有価証券報告書-第145期(平成25年4月1日-平成26年3月31日)

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2014/06/27 14:47
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業績等の概要

(1)業績
当連結会計年度におけるわが国経済は、政府の財政政策と日銀の金融緩和の効果から円安・株高の状況が続くなか、企業収益の改善及び個人消費の持ち直しの傾向がみられ、景気は、緩やかな回復基調で推移いたしました。
このような経済情勢の中、当社(連結子会社を含む)は、将来の持続的な成長を目指すべく、中期3か年経営計画「~創る、繋ぐ、拓く~」を推進しており、当連結会計年度は着実に計画目標を達成するため、お客さまの視点に立った事業連携を強化し、連結収益の最大化を目指してまいりました。
当連結会計年度の営業収益は、当社の不動産事業が好調に推移したことや、当社の鉄軌道業において、東横線と東京メトロ副都心線との相互直通運転効果や、消費税増税に伴う定期券等の先買いがあったことなどにより、1兆830億7千万円(前年同期比1.4%増)、営業利益は、621億9千万円(同11.6%増)となりました。経常利益は、持分法による投資利益が増加したことなどにより、626億1千8百万円(同11.3%増)、当期純利益は、持分変動利益を計上したことや、固定資産売却益が増加したことなどにより、564億9千8百万円(同31.2%増)となりました。
セグメントの業績は以下のとおりであり、各セグメントの営業収益は、セグメント間の内部営業収益又は振替高を含んで記載しております。なお、各セグメントの営業利益をセグメント利益としております。
(交通事業)
本年2月15日、東横線元住吉駅において列車衝突事故、同日、こどもの国線こどもの国駅においてホーム屋根落下事故が発生いたしました。事故でお怪我をされたお客さまに心よりお詫び申し上げます。また、ご利用のお客さま、株主の皆さま並びに沿線住民の皆さまにおかれましても、多大なご迷惑とご心配をおかけしましたことについて深くお詫び申し上げます。列車衝突事故の原因につきましては、現在も国土交通省の運輸安全委員会による調査中でありますが、当社としても、安全に係わる極めて重大な事故と認識し、原因究明に努めております。また、降雪時・積雪時の運行対応の見直しや、さまざまな事象を想定し事故の未然防止を目的とした安全総点検を本社部門及び現業部門が一体となって実施することで、安全体制を更に強化し、事故防止に努めてまいります。事故発生に備え、お客さまへの情報提供、係員による対応の迅速化、関係各所との連携体制の強化もあわせて進めてまいります。「安全」を使命とする公共交通事業者として、今後このような事故を二度と起こさないという強い決意と反省のもと、全社一丸となって安全運行に取り組んでまいります。
当連結会計年度は、大規模な地震に備え、駅・高架橋・トンネルの耐震補強工事など鉄道設備の被害軽減対策を推進いたしました。また、ホーム上の安全対策につきましては、東横線中目黒駅・学芸大学駅にホームドアを設置するとともに、他の駅においてもホームドアが整備されるまでの安全対策として安全柵や非常停止ボタンを増設するなど、さまざまな取り組みを進めております。
利便性向上の面では、昨年3月16日、東横線と東京メトロ副都心線との相互直通運転を開始したことにより、渋谷から東京メトロ副都心線を経由して東武東上線、西武有楽町線・池袋線までが一本の路線として結ばれ、広域な鉄道ネットワークが形成されました。これにより、東武線・西武線など各方面から横浜・みなとみらい地区を訪れるお客さまが増えたほか、当社沿線から新宿・池袋方面に向かうお客さまも増加し、東急線の輸送人員・運賃収入は順調に推移しております。
なお、渋谷駅周辺開発の進捗にともない、駅構内の動線が複雑となり、渋谷駅をご利用のお客さまには一時的にご不便をおかけしておりますが、東京メトロと共同でエスカレーターの増設など、開発工事期間中における渋谷駅の利便性向上施策を推進しております。
快適性向上の面では、混雑緩和と遅延抑制を重要な課題と位置づけております。本年3月には、東横線・目黒線・池上線・東急多摩川線でダイヤ改正を実施いたしました。目黒線については朝・夜間の列車増発や急行運転時間帯の拡大等を実施し、また池上線については平日夕・夜間の行先延長や夜間増発を実施し、それぞれ混雑緩和と遅延抑制を図りました。
