有価証券報告書-第67期(平成31年4月1日-令和2年3月31日)

【提出】
2020/06/26 13:51
【資料】
PDFをみる
【項目】
192項目

研究開発活動

当社グループは、滋賀県南草津のニプロ・ライフサイエンスサイト内にて、医療機器ならびに医薬品の研究開発業務を当社が中核となり推進しております。
医療関連事業においては、2019年3月に東京大学医学部附属病院と5年間の共同研究総括契約書を締結、名称を東京大学ニプロ研究開発センターとし、東大敷地内にある入院棟Bの13階全フロア2,278㎡(15室)を借用し、研究員を在籍させ「次世代に向けた革新的医療技術・機器の開発」を進めており、テーマ公募、検討委員会を経て、数多くの開発案件を採択、各共同研究契約を締結いたしました。
引き続き、専門各科の先生方と研究開発計画を進めていき、貢献できる次代のビジネスとなり得るアイテムやサービスなどを実施いたします。
また、医療研修施設iMEPでは、開設6年目を迎え、利用者数がのべ9万人を超えました。また、昨年初めて地元中学校の体験学習をはじめ、医療研修体験を通じて、ニプロファンとして支えてくれる人材になることを希望しております。
一方、医薬関連事業においては、薬剤費の低減や医療の質の向上に対するニーズに応えるため、あらゆる疾患領域、剤形の先発医薬品を対象とし、高品質なジェネリック医薬品の開発を行っております。さらに、患者様にとって飲みやすさに配慮した口腔内崩壊錠や医療現場での取り扱いやすさに配慮したキット製剤などの付加価値製品の開発にも注力しております。
なお、当連結会計年度における研究開発費の総額は18,204百万円であります。
セグメントごとの研究開発活動を示すと、次のとおりであります。
(1) 医療関連事業
主に当社の総合研究所が中心となって、以下の研究開発を行っております。
※汎用商品開発部門
末梢静脈挿入式中心静脈カテーテルを安全、容易に穿刺するための携帯型血管穿刺エコー「IPエコー」及び、「穿刺ガイドキット」を販売いたしました。なお、IPエコーは、今年度グッドデザイン賞も受賞した商品であります。
また、経鼻カテーテルの気管への誤挿入を防ぎ、食道へ導入補助を行うデバイス「EASI-PON」や、血管穿刺が困難な時に行うシリンジ採血で、注射針の取り外しが発生し、煩雑な操作となる治療行為が、注射針を外すこと無く安全に採血管への血液分注が可能になるシリンジ分注キャップ「タッチレス」などを販売いたしました。
※循環器関連開発部門
PCI治療において高頻度で使用される「薬剤ステント」は、自社で開発しておりますステントを薬事申請のための臨床試験を始めました。このステントは、他社に無い、クラウン数、弱リンク構造を持ち、今までの商品以上に屈曲病変や分岐部病変血管への追従性、耐フラクチャー性を有しており、故人である共同開発ドクターの遺志を受け継ぐステントとなっております。
また、冠動脈貫通カテーテル「ガイドプラスⅡ」を、昨年販売いたしました。他社と比較して、通過性の良さ及び、複雑病変に導入しても破損しない信頼性の高さより、トップシェアを獲得しております。他社参入も始まってきており、さらなる改良、サイズ追加また海外展開を進めてまいります。
新たな治療へのアプローチとして、①慢性肺動脈高血圧症(CTEPH)治療に行われるテーパ型のPTAバルーンカテーテルおよびインターベンションデバイス技術を他領域へ応用したデバイスとしての整形外科領域の低侵襲治療、②FELD法(Full Endoscopic Lumbar Discectomy)用の国内初のディスポーザブル鉗子デバイス、これらについて開発が完了し、販売いたします。
※人工臓器デバイス開発部門
動圧軸受け遠心ポンプは、30日間の長期使用を目指した治験が完了し、販売開始に向けて、申請業務を進めております。
また、経皮的に血管内に挿入・留置して、体外循環を行うためのカニューレを販売し、脱血用、送血用カニューレをそれぞれ3サイズずつ品揃えしており、他社品に比べ、血管挿入先端部の段差を少なく、血管損傷リスクを低減させます。
主に、急性腎不全の患者に長時間持続的な血液濾過に用いられ、ATA膜の性能安定性と生体適合性が現場ニーズを満たす、持続緩徐式血液濾過器を販売いたしました。また、バスキュラーアクセスカテーテルと一緒に用いる機器として、ニードルレス接続システム(セーフタッチプラグ 透析用)や、カテーテルや穿刺部等の消毒に用いる消毒綿「アルメンダフル」を販売いたしました。
※診断薬、検査関連部門
第2世代の薬剤耐性結核診断薬(遺伝子検査)をタイ王国にて製造開始し、海外入札に対応できるようにコストダウンを実現しました。今後発展途上国を中心に海外展開を図ります。透析などに用いる太い針を抜針した後、止血しにくいことがありましたが、素早く止血できるカチオン化セルロースを用いた止血デバイスを開発、近日販売予定です。
