有価証券報告書-第15期(平成30年4月1日-平成31年3月31日)

【提出】
2019/06/24 15:28
【資料】
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【項目】
93項目

対処すべき課題

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
(1) 経営方針
当社はオンライン金融事業を営むマネックス証券株式会社(日本)及びTradeStation Group, Inc.(米国)を中核的子会社として、その他国内外に金融関連の子会社・持分法適用会社を有する持株会社です。当社グループは、次に掲げる企業理念を基に、個人投資家の日々の生活及び資産形成に必要な総合金融サービスの提供を目指して参ります。
① 企業理念
MONEXとはMONEYのYを一歩進め、一足先の未来の金融を表わしています。
常に変化し続ける未来に向けて、マネックスグループは、最先端のIT技術、世界標準の金融知識を備え、新しい時代におけるお金との付き合い方をデザインし、更には新しい時代の金融を再定義し、全ての個人の投資・経済活動をサポートすることを目指します。
② 行動指針
・お客さまと社員の多様性を尊重します
・最先端のIT技術と金融知識の追究を惜しみません
・新しい価値を創造しステークホルダーに貢献します
また、これらの企業理念の実現に向けた当社グループの活動状況は、当社が策定・開示している「ディスクロージャーポリシー」に従って情報を開示しており、機関投資家と個人投資家の間で情報の内容及び開示時期について格差が生じないよう留意しています。
(2) 目標とする経営指標
当社グループは、中期的な会社の経営戦略「グローバル・ヴィジョンⅢ」を策定していますが、当社グループが証券ビジネスなどの事業をグローバルに展開しており、経済環境や相場環境等の影響を大きく受けるため、業績予想を行うことが困難な状況にあります。そのため、当社が業績予想を行うことは、投資家に対して誤った情報を提示する可能性があるため、適切でないと考えており、また、収益計画の策定もしておりません。一方、資本効率に関する目標としてROE10%を最低水準と考えています。ROE10%を達成するため、日本セグメントでは「口座数」「稼動口座数」「預かり資産残高」の増加を目指しています。また、米国セグメントでは「DARTs(Daily Average Revenue Tradesの略称で、1営業日当たりの収益を伴う約定もしくは取引の件数)」「稼働口座数」「預かり資産残高」の増加を目指しています。さらに、クリプトアセット事業セグメントでは、「本人確認済み口座数」「預かり資産残高」の増加を目指しています。
(3) 中長期的な会社の経営戦略
当社グループは、2017年4月より実行してきた中長期的な会社の経営戦略「グローバル・ヴィジョンII - Bloom」をさらに進めます。第一の柱であるセグメントごとの独立した経営力と収益力を高めることに加え、第二の柱である事業持株会社としてのマネックスグループによる各セグメントへのガバナンス強化や、グローバルな経営体制の強化と重層化を図ります。
さらに、コインチェック株式会社がお客様に安心・安全なサービスを提供できるよう全社をあげてバックアップし、クリプトアセット事業を育成します。
そして、セグメント間のコラボレーションにより、新たな金融グループの設計に取り組み、未来の金融の在り方をデザインすることを通じて、企業価値の増大を目指します。
(4) 経営環境
経営環境については、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要」に含めて記載しています。
(5) 事業上及び財務上の対処すべき課題
① 資本コストを上回るROEの達成
当社グループの2019年3月期におけるROEは1.5%であり、資本コストとの対比で最低の目標水準と考えているROE10%に到達していません。当社グループにおいては、マーケット環境が厳しい中で損益分岐点を低下させるための費用削減、特に固定費の削減が急務と認識しています。2020年3月期は、マネックス証券株式会社においてソフトウェアの減価償却スケジュールの適正化等により減価償却費が前年度対比年間約16億円減少する見込みです。引き続きより一層のソフトウェア投資の効率化に取り組んでまいります。
米国セグメントは金利やボラティリティの上昇により2019年3月期は過去最高のセグメント利益を計上しましたが、今後委託手数料の減少や金利のフラット化、ボラティリティの低下等の状況に直面する可能性があります。主要顧客であるアクティブトレーダーだけでなく、カジュアルトレーダー層やミレニアル層を取り込み顧客層の拡大を図ります。また、仮想通貨事業への参入により商品ラインナップの充実に努めます。
クリプトアセット事業セグメントでは、2018年1月の仮想通貨NEMの不正送金の原因となったセキュリティの対策として、経営管理態勢、内部管理態勢を改善し、セキュリティ態勢を強化しました。その結果、2019年1月に金融庁に仮想通貨交換業者として登録され、個人投資家の皆様に安心して取引できる環境を整備しておりますが、同時にオペレーションを収益の金額に見合った規模に適切化し費用削減を進めます。
