有価証券報告書-第78期(平成31年4月1日-令和2年3月31日)

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2020/06/26 15:00
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事業等のリスク

当社の事業等に関わるリスクとして、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性があると考えられる主な事項に関し、以下のようなリスクが挙げられます。これらのリスクは必ずしもすべてのリスクを網羅したものではなく、現時点では想定していないリスクや重要性が乏しいと考えられるリスクも、今後、当社及び連結子会社からなる連結企業集団(以下、「当社グループ」という。)の財政状態や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
なお、本項における将来に関する事項は、別段の記載がない限り、当連結会計年度末現在において当社が判断したものであります。
(1) 景気・経済・金融市場の変動等の外的要因に起因するリスク
当社グループが行う証券・金融商品取引業は、国内外の経済情勢・市場環境の影響を受けて当社が収益として獲得する手数料や取引に係る損益が変動するという特性を持っています。株式・金利・為替市場といった金融市場に直接影響を与える2008年のリーマンショック等の事象のほか、2011年3月に発生した東日本大震災などの国内災害、2016年6月のイギリスEU離脱の決定、2016年11月の米大統領選挙などの国際的な政治経済事象、今般のコロナウィルス感染拡大などの国際的に実体経済全体に影響を与える事象などによって、株式・金利・為替市場には直接・間接的に影響が及び、当社の業績・財務状況にリスク顕在化の事象も見られました。
リテール事業においては、景気・経済や市場の動向が顧客の取引意欲に影響を及ぼし、顧客の取引金額、取引商品、取引頻度等が変動します。また、ホールセール及び法人事業においては、自己勘定取引による損益や引受等投資銀行業務における収益機会が変動します。これらはいずれも当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(2) 気候変動、災害、感染症拡大等の外部要因から事業継続が影響を受けるリスク
当社の本社・カスタマーセンター・事務拠点・データセンターなどが、急激かつ著しい気候変動や地震等の災害により多大な影響を受けた場合には、事業継続が困難となる可能性があります。特にシステムに関連する拠点が甚大な影響を受けた場合には、インターネット取引やシステムを用いたホールセール取引の提供を停止せざるを得ない判断を行う可能性があります。また、今般のコロナウィルス感染拡大のように、感染症等の被害が広範に及んだ場合には、当社の役職員が所定の執務先にて通常の業務を行えなくなる可能性があります。
いずれの場合にも、当社の定めるコンティンジェンシープランに則り、危機管理対策室を迅速に立ち上げ、業務への影響を極小化し、重要業務を中心に事業継続を図っていく運営をすべく、平時よりBCP/BCMの取組みを行っております。
子会社についても同様の事態が発生し、事業継続に影響を及ぼす可能性があります。金融規制業種を中心に、同様のBCP/BCMの取組みを実施させ、機動的に当社(親会社)と連携して事業を継続させ、情報を適時に集約する態勢を構築しております。
(3) リテール顧客に対する信用リスク
リテール事業における国内株式の信用取引において、当社は顧客への信用供与を行っております。顧客が取引を通じて損失を被ったり、代用有価証券の担保価値が下落するなどした場合、当社の顧客からの受入保証金・代用有価証券などの担保価値が十分でなくなる可能性があります。また、同様に信用供与を行っている先物・オプション取引、店頭外国為替証拠金取引等のデリバティブ取引においても取引証拠金として所定の担保を顧客から受入れておりますが、顧客の取引状況により顧客が損失を被った場合などには担保が不足する可能性があります。こうした取引について当社は取引開始審査・口座状況のモニタリングと担保管理等からなる与信管理を行っておりますが、信用リスクの顕在化の状況により当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(4) 取引先法人に対するカウンターパーティーリスク・信用リスク
