有価証券報告書-第93期(平成29年3月1日-平成30年2月28日)

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2018/05/24 16:15
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業績等の概要

(1) 業績
当連結会計年度(平成29年3月1日~平成30年2月28日)の当社及び連結子会社291社の連結業績は、親会社株主に帰属する当期純利益が117.9%増益の245億22百万円となりました。営業収益が過去最高となる8兆3,900億12百万円(前期比102.2%)、営業利益も13.8%増益の2,102億73百万円となり、過去最高を更新しました。収益構造改革に取り組むGMS(総合スーパー)事業は、荒利益率の改善と経費の効率運用を推進し、すべてのセグメントの中で最大の損益改善となりました。国際事業は展開各国におけるお客さまニーズへの対応を強化したことで営業黒字化を果たしました。引き続き総合金融事業、ディベロッパー事業並びにドラッグ・ファーマシー事業が利益の柱として着実に伸長したことに加え、SM(スーパーマーケット)事業では当第4四半期連結会計期間には増益に転じました。経常利益についても14.1%増益の2,137億72百万円と過去最高を更新し、すべての利益において「イオングループ中期経営計画」初年度の利益計画を達成しました。
【グループ共通戦略の推進】
・ 平成30年2月期を初年度とする「イオングループ中期経営計画」において、主要な取り組みとして「既存事業の収益構造改革」並びに「新たな成長に向けたグループ構造改革」を掲げました。また、12月には平成32年に向けた中期経営方針を発表し、リージョナルシフト、デジタルシフト、アジアシフトとそれらに連動する投資のシフトというグループの変革の方向性を打ち出しました。具体的には、お客さまの食に対するニーズの変化やデジタル化に対応するため、各地域での市場シェアNo.1を目指し、エリア毎にグループのSM事業とGMSの食品部門の統合並びに再編を進めます。衣料品、住居余暇等の部門については、専門会社として分社化し、より専門性を高めることでGMS事業のさらなる成長を図ります。さらに、グループ営業利益に占めるアジア比率を23%に引き上げるほか、これまで店舗中心であった投資を、IT、物流、デジタルに傾斜配分することで、グループにおけるデジタル売上比率を12%に引き上げてまいります。
・ 6月、ハノイ市人民委員会(ベトナム)と、大型ショッピングモール開発や小売、金融・サービス等の事業展開を通じた同市の経済活性化と地域の一層の発展に向けて、「ハノイ市における投資及び事業推進に関する包括的覚書」を締結しました。11月には、インドネシア国家輸出発展局と「インドネシア製品の販売促進協力に関する包括的覚書」を締結しました。イオンのグローバルな物流網と小売ネットワークを活用し、今後需要の拡大が見込まれるハラル認証商品等の展開強化に向けた包括的な協力体制を構築してまいります。
・ 1月、「トップバリュ」において、食パンや食器用洗剤等、毎日の生活に必要な商品100品目を値下げしました。平成28年11月以降これまでに「トップバリュ」263品目の値下げを実施しており、イオングループのスケールメリット最大化、生産・物流の効率化や国内外のベストソースからの原料調達等のさらなる企業努力を重ねて合理的にコストを削減したことで、値下げ対象商品を拡大しました。結果、グループ全体における「トップバリュ」売上実績は、7,271億円(前期比101.6%)となりました。
セグメントの業績は次のとおりであります。
なお、当連結会計年度より、報告セグメントの区分を変更しており、前連結会計年度との比較・分析は、変更後の区分に基づいて記載しております。
① GMS事業
GMS事業は、営業収益3兆842億78百万円(前期比100.6%)、営業利益は105億36百万円(前期より118億58百万円の増益)となりました。
