訂正意見表明報告書

【提出】
2020/11/20 16:04
【資料】
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脚注、表紙

(注1) 本書中の「当社」とは、京阪神ビルディング株式会社をいいます。
(注2) 本書中の「公開買付者」とは、サンシャインH号投資事業組合をいいます。
(注3) 本書中の記載において、計数が四捨五入又は切捨てされている場合、合計として記載される数値は計数の総和と必ずしも一致しません。
(注4) 本書中の「法」とは、金融商品取引法(昭和23年法律第25号。その後の改正を含みます。)をいいます。
(注5) 本書中の記載において、日数又は日時の記載がある場合は、特段の記載がない限り、日本国における日数又は日時を指すものとします。
(注6) 本書中の「本公開買付け」とは、本書提出に係る公開買付けをいいます。

公開買付者の氏名又は名称及び住所又は所在地

名 称 サンシャインH号投資事業組合
所在地 東京都港区赤坂六丁目5番38-807号 UGSアセットマネジメント内

公開買付者が買付け等を行う株券等の種類

普通株式

当該公開買付けに関する意見の内容、根拠及び理由

(1)意見の内容
当社は、2020年11月19日開催の取締役会において、公開買付者より2020年11月5日に開始された当社の普通株式(以下「当社株式」といいます。)に対する公開買付け(以下「本公開買付け」といいます。)に反対することを決議いたしました。したがいまして、株主の皆様におかれましては、本公開買付けに応募されないようお願い申し上げますとともに、既に応募された株主の皆様におかれましては、速やかに本公開買付けに係る契約の解除を行って頂きますよう、お願い申し上げます。
(2)意見の根拠及び理由
① 意見の根拠
公開買付者は、2020年11月5日付で本公開買付けを開始することを公表いたしましたが、本公開買付けは、当社取締役会に対して具体的な条件等に関して事前に何らの通知や連絡もなく、また、事前協議の機会もないまま、一方的に開始されたものです。
当社は、公開買付者による本公開買付けの公表を受け、ファイナンシャル・アドバイザーであるSMBC日興証券株式会社及び山田コンサルティンググループ株式会社並びに法務アドバイザーであるアンダーソン・毛利・友常法律事務所からの助言及び協力を得て、本公開買付けに対する当社の意見を表明することに向け、公開買付者が2020年11月5日に提出した公開買付届出書(以下「本公開買付届出書」といいます。)の内容その他の関連情報を直ちに精査し、慎重に評価・検討を進めてまいりました。しかしながら、当社は、当社の株主の皆様に、本公開買付けに応募するか否かを適切にご判断して頂くことの前提となる意見を形成・表明するためには、本公開買付届出書に記載された内容を含め、2020年11月10日時点までに入手することができた情報のみでは不十分であると考えました。
そこで、当社は、2020年11月10日付の当社取締役会において、本公開買付けが当社の企業価値の向上及び株主の皆様の共同の利益を確保するのに資するものであるかという点について更なる評価・検討を行うべく、公開買付者に対して、金融商品取引法第27条の10第2項第1号に基づく下記「7 公開買付者に対する質問」及び別紙に記載された質問(以下「2020年11月10日付質問事項」といいます。)を提示し、当該質問に対する公開買付者の回答を受領した後に、当該回答を踏まえて当社の賛否の意見を最終的に決定することが適切であると判断いたしました。
また、下記「(5)公正性を担保するための措置及び利益相反を回避するための措置等」に記載のとおり、当社は、ストラテジックキャピタルからの本件申入れ(下記「②意見の理由」において定義します。)を受け、社外取締役兼独立役員及び社外監査役兼独立役員からなる独立諮問委員会を設置しております。独立諮問委員会は、当社の株主の皆様の共同の利益に配慮しつつ、当社の企業価値の維持向上を図る観点から当社がとるべき対応につき、当社の諮問に応じて答申を行うものとされているところ、当社取締役会は、2020年11月9日、独立諮問委員会に対し、①当社が、公開買付者に対して、本公開買付けに関連して2020年11月10日付質問事項を提出することの是非に関する見解、②当社として2020年11月10日付質問事項に対する回答を得られるまでは、本公開買付けに関して「意見留保」という内容の意見を表明することの是非に関する見解、及び③2020年11月10日付質問事項に対する公開買付者からの回答を得た後に、本公開買付けに関する当社取締役会の意見についての見解を示すことを諮問しました。その結果、当社取締役会は、2020年11月9日、独立諮問委員会から、本公開買付けに関して慎重に評価・検討を行うべく、2020年11月10日付質問事項を公開買付者に提示すること及び当該質問事項に対する公開買付者の回答を得られるまでは、本公開買付けに関して「意見留保」という内容の意見を表明することは妥当であるとの答申を受領しており、当該答申内容を踏まえた上で、上記判断を行いました。