当社グループは、自己勘定による有価証券・外国為替・デリバティブ取引等に関するトレーディング業務や有価証券貸借取引、関連する与信取引等を行っております。法人取引先については、取引開始時の審査や事後のモニタリングを行い、リスクの顕在化を抑制しておりますが、当該取引において取引先が受渡決済を含む債務不履行に陥った場合や、当社が保有する有価証券の発行体が信用状況を著しく悪化させた場合、デリバティブ取引の評価額が著しく下落した場合等には、当社は損失を被り経営成績及び財政状態に悪影響が及ぶ可能性があります。
(5) ホールセール・投資銀行業務に関するリスク
自己勘定によるトレーディング業務では、市場動向や顧客側の取引需要の影響で当社にとって不利な事象が生じ、取引の低迷や保有ポジションの時価変動により損失を被るリスクがあります。当社では各商品のトレーディングにかかるリスクを低減するために、業務所管部においてヘッジ取引やポジション管理を行うほか、リスク管理部門によるモニタリングが行われていますが、予想を超える市場の変動や突発的に発生する個別事象等により、ヘッジが有効に機能しなかったりポジションの速やかな処分が進まないことから損失を被る可能性があります。
引受や仕組み証券組成、財務アドバイザリー等の投資銀行業務は、概して証券市況に影響を受け、新規上場やファイナンス等の規模・回数等が変動する特性があり、これらが当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。特に引受業務においては、引受証券が円滑に投資家に販売できなかった場合に募残を抱え、市場価格の下落により損失を被るリスクがあります。また、引受対象企業が新規上場過程で社会的問題を発生させるなど、まれに引受証券会社としての責任を果たせなかった場合には、損害賠償等の責任追及を受ける可能性もあります。
(6) 法務・規制及びコンプライアンスに関するリスク
当社グループは、グループの各社が営む証券・金融商品取引業務の種類に応じて金融商品取引法その他の法令、関連する行政・業界団体の規制等からなる法令・諸規則の規制を受けております。当社グループはこれらを適切に遵守し業務を遂行する必要があります。
国内の金融商品取引業者は、金融商品取引法及び関連する政省令等により登録規制、顧客勧誘規制、顧客取引規制及び内部者取引規制等のさまざまな行為規制を受けており、財務健全性の観点からも自己資本規制比率の維持が求められております。万が一、これらの規制に抵触した場合には、課徴金納付・業務の制限または停止等の行政処分・命令を受けるなどにより収益機会を逸失するばかりでなく、社会的信用を失墜し、当社の経営成績にも影響が及ぶ可能性があります。海外にて同様の証券ビジネスを営む当社の子会社についても、現地にて法令諸規則、当局規制による監督下にあり、国内の金融商品取引業者と同様のリスクが想定されます。
また、金融商品取引法に関するものにとどまらず、顧客情報等の管理に関しては個人情報保護法等の法令・関連諸規則を遵守するための社内体制を万全に構築しており、その他営んでいる銀行代理業、貸金業、資金移動業等に関しても、同様に法令等遵守態勢を構築しておりますが、いずれも法令・規制等に抵触した場合には各監督官庁による処分や社会的信用の失墜、当社の経営成績への影響が発生する可能性があります。
(7) オペレーショナルリスク
当社グループでは、リテール・ホールセールの双方について日々業務を行うことに伴い顧客数・取引数に連動した件数の種々の事務処理が発生しており、役職員が正確な事務処理を怠ること、事務処理上のミス、事故や不正等のリスクが想定されます。事務リスク、人的リスク、有形資産リスク(災害、犯罪または、資産管理の瑕疵等の結果、有形資産(動産・不動産・設備・備品等)の毀損や執務環境等の質の低下により、当社に損失が発生するリスク)等からなるオペレーショナルリスクに対しては、内部統制やリスクアセスメントにより事前予防を図り、発生を極小化すべく努めております。しかしながら、かかるリスクが顕在化した場合には、当社が損失を被ること等により、当社の経営成績及び財政状態、当社の社会的信用に悪影響を及ぼす可能性があります。
