有価証券報告書-第15期(平成31年4月1日-令和2年3月31日)

【提出】
2020/06/29 15:53
【資料】
PDFをみる
【項目】
210項目

事業等のリスク

当社グループは、各種のリスクシナリオが顕在化した場合の影響度と蓋然性に基づき、その重要性を判定しており、今後約1年間で最も注意すべきリスク事象をトップリスクとして特定しています。2020年3月の当社リスク委員会において特定されたトップリスクのうち、主要なものは以下のとおりです。当社グループでは、トップリスクを特定することで、それに対しあらかじめ必要な対策を講じて可能な範囲でリスクを制御するとともに、リスクが顕在化した場合にも機動的な対応が可能となるように管理を行っています。また、経営層を交えてトップリスクに関し議論することで、リスク認識を共有した上で実効的対策を講じるように努めています。
主要なトップリスク
リスク事象リスクシナリオ(例)
収益力低下(含む資金収益力低下)・ 新型コロナウイルス感染拡大、世界的な経済停滞を背景とする、各国の中央銀行の金融政策による国内外金利の一段の引き下げに伴う資金収益低下等を含む、全般的な収益力の低下。
外貨流動性リスク・ 市況悪化による外貨流動性の枯渇又はコストの大幅な増加。
与信費用増加・ グローバルベースで実体経済が急速に失速することに伴う与信費用増加。
・ 与信集中業種等における信用悪化に伴う与信費用増加。
ITリスク・ サイバー攻撃による顧客情報の流出、サービス停止及び評判悪化等。
・ システム障害発生による補償費用支払及び評判悪化等。
マネー・ローンダリングや経済制裁への対応、贈収賄・汚職防止に関するリスク・ マネー・ローンダリングや経済制裁への対応、贈収賄・汚職防止に関連する規制の違反による業務停止命令等の処分や課徴金等の支払及び評判悪化等。
市場コンダクトリスク・ 市場業務における法令等への不適切な対応、社会規範・市場慣行・商習慣に反する行為、顧客視点の欠如等による業務停止命令等の処分や課徴金等の支払及び評判悪化等。
外的要因(感染症・地震・水害・テロ等)に関するリスク・ 感染症、自然災害、紛争・テロ等の外的要因による、当社グループの業務の全部又は一部への障害及び対応費用増加。
気候変動に関するリスク・ 気候変動に関するリスクへの対応や開示が不十分であると見做されることによる当社グループの企業価値の毀損。
・ 取引先への影響を通じた当社与信ポートフォリオ管理・運営への影響。

※リスク事象:2020年3月の当社リスク委員会での審議を経て、取締役会に報告されたものの一例です。一般的に起こり得る事象で、当社固有でない情報も含まれます。
当社及び当社グループの事業その他に関するリスクについて、上記トップリスクに係る分析を踏まえ、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性があると考えられる主な事項を以下に記載しております。また、必ずしもそのようなリスク要因に該当しない事項についても、投資者の投資判断上、重要であると考えられる事項は、投資者に対する積極的な情報開示の観点から以下に開示しております。なお、当社は、これらのリスク発生の可能性を認識した上で、発生の回避及び発生した場合の対応に努める所存です。
本項においては、将来に関する事項が含まれておりますが、当該事項は、別段の記載のない限り、本有価証券報告書提出日現在において判断したものです。
外部環境等に関するリスク
1.本邦及び世界の経済の悪化のリスク
本邦及び世界の経済は、新型コロナウイルスの感染拡大とそれに対して各国で採られる渡航、店舗等の営業その他の経済活動の制限等の措置、原油価格の下落等の要因もあり、大幅に悪化する可能性があります。新型コロナウイルス感染拡大の収束時期が不透明であることに加え、米国政権の動向、各国・各地域における保護主義的な通商政策への転換が国際的な自由貿易体制をゆるがすという懸念、英国のEU離脱後の交渉のゆくえに関する懸念、中国経済の成長鈍化とそれに伴う新興国・資源国の景気低迷、世界各地域における政治的混乱等の要因も引き続き存在しており、先行き不透明な状況です。また、紛争(深刻な政情不安を含みます。)、テロや誘拐、地震・風水害・感染症の流行等の自然災害等の外的要因により、影響を受けた地域の経済の悪化や市場の混乱が引き起こされる可能性もあります。本邦及び世界経済が悪化した場合、当社グループには、保有する有価証券等の市場価格の下落による損失、取引先の業績悪化等による不良債権及び与信関係費用の増加、市場取引の相手先の信用力低下等による収益減少、外貨資金流動性の悪化、外貨資金調達コストの増加、リスクアセットの増加等が生じる可能性があります。また、各国の中央銀行の金融政策の変更による国内外の金利の低下等に伴う資金収益力の低下等により、当社グループの収益力が低下する可能性があります。さらに、経済活動の停滞による企業の新規投資や商取引の減少、個人消費の落ち込み、先行き不透明な金融市場での投資意欲減退、お客様の預かり資産減少などが生じる可能性があります。
また、債券・株式市場や外国為替相場の大幅な変動により金融市場の混乱・低迷、世界的な金融危機が生じた場合等には、当社グループが保有する金融商品の価値が下落し、適切な価格を参照できない状況が生じ、又は金融市場の機能不全が生じ、当社グループが保有する金融商品において減損若しくは評価損が生じる可能性があります。
これらにより、当社グループの事業、財政状態及び経営成績に悪影響が及ぶ可能性があります。
2.外的要因(紛争・テロ・自然災害等)に関するリスク
