有価証券報告書

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2015/06/19 16:05
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事業等のリスク

① 世界マクロ経済環境の変化によるリスク
当社はグローバルにビジネスを展開しており、当社の業績も、国内の景気動向とともに、海外諸国の経済動向の影響を受けます。
例えば、エネルギー資源や金属資源の価格が下落する場合には、当社の資源関連の輸入取引や事業投資の収益が大きな影響を受けることとなります。更に、世界景気の冷え込みは、プラント、建設機械用部品、自動車、鉄鋼製品、鉄鋼原料、化学品などの当社の輸出関連ビジネス全般にも影響を与えることとなります。
また、当社は、タイ、インドネシアで、日本の自動車メーカーと協同で自動車の組立工場、販売会社、販売金融会社を設立し、広範な自動車事業を展開していますが、自動車の販売台数はこれらの国の内需に連関するため、タイ、インドネシア両国の経済動向は当社の自動車事業から得られる収益に大きく影響を与えることになります。
当連結会計年度の世界経済は、米国の利上げ観測に加え、中国経済やギリシャ債務問題の先行き懸念、ウクライナや中東などの地政学的リスクの高まりなどから、金融市場や商品市場などのボラティリティが上昇しました。新興国では、投資や輸出の伸び悩みに国内の構造問題も加わり、中国、ブラジルなどの主要国でも成長速度の減速が見られました。
② 市場リスク
以下、連結純利益への影響額の試算は、他に記載のない限り当社の当連結会計年度の連結業績に基づいています。なお、以下「連結純利益」は、「当社の所有者に帰属する当期純利益」を指しています。
a. 商品市況リスク
当社では、商取引や資源エネルギーの権益を保有して生産物を販売すること、事業投資先の工業製品を製造・販売することなどの活動においてさまざまな商品価格変動リスクを負っています。当社の業績に大きな影響を与える商品分野として次のようなものがあげられます。
(エネルギー資源)
当社は豪州、マレーシア、ブルネイ、サハリン、インドネシア、米国・メキシコ湾、ガボン、アンゴラなどにおいて、LNGや原油の上流権益あるいはLNG液化設備を保有しており、LNGや原油の価格変動はそれらの事業の業績に大きな影響を与えます。昨年後半よりサウジアラビアを中心としたOPECの原油生産維持、米国におけるシェールオイルの増産など供給側の変化に加え先進国のみならず中国を中心とする経済減速等により原油価格が急落しました。安価な原油価格による需要回復により2015年後半から2016年にかけて原油価格は緩やかに回復するものと見込まれていますが、依然として原油価格の先行きは不透明であり今後の動向には注視する必要があります。
LNGの価格は基本的に原油価格にリンクしており、1バーレル当たりの原油価格が1米ドル変動すると、当社の連結純利益で主に持分法による投資損益を通じてLNG・原油合わせて年間15億円の変動をもたらすと試算されます。ただし、LNGや原油の価格変動が当社の業績に影響を及ぼすまでにはタイムラグがあるため、価格変動が直ちに業績に反映されるとは限りません。
(金属資源)
当社は、豪州の100%子会社Mitsubishi Development Pty社(以下「MDP」)を通じて、製鉄用の原料炭及び発電用等の一般炭を販売しており、石炭価格の変動はMDPの収益を通じて当社の連結業績に影響を与えます。また、MDPの収益は、石炭価格の変動の他にも、豪ドル・米ドル・円の為替レートの変動や悪天候、労働争議等の要因にも影響を受けます。
銅についても、生産者としての価格変動リスクを負っています。1トン当たりの価格が100米ドル変動すると連結純利益で年間14億円の変動をもたらすと試算されますが、粗鉱品位、生産・操業状況、再投資計画(設備投資)等、価格変動以外の要素からも影響を受けるため、銅の価格のみで単純に決定されない場合があります。
(石油化学製品)
当社はナフサや天然ガスを原料として製造される石油化学製品の貿易取引を広範に行っています。石油化学製品はこれらの原料市況並びに需給バランス等の要因から、製品ごとに固有の市況を形成しており、その変動は当該取引から得られる収益に影響を及ぼします。
また、サウジアラビア、マレーシア、ベネズエラではエチレングリコール、パラキシレン、メタノールなど石油化学製品の製造・販売会社に出資しており、これらの会社の業績も市況の影響を受け、当社の持分法による投資損益に影響を与えます。
b. 為替リスク
当社は、輸出入、及び外国間などの貿易取引において外貨建ての決済を行うことに伴い、円に対する外国通貨レートの変動リスクを負っています。これらの取引では先物為替予約などによるヘッジ策を講じていますが、それによって完全に為替リスクが回避される保証はありません。
また、海外における事業からの受取配当金や海外連結子会社・持分法適用関連会社の持分損益の連結純利益に占める割合が比較的高く、これらの収益の多くが外貨建てであり、当社の報告通貨が円であることから、外国通貨に対して円高が進むと連結純利益にマイナスのインパクトを与えます。当社の試算では米ドル・円のレートが1円変動すると、連結純利益に約25億円の変動をもたらします。