(8) システムリスク
当社グループの主たる業務である証券・金融商品取引業務には、昨今コンピュータシステムは必要不可欠です。特に、インターネットにより金融商品取引を顧客に提供することを強みとする業態に鑑み、システムの安定稼動によるサービス提供は経営の最重要課題と認識し、日々管理水準の向上に努めております。
リテール顧客に提供するオンライン取引システムやホールセール取引システムなどシステム全般で、一般的にハードウェア・ソフトウェアの不具合、人為的ミス、通信回線の障害、コンピュータウィルス、サイバー攻撃のほか、自然災害等によってもシステム障害が発生する可能性があります。当社ではシステム障害の発生に備え、24時間365日の監視、基幹システムの二重化、自家発電装置の設置、バックアップサイトの設置、コールセンターによる非常時対応等の体制を整えております。
しかし、何らかの理由によりシステム障害が発生し、対応が遅れたり不十分であった場合には、取引を停止するなどにより顧客に機会損失を与えたり、当社グループ自身が取引損失を被る可能性があります。そのほか、システム障害等により生じた損害の賠償を求められたり、社会的信用が低下するなど、経営成績及び財政状態に悪影響が及ぶ可能性があります。
(9) 情報セキュリティに関するリスク
当社グループは、多数の顧客の個人情報、取引先法人等の重要な営業情報、当社グループや親会社を含むSBIグループの重要情報を保有しております。情報管理については、役職員の意識の徹底や社内ルールの制定周知、情報を保護する技術的施策を講じるなど万全の体制を敷いていると認識しておりますが、過失や不正行為等により当社または当社グループの保有する顧客情報等各種の情報が外部に流出した場合、当社の信用の失墜、クレームや損害賠償請求、監督官庁からの処分等により、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
(10) 流動性・資金調達に関するリスク
当社グループが営む証券・金融商品取引業は、その業務の性質上、適切な流動性を確保し、財務の安定性を維持することが必要です。この点、当社では日々保有ポジション等のモニタリングと資金繰り調整等を行っております。しかしながら、市場環境の激変や当社の財務内容の悪化などにより資金繰りに支障をきたすこと、あるいは通常よりも著しく高いコストでの資金調達を余儀なくされることにより損失を被る可能性があります。
(11) 競合に関するリスク
当社グループが営む証券・金融商品取引業は、近年の規制緩和やIT技術の発展により競争が激化する一方で、取扱いサービスの多様化・顧客利便性の向上・独自性の発揮が強く求められてきております。当社自身も事業規模の拡大・成長により、今まで以上に厳しい競争環境にさらされています。このような状況の中で競争力を維持できない場合には、競合先に取引シェア・収益などが劣後し、収益性が低下する可能性があります。これにより、当社の経営成績に悪影響が及ぶ可能性があります。
(12) 新規事業への進出に関するリスク
当社グループは、持続的な成長と経営理念の実現のため、親会社を含むSBIグループとして継続的に策定及び公表している事業戦略に連動し、金融事業セグメントを構成する中核会社として自らの戦略を策定し実行しております。直近での新規事業の例としては、グループとして地銀との連携・双方発展を可能とするビジネスモデルの構築していくことなどが挙げられ、それに対して当社グループとして商品開発や顧客基盤の拡大、それを実現する内部管理態勢の構築を行っております。しかしながら、新規事業を計画通り展開できない場合には、想定する収益・顧客基盤を確保できないなどにより、当社の経営成績及び財政状態に悪影響が及ぶ可能性があります。
(13) 人的リスク