紛争(深刻な政情不安を含みます。)、テロや誘拐、地震・風水害・感染症の流行等の自然災害等の外的要因により、社会インフラに障害が発生し、当社グループの店舗、ATM、システムセンターその他の施設が被災し、又は業務の遂行に必要な人的資源の損失、又はその他正常な業務遂行を困難とする状況が発生することで、当社グループの業務の全部又は一部が停止又は遅延するおそれ、あるいは事業戦略上の施策や市場・規制環境の変化への対応が計画通り実施できないおそれがあります。また、これらの事象に対応するため、予防的なものも含めた追加の費用等の発生などにより、当社グループの財政状態や経営成績に悪影響が生じる可能性があります。
例えば、新型コロナウイルスの感染拡大により、当社グループでは一部の拠点を休業したり、移動の制限により、当社グループ及び業務委託先の業務が一部縮小するなどの影響がありました。当社グループでは安全確保と業務継続の両立に向けて、社長を本部長とするグループ危機事象対策本部を設置し、リモートワークやオフピーク通勤の推進等各種対策を講じておりますが、当社グループ及び業務委託先の多数の従業員が罹患した場合や今後世界的な感染拡大が続く場合等には、更なる悪影響を受ける可能性があります。
また、当社グループは、自然災害のなかでも特に地震による災害リスクにさらされており、首都圏等当社グループの事業基盤が集中している地域において大規模な地震が発生した場合には、当社グループの財政状態や経営成績に悪影響が生じる可能性があります。当社グループでは、このような災害等のリスクに対し必要な業務継続計画を整備し、常にレベルアップを図っておりますが、必ずしもあらゆる事態に対応できるとは限りません。例えば、2011年3月に発生した東日本大震災のような大規模災害に伴う津波、液状化現象、火災、計画停電や節電対応等により、当社グループの店舗、ATM、システムセンターその他の施設の運営が悪影響を受けるおそれがあります。
3.LIBOR等の金利指標の改革に係るリスク
当社グループでは、デリバティブ、貸出、債券、証券化商品等、多数の取引においてロンドン銀行間取引金利(LIBOR)等の金利指標を参照していますが、2014年7月に金融安定化理事会は金利指標の改革及び代替金利指標としてリスクフリーレートの構築を提言しました。また、2017年7月、LIBORを規制する英国の金融行動監視機構(FCA)長官は、2021年末以降はLIBOR公表継続のためにパネル銀行にレート呈示を強制する権限を行使しない旨表明しており、2021年末以降のLIBORの公表には不確実性があります。
当社グループでは、2021年末以降のLIBOR公表停止の可能性が高まっているとの認識のもと、LIBOR等の金利指標の改革や代替金利指標への移行に対する対応を進めております。しかし、かかる移行は複雑で、かつ現時点で未確定な要素が多数あり、これによって、以下の事由を含め、当社の事業、財務状況及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
・ 当社グループの金融資産及び負債に含まれるLIBOR等を参照するローンやデリバティブを含む幅広い金融商品の価格、流動性、収益性及び取引可能性に悪影響を及ぼす可能性
・ 既存のLIBOR等を参照する契約の参照金利をLIBOR等から代替金利指標に変更するための取引相手方との契約修正等の交渉が必要になる可能性
・ 顧客、取引相手方等との間で、金利指標の改革や代替金利指標への移行に伴う、契約の解釈、代替金利指標との価値調整等に係る紛争が生じる、あるいは顧客との取引における不適切な取引慣行及び優越的地位の濫用等に関する紛争に繋がる可能性
・ LIBOR等の改革や代替金利指標への移行に関する規制当局への対応が必要となる可能性
・ LIBOR等の改革や代替金利指標への移行に対応するリスク管理その他の業務のためにシステム開発が必要となり、かかる開発が十分に行えない可能性、あるいはシステム投資その他の費用の発生の可能性
4.気候変動に関するリスク
気候変動に伴う自然災害や異常気象の増加等によってもたらされる物理的な被害、気候関連の規制強化及び低炭素社会への移行が、当社グループの取引先の事業や財務状況に影響を及ぼし、取引先への影響を通じて当社グループの与信ポートフォリオ管理・運営に影響を与える等により、当社グループの経営成績や財政状態に悪影響を与える可能性があります。
当社グループは、気候変動に関するリスクの把握・評価や、情報開示の重要性を認識し、金融安定理事会によって設立された気候関連財務情報開示タスクフォース(Task Force on Climate-related Financial Disclosures。以下、「TCFD」といいます。)が策定した気候変動関連財務情報開示に関する提言を支持するとともに、TCFDに沿ったリスクの把握・評価や情報開示の拡充に取り組んでおりますが、気候変動に関するリスクへの取り組みや情報開示が不十分であった場合又はそのように見做され、社会に対する責任を十分に果たしていないと見做された場合などには、当社グループの企業価値の毀損に繋がるおそれがあり、当社グループの事業、財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
戦略に関するリスク
5.競争、ビジネス戦略等に関するリスク
金融業界では、AIやブロックチェーンといった新たな技術の進展や規制緩和等に伴い、電子決済領域など、他業種から金融業界への参入が加速しており、今後も競争環境は益々厳しさを増す可能性があります。