その後、当社による2020年11月10日付質問事項を受けて、公開買付者は、2020年11月17日、対質問回答報告書(以下「本対質問回答報告書」といいます。なお、以下本対質問回答報告書の頁数を記載する場合、本対質問回答報告書の別紙の頁数を意味します。)を関東財務局長に提出し、当社は、本対質問回答報告書並びに当社が収集した本公開買付け及び公開買付者に関する情報を基に、公開買付者の提案を詳細に評価・検討いたしました。
また、上記のとおり、当社取締役会は、2020年11月9日、独立諮問委員会に対し、2020年11月10日付質問事項に対する公開買付者からの回答を得た後における本公開買付けに関する当社取締役会の意見についての見解を諮問しておりましたが、独立諮問委員会は、2020年11月19日、当社取締役会に対し、独立諮問委員会の全員一致の意見として、当社からなされた下記「②意見の理由」に記載の反対意見の理由の説明を踏まえて、その妥当性を独自に検討・分析した結果、これらの理由に基づき、本公開買付けは当社の企業価値の向上及び株主共同の利益の向上に資するものとは認められないとした当社の判断は合理的であり、当社取締役会が本公開買付けに反対し、当社株主に対して本公開買付けに応募しないようお願いする旨の意見を表明することは妥当と思料するとの答申を行いました。この答申を受けて、当社は、2020年11月19日開催の取締役会において、取締役全員の一致により、本公開買付けに反対し、当社の株主の皆様には本公開買付けに応募されないようお願いする旨の意見を表明することを決議いたしました。
なお、上記取締役会において、監査役は、いずれも、本公開買付けに反対し、当社の株主の皆様には本公開買付けに応募されないようお願いする旨の意見を表明することに異議がない旨を述べております。
② 意見の理由
本公開買付けは、当社の中長期的な企業価値の向上及び株主の皆様の共同の利益に資するものであるか疑問であると考えております。
本公開買付届出書によれば、公開買付者は、本公開買付けにより、当社に対する発言権を強化し、株主価値向上の実現を図ることを目的としています。また、公開買付者は、当社の企業価値向上策として、当社がREITを運営する子会社を設立し、賃貸等不動産をそのREITに公正な価格で譲渡し、その後は、当社が子会社を通じたREITの管理・運営に専念することを主軸とするという施策(以下「本施策」といいます。)を提案しています。
しかしながら、本施策は、堅調に推移している当社の主要事業の内容を大きく変更するもので、当社の描く経営戦略から大きく乖離し、当社の事業運営を極めて不安定なものにすると考えております(下記(ⅰ)の(A))。
また、公開買付者の主要な構成員であるストラテジックキャピタルによる提案の態様及び内容は、当社の企業価値向上を目指した真摯なものであるとは考えられず、本公開買付けが、当社の中長期的な企業価値の向上に資するものであるか疑問であります(下記(ⅰ)の(B))。
次に、INTERTRUST TRUSTEES(CAYMAN)LIMITED SOLELY IN ITS CAPACITY AS TRUSTEE OF JAPAN-UP及びストラテジックキャピタルは、2020年6月16日に開催された当社第97回定時株主総会(以下「本定時株主総会」といいます。)において、本施策と同内容の提案を含む株主提案(以下「本株主提案」といいます。)を行っているところ、本株主提案は、いずれも圧倒的多数の株主の皆様の反対により否決されております。したがって、本株主提案と同内容である本施策の実現を目的として開始された本公開買付けは、本株主提案が当社の中長期的な企業価値に資するものではないという本定時株主総会において示された当社株主の皆様の意思を軽視するものであり、不応募株主(注1)以外の株主の皆様にとっては、その意思に反する本施策が実施される可能性が高まるものと考えております(下記(ⅱ))。
加えて、本公開買付けは、当社取締役会に対して具体的な条件等に関して事前に何らの通知や連絡もなく、また、事前協議の機会もないまま、一方的に開始されたものであり、公開買付者が短期的な利益のみを追求し、当社の中長期的な企業価値の向上を図る意図がないことを考慮すると、当社が公開買付者との間で信頼関係を構築することは極めて困難です。したがって、公開買付者が本公開買付けを通じて当社に対する発言権を強め、当社の事業に対する積極的な介入を行うようになれば、当社の経営に支障をきたすものと考えております。(下記(ⅲ))
以下、順に説明いたします。