イオンリテール㈱は、当連結会計年度において9店舗を出店しました。9月にオープンした「イオンスタイル豊田」(愛知県)は、地域密着型店舗として、九州出身者が多い地域特性を考慮した食品の品揃えの充実を図るとともに、若いファミリー世帯が多い地域であることに着目してママと子どもに優しいフードコート「まいまいキッチン」やベビーパーキングを設置する等の取り組みを進めた結果、年間を通じて売上、利益ともに計画を上回る実績をあげています。11月には、新店では初となるG.G(グランド・ジェネレーション)店舗として「イオンスタイル検見川浜」(千葉県)を出店しました。G.Gとは、シニアに代わる世代の考え方で、豊かな知識と経験のもと、若々しく年齢を重ね、人生を楽しまれている年長の方々を表し、同店では、健康をテーマにした商品・サービスを幅広く提案しています。特にサービス面においては「コミュニティ」をテーマに、ラジオ体操を行うイベントスペースやG.G対応のフィットネスクラブを設置したことに加え、くらしのお役に立ち、困りごとを解決する「暮らしのパートナー」サービスを導入しご好評をいただいています。このような付加価値のある商品、サービスの提供に加え、お客さまの節約志向にお応えする価格の実現にも努めるとともに、51店舗で既存店舗の活性化を推進しました。結果、既存店舗のお客さま一人あたり買上点数は前期比で101.1%(曜日調整後)と改善し、「トップバリュ」の売上伸長等による荒利益率の改善に加え、販促費用の効率化等、経費削減の取り組みが奏功し、当連結会計年度の営業損益は前期差で34億30百万円改善しました。
イオン北海道㈱は、「地域に合わせた店づくりの推進」を掲げ、「イオン道産デー」や各種国内フェア等季節を味わう旬の食材や全国各地域で支持されている人気商品の提案に取り組んだ食品部門、並びに専門店化により強化してきたヘルス&ビューティケアやフラワー&ガーデンの売上が伸長しました。加えて、まいばすけっと事業やネットスーパー事業も前期比で2桁成長し、売上高が過去最高(前期比101.2%)を更新しました。さらに、売上総利益率の3期連続の改善や販管費の抑制等により、各段階利益のいずれにおいても過去最高となりました。
② SM事業
SM事業は、営業収益3兆2,409億78百万円(前期比100.7%)、営業利益は307億22百万円(同91.2%)となりました。農産品の相場安や10月の台風による既存店売上高への影響、社会保険適用拡大等に伴う人件費の増加や電気代の単価上昇等、厳しい環境が続きましたが、地域のお客さまのニーズに対応した継続的な取り組みと生産性の改善を進めたことで当第4四半期連結会計期間には増益に転じました。
展開地域を首都圏・京阪神地域に集中し、食品への特化を図る㈱ダイエーは、業態・商品・構造改革を推進しました。15店舗で活性化を行ったことに加え、毎日お買い得な「えっ!安い値!」や週間販売強化商品を積極的に展開しました。食品加工センターの活用拡大等による店舗作業負担の軽減や販促費の効率的運用等の取り組みによる経費削減も推進し、平成28年2月期以降3期連続の営業損益改善となりました。
ユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス㈱は、同社が中期経営計画で掲げる商品改革・ICT改革・コスト構造改革・物流改革を推し進めました。同社連結子会社の㈱マルエツでは、省力化施策としてセミセルフレジを189店舗へ拡大させるとともに、効率的な店舗オペレーションの構築に向けトータルLSP(作業割当)システムを全店に導入しました。
マックスバリュ西日本㈱は、店舗でのデジタル化を進める施策の一環として、セルフスキャンシステム「マイピ」を1月に導入しました。店舗で貸し出しする専用端末により、お客さまが購入商品をスキャンし、精算機に読み込ませるだけで素早く会計が完了する新しいお買物スタイルを提案しています。お客さまの利便性向上と店舗業務の効率化を図り、レジ混雑の緩和にもつなげてまいります。
③ ドラッグ・ファーマシー事業
ドラッグ・ファーマシー事業は、営業収益6,963億92百万円(前期比111.7%)、営業利益277億円(同125.6%)となりました。
ウエルシアホールディングス㈱及び同社連結子会社は、既存店舗の活性化等により、「ドラッグ&調剤」、「深夜営業」、「カウンセリング」、そして「介護」を4つの柱とする「ウエルシアモデル」を積極的に推進しました。その結果、調剤併設店舗の増加(2月末現在1,160店舗 シンガポール2店舗含む)による調剤売上の伸長、お客さまへの安心の提供と利便性向上を目的とした24時間営業店舗の拡大等により、既存店売上高が好調に推移しました。また、健康をキーワードにした商品開発や即食需要に対応した弁当・総菜の販売、地域協働の場として設置を推進しているフリースペース「ウエルカフェ」の拡大等、地域に密着した経営を積極的に行いました。3月1日には、シンガポールにWELCIA-BHG(SINGAPORE)PTE.LTD.を設立し、11月に1号店を、12月に2号店を開店しました。9月1日には、東北地方を地盤とする㈱丸大サクラヰ薬局の株式を取得して子会社化し、当連結会計年度末の店舗数は1,693店舗(海外含む)となりました。