また、当社グループは、収益力増強のためにグローバルベースで様々なビジネス戦略を実施しておりますが、競合相手である他のグローバル金融機関による統合・買収・戦略的提携の進展等に伴い、競争が激化してきております。
そうした中、以下に述べるものをはじめとする様々な要因が生じた場合には、これら戦略が功を奏しない、当初想定していた結果をもたらさない、又は変更を余儀なくされ、こうした競争的な事業環境において競争優位を得られない場合、当社グループの事業、財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼすおそれがあります。
・ 取引先への貸出ボリュームの増大が想定通りに進まないこと。
・ 既存の貸出についての利鞘拡大が想定通りに進まないこと。
・ 本邦における長短金利操作付き量的・質的金融緩和の長期化、又はマイナス金利幅の更なる拡大により、貸出利鞘の縮小が進行すること。
・ 当社グループが目指している手数料収入の増大が想定通りに進まないこと。
・ デジタライゼーション戦略の遅れ等により次世代の金融サービス提供が想定通りに進まないこと。
・ 効率化を図る戦略が想定通りに進まないこと。
・ 現在実施中又は今後実施するグループ内の事業の統合・再編等の遅延により、顧客やビジネスチャンスの逸失若しくは想定を上回る費用が生じること、又は効率化戦略若しくはシステム統合において想定していた結果をもたらさないこと。
・ 必要な人材を確保・育成できないこと。
・ 必要な外貨流動性を確保できないこと。
・ 本邦及び諸外国の法規制により、金融機関以外の事業者への投資の機動性や積極性が制限されること。
6.業務範囲の拡大に伴うリスク
当社グループは、業務範囲をグローバルベースで拡大しているため、新しくかつ複雑なリスクにさらされる場合があります。当社グループでは、かかるリスクに対応するために内部統制システム及びリスク管理システムや法規制対応体制の構築、必要な人材の確保・育成に努めておりますが、必ずしもあらゆる事態に対応できるとは限らず、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼすおそれがあります。
また、当社グループは、世界に選ばれる、信頼のグローバル金融グループを目指し、その戦略的施策の一環として、グローバルベースで買収・出資・資本提携等を実施しており、今後も買収・出資・資本提携等を行う可能性があります。しかしながら、買収・出資・資本提携等においては、当社グループの意図とは異なる相手先の戦略や財務状況の変化、相手先の属する業界や相手先をとりまく経営環境の想定外の変化、経済の停滞、相手先の関係する法令・会計基準の変更、監督当局の承認が取得出来ないこと等により、買収・出資・資本提携等が当社グループの想定通り進展せず、若しくは変更・解消され、又は想定通りのシナジーその他の効果を得られない可能性や、買収・出資・資本提携等に際して取得した株式や買収・出資・資本提携等により生じたのれん等の無形固定資産の価値が毀損する可能性があります。これらの結果、当社グループの事業戦略、財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。買収・出資に伴う当社グループののれん等の無形固定資産の状況については、「3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (3) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定 買収・出資に伴うのれん及びその他の無形固定資産の評価」、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1) 連結財務諸表 注記事項(企業結合等関係)」及び「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 (セグメント情報等)」をご参照下さい。
更に業務範囲の拡大が予想通りに進展しない場合、当社グループの業務範囲拡大への取組みが奏功しないおそれがあります。
主要な出資先に関するリスク
7.モルガン・スタンレーとの戦略的提携に関するリスク
当社は、モルガン・スタンレーの普通株式(転換直後の当社保有議決権比率22.4%、2020年3月末時点では23.9%)及び償還型優先株式(無議決権)を保有するとともに、日本における証券業務について合弁会社を共同運営するほか、米州におけるコーポレートファイナンス業務において提携する等、モルガン・スタンレーと戦略的提携関係にあります。
当社は、今後も戦略的提携関係の深化を図っていく予定ですが、社会・経済・金融環境の変化や人員、商品、サービスにおける協働又は合弁会社の運営・管理体制や事業戦略の構築・実施が想定通りにいかない場合等においては、期待したとおりのシナジーその他の効果を得られない可能性があります。
モルガン・スタンレーとの戦略的提携関係が解消された場合には、当社グループの事業戦略、財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。また、当社はモルガン・スタンレーの支配株主ではないため、同社の事業等を支配し、また同社に関する決定をすることはできません。モルガン・スタンレーが当社グループの利益に合致しない決定を独自に行う場合、結果として当初想定した戦略的提携の目的が達成できない可能性があります。さらに、当社はモルガン・スタンレーに対して大規模な投資を行っているため、同社の財政状態又は経営成績が悪化した場合、当社グループは多額の投資損失を被る可能性があります。
