有価証券報告書-第66期(平成30年4月1日-平成31年3月31日)

【提出】
2019/06/26 15:05
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191項目

研究開発活動

当社グループは、滋賀県南草津のニプロ・ライフサイエンスサイト内にて、医療機器ならびに医薬品の研究開発業務を当社が中核となり推進しております。
医療関連事業においては、新規開発分野の増設に伴い、新たに研究施設を滋賀県ニプロ・ライフサイエンスサイト内の総合研究所に増床したことで、開発スペースの確保と、より多くの開発テーマを実施できる環境づくりが整いました。
また、東京大学医学部付属病院と共同研究契約を締結したことにより、学内にも開発施設を設ける事が可能となり、研究員を学内に派遣することで、より現場に近いユーザー目線の製品開発が行える準備を進めております。
グループ会社へ参入したネクスメッドインターナショナル株式会社と株式会社町田製作所とは、両社の得意技術を製品開発へ繋げられる事案を探索し、新たな医療製品の開発や改良に速やかに反映させてまいります。
また、医療研修施設「iMEP(Institute For Medical Practice)」では、施設見学を含めた利用者の増加に伴い、利用者のニーズに叶う時代にあった内容へと充実させるとともに、利用者である医療従事者の方々に使い易い施設を目指して、システム作りを行ってまいります。
一方、医薬関連事業においては、薬剤費の低減や医療の質の向上に対するニーズに応えるため、あらゆる疾患領域、あらゆる剤形の先発医薬品を対象とし、高品質なジェネリック医薬品の開発を行っております。さらに、患者様にとって飲みやすさに配慮した口腔内崩壊錠や医療現場での取り扱いやすさに配慮したキット製剤などの付加価値製品の開発にも注力しております。
なお、当連結会計年度における研究開発費の総額は16,526百万円であります。
セグメントごとの研究開発活動を示すと、次のとおりであります。
(1) 医療関連事業
主に当社の総合研究所が中心となって、以下の研究開発を行っております。
※細胞治療関連部門
細胞治療関連製品においては、参画していた産学官連携の研究プロジェクト(細胞製造・加工システムの開発)のプロジェクト期間を満了し、製品化に繋がる成果が得られました。また、細胞医薬関連製品においては、自己の骨髄細胞を脳梗塞や脊髄損傷の再生治療を実用化することを目指し、札幌医科大学とライセンス契約を締結し、早期実用化に向け再生医療研究所を中心に共同研究開発を進めております。
今春より、脊髄損傷用再生医療等製品「ステミラック®注」が販売開始となりました。今後、安定供給や適用拡大のための研究開発を推進してまいります。
※医療機器関連部門
麻酔関連製品においては、海外向けに麻酔薬のその持続投与において使用される方の意志で痛みのコントロールをするシュアーフューザー新型PCAセットを2018年5月より販売開始となりました。薬液を注入する時のスイッチについてはボタンを大きくまた握りやすく手にフィットするデザインを採用しました。また、紫外線に当たると薬剤の析出物発生や劣化が起こる薬剤において遮光性を付与したシュアーフューザー「SUREFUSER Amber Type」を中南米、オーストラリア向けに開発し2018年9月に販売開始しました。
透析関連製品においては、γ滅菌に対応したニードルレスアクセスポート付き血液回路を2018年8月より施設限定で販売開始しました。
※診断薬、検査関連部門
診断薬関連製品においては、第2世代の薬剤耐性結核診断薬の製造販売承認を日本、インドネシアおよびベトナムにおいて取得しました。また、菌数が少ない喀痰からも簡便に検出できるようになり、東南アジアを中心に海外への販売展開を行う準備を進めております。また、検査関連製品においては、皮下末梢血流量を簡便に測定できる血流計の製造販売承認を取得し、血液一滴で簡単に多項目を検査できるマルチリーフ®の製造販売届出を行いました。
※薬剤機能容器関連部門
薬剤機能容器関連製品においては、新型ハーフキットの発売を2018年7月より開始しました。20年以上販売をしている旧製品の機能性向上を目的としたものです。旧型ハーフキットと比較し、バイアル瓶の斜め刺し防止機構の追加やバイアル瓶離脱時の針戻りによる液漏れ防止機構追加、ボトルの透明性と耐熱性の向上等を図った新型のハーフキットです。製品改良に伴い、製造ラインも新規作製し年間2,000万キットの製造が可能な生産ラインで量産化を実現しました。
また、アリメバッグαの生産を2018年12月より開始しました。30年以上前に立ち上げた生産ラインの老朽化に伴う製造不安を無くすとともに、経腸輸液セットを接続する部材を膜チューブからゴム栓へ変更する事で、抜針時の液漏れの可能性を低減致しました。また、バッグ素材をEVAからPEに素材変更し、安価にクリーンな環境での製造が可能となりました。
その他、侵襲性軽減とハンドル強度を適度に調整した咽頭用スワブや、血友病治療用薬の投与量調整器具も2018年度に上市しました。