(注1) 本公開買付届出書によれば、「不応募株主」とは、株式会社ストラテジックキャピタル、INTERTRUST TRUSTEES(CAYMAN) LIMITED SOLELY IN ITS CAPACITY AS TRUSTEE OF JAPAN-UP、サンシャインF号投資事業組合及びサンシャインG号投資事業組合のことを指すとのことです。
(ⅰ) 本公開買付けが、当社の中長期的な企業価値の向上に資するものであるか疑問であること
(A) 本施策は、当社が描く成長戦略と乖離し、中長期的な企業価値の向上を妨げるものであること
わが国の経済は、海外経済や貿易の減速、消費税率引上げによる民間消費の落ち込み等で弱含みであったところへ、2020年1月以降、新型コロナウイルス感染症の国内外での拡大により景気が大幅かつ急激に下振れし、厳しい状況になっております。また、このような新型コロナウイルス感染症の影響は、不動産賃貸業界にも今後さらに及んでくるものと思われます。このような状況下、当社におきましては、営業活動に注力した結果、2020年3月期末時点で、当社所有不動産は満室稼働となる等、足元業績は堅調に推移しております。
また、以下に示すとおり、当社は、既存の土地建物賃貸事業をこれまでに着実に成長させ、その結果として、企業価値を向上させ、株主の皆様への利益還元を増加させることができたものと自負しております。
(a) 主要な経営指標の推移
過去における当社の成長は、以下のような主要な経営指標の推移からも見て取れます。すなわち、当社における1株当たり利益(以下「EPS」といいます。)は、2010年度末時点では39.4円であったのに対し、2019年度末時点では、74.6円と約2倍上昇しております。さらに、1株当たり純資産額(以下「BPS」といいます。)についても、2010年度末時点で835.4円であったのに対し、2019年度末時点では1,236.5円となっており、また、1株当たり修正純資産額(注2)(以下「修正BPS」といいます。)についても、2010年度末時点で1,400.6円であったのに対し、2019年度末時点においては、2,205.6円となっており、いずれも大幅に上昇しております。
EPS、BPS及び修正BPSといった数値は、一般的に、当該会社の収益性や安定性を図る指標として参照されるものであるところ、当社において、これらの指標がいずれも順調に上昇し続けていることは、当社がこれまで着実に株主価値を向上させてきたことの証左であると考えております。
(注2) ここで「修正純資産額」とは、直近四半期末の純資産に不動産含み益を加えた額をいいます。不動産含み益の算出方法は下記のとおりです。
不動産含み益=(直近年度末の賃貸等不動産の時価-簿価)×(1-実効税率)
(b) 株主の皆様への利益還元実績
また、当社における株主の皆様への利益還元についても、以下のとおり堅調であるといえます。すなわち、当社は、過去7期連続の増配を実施し、その結果、2013年度には1株当たりの配当は14円であったのが、2020年度には、1株当たり31円まで増額しております。また、その結果、2015年度以降、当社の配当性向も向上しており、2016年3月期には23.9%であった配当性向は、2020年3月期には36.2%まで改善しております。
加えて、このように株主還元強化策としての配当性向引上げを実施してきたことを背景として、当社の株主総利回り(以下「TSR」といいます。)は、過去1年間において38.6%、過去3年間において154.6%、過去5年間においては217.4%に達しております。これは、同期間におけるTOPIXに係るTSR(それぞれ、過去1年間において-2.9%、過去3年間において-4.3%、過去5年間において13.5%)と比較しても、極めて高い水準です。
以上のとおり、当社においては、これまでも、事業成長の結果としての株主の皆様への利益還元を十分に行ってきたものと自負しております。
当社としては、上記のように、本業である土地建物賃貸事業を着実に成長させて、株主価値の向上ならびに株主還元強化を実施してきておりますが、これは、当社が、これまでに、中長期的な観点からの経営戦略を継続的に遂行してきたことの成果であると考えております。2019年10月に策定した新中期経営計画「ここからの挑戦〜新たな成長のステージへ〜」(以下「本新中期経営計画」といいます。)においても、このような当社の姿勢を引き続き踏襲しております。したがって、本新中期経営計画に沿った成長戦略を維持・継続することにより、引き続き、当社の中長期的な企業価値の向上を実現することが可能であり、これにより株主の皆様への更なる利益還元を行うことにもつながると考えております。なお、本新中期経営計画に基づく施策の一環として、当社は、東京都港区虎ノ門でのオフィスビル開発及び大阪市内でのデータセンタービル開発を目下順調に進行させております。