当社は、モルガン・スタンレーの議決権の23.9%(2020年3月末時点)を保有するとともに、同社に取締役を2名派遣しております。これらにより、モルガン・スタンレーは当社の持分法適用関連会社となっております。そのため、当社は、モルガン・スタンレーの損益の持分比率相当割合を持分法投資損益として認識しています。また、モルガン・スタンレーの流通株式の増減に伴って当社の同社に対する持分比率が増減した場合には持分変動損益を認識する場合もあることから、当社グループの業績は、モルガン・スタンレーの業績動向及び同社に対する持分比率変動の影響を受けることになります。
8.海外の重要な子会社に関するリスク
当社グループの海外の重要な子会社であるMUFG Americas Holdings Corporation(以下、「MUFG Americas Holdings」といいます。)、Bank of Ayudhya Public Company Limited(以下、「アユタヤ銀行」といいます。)やPT Bank Danamon Indonesia, Tbk.(以下、「バンクダナモン」といいます。)は、それぞれ主に米国、タイ、インドネシアにおいて、リテール・法人業務を営んでいます。これらの子会社の事業又は経営の悪化により、当社グループの財政状態及び経営成績は影響を受ける可能性があります。悪影響を与える要因には、米国やタイ、インドネシアを中心とした東南アジアの経済の不確実性や貸出先の経営状態の悪化、金利・為替・株価・不動産市場・商品の急激な変動、政治や社会情勢の不安定化、金融制度や法律による制約、銀行間の熾烈な競争、自然災害、感染症の拡大、テロや紛争等、訴訟に伴う損失、同地域に投資や進出をする企業の業績やそれらの企業が所在する国の景気・金融制度・法律・金融市場の状況、並びにそれらの子会社の内部統制及び法令等遵守態勢の不備に起因する費用の発生等が含まれます。なお、のれん等の無形固定資産の減損損失については、「6.業務範囲の拡大に伴うリスク」をご参照ください。
自己資本に関するリスク
9.自己資本比率等に関するリスク
(1) 自己資本比率等の規制及び悪化要因
当社グループ及び銀行子会社には、バーゼルⅢに基づく自己資本比率及びレバレッジ比率に関する規制が適用されております。また、2023年より、リスク計測手法等の見直し、レバレッジ比率の要求水準への上乗せが適用される予定です。
当社グループ又は銀行子会社の自己資本比率及びレバレッジ比率が各種資本バッファーを含め要求される水準を下回った場合、金融庁から社外流出額の制限、業務の停止等を含む様々な命令を受ける可能性があります。
また、当社グループ内の一部銀行子会社には、米国を含む諸外国において、現地における自己資本比率等の規制が適用されており、要求される水準を下回った場合には、現地当局から様々な命令を受けることになります。
当社グループ及び銀行子会社の自己資本比率及びレバレッジ比率に影響を与える要因には以下のものが含まれます。
・ 債務者及び株式・債券の発行体の信用力の悪化に際して生じうるポートフォリオの変動
・ 調達している資本調達手段の償還・満期等に際して、これらを同等の条件で借り換え又は発行することの困難性
・ 有価証券ポートフォリオの価値の低下
・ 為替レートの不利益な変動
・ 自己資本比率等の規制の不利益な改正
・ 繰延税金資産計上額の減額
・ その他の不利益な事象の発生
(2) グローバルなシステム上重要な金融機関(G-SIBs)に対する規制
当社グループは、金融安定理事会(FSB)によりG-SIBに指定されており、他の金融機関より高い資本水準が求められていますが、今後更に高い資本水準を求められるおそれがあります。
(3) 資本調達
2013年3月以前に調達した資本調達手段は経過措置の範囲内で自己資本に算入することができますが、借り換え等の際には現行規制を充たす資本調達が必要となります。当社グループは、現行規制を充たす資本調達手段の発行を進めておりますが、新たに調達する資本調達手段について自己資本への算入が認められる要件として、その調達を行った金融機関が実質的な破綻状態にあると認められる場合等に、元本削減又は普通株式への転換が行われる旨の特約が定められていること等が必要とされており、市場環境等の状況によっては、同等の条件で借り換え又は発行することができず、自己資本比率及びレバレッジ比率が低下するおそれがあります。
(4) 破綻時における総損失吸収力(TLAC)規制
FSBが2015年11月に公表した「グローバルなシステム上重要な銀行の破綻時の損失吸収及び資本再構築に係る原則」及び2017年7月に公表した「グローバルなシステム上重要な銀行の内部総損失吸収力に係る指導原則」を踏まえ、本邦では2019年3月期より当社グループを含むG-SIBsに対して一定比率以上の損失吸収力等を有すると認められる資本・負債(以下、「外部TLAC」といいます。)を確保することが求められ、また、確保した外部TLACはグループ内の主要な子会社に一定額以上を配賦すること(以下、「内部TLAC」といいます。)になっています。また、規制で要求される水準は2022年3月期から引き上げられる予定です。当社グループ内では、株式会社三菱UFJ銀行(以下、「三菱UFJ銀行」といいます。)、三菱UFJ信託銀行株式会社(以下、三菱UFJ信託銀行といいます。)、三菱UFJモルガン・スタンレー証券株式会社及びMUFG Americas Holdingsが主要な子会社として指定されています。当社グループは、外部TLAC比率又は本邦における主要な子会社に係る内部TLAC額として要求される水準を下回った場合、金融庁から社外流出額の制限を含め、様々な命令を受ける可能性があります。外部TLAC比率及び内部TLAC額は、自己資本比率等の規制に係る上記(1)~(3)に記載する様々な要因により影響を受けます。当社グループは、要求されるTLACの確保のため、適格な調達手段の発行を進めておりますが、TLACとして適格な調達手段の発行及び借り換えができない場合には、外部TLAC比率及び内部TLAC額として要求される水準を満たせない可能性があります。