④ 総合金融事業
総合金融事業は、営業収益4,080億92百万円(前期比109.7%)、営業利益697億66百万円(同112.7%)となりました。
イオンフィナンシャルサービス㈱の国内事業では、イオングループ内及び外部加盟店での利用拡大や若年層の会員開拓を目的に、外部企業や人気キャラクターとのコラボレーションによる新規カードの発行を開始し、協業先と連携したプロモーション活動を継続的に実施しました。さらに、ロボット技術によるカード入会受付の実験開始や、金融機関として初めて、生体認証だけで銀行取引が可能となるシステムを導入する等、新技術を活用したビジネスモデルの変革を進めました。開業10周年を迎えた㈱イオン銀行では、国内営業基盤の強化を進め、銀行店舗数は138店舗となりました。また、「イオン銀行iDeCo」の取り扱いや「つみたてNISA」の受付を新たに開始しました。加えて10月1日付で、これまでイオンクレジットサービス㈱が銀行代理店として営んできたインストアブランチの運営を㈱イオン銀行へ承継し、全店を㈱イオン銀行の直営店とすることで、資産形成サービスをシームレスに提供できる体制を整備しました。
香港では、イオン店舗でのお買物について常時ポイント2倍とするゴールド会員向け特典の開始や人気キャラクターとのコラボレーションによる新規カードの発行等、取扱高及び会員数の拡大に努めました。タイでは、小売大手他社との提携カードの発行を開始し、提携先と連携したプロモーション活動を推進しました。また、クレジットカードの新規制への対応を進めるとともに、審査の厳格化等による貸倒コストの抑制に努めました。マレーシアでは、タブレット端末やデジタルサイネージを活用したペーパーレス化を引き続き推進しました。フィリピンにおいては、新たなIoTデバイスを活用したタクシー向けオートローン事業を開始したほか、同様の新技術を活用した取り組みをカンボジアへ展開する等、お客さまへのサービス向上を図りました。
⑤ ディベロッパー事業
ディベロッパー事業は、営業収益3,356億64百万円(前期比106.2%)、営業利益515億42百万円(同110.0%)となりました。
イオンモール㈱は、既存モールの増床・リニューアルを積極的に推進しており、国内においては、当連結会計年度に2モールの増床、12モールのリニューアルを行いました。「オペラ de イオンモール」や「モールウォーキング」等「ハピネスモール」の取り組みによるシニア層を含めた新たな顧客層の取り込みや、ローカライゼーションの推進を目的とした営業施策が奏功し、来店客数・専門店売上とも前年同期を上回り、好調に推移しました。当連結会計年度においては「イオンモール新小松」(石川県)や「イオンモール松本」(長野県)等5モールを開設しました。今後の成長ドライバーとして位置付けている海外事業では、前連結会計年度までにオープンした19モール中14モールが黒字化し、海外事業全体での黒字化が視野に入ってきました。
また、都市型ファッションビルを展開する㈱OPAでは、3月に4年ぶりの新店となる「水戸オーパ」(茨城県)を、10月には新生OPAの旗艦店となる「高崎オーパ」(群馬県)を開設するとともに、前期末に営業終了した秋田フォーラスを「秋田オーパ」(秋田県)としてリニューアルオープンしました。
結果、イオンモール㈱の当連結会計年度における業績は、営業収益及びすべての利益において過去最高となりました。
⑥ サービス・専門店事業
サービス・専門店事業は、営業収益7,742億37百万円(前期比101.1%)、営業利益202億61百万円(同 76.8%)となりました。
イオンディライト㈱は、国内外で新規顧客の開拓に取り組むとともに、資産価値向上の観点から既存顧客への提案を強化しました。また、ファシリティマネジメントの自動化や効率化を目的に、各種設備の遠隔監視や自動制御化をはじめ、IoTやAIといったテクノロジーの活用に向けた実証並びに研究開発を進めました。
