有価証券報告書-第56期(平成28年9月1日-平成29年8月31日)

【提出】
2017/11/30 15:03
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【項目】
62項目

業績等の概要

(1) 業績
当連結会計年度(2016年9月1日~2017年8月31日)の連結業績は、売上収益が1兆8,619億円(前期比4.2%増)、営業利益が1,764億円(同38.6%増)、税引前利益は1,933億円(同114.3%増)、親会社の所有者に帰属する当期利益は1,192億円(同148.2%増)と過去最高の業績を達成することができました。売上総利益率は前期比で0.4ポイント改善し、グループ全体で進めている経費削減対策により、売上販管費比率も同0.4ポイント改善しました。また、その他収益費用には、為替差益21億円、減損損失93億円などを計上しています。加えて、期末の為替レートが期初に比べて円安になったことから、長期保有の外貨建資産などの換算額が増加し、金融損益に為替差益133億円を計上しています。セグメント別の業績としては、特に海外ユニクロ事業が大幅な増益となり、グループ全体の業績を牽引しています。
当社グループは、「情報製造小売業」として世界No.1のアパレル小売企業となることを中期ビジョンに掲げ、中でも海外ユニクロ事業、ジーユー事業の拡大に注力しています。各国において、ユニクロの出店を継続すると同時に、世界主要都市にグローバル旗艦店、大型店を出店し、ユニクロブランドのグローバル化を図っています。海外ユニクロ事業では、特に東南アジアは、グレーターチャイナ、韓国に次ぐ事業の柱として成長ステージに突入しています。また、ジーユー事業は、国内市場の出店に加え、中国大陸・香港・台湾を中心とした海外市場での事業の拡大も図っていきます。当社グループは、2017年2月に、有明オフィス(UNIQLO CITY TOKYO)を稼動させ、新しい働き方の改革を進めて、企画からデザイン、素材調達、生産、物流、販売までのサプライチェーンを変革し、「情報製造小売業」へ業態を転換させていきます。なお、Eコマース事業では2017年3月にスマートフォンサイトの刷新と同時に、特別サイズやオンライン限定商品、セミオーダー商品などの圧倒的な品揃え、コンビニエンスストアや店舗での受け取りなど、商品やサービスを充実させることで、さらなる事業拡大をめざしています。
[国内ユニクロ事業]
国内ユニクロ事業の当連結会計年度の売上収益は8,107億円(同1.4%増)、営業利益は959億円(同6.4%減)と増収減益となりました。通期の既存店売上高(Eコマース含む)は、客数増により、同1.1%増でした。上期は売上規模の大きい12月に気温が高かった影響により、同0.1%増にとどまりましたが、下期はワイヤレスブラ、感動パンツ、イージーアンクルパンツ、UTなどの話題性のある商品の販売が好調だったことにより、同2.4%増となりました。また、Eコマースの販売は通期で15.6%増となり、売上構成比は6.0%へ上昇しました。収益面では、売上総利益率の改善が0.3ポイントにとどまった一方で、売上販管費比率が1.3ポイント上昇したことにより営業利益は減益となりました。販売費及び一般管理費については、広告宣伝費等の経費削減対策を進めたものの、人件費や物流改革に伴う一時的な物流費の増加がありました。
[海外ユニクロ事業]
海外ユニクロ事業の当連結会計年度の売上収益は7,081億円(同8.1%増)、営業利益は731億円(同95.4%増)と、営業利益はほぼ倍増しました。これは、各エリアで値引きを抑えた商売に転換したことで、売上総利益率が大幅に改善したこと、経費削減の効果がみられたことに加え、米国の赤字が半減したことによります。特に東南アジア・オセアニア地区の業績が好調でした。ポロシャツ、ドライTシャツなどのコア商品のラインナップの拡充に加え、気候や文化に合わせた東南アジア企画商品が好調で売上総利益率が大幅に改善しました。韓国では経営改革を進めたことにより、下期の既存店売上高が増収に転じ、通期の営業利益は大幅な増益となりました。また、中国大陸では、時節や祝日に合わせたキャンペーンで集客できたことにより、既存店売上高の増収が継続したことから、グレーターチャイナ全体の営業利益は大幅な増益を達成しました。米国では地域の特性に応じた商品構成や販促活動が奏功したことに加え、経営改革が進んだことから、赤字幅が半減しました。欧州は、ロシア、フランスを中心に20店舗の出店と、出店数が増えたことによる経費増により、営業利益は若干の減益となりました。なお、2017年9月に、スペイン初の店舗をバルセロナにオープンし、好調なスタートとなっています。
[グローバルブランド事業]
グローバルブランド事業の当連結会計年度の売上収益は3,401億円(同3.5%増)、営業利益は140億円(同47.5%増)と増収増益となりました。増益となった要因は、セオリー事業が大幅な増益になったこと、J Brand事業の減損損失が縮小したことによります。
ジーユー事業の通期の売上収益は1,991億円(同6.0%増)、営業利益は135億円(同39.0%減)と増収減益となりました。デザインブラウスやビッグシルエットトップス、デザインボトムス、パジャマ、シューズなど好調な商品に欠品による機会ロスが生じた一方で、想定したほどのヒットにならなかった商品もあったため、既存店売上高は通期で3%の減収となりました。売上が計画を下回ったことにより売上総利益率が低下、売上販管費比率が上昇したため、営業利益は減益の結果となりました。なお、2017年3月に初出店した香港は、成功を収めています。