また、当社グループ内の米国の一部銀行子会社であるMUFG Americas Holdingsは、現地におけるTLAC規制が適用されており、要求される水準を下回った場合には、現地当局から様々な命令を受けることになります。
10.為替リスク
当社はグローバルにビジネスを展開しており、外貨建ての金融資産及び負債を保有しています。為替レートの変動により、それらの資産及び負債の円貨換算額も変動します。当社グループでは、通貨毎の資産と負債の額の調整やヘッジを行っておりますが、変動を相殺できない場合、当社グループの自己資本比率、財政状態及び経営成績は、為替レートの変動により、悪影響を受ける可能性があります。海外における保有資産及び負債の状況については、本有価証券報告書の「3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」をご覧下さい。
信用リスク(信用供与先の財務状況悪化等により損失を被るリスク)
11.貸出業務に関するリスク
貸出業務は当社グループの主要業務の一つとなっています。当社グループは、担保や保証、クレジットデリバティブ等を用いて信用リスクの削減に取り組んでおりますが、借り手が期待通りに返済できない場合、又は当社グループが借り手の返済能力の悪化に対して、又はその可能性を予測して講じた措置が不適切又は不十分である場合には、将来、追加的な与信費用が発生する可能性があります。その結果、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼし、自己資本の減少につながる可能性があります。なお、与信関係費用、リスク管理債権の状況については、本有価証券報告書の「3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」、クレジットデリバティブ取引については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 (デリバティブ取引関係)」をご参照ください。当社グループの与信関係費用及び不良債権は、新興国を含む国内外の景気の悪化、資源価格の変動、不動産価格や株価の下落、新興国通貨安、貸出先の業界内の競争激化等による業績不振等により増加する可能性があります。
(1) 貸倒引当金の状況
当社グループは、貸出先の状況、担保の価値及び経済全体に関する前提及び見積りに基づいて、貸倒引当金を計上しておりますが、経済情勢全般の悪化や個別貸出先の業績悪化等により追加の貸倒引当金を計上せざるを得なくなったり、実際の貸倒れが貸倒引当金を上回ることにより、追加的な与信費用が発生したりする可能性があります。2020年3月末基準における当社の連結貸借対照表上の貸倒引当金額は7,406億円でした。貸倒引当金の計上については、「3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (3) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定 貸倒引当金の見積り」をご参照下さい。
(2) 特定業種等への貸出その他の与信の集中
当社グループは、貸出その他の与信に際しては、特定の業種、特定の与信先への偏りを排除すべくポートフォリオ分散に努めておりますが、エネルギーや不動産業種向けの与信は、相対的に割合が高い状況にあり、これらの業種等の業績悪化の影響を受けやすい状況にあります。個々の与信先の状況や、業界特有の動向、新興国を含む各国の国情については継続的にモニタリング・管理を実施しておりますが、国内外の景気動向や不動産・資源価格・外国為替の動向等によっては、想定を上回る信用力の悪化が生じる可能性があります。
(3) 貸出先への対応
当社グループは、回収の効率・実効性その他の観点から、貸出先に債務不履行等が生じた場合においても、当社グループが債権者として有する法的な権利のすべてを必ずしも実行しない場合がありえます。
また、当社グループは、それが合理的と判断される場合には、貸出先に対して債権放棄又は追加貸出や追加出資を行って支援をすることもありえます。かかる貸出先に対する支援を行った場合は、当社グループの貸出残高が大きく増加し、与信関係費用が増加する可能性や追加出資に係る株価下落リスクが発生する可能性もあります。
12. 他の金融機関との取引
国内外の金融機関(銀行、ノンバンク、証券会社及び保険会社等を含みます。)の中には、資産内容の劣化及びその他の財務上の問題が存在している可能性があり、今後悪化する可能性やこれらの問題が新たに発生する可能性もあります。こうした金融機関の財政的困難が継続、悪化又は発生すると、それらの金融機関の流動性及び支払能力に問題が生じるだけでなく、金融システムに問題が生じ金融業や経済全般へ波及するおそれもあり、以下の理由により当社グループに悪影響を及ぼす可能性があります。
・ 当社グループは、一部の金融機関へ信用を供与しております。
・ 当社グループは、一部の金融機関の株式を保有しております。