当社の鉄軌道業における輸送人員は、前連結会計年度に比べて、東横線と東京メトロ副都心線との相互直通運転効果などにより、定期で3.7%、定期外で0.8%、全体では2.5%の増加となり、旅客運輸収入についても、2.0%の増加となりました。
連結子会社の輸送人員は、伊豆急行㈱で1.1%減少、上田電鉄㈱で3.3%増加いたしました。
バス業では、東急バス㈱の輸送人員が2.8%増加いたしました。
交通事業全体の営業収益は、当社の鉄軌道業において、東横線と東京メトロ副都心線との相互直通運転効果に加えて、消費税増税に伴う定期券等の先買いがあったことなどにより、1,920億9千9百万円(同2.6%増)、営業利益は211億9千1百万円(同17.4%増)となりました。
(当社の鉄軌道業の営業成績)
種別単位第144期第145期
24.4.1~25.3.3125.4.1~26.3.31
営業日数365365
営業キロ程キロ104.9104.9
客車走行キロ千キロ139,840143,292
輸送人員定期外千人447,003450,458
定期千人642,485666,175
千人1,089,4881,116,633
旅客運輸収入定期外百万円72,78973,466
定期百万円58,18460,146
百万円130,973133,612
運輸雑収百万円17,33418,938
収入合計百万円148,307152,550
一日平均収入百万円406418
乗車効率%51.351.5

(注) 乗車効率の算出方法乗車効率=輸送人員×平均乗車キロ× 100
客車走行キロ平均定員

(不動産事業)
不動産事業では、「東急多摩田園都市」の開発をはじめとする「街づくり」を事業活動の中心におき、さまざまな領域での不動産事業を総合的に展開しております。
将来の安定的かつ継続的な収益の確保とさらなる沿線価値の向上を目指し、渋谷駅周辺開発事業や二子玉川における再開発事業(二子玉川ライズ)などの大規模開発プロジェクトを推進しております。
また東横線・目黒線武蔵小杉駅周辺においても開発が進んでおり、昨年4月、駅直結のショッピングセンター「武蔵小杉東急スクエア」をグランドオープンいたしました。地域の皆さまや武蔵小杉駅をご利用されるお客さまの日常生活に彩りを提供する約100店舗を展開しており、テナント売上高は物販、飲食、サービスともに好調に推移しております。
このほか、昭和53年の開業以来多くのお客さまにご利用いただいてきた「東急嶮山スポーツガーデン」を地元地権者と共同でリニューアルし、昨年10月、郊外型商業施設「あざみ野ガーデンズ」を開業いたしました。地域の皆さまが自分の“庭(ガーデン)”のように、気軽にショッピングやお食事、スポーツなどを楽しんでいただける空間を提供しております
不動産事業全体の営業収益は、当社の不動産販売業において、大型集合住宅(マンション)の販売収入が増加したことなどにより、1,930億2千万円(同17.9%増)、当社の不動産賃貸業において、「武蔵小杉東急スクエア」の開業に伴う賃貸収入の増加や、「渋谷ヒカリエ」などの賃貸収入が堅調に推移したことなどにより、営業利益は301億2千8百万円(同12.4%増)となりました。
(生活サービス事業)
当社は、生活サービス事業を街の生活基盤として沿線価値の向上に寄与するものと位置づけるとともに、収益力の向上に取り組んでおります。同事業は、魅力ある施設づくりに加えて、お客さまの期待を上回る商品やサービスの提供に努めるとともに、交通事業、不動産事業をはじめとする各事業との相乗効果を発揮するため、グループ間連携をさらに促進しております。
百貨店業の㈱東急百貨店では、「高付加価値・高効率な新しい成長モデル」を確立し、東急沿線エリアのライフスタイルや生活価値の向上に貢献することを目指しております。東急東横店は、「渋谷駅街区土地区画整理事業」の進捗に伴い、西館・南館への集約・再編を実施し、昨年4月にリニューアルオープンいたしました。また、同社が「渋谷ヒカリエ」内で運営する商業施設「ShinQs(シンクス)」は、開業2周年を迎えた本年4月、2周年記念限定商品を販売するとともに、さまざまな売出しやイベントを開催し、常に「新しさ」を発信することで、引き続き多くのお客さまにご支持いただいております。