他方、ストラテジックキャピタルが提案する本施策は、当社保有資産の譲渡によるREITの管理・運営事業への転換を内容とする点において、本新中期経営計画を含む当社の成長戦略と大きく乖離するものであります。当社は、2019年4月時点において、外部専門家の知見を交えて本施策の是非につき検討を行いましたが、当社が保有する資産の規模やその用途等の特徴、保有不動産における主要テナント招聘時の交渉経緯や保有不動産の譲渡に伴う多額のキャピタルゲイン課税の発生・流出等を考慮すると、当社においては、REITの管理・運営事業は成長の不確実性が大きい上、従来路線による当社既存土地建物賃貸事業の持続的成長を断ち切る点で、中長期的な企業価値向上の妨げになると判断しております。また、下記(B)に記載のとおり、本施策は、短期的な利益の追求のみを目指すものであると考えられ、この観点からも、当社の考える中長期的な企業価値向上という視点と相容れないものであります。
以上のように、当社における既存土地建物賃貸事業は堅調に推移しており、当社としては、本新中期経営計画を含む事業方針を変更する必要性は乏しく、むしろ、公開買付者及びストラテジックキャピタルが提案するように当社の事業内容を大きく転換することは、相互信頼の中で長期契約しているテナント(取引先)との関係性悪化の可能性を含め、当社の事業運営を極めて不安定なものにすると考えています。
(B) 公開買付者による提案は、当社の中長期的な企業価値向上を目指した真摯なものとは言えないこと
本公開買付届出書によれば、公開買付者は、当社への株主としての発言権を強化することにより、本施策を推し進めることを目的として本公開買付けを実施しております。しかしながら、以下のとおり、当社は、本施策は当社の中長期的な企業価値向上を目指した真摯な提案とは言い難いものと考えております。
まず、公開買付者の提案には、本施策実施後の具体的な成長戦略や事業計画等が含まれておりません。当社は、本公開買付けの開始を受け、2020年11月10日付質問事項において、公開買付者に対し、公開買付者が想定している本公開買付け成立後の当社に関する具体的な事業計画等の有無につき質問しておりました。しかしながら、公開買付者は、本対質問回答報告書13頁において、「投資判断の一任を受けているストラテジックキャピタル及びUGSAMの提案を現経営陣に受け入れていただくことを目指しているのであり、その後の事業計画、財務・資金計画、投資計画等についてお考えいただくのは、貴社の取締役である現経営陣の職責である」と回答するのみであり、本施策を実施する場合の具体的な事業計画等の提示はなされませんでした。公開買付者が、本施策が当社の中長期的な企業価値の向上に資するものと真摯に考えているのであれば、当社における土地建物賃貸事業を、REITの管理・運営という事業形態に大幅な転換をするにあたっての具体的な成長戦略や事業計画等が示されて然るべきですが、本公開買付けの開始時点までに、公開買付者及びストラテジックキャピタルより、具体的な成長戦略や事業計画等は何ら示されておりません。さらに、公開買付者が本公開買付届出書において記載している本公開買付け後の経営方針は、本施策と、当社の保有する政策保有株式の売却及び特別配当の実施のみであり、他の施策や具体的な経営方針及び事業計画等については明らかにされておりません(なお、本定時株主総会において、INTERTRUST TRUSTEES(CAYMAN)LIMITED SOLELY IN ITS CAPACITY AS TRUSTEE OF JAPAN-UP及びストラテジックキャピタルが行った本株主提案のうち、政策保有株式の売却に係る定款変更に関する提案である第8号議案は、出席議決権の89%以上に相当する反対票により否決されております。)。
また、当社は、下記(ⅲ)に記載のとおり、ストラテジックキャピタルからの本件申入れ(下記(ⅲ)において定義します。)を受け、独立諮問委員会を設置し、当社の株主の皆様の共同の利益に配慮しつつ、当社の企業価値の維持向上を図る観点から当社がとるべき対応につき、同委員会に諮問しており、独立諮問委員会は、当該諮問事項の検討にあたり、ストラテジックキャピタルに対し、当社を通じて、10月23日付質問事項(下記(ⅲ)において定義します。)を送付しておりましたが、ストラテジックキャピタルは、当該質問事項に対する回答を一切行わない状況の下、本公開買付けを開始しております。このように、当社は、ストラテジックキャピタルからのデューデリジェンス協力の申入れに対して真摯に対応を行っていたにもかかわらず、公開買付者の主要な構成員であるストラテジックキャピタルは、当社に対するデューデリジェンスを実施する可能性・機会、ひいてはREITの管理・運営という事業の実施により当社の中長期的な企業価値が向上するか否かをストラテジックキャピタルが自ら検討・判断するための可能性・機会を自ら放棄しております。公開買付者は、本公開買付届出書において、本公開買付けが成立した場合には、株主価値向上のために当社の現経営陣との対話を推進する予定であるとしています。しかしながら、当社としては、当社との対話を自ら一方的な形で打ち切った公開買付者が、本公開買付け後には真摯に株主価値向上のための対話を継続するかどうかは疑わしく、一般株主の皆様の意思を無視した経営方針や施策の実施を強硬に推し進めてくるのではないかと懸念しております。