更に、当社の海外事業への投資については、円高が進行すると在外営業活動体の換算差額を通じて自己資本が減少するリスクがあります。このため、大口の投資については必要に応じて為替リスクのヘッジをするなどの施策を実行していますが、完全にリスクが回避できるわけではありません。
c. 株価リスク
当社は、当連結会計年度末時点で、取引先や関連会社を中心に約1兆4,700億円(時価ベース)の市場性のある株式を保有しており、株価変動のリスクを負っています。上記の価額は約5,100億円の評価益を含んでいますが、株価の動向次第で評価益は減少するリスクがあります。また、当社の企業年金では、年金資産の一部を市場性のある株式により運用しています。よって、株価の下落は年金資産の目減りを通じて、年金費用を増加させるリスクがあります。
d. 金利リスク
当社の当連結会計年度末時点の有利子負債総額は6兆3,490億円であり、一部を除いて変動金利となっているため、金利が上昇する局面では利息負担が増加するというリスクがあります。
しかし、この有利子負債の相当部分は金利の変動により影響を受ける営業債権・貸付金等と見合っており、金利が上昇した場合に、これらの資産から得られる収益も増加するため、金利の変動リスクは、タイムラグはあるものの、相殺されることになります。また、純粋に金利の変動リスクにさらされている部分についても、見合いの資産となっている投資有価証券や固定資産からもたらされる取引利益、配当金などの収益は景気変動と相関性が高いため、景気回復の局面において金利が上昇し支払利息が増加しても、見合いの資産から得られる収益も増加し、結果として影響が相殺される可能性が高いと考えられます。但し、金利の上昇が急である場合には、利息負担が先行して増加し、その影響を見合いの資産からの収益増加で相殺しきれず、当社の業績は一時的にマイナスの影響を受ける可能性があります。
このような金利などの市場動向を注視し、機動的に市場リスク対応を行う体制を固めるため、当社ではALM(Asset Liability Management)委員会を設置し、資金調達政策の立案や金利変動リスクの管理を行っています。
③ 信用リスク
当社では様々な営業取引を行うことによって、売掛金、前渡金などの取引与信、融資、保証及び出資などの形で取引先に対して信用供与を行っており、取引先の信用悪化や経営破綻等による損失が発生する信用リスクを負っています。また、当社は主としてヘッジ目的のためにスワップ、オプション、先物などのデリバティブ取引を行っており、デリバティブ取引の契約先に対する信用リスクを負っています。
当社では当該リスクを管理するために、取引先ごとに成約限度額・信用限度額を定めると同時に、社内格付制度を導入し、社内格付と与信額により定めた社内規程に基づき、与信先の信用状態に応じて必要な担保・保証などの取り付けを行っていますが、信用リスクが完全に回避される保証はありません。取引先の信用状態悪化に対しては取引縮小や債権保全策を講じ、取引先の破綻に対しては処理方針を立てて債権回収に努めていますが、債権等が回収不能になった場合には当社の業績は影響を受ける可能性があります。
④ カントリーリスク
当社では海外の会社との取引や出資に関連して、当該会社が所在している国の政治・経済・社会情勢に起因した、代金回収や事業遂行の遅延・不能等が発生するカントリーリスクを負っています。
カントリーリスクについては、保険を付保するなど第三者へのヘッジを原則とし、案件の内容に応じて適切なリスクヘッジ策を講じています。また、リスクを管理するために、カントリーリスク委員会を設置し、本委員会の下にカントリーリスク対策制度を設けています。カントリーリスク対策制度では、国ごとの信用度(国別レーティング)及びカントリーリスク管理上のリスクマネー(出資、融資、保証、及び貿易債権額からリスクヘッジ額を控除した額の合計)に基づきビジネス対象国を6つの管理区分に分類し、区分ごとに枠を設定するなどの手法によってリスクの積み上がりをコントロールしています。
しかしながら、上記のようなリスクヘッジ策を講じていても、当社の取引先や出資先若しくは進行中のプロジェクト所在国の政治・経済・社会情勢の悪化によるリスクを完全に回避することは困難です。そのような事態が発生した場合、当社の業績は影響を受ける可能性があります。
⑤ 事業投資リスク
当社は、株式・持分を取得して当該企業の経営に参画し、商権の拡大やキャピタル・ゲイン獲得などを目指す事業投資活動を行っていますが、この事業投資に関連して投下資金の回収不能、撤退の場合に追加損失が発生するリスク、及び計画した利益が上がらないなどのリスクを負っています。事業投資リスクの管理については、新規の事業投資を行う場合には、投資の意義・目的を明確にした上で、投資のリスクを定量的に把握し、事業特性を踏まえて決定した投下資金に対する利回りが、最低期待収益率を上回っているか否かを評価し、選別を行っています。投資実行後は、事業投資先ごとに、毎年定期的に「経営計画書」を策定し、投資目的の確実な達成のための管理を行う一方で、早期の持分売却・清算等による撤退を促す「EXITルール」を採用することで、効率的な資産の入れ替えを行っています。