・ 問題の生じた金融機関が貸出先に対して財政支援を打ち切る又は減少させるかもしれません。その結果、当該貸出先の破綻や、当該貸出先に対して貸出をしている当社グループの不良債権の増加を招くかもしれません。
・ 経営破綻に陥った金融機関に対する支援に当社グループが参加を要請されるおそれがあります。
・ 政府が経営を支配する金融機関の資本増強や、収益拡大等のために、規制上、税務上、資金調達上又はその他の特典を当該金融機関に供与するような事態が生じた場合、当社グループは競争上の不利益を被るかもしれません。
・ 預金保険の基金が不十分であることが判明した場合、当社グループの支払うべき預金保険の保険料が引き上げられるおそれがあります。
・ 金融機関の破綻又は政府による金融機関の経営権取得により、金融機関に対する預金者の信任が全般的に低下する、又は金融機関を取巻く全般的環境に悪影響を及ぼすおそれがあります。
・ 金融業及び金融システムに対する否定的・懐疑的なマスコミ報道(内容の真偽、当否を問いません。)により当社グループの評判、信任等が低下するおそれがあります。
政策投資株式リスク(保有する株式の株価下落により損失を被るリスク)
13.保有株式に係るリスク
当社グループは政策投資目的で保有するものを含め市場性のある株式を大量に保有しており、2020年3月末基準の保有時価合計は約4.1兆円、その簿価は約2.1兆円となっています。当社グループでは、株価変動リスクの抑制の観点も踏まえ、「政策保有に関する方針」において、政策保有株式の削減を基本方針とし、保有意義・経済合理性を検証したうえで、保有の妥当性が認められない場合には、取引先の十分な理解を得た上で、売却を進めております。また、政策保有株式に対しては、トータル・リターン・スワップ等をヘッジ手段として部分的にヘッジを行うことで、株価変動リスクの削減に努めております。
しかしながら、株価が下落した場合には、保有株式に減損又は評価損が発生若しくは拡大する可能性があります。また、自己資本の算出にあたり、保有株式の含み損益を勘案していることから、株価が下落した場合には、自己資本比率等の低下を招くおそれがあります。その結果、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を与える可能性があります。
なお、当社グループが保有する政策投資株式の状況については、本有価証券報告書の「第4 提出会社の状況 4 コーポレートガバナンスの状況等 (5) 株式の保有状況」をご参照ください。
市場リスク(金利、有価証券の価格、為替などの変動により損失を被るリスク)
14.市場業務に伴うリスク
当社グループは、デリバティブを含む様々な金融商品を取り扱う広範な市場業務を行っており、大量の金融商品を保有しています。これにより、例えば、国内外の金融政策の変更等により内外金利が低下した場合、当社グループが保有する国債等の再投資利回りが低下する可能性があります。また、長短金利差が縮小する場合、資金利益が減少する可能性があります。一方、内外金利が上昇した場合、当社グループの保有する大量の国債等に売却損や評価損が生じる可能性があります。また、円高となった場合は、当社グループの外貨建て投資の財務諸表上の価値が減少し、売却損や評価損が発生する可能性があります。加えて、株価が下落した場合、当社グループが保有する株式等の価値が減少し、売却損や評価損が発生する可能性があります。当社グループでは、このような内外金利、為替レート、有価証券等の様々な市場の変動により損失が発生するリスクを市場リスクとして管理しておりますが、計算された市場リスク量は、その性質上、実際のリスクを常に正確に反映できるわけではなく、またこのように示されたリスク量を上回る損失が実現する可能性もあります。
なお、当社グループが保有する有価証券残高の状況については、本有価証券報告書の「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(有価証券関係)」をご参照ください。
資金流動性リスク(資金繰りがつかなくなるリスク)
15.当社グループの格下げ等に伴う資金流動性等の悪化リスク
格付機関による当社グループの格下げにより、当社グループの市場業務及びその他の業務が悪影響を受けるおそれがあります。特に外貨調達においては、調達コストの増加、又は調達余力の減少により、当社グループの流動性や収益力が悪影響を受ける、また市場業務においては、担保拠出の追加が求められる、又は顧客からの信用低下等を起因に一定の取引を行うことができなくなる等の悪影響を受けるおそれがあります。例えば、2020年3月末時点のデリバティブ取引及び信用格付に基づいて、当社及びその主要3子会社(三菱UFJ銀行、三菱UFJ信託銀行及び三菱UFJ証券ホールディングス株式会社)の格付が全て1段階格下げされたと仮定した場合、合計で約588億円、全て2段階格下げされたと仮定した場合、合計で約870億円の追加担保をMUFG及びその主要3子会社が提供する必要があったと推定されます。なお、2020年4月に、Fitch Ratingsは当社、三菱UFJ銀行及び三菱UFJ信託銀行の長期発行体デフォルト格付をAからA-に1段階格下げし、Standard and Poor'sは同3社のアウトルックを「ポジティブ」から「安定的」に変更しました。