さらに、公開買付者は、本公開買付届出書において、「この施策は、対象者がREITに賃貸等不動産を公正な価格で譲渡し、その譲渡代金の税引き後の手取額を特別配当として株主に還元する」ことを目的としていると記載しておりますが、同時に「対象者が当該REIT以外の売却先に対し、公正な価格以上のより高い価格で賃貸等不動産を譲渡する場合はこの限りではありません」と記載しており、譲渡後に当社が当社の賃貸等不動産の経営に関与することを必ずしも前提としていないことも踏まえると、公開買付者は、当社の資産を処分することにより、当社の配当の財源を確保することのみを目的として本公開買付けを開始したものとみざるを得ません。上記のとおり、公開買付者が、当該資産の処分を行った後の当社の具体的な事業計画等を何ら提示していないことをも踏まえると、当社としては、本施策は、短期的な利益の追求のみを目指すものであると評価せざるを得ず、当社の中長期的な企業価値向上を目指した真摯なものであるとは考えられません。
以上のような状況下において、公開買付者が、本公開買付けを通じて、当社の株主総会特別決議を阻止することが実質的に可能となる水準の当社株式を取得した場合、今後、組織再編等の当社の中長期的な企業価値を向上させる施策の効率的・機動的な実施が必要となった場合にも、これらが妨げられることとなり得ますので、本公開買付けが、当社の中長期的な企業価値の向上に資することになるか疑問です。
(ⅱ) 本公開買付けは、本定時株主総会において示された当社株主の皆様の意思を軽視して強行されたものであること
上記(i)に記載のとおり、本公開買付けは、公開買付者の当社への株主としての発言権を強化することにより、本施策を推し進めることを目的としております。
もっとも、ストラテジックキャピタルは、本定時株主総会において、本施策と同内容の提案を含む本株主提案を行っているところ、当該提案は、圧倒的多数の株主の皆様の反対により否決されております。具体的には、本対質問回答報告書10頁によれば、本株主提案のうち、「投資法人資産運用業を営む会社の株式を所有することによる当該会社の事業活動の支配・管理」等を当社の定款の目的事項に追加すること等に関する提案である第6号議案及び当社が保有する全ての賃貸用不動産を、1,985億円以上の価格で譲渡することに関する提案である第7号議案は、本施策と同一のものとのことです。そして、第6号議案及び第7号議案は、いずれも出席株主の議決権の89%以上に相当する反対票により否決されております。
このように、本株主提案が株主の皆様の圧倒的多数の反対により否決されたことは、本株主提案によって示された株主価値向上策が、当社の企業価値及び株主の皆様の共同の利益の中長期的な向上に資するものではないと株主の皆様が判断したことによるものです。さらに、本定時株主総会における上記の結果は、本株主提案と同内容の本施策も、大多数の株主の皆様の意思に反することを示すものであり、当社取締役会としては、本定時株主総会で示された株主の皆様の意思を尊重すべきであると考えております。
そして、本定時株主総会における本株主提案の否決後、期間をおかずに、本施策の実現を目的として開始された本公開買付けは、本定時株主総会において示された当社株主の皆様の意思を軽視するものであると言わざるを得ません。仮に本公開買付けが成立した場合、ストラテジックキャピタルの当社に対する影響力が増加することとなりますが、当社としては、これにより、不応募株主以外の株主の皆様において、その意思に反する本施策が実施される可能性が高まることを危惧しております。
(ⅲ) 公開買付者との間で信頼関係を構築することが困難であり、公開買付者が当社への影響力を強めることで当社の経営に支障をきたすこと
本公開買付けは、当社取締役会に対して具体的な条件等に関して事前に何らの通知や連絡もなく、また、事前協議の機会もないまま、一方的に開始されたものです。