当社グループの業務は、金融商品取引業を中心に、フロント部門としての商品開発力・取引技術、証券業務の商慣行・業務知識を前提とする事務処理スキル、業種固有のコンプライアンスや金融機関固有のリスク管理スキルなど、各々経験や専門性を必要とするものから構成されています。また、金融商品取引業者としての社会的責務の遂行に適した倫理的素養を有した人材の教育・確保が必要です。こうした状況下で、直近では業容拡大の方針をとっていることもあり、質・数の双方の観点から当社グループに適した人材の有効確保に努めております。しかしながら、人材獲得競争が激しく必要な人材が確保できない場合や、獲得した人材の質に起因して人事不祥事や業務上の過誤が発生した場合などには、業務遂行に悪影響を及ぼし、結果として当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響が及ぶ可能性があります。
(14) レピュテーショナルリスク
当社グループの業態は、個人顧客や取引先事業会社・金融機関からの信用に依存して取引拡大や継続が影響を受けます。そのため、必ずしも正確な情報に基づいていないものであっても風説・風評の流布にさらされた場合には、社会的信頼が失墜する可能性があります。また、当社自身に起因するシステム障害や情報セキュリティ事故、監督官庁による行政処分、財政状態や経営成績に重大な影響を及ぼす水準の取引損失の発生の場合にも、それらリスク事象の顕在化による直接的影響にとどまらず、間接的に当社グループの社会的信頼が失墜し、さらに当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響が及ぶ可能性があります。
(15) 訴訟リスク
当社グループでは、個人顧客及び取引先の事業法人・金融機関との間で、金融商品取引法・個人情報保護法等の法令上の要請を遵守し、さらに個別に約款や契約を締結し、これに基づき取引を行っております。法令・取引慣行・約款及び契約に基づく相互の認識の相違が生じた場合など、顧客及び取引先との間に損害賠償訴訟等が生じる可能性があり、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(16) 海外事業に関するリスク
当社グループは、香港・シンガポール等に当社の子会社を設置し引受業務・株式委託売買・株券貸借取引等のホールセール業務の拡大を図るなど、海外展開を行っています。展開に当たっては、現地の法律や規制を調査し、専任の役職員を設置して適切な業務運営に努めております。しかしながら、現地の法令・規制、取引慣行等に抵触した場合には、事業展開の中止や縮小・延期を迫られる可能性があります。その場合には、想定する業務運営に伴う収益機会を逸し、経営成績や財政状態に悪影響が及ぶ可能性があります。
(17) グループ戦略との関連性に起因するリスク
当社グループが属するSBIグループは、インターネットによる金融サービス・金融取引を社会に浸透させるなどの、金融サービス事業分野を中心とする「インターネット金融生態系」を構築し、設立以来資産規模・収益・顧客基盤の点において継続して成長を遂げてまいりました。現在も、FinTech、IoT、AI、ビッグデータをはじめとする技術開発が社会的に進展している中、SBIグループの金融サービス事業の中核を担う当社グループは、SBIグループが継続的に策定・公表している事業戦略において金融商品取引業等を手段としてこれを実現すべく、自身の事業戦略を策定・実行しています。
しかしながら、こうした先進的な取り組みは、既存の事業に比して戦略上の変動が大きく、さらにSBIグループ全体としての取組みの場合にはSBIホールディングスほか当社グループ以外の意思決定主体により戦略の変更などが決定されることがあります。その場合には、当社グループの事業戦略が影響を受け、変更の内容によっては当社グループの経営成績及び財政状態に影響が及ぶ可能性があります。
(18) リスク管理方針・手続の有効性に関するリスク
当社グループは、リスクカテゴリーごとにリスク管理所管部を定め、当社リスク管理部にてこれを統括することにより、統合的にリスク管理を行っております。リスク管理に当たっては、リスクの特性に鑑み、定性的・定量的な管理手法を策定し、モニタリングすることにより、事前事後のリスクの低減に努めております。しかしながら、想定を超える市場変動、リスク管理データの過誤や誤認識、事業内容の変化による管理手法の陳腐化などにより当社グループのリスク管理態勢が有効に機能しない可能性があります。それにより、損失が生じる場合には経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。