セオリー事業は大幅な増益となりました。これは、米国のセオリーブランドが好調だったことに加え、PLST(プラステ)ブランドの収益性が改善したことによります。コントワー・デ・コトニエ事業は減収となりましたが、経費削減を進めたことで、赤字幅が縮小しました。プリンセス タム・タム事業は赤字が継続、J Brand事業は減損損失36億円を計上しました。
[サステナビリティ(持続可能性)]
経済のグローバル化や発展にともない、人々の暮らしに様々な恩恵がもたらされる一方、地球環境負荷の増大、難民や人権の問題など、深刻な課題も発生しております。
社会は企業に倫理的な行動と、上記の課題に対する強いリーダーシップを期待しております。当社グループもサステナビリティという喫緊の課題に向き合い、独自のビジネスを通して、持続可能な社会の実現に貢献してまいり
ます。
当社は2017年2月に「ファーストリテイリンググループ サステナビリティポリシー」を制定し、「サプライチェーン」「商品」「店舗とコミュニティ」「従業員」の4つの重点領域を掲げております。
「サプライチェーン」領域では、生産・物流・販売のプロセスを変革し、徹底した無駄の削減に取り組むとともに、人権や労働環境に、より一層配慮してまいります。また、透明性を高めるため、2017年2月にユニクロの主要な取引先縫製工場のリストを公開いたしました。
「商品」領域では、安心・安全な商品をお届けするために、原材料のトレーサビリティ(追跡可能性)を重視し、シンプルで、上質で、あらゆる人の暮らしを豊かにできる服づくりを目指してまいります。さらにご不要になった後も、「全商品リサイクル活動」を通じて、お客様とともに社会・環境をより良くする活動を継続してまいります。
「店舗とコミュニティ」領域では、服の寄贈を通じた難民支援、地域貢献活動、環境に優しい店舗づくりに、一層取り組んでまいります。
「従業員」領域では、多様な個性の尊重が当社グループの競争力の源泉であり、女性活躍や地域正社員制度、障がい者雇用や難民雇用などを通じて、従業員ひとり一人が誇りをもって働ける職場の実現を目指します。また、多様なキャリアの実現のため、能力開発や教育も促進いたします。
なお、社外の有識者や社外監査役、社長、執行役員からなる「サステナビリティ委員会」では、4つの重点領域の2020年に向けた戦略と目標を議論しております。今後、詳細計画を策定、実行してまいります。
(2) キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ、2,983億円増加し、6,838億円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動による収入は、前連結会計年度に比べ1,134億円増加し、2,121億円(前期比114.8%増)となりました。これは主として、税引前利益1,933億円(前期比1,031億円増)、為替差益133億円(前期比502億円増)、棚卸資産の増加額59億円(前期比289億円増)、法人税等の支払額476億円(前期比408億円減)等によるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動による収入は、前連結会計年度に比べ3,687億円増加し、1,227億円となりました。これは主として、定期預金の減少額1,683億円(前期比3,548億円増)等によるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動により支出した資金は、前連結会計年度に比べ2,522億円増加し、508億円となりました。これは主として、前連結会計年度における社債発行による収入2,493億円等によるものです。
(3)並行開示情報
IFRSにより作成した連結財務諸表における主要な項目と日本基準により作成した場合の連結財務諸表におけるこれらに相当する項目との差異に関する事項
(表示組替)
日本基準では、営業外収益、営業外費用、特別利益及び特別損失に表示していた項目を、IFRSでは金融収益又は金融費用、その他費用、その他収益及び販売費及び一般管理費等に表示しております。
(のれんの償却に関する事項)
日本基準の下で、のれんの償却については償却年数を見積り、その年数で償却することとしておりましたが、IFRSではIFRS移行日以降の償却を停止しております。
この影響によりIFRSでは日本基準に比べて、前連結会計年度におきましては、のれん償却額(販売費及び一般管理費)が1,899百万円減少し、減損損失(その他費用)が962百万円増加しております。当連結会計年度におきましては、のれん償却額(販売費及び一般管理費)が837百万円減少し、減損損失(その他費用)が1,004百万円増加しております。
(外貨建貨幣性金融商品の換算差額に関する事項)
日本基準の下で、外貨建貨幣性金融商品の為替換算差額は、純資産の部にその他有価証券評価差額金として計上されておりますが、IFRSでは、これらの換算差額は為替差損益として処理しております。
この影響によりIFRSでは日本基準に比べて、前連結会計年度におきましては、為替差損(金融費用)が1,678百万円増加しております。当連結会計年度におきましては、為替差益(金融収益)が725百万円増加しております。
(固定資産の減損に関する事項)
日本基準の下では、減損の兆候がある場合に、減損の認識の判定(割引前将来キャッシュ・フローと帳簿価額の比較)を行った後、減損損失の測定(回収可能価額と帳簿価額の比較)を行います。一方でIFRSでは減損の兆候がある場合、固定資産の回収可能価額が見積られ、回収可能価額が帳簿価額よりも小さい場合、資産又は資金生成単位グループの減損損失を測定いたします。
この影響により、IFRSの減損損失は日本基準に比べて、前連結会計年度2,394百万円、当連結会計年度681百万円増加しております。