この点、公開買付者は、本公開買付届出書において、「ストラテジックキャピタルは、本公開買付けの検討に際し、2020年10月7日に対象者取締役会に対して対象者にデューデリジェンス協力の申入れを行いましたが、現時点で対象者の協力を得ることはできておらず」と記載しております。しかしながら、ストラテジックキャピタルが2020年10月7日に当社取締役会に対してデューデリジェンス協力の申入れ(以下「本件申入れ」といいます。)を行ったことを受け、当社取締役会は、2020年10月23日に、ストラテジックキャピタル又は当社との間に重要な利害関係が存在しないことを確認した上で、下記「(5)公正性を担保するための措置及び利益相反を回避するための措置等」に記載のとおり、当社の(取締役7名のうち)社外取締役兼独立役員である4名及び(監査役3名のうち)社外監査役兼独立役員である1名から構成される独立諮問委員会を設置し、当社の株主の皆様の共同の利益に配慮しつつ、当社の企業価値の維持向上を図る観点から当社がとるべき対応につき、同委員会に諮問しておりました。独立諮問委員会は、2020年10月23日、当該諮問事項の検討にあたり、ストラテジックキャピタルに対し、当社を通じて、本件申入れに関して2020年11月6日を回答期限とした質問事項(「10月23日付質問事項」といいます。)を送付しておりましたが、ストラテジックキャピタルからの回答が一切ない状況の下、突然本公開買付けが開始されました。このように、当社は、ストラテジックキャピタルからのデューデリジェンス協力の申入れに対して真摯に対応を行っていたにもかかわらず、ストラテジックキャピタルは、あたかも当社が本件申入れを不当に拒絶したかのような内容の開示を行っております。
また、ストラテジックキャピタルは、ストラテジックキャピタルが開設したサイトである「京阪神ビルディングの株主価値向上に向けて」の「京阪神ビルと弊社との対話内容」において、ストラテジックキャピタルが、2018年2月から、当社の経営陣に対し、当社の株主価値向上のための施策を申入れ、対話を重ねてきた旨の記載をしております。当社は、ストラテジックキャピタルからの提案内容に関し、当社の中長期的な企業価値向上及び株主の皆様の共同の利益の向上という観点から取り入れるべきと考えるものについては、これを参考にし、当該提案を踏まえた施策を実施してまいりました。具体的には、ストラテジックキャピタルからの提案内容に関連した施策として、当社の役員構成については、社外取締役の人数を2019年6月には2名から3名に、2020年6月には4名に、それぞれ増員しており、これにより、当社取締役会の総員数7名のうち、独立社外取締役が過半数を占めるに至っております。また、独立社外取締役が委員の過半かつ委員長を占める指名・報酬委員会を設置することにより、ガバナンスの客観性・公平性確保を図っております。さらに、当社が保有する政策保有株式についても、2017年度以降2020年度までに、約23億円相当分を売却しております。このように、当社は、これまでも、ストラテジックキャピタルの提案内容を一律に排除するようなことはせず、当社の中長期的な企業価値向上及び株主の皆様の共同の利益の向上という観点から取り入れるべき点がないか等を常に検討し、真摯に向き合ってまいりました。
本件申入れを受けての一連の対応についても、上記のような一環として行われたものであります。それにもかかわらず、この度、ストラテジックキャピタルが、このような当社の対応を無視する形で本公開買付けを強行したことは、極めて遺憾であります。
上記経緯に加え、当社は、公開買付者が、本対質問回答報告書において、当社の2020年11月10日付質問事項に対して、真摯に回答を行ったと評価することはできないと考えております。例えば、当社からの「公開買付者は、当社が所有する賃貸用不動産の公正な価格が、当社が有価証券報告書の注記で開示している賃貸用不動産の時価又はそれ以上の価格であると想定しているとしていますが、そのように想定した根拠を具体的にご説明ください」との質問に対しては、公開買付者は、当該質問が、本公開買付けを行う主要な目的である本施策の実現の大前提に関わるものであるにもかかわらず、回答を拒否しております(本対質問回答報告書11頁)。また、「本公開買付け後の、当社の資本政策及び配当政策の方針並びにそのような資本政策及び配当政策を採用した場合に当社の中長期的な企業価値に与える影響について、具体的にご説明ください」との質問に対しては、公開買付者は、「1点目については、株主価値向上のため 、公開買付届出書7頁に記載のとおり『特別配当の実施を要請』します」、「2点目については、…(株主価値向上のための施策を実効することは、)他の多数のREITの運用会社がそうであるように、積極な資産運用事業により対象者の継続企業としての株主価値を向上させることを可能とするものです」といったような、何ら具体性のない回答を行うのみであります(本対質問回答報告書14頁)。さらに、「本公開買付け後において、公開買付者が現時点で想定されている当社の事業計画、財務・資金計画、投資計画等があれば、その内容を具体的にご説明ください」との質問に対しては、公開買付者は、「その後の事業計画、財務・資金計画、投資計画等についてお考えいただくのは、貴社の取締役である現経営陣の職責であると考えています」とのみ回答し、公開買付者の具体的なビジョンを示しておりません(本対質問回答報告書13頁)。以上のように、公開買付者は、本対質問回答報告書において、本公開買付けに関連する本質的な質問に対する回答を十分に行っておりません。