※循環器・インターベンション関連部門
心臓の冠動脈を起因とする急性心筋梗塞、冠動脈閉塞等のインターベンション治療(PCI Percut Aneous Coronary Intervention)領域の製品として、狭窄病変を治療するバルーンカテーテル、薬剤コーティングステントの病変到達性を補助する迅速交換型(RX)の冠動脈貫通カテーテル「ガイドプラス」につきまして、他社製品に比べて優れた遠位病変へのデリバリー性能を保持しつつも、通過デバイス(ステントやIVUS(血管内超音波)カテーテル)の適合性を広げる内径拡大の改良を行った「ガイドプラスⅡ ST」また、更に内径を広げ、他社製品と同等の内径を保持しつつ、病変到達性能工場を図った「ガイドプラスⅡ EL」の販売を開始しました。
また、狭窄病変の治療の際に、末梢血管への血栓、デブリスの飛散によるno-flow slow-flowを防止する血栓捕捉カテーテル「フィルトラップ」につきまして、病変末梢へのデリバリー性、ステントを通過してのフィルター回収性について、より操作性を向上した製品「フィルトラップⅡ」の開発が完了し、販売を開始しました。
末梢血管のインターベンション治療(PPI Percutaneous Peripheral Intervention)領域の製品としては、肺動脈圧高血圧症に於けるバルーン肺動脈形成術(BPA Balloon Pulmonary Angioplasty)への適応を高めた、本邦初のテーパバルーンPTAカテーテルにつきまして薬事承認を取得しました。本年度販売を開始いたします。
※人工臓器関連部門
人工臓器関連製品においては、2017年10月に開始した、30日使用を目的とした体外設置型連続流補助人工心臓システムの治験が2018年10月に終了し、2019年度早期の薬事申請を予定しております。また、心筋梗塞や急性呼吸不全などの緊急性が高い救急医療現場での使用が期待される「世界最小・最軽量の人工心肺補助装置(超小型心肺補助システム)」を開発しており、2019年度中の治験開始を目指しております。
なお、この「超小型心肺補助システム」は、2018年度の日本人工臓器学会において「日本人工臓器学会技術賞」を受賞いたしました。
血液浄化関連製品においては、急性腎障害の長時間体外循環治療用血液濾過器として、抗血栓性に優れ生体安全性の高い持続緩徐式血液濾過器を、2019年2月に販売を開始しました。
※外科関連部門
外科関連製品においては、整形外科、心臓外科、腹部外科等の手術時に使用される製品を言い、主に、体内埋込型医療機器の開発を進めております。
当社独自の分解吸収性材料の加工技術を活かし、細胞を使用しないタイプの再生医療製品の開発を進めております。
また、グループ会社となりましたネクスメッドインターナショナル株式会社と整形外科分野をはじめ、新たに、低侵襲外科手術に対応した製品開発を行っております。
今後は、グループ会社となりました株式会社町田製作所と、新たに内視鏡分野における製品作りを共に取り組んでまいります。
なお、当事業に係る研究開発費は8,291百万円であります。
(2) 医薬関連事業
主に当社の医薬品研究所が中心となって、以下の研究開発を行っております。
※注射剤
通常のバイアル製剤、バッグ製剤などに加え、医療現場での利便性向上を企図したキット製剤の開発も積極的に進めております。前立腺癌や閉経前乳癌などの治療に用いるリュープロレリン酢酸塩のダブルチャンバー型のプレフィルドシリンジ(1箇月製剤)(先発:「リュープリン」武田薬品工業)を既に販売しておりますが、この様な開発難易度が高い徐放性注射剤などの分野に注力して、開発を進めております。
なお、今期は点滴用バッグ製剤、バイアル製剤、プレフィルドシリンジ製剤のジェネリック医薬品をそれぞれ1品目ずつ上市しました。
※経口剤
一般的な経口剤(錠剤、顆粒剤など)に加え、苦みを抑制し、水なしで服用できる口腔内崩壊錠(OD錠)やODフィルム製剤などの付加価値製剤の開発も行っております。一方、医療現場での利便性を高めるため、錠剤に成分名などを印刷する事や、個包装、アルミピロー包装などの包装仕様にも工夫を凝らした製品も提供しております。
なお、今期はODフィルム製剤1品目を含め、6成分17品目のジェネリック医薬品を上市しました。また、2成分7品目の製造販売承認を取得しました。
※外用剤
貼付剤など数品目のジェネリック医薬品の開発を進めております。
また、「皮膚に貼る注射剤」という今までにない新しい概念の経皮吸収製剤であるマイクロニドール製剤の開発に取り組んでおり、新たに治験薬製造ラインを立ち上げております。
※バイオ後続品
わが国において、急速に市場拡大しているバイオ医薬品ですが、一般的に高薬価で、医療費削減の観点から、より低薬価であるバイオ後続品の必要性が増大しています。これを踏まえ、品質等が先発と同等であり、価格的優位性を持つバイオ原薬企業と連携し、製品開発を目指しております。
※その他
今期は、吸入用製剤の製造販売承認も取得しました。
なお、当事業に係る研究開発費は8,235百万円であります。