格付機関は、当社の財務体質や当社グループの関連子会社の評価、国内外の金融業界全体に影響を与える要因などに基づいて、当社を定期的に評価していますが、当社グループがコントロールできない要因も含まれており、また、格付評価機関の評価手法については当社がコントロールしうるものではありません。当社は、資金流動性リスク管理上の指標を設ける等、適正な資金流動性の確保に努めておりますが、上記要因などに基づく評価又は格付方法の変更の結果、当社の格付又は当社子会社の格付が引き下がる可能性があり、かかる事態が生じた場合には、当社グループの市場業務及び他の業務の収益性に悪影響を与えるおそれや、当社グループの財政状態及び経営成績にも悪影響を与えるおそれがあります。
オペレーショナルリスク(内部管理上の問題や外部要因により損失が発生するリスク)
16.不公正・不適切な取引その他の行為が存在したとの指摘や、これらに伴う処分等を受けるリスク
当社グループは、事業を行っている本邦及び海外における法令、規則、政策、自主規制等を遵守する必要があり、国内外の規制当局による検査、調査等の対象となっております。当社グループはコンプライアンス・リスク管理態勢及びプログラムの強化に継続して取り組んでおりますが、かかる取組みが全ての法令等に抵触することを完全に防止する効果を持たない可能性があります。
当社グループが、マネー・ローンダリング、経済制裁への対応、贈収賄・汚職防止、金融犯罪その他の不公正・不適切な取引に関するものを含む、適用ある法令及び規則を遵守できない場合、あるいは、社会規範・市場慣行・商習慣に反するものとされ、顧客視点の欠如等があったものとされる場合には、罰金、課徴金、懲戒、評価の低下、業務改善命令、業務停止命令、許認可の取消しを受ける可能性があります。また、当社グループが顧客やマーケット等の信頼を失い、当社グループの経営成績及び財政状況に悪影響が生じる可能性があります。将来、当社グループが戦略的な活動を実施する場面で当局の許認可を取得する際にも、悪影響を及ぼすおそれがあります。
なお、三菱UFJ銀行は、2017年11月に、同行の米国内支店・代理店の銀行免許の監督機関を州当局から連邦当局へ変更する申請を米国通貨監督庁(Office of the Comptroller of the Currency。以下、「OCC」といいます。)に提出し、OCCにより承認されました。同行は、当該銀行免許の監督機関の変更申請に伴い、OCCとの間で、OCCが同行の米国の経済制裁対応に関する内部管理態勢の監視を行っていくこと等で合意しました。これは、同行が米国の経済制裁対応に関し2013年及び2014年に米国ニューヨーク州金融サービス局(New York State Department of Financial Services)との間で行った合意を実質的に継承するものです。2019年2月に、三菱UFJ銀行は、OCCとの間で、同行のニューヨーク支店、ロスアンゼルス支店及びシカゴ支店において、米国の銀行秘密法に基づくマネー・ローンダリング防止に関する内部管理態勢等が不十分であるとのOCCからの指摘に関し、改善措置等を講じることで合意しました。三菱UFJ銀行は、上述の事象に関連する事項について、必要な対応を行っております。今後、新たな展開又は類似の事象が生じた場合には、関係当局より更なる制裁金支払の処分等を受け、又は関係当局との間で新たな和解金の支払合意を行うなどの可能性があります。
また、当社グループは、当社の銀行子会社を含むパネル行が各種銀行間指標金利の算出機関に呈示した内容等を調査している各国の政府当局から、情報提供命令等を受けております。また為替業務に関しても、当局から同様の情報提供要請を受けており、一部の当局との間では制裁金の支払いに合意しました。当社グループは、これらの調査に対して協力を行い、独自の調査等を実施しております。上記に関連して、当社グループは、指標金利であれば他のパネル行、為替業務であればその他金融機関とともに、米国におけるクラスアクションを含む、複数の民事訴訟の被告となっております。今後、新たな展開又は類似の事象により、当社グループに重大な財務上その他の悪影響が生じる可能性があります。
17.情報紛失・漏洩に係るリスク
当社グループは、国内外の法規制に基づき、顧客情報や個人情報を適切に取り扱うことが求められております。当社グループでは、顧客情報や個人情報を多く保有しており、当社グループは、情報の保管・取扱いに関する規程類の整備、システム整備を実施し、管理態勢高度化に取組んでおりますが、不適切な管理、外部からのサイバー攻撃その他の不正なアクセス、若しくはコンピュータウィルスへの感染等により、顧客情報や個人情報等の紛失・漏洩を完全には防止できない可能性があります。その場合、罰則や行政処分の対象となるほか、顧客に対する損害賠償等、直接的な損失が発生する可能性があります。加えて、顧客の信頼を失う等により当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性、並びにこれらの事象に対応するための追加費用等が発生する可能性があります。
18.システム、サイバー攻撃等に関するリスク
当社グループのシステム(業務委託先等の第三者のシステムを含みます。)は、事業を行う上で非常に重要な要素の一つであり、適切な設計やテストの実施等によりシステム障害等を未然に防止し、セキュリティ面に配慮したシステムの導入に努めていますが、システム障害やサイバー攻撃、不正アクセス、コンピュータウィルス感染、人為的ミス、機器の故障、通信事業者等の第三者の役務提供の瑕疵、新技術、新たなシステムや手段への不十分な対応等を完全には防止できない可能性があります。また、すべてのビジネス要件や金融機関に対する規制強化の高まりからくる規制要件に対応するシステムの高度化への要請を十分に満たせない可能性や、市場や規制の要請に応えるために必要なシステム構築や更新がその作業自体の複雑性等から計画通りに完了しない可能性があります。その場合、情報通信システムの不具合や不備が生じ、取引処理の誤りや遅延等の障害、情報の流出等が生じ、業務の停止及びそれに伴う損害賠償の負担その他の損失が発生する可能性、当社グループの信頼が損なわれ又は評判が低下する可能性、行政処分の対象となる可能性、並びにこれらの事象に対応するための追加費用等が発生する可能性があります。