しかしながら、このような投資評価の段階での案件の選別、投資実行後の管理を厳格に行っていますが、期待する利益が上がらないというリスクを完全に回避することは困難であり、案件からの撤退等に伴い、当社の業績は影響を受ける可能性があります。
⑥ 重要な投資案件に関するリスク
a. 三菱自動車工業への取組
当社は、三菱自動車工業の要請に応じて、平成16年6月から平成18年1月までに合計1,400億円の普通株式・優 先株式を引き受けました。当社が保有する同社優先株式は、平成25年11月6日に同社が発表した資本再構築プランに基づき、平成26年3月5日に優先株式の一部を匿名組合に現物出資し、残りの優先株式を全て普通株式に転換しました。また当社は、同社とともに、主に海外での販売会社及び関連するバリューチェーン分野での事業展開をしています。当社の同社本体に対するリスクエクスポージャーは当連結会計年度末で約1,600億円となっており、同社関連事業への出資、融資や営業債権などのリスクエクスポージャーは当連結会計年度末で約1,900億円(内、販売金融事業に関するリスクエクスポージャーは約950億円)となっています。これら同社本体へのリスクエクスポージャーと関連事業へのリスクエクスポージャーの合計は当連結会計年度末で約3,500億円となっています。
同社の平成26年度の連結業績は、売上高2兆1,807億円、営業利益1,359億円、当期純利益1,182億円となりました。
b. チリ国銅資産権益取得
当社は、アングロ・アメリカン社(Anglo American Plc、本社:英国ロンドン、以下「アングロ社」)からの打診を受け、同社が100%保有するチリ国銅資産権益保有会社アングロ・アメリカン・スール社(Anglo American Sur S.A.、本社:チリ国サンチャゴ、以下「アングロスール社」)の株式24.5%を平成23年11月10日に、53.9億米ドル(約4,200億円)で取得しました。
その後、平成24年8月23日に、当社は、アングロスール社の株式24.5%の内、4.1%をアングロ社に、8.95億米ドルで譲渡し、この取引の結果、当連結会計年度末現在の本プロジェクトにおけるリスクエクスポージャーは約3,500億円となっています。
アングロ社が、この4.1%と自社グループが保有する25.4%を合わせたアングロスール社株式の29.5%を、チリ国営の銅生産会社であるCorporación Nacional del Cobre de Chile社(本社:チリ国サンチャゴ)と三井物産株式会社が合弁を組む会社(以下、「合弁会社」)に譲渡した結果、アングロスール社は、アングロ社グループが50.1%、合弁会社が29.5%、当社グループが20.4%を保有する、強固なパートナーシップを確立しました。
アングロスール社は、チリ国内にロスブロンセス銅鉱山、エルソルダド銅鉱山、チャグレス銅製錬所、並びに大型の未開発鉱区などの優良資産を保有しています(アングロスール社合計の平成26年銅生産量実績は約44万トン)。
当社は、優良資源事業投資への拡大と持続的に成長可能な資源ポートフォリオの拡充を重点分野として位置付けており、事業の継続的成長を図っていく所存です。
⑦ コンプライアンスに関するリスク
当社は、国内外で多くの拠点を持ち、あらゆる産業を事業領域としてビジネスを展開していることから、関連する法令・規制は多岐にわたっています。具体的には日本の会社法、税法、金融商品取引法、独占禁止法、貿易関連諸法、環境に関する法令や各種業法を遵守する必要があり、また海外で事業を展開する上では、それぞれの国・地域での法令・規制に従う必要があります。
当社はコンプライアンス委員会を設け、その委員会を統括するチーフ・コンプライアンス・オフィサーが連結ベースでの法令・規制遵守を指揮・監督し、コンプライアンス意識を高めることに努めています。
しかしながら、このような施策を講じてもコンプライアンス上のリスクは完全に回避できない可能性があり、関連する法令・規制上の義務を実行できない場合には、当社の業績は影響を受ける可能性があります。
⑧ 自然災害等によるリスク
地震、大雨、洪水などの自然災害や、インフルエンザ等の感染症、大規模事故、その他予期せぬ事態が発生した場合、当社の社員・事業所・設備やシステムなどに対する被害が発生し、営業・生産活動に支障が生じる可能性があります。
当社では、社員の安否確認システムの導入、災害対策マニュアル及びBCP(事業継続計画)の策定、建物・設備・システム等の耐震対策(データ等のバックアップを含む)、防災訓練、必要物資の備蓄、国内外の拠点や関係会社との連携・情報共有などの対策を講じ、各種災害・事故に備えています。但し、全ての被害や影響を回避できるとは限らず、かかる事象の発生時には当社の業績は影響を受ける可能性があります。
(注意事項)
本資料に記載されている業績見通し等の将来に関する記述は、当社が現在入手している情報及び合理的であると判断する一定の前提に基づいており、当社としてその実現を約束する趣旨のものではありません。実際の業績等は様々な要因により大きく異なる可能性があります。