また血液一滴で簡単に多項目を測定できるマルチリーフ®を販売いたしました。
※医薬包装関連商品部門
約30年製造販売していた旧アリメバッグの各種不具合点を対策し『アリメバッグα』として、薬液抽出口は輸液瓶針が外れても液漏れが無いように膜チューブからゴム栓へ変更、CSLベーリング向けスリートック薬剤の調製を安全に簡便に行える様に、特定バイアルに適合スリートックを販売いたしました。
また、ESD手術後、格納容器でネオバール(吸収性組織補強材)を患部まで輸送し患部にネオベールを置く際の支持体を患者の患部に輸送するための格納容器である「内視鏡治療用格納容器」や、PFSの流量精度(1.0mL/min±3.0%)に対応する為、流量精度が不適になる原因と、その対策を検討したデクスメデトミジン注射液200μgや、薬剤バイアルのアルミ部小径品をアダプタ無しでも使用可能に改良し、特定抗生物質の針穴詰まりがしづらい設計と、ボトルの胴部肉厚を調整し、排液性能を高めた新型ハーフキットを販売いたしました。
※整形外科関連開発部門
神経再生誘導管の治験を通じて共同研究を行ってきた、名古屋大学の「手の外科講座」と、産学連携講座を継続し、共同開発を進めております。また、東北大学とも、新規材料である「リン酸オクタカルシウム(OCP)」を利用し、従来品より骨再生の早い人工骨の共同研究を進め、治験を目指して準備を進めております。
これら整形外科製品は、グループ会社のネクスメッドインターナショナル株式会社と連携の上、開発を行っており、また、一昨年よりグループに加わった株式会社町田製作所は、既存内視鏡製品の改良と新規商品の開発を充実させ、ビデオスコープの開発・市場投入を進めております。
※細胞デバイス開発部門(細胞治療商品)
樹脂製にすることによりガラスより割れにくく、先端形状を丸くして細胞を傷つけないようにしたパスツールピペットである「プラスチックパスツール」や、ES/iPS細胞や間葉系幹細胞に代表される接着細胞を閉鎖的に効率に培養できるカルチャーバッグ「接着用カルチャーバッグ」も製品化しました。
※治験・薬事申請部門
治験が必要となるデバイスはいずれも高付加価値であり、売上および利益に貢献いたします。治験は自社内で立案、実施しており、外部委託による費用増大を抑制しています。さらに、ノウハウの蓄積により、商品開発のヒントや、薬事戦略のプランニングに寄与しています。
※医療研修関連部門
海外iMEPでは、ベルギーiMEPは、当社透析商品研修を中心に実施し、医療機器の適正使用を通して医療安全に貢献してまいりました。また、利用率向上のため、日本iMEPから1名派遣し、医療団体へのアプローチをさらに進めました。さらに、今年度、開設予定にしているタイiMEPですが、スタッフが来日し、開設と医療研修充実にも全面協力しております。日本、ベルギー、タイ3カ国のiMEPの活動を積極的進めるためにご協力をお願いいたします。
なお、当事業に係る研究開発費は9,726百万円であります。
(2) 医薬関連事業
主に当社の医薬品研究所が中心となって、以下の研究開発を行っております。
※注射剤
通常のバイアル製剤、バッグ製剤などに加え、医療現場での利便性向上を企図したキット製剤の開発も積極的に進めております。前立腺癌や閉経前乳癌などの治療に用いるリュープロレリン酢酸塩のダブルチャンバー型のプレフィルドシリンジ(1箇月製剤)(先発:「リュープリン」武田薬品工業)を既に販売しておりますが、この様な開発難易度が高い徐放性注射剤などの分野に注力して、開発を進めております。
なお、今期はバイアル製剤のジェネリック医薬品1品目の製造販売承認を取得しました。
※経口剤
一般的な経口剤(錠剤、顆粒剤など)に加え、高難度な徐放性製剤の開発も行っております。一方、医療現場での利便性を高めるため、錠剤に成分名などを印刷する事や、個包装、アルミピロー包装などの包装仕様にも工夫を凝らした製品も提供しております。
なお、今期は、3成分8品目のジェネリック医薬品を上市しました。また、7成分12品目の製造販売承認を取得しました。
※外用剤
貼付剤など数品目のジェネリック医薬品の開発を進めております。
また、「皮膚に貼る注射剤」という今までにない新しい概念の経皮吸収製剤であるマイクロニードル製剤の開発に取り組んでおり、新たに治験薬製造ラインを立ち上げております。
※バイオ後続品
わが国において、急速に市場拡大しているバイオ医薬品ですが、一般的に高薬価で、医療費削減の観点から、より低薬価であるバイオ後続品の必要性が増大しています。これを踏まえ、品質等が先発と同等であり、価格的優位性を持つバイオ原薬企業と連携し、製品開発を目指しております。
なお、当事業に係る研究開発費は8,478百万円であります。