㈱イオンファンタジーは、国内において、既存店における遊戯機械売上が平成27年9月から30カ月連続で前年同期を上回り好調に推移しました。オリジナル景品の導入拡大や、昨年より積極的に取り組んでいるWeb販促が功を奏し、クレーンゲーム部門が売上の増加に大きく寄与しました。また、当連結会計年度は8店舗の出店に加え、42店舗の活性化を行い、活性化店舗の売上高は前期比115.0%と着実に伸長しました。海外事業においては、中国で44店舗、アセアンで34店舗を出店しました。中国では、アプリ会員システムの会員数が順調に増加し、増収増益となりました。アセアンでは、既存店売上高が好調に推移し、黒字化を達成しました。結果、当連結会計年度における業績は、売上高及びすべての利益において過去最高となりました。
⑦ 国際事業(連結対象期間は主として1月から12月)
国際事業は、営業収益4,188億84百万円(前期比105.1%)、営業利益2億32百万円(前期より56億34百万円の増益)となりました。
イオンマレーシア(AEON CO.(M)BHD.)は、9月、ジョホール州に新店をオープンしました。生鮮コーナーにはキッチンスタジオを併設し、輸入食材等を扱うコーナーを設置する等、新しいライフスタイルの提案に努めました。また、お客さまの美と健康に関する日々のお悩み解決をお手伝いするソリューションストアを目指して展開を進めるドラッグストア「AEON Wellness」の店舗数は、これまでに50店舗を超えました。既存店舗の活性化や、商品・売場改革の推進、社会行事への取り組み強化等による荒利益率の改善が業績に寄与しました。
イオンベトナム(AEON VIETNAM CO.,LTD.)は、社会行事への対応に注力し、ブラックフライデーやクリスマスでの新たな商品提案が売上拡大につながりました。生鮮食品へのお客さまのご支持が年々高まっている中で、8月に開始したベトナム初となる日本産の梨の販売や、自社開発商品の展開拡大等が新たな需要創造に貢献しました。衣料においてもお客さまのライフスタイルの変化や新たなニーズに応えた売場・商品・サービスの提供に努め、若年層を中心に新規顧客を開拓しました。加えてショッピングセンター運営では、新たなテナントの導入を積極的に進めました。これらの取り組みが奏功し、大幅な増収増益となりました。
中国においては、広東イオン(GUANGDONG AEON TEEM CO.,LTD.)が12月に新店をオープンし、イオングループの中国(香港含む)におけるGMS店舗は55店舗となりました。前期に不振店舗を閉鎖し、基幹店舗の活性化等、既存店舗に経営資源を集中した青島イオン(青島永旺東泰商業有限公司)が黒字転換を果たしたのをはじめ、中国本土全体の業績も大幅な改善となりました。
なお、上記の金額及びこれ以降に記載している営業収益、仕入高等には消費税等は含まれておりません。
(2) キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という)は、前連結会計年度末に比べ679億13百万円増加し、8,700億13百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果、増加した資金は4,639億11百万円(前期比157.3%)となりました。前連結会計年度に比べ1,690億18百万円増加した主な要因は、銀行業における貸出金の増減額が908億26百万円増加し資金が減少した一方で、銀行業における預金の増減額が1,260億10百万円、その他の資産・負債の増減額が966億57百万円増加し資金が増加したこと等によるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果、減少した資金は4,278億54百万円(前期比159.8%)となりました。前連結会計年度に比べ1,601億43百万円支出が増加した主な要因は、固定資産の取得による支出が546億60百万円減少した一方で、固定資産の売却による収入が1,069億21百万円、銀行業における有価証券の売却及び償還による収入が776億6百万円それぞれ減少したこと等によるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果、増加した資金は286億41百万円(前期比35.2%)となりました。前連結会計年度に比べ528億9百万円減少した主な要因は、短期借入金及びコマーシャル・ペーパーの増減額が573億26百万円増加し資金が増加した一方で、社債の発行による収入が628億81百万円減少、連結範囲の変更を伴わない子会社株式の取得による支出が328億74百万円増加し資金が減少したこと等によるものです。