このように、当社の真摯な対応を無視する形で、公開買付者による本公開買付けの実施に至ったという経緯に加え、本対質問回答報告書における公開買付者の回答内容も真摯なものではなく、具体的な成長戦略や事業計画等が示されないことを踏まえれば、仮に本公開買付けが成立した場合であっても、公開買付者及びその主要な構成員であるストラテジックキャピタルとの間で信頼関係を醸成し、今後、当社の中長期的な企業価値向上に向けて建設的な対話をしていくことは困難であると考えております。
当社は、株主の皆様のご意見に真摯に向き合い、誠実に対話を重ねながら経営を行うことは、当社の中長期的な企業価値を安定的に向上させていく上で不可欠であると考えております。そうであるからこそ、本件申入れを巡るやり取りにおいて当社との対話を一方的に放棄し、具体的な事業計画や成長戦略等を示すことなく、本定時株主総会において示された当社の株主の皆様の意思に反する施策のみを掲げて、突然かつ一方的に本公開買付けを開始した公開買付者の当社に対する影響力が増加することにより、当社の経営に支障をきたすこととなるのではないかと危惧しております。
(ⅳ) 最後に
以上のとおり、当社は、本公開買付けが、当社の中長期的な企業価値の向上及び株主の皆様の共同の利益に資するものであるか疑問であること、本公開買付けは本定時株主総会において示された当社株主の皆様の意思に反するものであること、公開買付者との間で信頼関係を構築することが困難であり、公開買付者が当社への影響力を強めることで当社の経営に支障をきたすこと等を踏まえ、本公開買付けに対して反対いたします。
当社は、1948年の設立以来70余年間の歴史の中で、戦後の混乱期において競馬場の建設や場外馬券売り場の設置により、戦争で荒んだ大衆に癒し・娯楽の場を提供し、その後、日本経済の発展とともにオフィスビルの賃貸に着手し、モータリゼーションの発展によるライフスタイルの変化に合わせ郊外の商業施設、物流倉庫事業も展開してまいりました。1988年にはオフィスコンピューターの普及に合わせ、いち早くデータセンタービルの賃貸事業に進出しました。創業来培ってきた当社の強みは、時代のニーズに合わせ、事業ポートフォリオを築き、安定的に着実に成長してきたことにあるものと考えております。
当社の安定した収益基盤及びそれを生み出す現在のポートフォリオは、長い歴史の中で育んできたオーナーとテナント各社・パートナー企業・地域社会との強い信頼関係に負うところが大きいといえます。また、当社は、時として果断にリスクを取り積極的に開発投資を実行し、成就させてきたことで企業価値を着実に向上させてきましたが、このようにリスクをとりながらも積極的に開発投資を行うことが可能であった背景には、当社の充実した財務内容と資金調達力があるものと考えております。当社は、本公開買付けを通じて公開買付者が、こうした当社の中長期的な企業価値の向上を志向したプロセスを無視し、70余年間で築き上げたステークホルダーとの信頼関係を含めた事業基盤を壊し、更なる企業成長の芽を全て奪い取ろうとするものであると判断しております。
当社としては、上記(i)に記載の現在進行中の東京及び大阪における開発プロジェクトのように、今後も時宜を得た投資を続け、ステークホルダーの皆様との信頼関係を維持し、本新中期経営計画の実現を通じて更なる企業価値の向上実現に向けて邁進していく所存であります。
株主の皆様におかれましては、当社の業歴の中での企業価値向上の実績、それに応じた株主還元の増強の推移等を是非重視して頂き、当社の更なる企業価値向上に期待して頂きたいと存じます。したがって、以上のような当社の中長期的な企業価値向上に向けた施策の積み重ねを無に帰するような発想に基づく本施策の実現を目的とする本公開買付けには応募されないようお願い申し上げます。
(3)上場廃止となる見込み及びその事由
当社株式は、本書提出日現在、東京証券取引所市場第一部に上場されております。本公開買付届出書によれば、本公開買付けは、当社株式の上場廃止を企図するものではなく、公開買付者は買付予定数の上限を設定の上、本公開買付けを実施し、本公開買付け後、公開買付者及び不応募株主が所有する当社株式の数の合計は、15,245,500株(所有割合(注3):29.33%)にとどまる予定であるため、当社株式は本公開買付け成立後も、東京証券取引所市場第一部における上場が維持される見込みとのことです。