② グループの融合(ガバナンス、顧客層)
当社グループは、1999年のマネックス証券株式会社の設立以来、日本、米国、香港のオンライン証券会社だけでなく、仮想通貨交換業を営むコインチェック株式会社をグループに迎え、グローバルなオンライン金融機関グループとして特色ある経営資源を構築してきました。
これらの経営資源を有効活用していくことは、当社の今後の持続的な成長にとっても重要な課題であり、グループガバナンスの強化と各セグメントの融合が必須と考えています。
グループガバナンスの強化においては、現在、当社代表執行役社長CEOの松本大が、日本のオンライン証券を営むマネックス証券株式会社、米国のオンライン証券の持株会社であるTradeStation Group, Inc.およびコインチェック株式会社の代表取締役会長または取締役会長に就任しており、グループ全体の企業価値の向上に取り組むとともに、日本、米国、クリプトアセット事業セグメントの経営課題の解決に速やかに対処できる体制にしています。
マネックス証券株式会社の主な顧客層は40-50代であるのに対し、コインチェック株式会社では20-30代の比率が多く、年齢層や各顧客の預かり資産に違いがあります。顧客の相互送客により仮想通貨取引を行うミレニアル世代の顧客層に対してオンライン証券取引のサービスを提供し、反対にオンライン証券の顧客層に対して仮想通貨取引のサービスを提供することは当社グループが中長期的な成長を続けていくために重要であり、これらの融合を推進していきます。
また、米国のTradeStation証券は、アクティブトレーダー層から取引プラットフォームについて支持を受けており、米国内のオンライン証券における技術力やサービス内容などの部門で数々の賞を獲得してきました。その技術力を日本株取引ツールに活用した「トレードステーション」は、日米のグループ会社間で共同開発した成果物の一つです。マネックス証券内における「トレードステーション」の株式取引シェアは、2019年3月現在で8%と、着実にその存在感を示しつつあります。マネックス証券株式会社はこのツールによってアクティブトレーダー層を獲得し、顧客基盤、収益の拡大を目指していきます。
③ サイバーセキュリティおよびリスクマネジメントの不断の強化
オンライン証券業および仮想通貨交換業を事業の中心とする当社グループは、取引の根幹をなす基幹システムをすべてのセグメントにおいて内製開発・自社保有しており、近年増え続ける外部のサイバー攻撃からシステム等を守るためのサイバーセキュリティの強化が課題です。
2018年4月に当社グループ入りをしたコインチェック株式会社においても、サイバーセキュリティの強化は急務の課題でした。2019年1月に仮想通貨交換業登録が完了するにあたっては、グループ内のオンライン証券業の経営で蓄積したノウハウや経験のあるリソースを投入し、重点的にサイバーセキュリティやそれに付随する社内管理態勢を整備しました。今後もサイバーセキュリティの強化を続けていくことが、持続的な成長につながると認識しています。
また、リスクマネジメントにおいても、当社グループの強化すべき課題として、取り組んでいきます。リスクは、収益を獲得する機会と表裏一体であり、適切なリスクマネジメントが競争力のある企業を創る基盤になると考えています。その実現のため、各事業拠点におけるリスクマネジメント体制の強化をより推進していきます。
④ 個人投資家に対する投資教育
当社グループにおいては、投資教育が当社グループの中長期的な成長の源泉であり、この取組みが、当社の持続的な成長に不可欠との認識から、マネックス証券株式会社では、創業以来、個人投資家に対する地道な投資教育に取り組んでいます。2019年3月期のオンラインでのセミナーには、約200回、延べ約10万人の個人投資家に参加していただきました。また、毎年日本全国で500名規模の全国投資セミナーを年5回ほど開催し、マネックス証券のストラテジスト、アナリストといった専門家や、経営陣の登壇に加え、外部の講師も招へいしながら、対面形式の投資教育の場を提供しています。さらに、マネックス証券株式会社内にある「マネックス・ユニバーシティ」という投資教育を担う組織体が、投資初心者の方々や資産運用になじみのない方々に向けた教育コンテンツの提供や投資セミナーなどを継続的に行っています。
また、投資の一側面でもある、株主としての権利やその権利の行使方法を個人投資家に理解していただくために、個人投資家と上場企業とのコミュニケーションを活性化させ、日本の上場企業の株式価値を高めることを目的とする「マネックス・アクティビストフォーラム」活動を2019年1月より開始しました。マネックス証券におけるこのようなブローカーの枠組みを超えた、当社独自の個人投資家に対する取組みにより、「貯蓄から資産形成」を実現できるように、今後も中長期的な成長を目指していきます。