19.テロ支援国家との取引に係るリスク
当社グループは、イラン・イスラム共和国(以下、「イラン」といいます。)等、米国国務省が「テロ支援国家」と指定している国における法主体又はこれらの国と関連する法主体との間の取引を実施しております。また、当社の銀行子会社はイランに駐在員事務所を設置しております。
米国法は、米国人が当該国家と取引を行うことを、一般的に禁止又は制限しております。更に、米国政府及び年金基金をはじめとする米国の機関投資家が、イラン等のテロ支援国家と事業を実施する者との間で取引や投資を行うことを規制する動きがあるものと認識しております。このような動きによって、当社グループが米国政府及び年金基金をはじめとする機関投資家、あるいは規制の対象となる者を、当社グループの顧客又は投資家として獲得、維持できない結果となる可能性があります。加えて、社会的・政治的な状況に照らして、上記国家との関係が存在することによって、当社グループの評判が低下することも考えられます。上記状況は、当社グループの財政状態、経営成績及び当社の株価に対して悪影響を及ぼす可能性があります。
なお、米国政府による対イラン制裁措置により、米国人の関与するイランとの取引の禁止などが実施されています。更に、2018年5月の米国によるイランに関する包括的共同行動計画(Joint Comprehensive Plan of Action)からの離脱後に発令された大統領令により、広範なイラン関連取引や活動について、関与した非米国人に対して二次制裁を適用し得るものとされています。当社グループでは、二次制裁を含む米国による措置が適用されるリスクの増加を受けて、今後とも当該リスクのモニタリングと対応策を実施してまいります。
更に、米国証券取引所に登録している企業(米国外企業を含みます。)には、特定のイラン関連の取引の開示が引き続き義務づけられています。本邦においても、イランの拡散上機微な核活動・核兵器運搬手段開発に関与する者に対する資産凍結等の措置が実施されています。当社グループでは、これらの規制を遵守するための態勢の改善に努めています。しかしながら、かかる態勢が適用される規制に十分対応できていないと政府当局に判断された場合には、何らかの規制上の措置の対象となる可能性があります。なお、これに関連する処分等については、「16.不公正・不適切な取引その他の行為が存在したとの指摘や、これらに伴う処分等を受けるリスク」をご参照下さい。
20.規制変更のリスク
当社グループに適用される国内外の法律、規則、会計基準、政策、実務慣行及び解釈、並びに国際的な金融規制等は変更される可能性があり、かかる変更への対応のため経営資源を投じる必要があり、場合によっては経営戦略を変更せざるを得なくなるおそれがあります。また規制変更への対応が不十分である場合には規制当局から処分等を受けるおそれがあり、当社グループの財政状況及び経営成績に悪影響を及ぼすおそれがあります。
21. 消費者金融業務に係るリスク
当社グループは、消費者金融業に従事する子会社や関連会社を有すると同時に消費者金融業者に対する貸出金を保有しております。消費者金融業に関しては、いわゆるみなし弁済を厳格に解するものを含め、過払利息の返還請求をより容易にする一連の判例が出され、これらに伴い過払利息の返還を求める訴訟が引き続き発生しております。当社グループでは、消費者金融業に従事する子会社や関連会社における過払利息の返還による費用負担のほか、当社グループが貸出金を保有する消費者金融業者の業績悪化による追加的な与信費用が発生する可能性があり、消費者金融業に不利な新たな司法上の判断や規制強化がある場合には追加的な費用負担が発生する可能性もあります。利息返還損失引当金の計上については、「3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (3) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定 利息返還損失引当金の算定」をご参照下さい。
22.評判に関するリスク
当社グループは、本邦及び国際金融市場においてG-SIBに指定されており、世界に選ばれる、信頼のグローバル金融グループを目指しております。当社グループのビジネスはお客さまのみならず、地域社会、国際社会等からの信頼と信用の下に成り立っています。そのため、当社グループの評判は、お客さま、投資家、監督官庁、及び社会との関係を維持する上で極めて重要です。MUFGグループ経営ビジョンや行動規範等を踏まえ、評判リスクの適切な管理に努めておりますが、特に、人権、環境、健康、安全等の社会的責任への懸念が生じる取引や各種法令等(アンチマネー・ローンダリング、経済制裁、競争法、暴力団排除条例等)の趣旨に反するおそれのある取引などを防止できず、又はこれらに適切に対処することができなかった場合で、大規模な報道に繋がり得るなど世論の注目が高いときや規制当局の関心が高いときなどにおいて、当社グループは、現在又は将来のお客さま及び投資家を失うこととなり、当社グループの事業、財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があり、企業価値を毀損する可能性があります。