特にQuality of Vision(見え方の質)の向上を目指し、眼科医向け及び眼鏡店向けの検査・診断用機器、治療機器、そのIT応用に関する研究開発を行っております。
当年度における研究成果は次のとおりであり、当セグメントに係わる研究開発費は、2,739百万円であります。
・眼軸長測定と角膜トポグラフィーを同時に測定し、一度の測定で眼軸長、角膜曲率半径、角膜収差解析など様々な情報が得られるMYAHをリリースしました。上記に加え、瞳孔径測定や、Tear Break-Up Time、マイボーム腺機能検査などのドライアイ診断の指標となる検査も可能です。スマートフォンやTVゲームなどの普及による人々の視生活の変化に伴い、世界的に近視人口が増加している中で、MYAHは、眼球の形状変化や近視進行の把握に貢献します。