チェーンストア業の㈱東急ストアでは、利益構造改革の一環として、不採算店舗を整理する一方、地域特性に応じた商圏分析による品揃えの見直しなどをはじめとした、お客さまのご要望に最大限お応えする売場づくりを進めております。当連結会計年度は、地域住民の皆さまからスーパーマーケットの開業を求める声を多くいただいていたことを踏まえ、田園都市線高津駅高架下に「高津東急ストア」を昨年10月にオープンいたしました。
ケーブルテレビ事業のイッツ・コミュニケーションズ㈱では、お客さまの宅内を中心にテレビ、インターネット、電話などの各サービスを展開しております。当連結会計年度は、営業活動の強化による顧客基盤の拡大により、同社サービスの加入者及び利用料収入ともに、順調に増加しております。また、東急線・みなとみらい線の全駅及び東急グループの主要商業施設において、公衆無線LAN(Wi-Fi)サービスを提供しており、昨年10月には、新たに「SHIBUYA109」等においても同サービスの提供を開始いたしました。
生活サービス事業全体の営業収益は、㈱東急ストアが好調に推移したことや、イッツ・コミュニケーションズ㈱において、サービス利用料収入の増加があったものの、㈱東急百貨店において、東急東横店の一部閉館に伴い売場を縮小した影響などにより、5,248億7千5百万円(同0.5%減)、営業利益は58億8千2百万円(同1.5%減)となりました。
(ホテル・リゾート事業)
ホテル業の㈱東急ホテルズでは、外国人旅行客の増加など事業環境は改善傾向にある中、設備投資による商品力強化と積極的な販売促進により、高稼働を維持しつつ客室単価が増加するなど、客室部門を中心に好調に推移いたしました。
また昨年、㈱東急ホテルズの一部の施設において判明いたしました、実際に使用された食材とメニュー表示が異なっていた件につきましては、お客さまへ深くお詫び申し上げるとともに、再発防止を徹底し信頼回復につとめております。
ホテル・リゾート事業全体の営業収益は、㈱東急ホテルズにおいて、客室の稼働率とともに販売単価も増加したことなどにより、924億5千2百万円(同3.2%増)、営業利益は15億1千4百万円(同5.2%増)となりました。なお、㈱東急ホテルズ直営店舗の客室稼働率は、84.0%(同1.6P増)となりました。
(ビジネスサポート事業)
広告業の㈱東急エージェンシーでは、広告事業者として、生活者基点のマーケティングソリューションをお客さまに提案することを目指しております。当連結会計年度は、東急グループの総合力を活かした営業活動を通じて、当社とともに、交通広告と屋外広告を統合した広告媒体ブランドの強化を継続して進めたほか、渋谷駅ハチ公口交差点前の「QFRONT(キューフロント)」ビル壁面に設置された大型ビジョン「Q‘S EYE(キューズアイ)」の機能更新などに取り組みました。
ビジネスサポート事業全体の営業収益は、商社業の東急ジオックス㈱における前年同期に竣工した大型案件の反動減などにより、1,597億7千2百万円(同9.0%減)となりましたが、鉄道車両関連事業の東急テクノシステム㈱において、利益率が改善したことなどもあり、営業利益は34億5千7百万円(同13.3%増)となりました。
(2)キャッシュ・フロー
当連結会計年度における現金及び現金同等物の期末残高は547億1百万円となり、前連結会計年度に比べて283億3千4百万円増加いたしました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益783億6百万円に減価償却費727億6千2百万円、固定資産除却損143億4千1百万円、売上債権の増加額153億6千2百万円などを調整し、1,567億3百万円の収入となりました。前連結会計年度に比べ、税金等調整前当期純利益が増加したことや、仕入債務の支払額が減少したことなどにより、341億1千4百万円の収入増となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは、固定資産の取得による支出が1,303億7千8百万円となり、合計で1,061億2千9百万円の支出となりました。前連結会計年度に比べ、貸付金の回収による収入が減少したことなどにより、153億4千5百万円の支出増となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは、借入金の返済及び社債の償還による支出などにより、223億2千2百万円の支出となりました。