(注3) 本公開買付届出書によれば、「所有割合」とは、当社が2020年10月30日に提出した第98期第2四半期報告書に記載された2020年9月30日現在の発行済株式総数(52,184,498株)から当社が2020年10月23日に公表した「2021年3月期 第2四半期決算短信[日本基準](連結)」に記載された2020年9月30日現在の当社が所有する自己株式数(205,428株)を控除した株式数(51,979,070株)に対する割合を指し、小数点以下第三位を四捨五入しているとのことです。以下同様です。
(4)本公開買付け成立後の公開買付者による当社の株券等の追加取得の予定
本公開買付届出書によれば、公開買付者は、本公開買付けが成立した後に当社の現経営陣と協議を行った上で、株主価値向上の実現を図ることを予定しているとのことです。当社株式の取得を目的とした追加での株式取得策について、現時点で決定した事実はないとのことです。
(5)公正性を担保するための措置及び利益相反を回避するための措置等
上記上記「(2)意見の根拠及び理由」に記載のとおり、当社は、当社経営陣から独立した立場での本公開買付けの検討結果を当社の意思決定に反映させ、もって当社の意思決定過程の公正性及び客観性を確保する観点から、公開買付者又は当社との間に重要な利害関係が存在しないことを確認した上で、当社の(取締役7名のうち)社外取締役兼独立役員である4名及び(監査役3名のうち)社外監査役兼独立役員である1名から構成される独立諮問委員会を設置しております。当社は、独立諮問委員会の答申内容をふまえた上で、本公開買付けに関する対応を決定しております。
具体的には、当社取締役会は、2020年11月9日、独立諮問委員会に対し、2020年11月10日付質問事項に対する公開買付者からの回答を得た後における本公開買付けに関する当社取締役会の意見についての見解を諮問いたしました。当該諮問を受けて検討を行った結果、独立諮問委員会は、2020年11月19日、当社取締役会に対し、独立諮問委員会の全員一致の意見として、当社からなされた上記「(2)意見の根拠及び理由」「②意見の理由」に記載の反対意見の理由の説明を踏まえて、その妥当性を独自に検討・分析した結果、これらの理由に基づき、本公開買付けは当社の企業価値の向上及び株主共同の利益の向上に資するものとは認められないとした当社の判断は合理的であり、当社取締役会が本公開買付けに反対し、当社株主に対して本公開買付けに応募しないようお願いする旨の意見を表明することは妥当と思料するとの答申を行いました。この答申を受けて、当社は、2020年11月19日開催の取締役会において、取締役全員の一致により、本公開買付けに反対し、当社の株主の皆様には本公開買付けに応募されないようお願いする旨の意見を表明することを決議いたしました。
なお、上記取締役会において、監査役は、いずれも、本公開買付けに反対し、当社の株主の皆様には本公開買付けに応募されないようお願いする旨の意見を表明することに異議がない旨を述べております。
また、当社は、本公開買付けに係る当社の意見を表明するにあたり、意思決定過程における公正性及び客観性を確保する観点から、公開買付者及び当社との間に重要な利害関係が存在しないことを確認した上で、ファイナンシャル・アドバイザーであるSMBC日興証券株式会社及び山田コンサルティンググループ株式会社並びに法務アドバイザーであるアンダーソン・毛利・友常法律事務所を外部アドバイザーとして選任し、その助言を踏まえて、本公開買付けについて慎重に評価・検討しております。
(6)公開買付者と自社の株主との間における公開買付けへの応募に係る重要な合意に関する事項
本公開買付届出書によれば、公開買付者は、2020年11月4日、不応募株主との間で、不応募株主が所有する当社株式(所有株式数の合計5,039,400株、所有割合の合計9.70%)について、本公開買付けに応募しない旨を口頭で合意しているとのことです。

役員が所有する株券等の数及び当該株券等に係る議決権の数

氏名役職名所有株式数(株)議決権の数(個)
中 野 健二郎取締役会長52,500525
南 浩 一代表取締役社長
社長執行役員
32,500325
伊勢村 誠 介取締役
執行役員
建築技術部長
2,60026
河 内 一 友取締役(社外)
吉 田 享 司取締役(社外)
野 村 雅 男取締役(社外)10,000100
辻 卓 史取締役(社外)
西 田 滋監査役(常勤)6,10061
富 髙 正 信監査役(社外)
竹 田 千 穂監査役(社外)
103,7001,037

(注1) 役職名、所有株式数及び議決権の数は本書提出日現在のものです。
(注2) 取締役河内一友、吉田享司、野村雅男、辻卓史は社外取締役です。
(注3) 監査役富髙正信、竹田千穂(職務上使用している氏名、戸籍上の氏名は草島千穂)は社外監査役です。

公開買付者に対する質問

添付別紙をご参照ください。