有価証券報告書-第61期(平成31年4月1日-令和2年3月31日)

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2020/06/24 14:08
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99項目

事業等のリスク

当社グループは、企業価値の向上と持続的な成長を実現するために、予見することが難しいリスクや全社横断的に対応が必要となるリスク等への対応として、リスク認識の共有・リスクの可視化・重点リスクの選定・対策の検討等を通じたリスクマネジメントに努めている。
[リスクの定義と分類]
当社グループにおいて、リスクとは「目的に対する不確かさの影響であり、事象が起きた際の戦略達成やビジネス目標に影響を与える可能性」と定義している。
認識したリスクは、下表のとおりリスク種別(戦略リスク・純粋リスク)やリスク要因(内部要因・外部要因)を踏まえて分類したうえで、発生可能性や影響度の大きなリスクを「重点リスク」として選定し、重点的に対策を検討している。
内部要因外部要因当社グループの
対応方針
戦略リスク<(1)成長リスク>顧客環境、事業環境(人財、アセット)を踏まえた成長戦略実行を阻害するリスクとして認識した要因<(2)環境変化リスク>外部環境(政治、経済、法規制、技術革新、気候変動)の変化に起因し、成長戦略を阻害するリスクとして認識した要因積極的なリスクテイクで成長に繋げる
純粋リスク<(3)オペレーショナルリスク>内部プロセス、人、システムが不適切、もしくは機能しないことにより発生するリスクとして認識した要因<(4)ハザードリスク>外的事象で発生した際に損害、危害を与え、事業継続を阻害する不可抗力リスクとして認識した要因リスクヘッジで損失を極小化する
当社グループ
の対応方針
未然に発生を防止する発生した場合を想定してダメージコントロールする

[リスクファクターと当社グループの取り組み状況]
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがある。ただし、以下に記載したリスクは主要なものであり、記載されたリスク以外の予見できないリスクや特記していない全社横断的に対応が必要となるリスク等も存在する。かかるリスク要因のいずれによっても、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性がある。
また、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (2) 中長期的な経営戦略について [重点施策]」に記載した内容の番号との関連性を下表の「当社グループの取り組み」の欄中に、括弧書きで示している。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものである。
(1) 成長リスク
リスク
ファクター
リスク・機会の内容リスク顕在化の影響当社グループの取り組み
①特定顧客への注力、依存
[重点リスク]
<リスク>・案件喪失時の業績、雇用継続への影響
・顧客業績変動による当社グループ事業への影響
・価格交渉力の低下
・新規顧客開拓へのインセンティブ低下
<機会>・効率的な営業展開、スケールメリットの享受
・顧客事業不振による売上、利益の大幅な低下
・事業基盤の縮小
・顧客事業破綻による売掛金未回収の発生
・部門間の連携強化によるアカウントマネジメント
・顧客経営状況のモニタリング
・与信限度額の設定及びモニタリング
・顧客依存度の定期的な確認
・主要事業以外への経営資源配分

リスク
ファクター
リスク・機会の内容リスク顕在化の影響当社グループの取り組み
②ビジネスモデルの変化(技術革新等)
[重点リスク]
<リスク>・顧客ニーズの変化
・技術の陳腐化
<機会>・画期的な技術開発による成長機会の獲得
・物流業界での優位性低下
・デジタライゼーションへの対応の遅れによる競争力低下
・新技術及び異業種を含む新たなビジネスモデルの情報収集と他社ベンチマーク
・産官学連携、オープンイノベーションの推進
・IT/デジタル人財の強化
(ⅱ、ⅲ)
③人財確保
[重点リスク]
<リスク>・競争激化による優秀な人財確保の困難
<機会>・新たなノウハウ獲得、新規事業の創出
・事業の停滞
・競争力の低下
・成長の鈍化
・経営戦略に応じたグローバル人財、デジタル人財、経営人財等の確保
・社内教育プログラムの充実による人財の育成、教育
・人財の定着管理の実施
(ⅳ)
④大規模新規案件の受注<リスク>・新規案件の立ち上げ失敗
・事業計画の見誤り
<機会>・事業の拡大、新たなノウハウ獲得
・顧客信用低下による成長の鈍化
・不採算による利益率悪化
・フェーズゲート管理の強化
・トレンドの把握、事業に与える影響の分析、対応計画の策定、実行
・経営層の継続的関与
・組織、仕組みの定期的な見直し
(ⅰ)
⑤自家アセットへの投資促進<リスク>・資産価値の下落
<機会>・資産価値の向上、事業の拡大、ノウハウ蓄積
・資産価値の低下による売却損の発生・倉庫や設備の定期的な価値評価によるアセットマネジメント
・資産設備の流動化
⑥資産の一極集中<リスク>・特定地域の経済情勢・環境の変化
<機会>・スケールメリットの享受
・リスク顕在化時の被害甚大化
・事業継続への影響
・資産投資の分散
・投資判定基準に則ったフェーズゲート実施
・投資エリアのハザード認識、地政学的判断
⑦M&Aの推進(資本業務提携等を含む)<リスク>・買収先、出資先、提携先企業の業績悪化
・買収先企業のガバナンス低下
<機会>・新たな経営資源獲得やエコシステムの形成、拡大による成長基盤の構築
・低収益化、減損損失の発生
・不祥事、規定違反の惹起による顧客離反
(参考)
・2019年度のれん241億円
・2019年度顧客関連資産158億円
・M&A、提携前のデューデリジェンス強化
・本社組織と事業部門によるPMI計画の策定と実施
(ⅰ、ⅱ)

(2)環境変化リスク
リスク
ファクター
リスク・機会の内容リスク顕在化の影響当社グループの取り組み
①コスト上昇
[重点リスク]
<リスク>・調達コスト(燃料費、庸車費用、労働力等)の増加
<機会>・調達コスト減少による事業の採算性向上
・コスト上昇に見合った適正な料金を収受できないことによる事業の採算性悪化
・人財、車両等の不足による事業継続への悪影響
(参考)
2019年度外注費・人件費
・外注費3,252億円
・人件費1,620億円
・複数の協力会社との緊密な関係構築
・競合他社の動向を踏まえた料金の適正化
・デジタル化などによる効率的な運営
②為替レートの急激な変動
[重点リスク]
<リスク>・為替差損の発生
・為替の急激な変動による海外子会社業績の円貨への換算のマイナス影響
<機会>・為替差益の発生
・為替の急激な変動による海外子会社業績の円貨への換算のプラス影響
・為替差損による利益の減少(EBIT以下)
・海外子会社業績の円貨への換算のマイナス影響による売上、利益の減少
(参考)
2019年度の売上収益及び調整後営業利益に占める国際事業の割合:売上収益33%、調整後営業利益19%
・為替リスクの集中化(為替予約や通貨オプション等の取引を本社部門へ集中化)
・金融機関等との為替予約等のヘッジ取引

リスク
ファクター
リスク・機会の内容リスク顕在化の影響当社グループの取り組み
③働き方の多様化、人財の流動化<リスク>・働き方の多様化への対応遅れによる人財の流出、人財確保の困難
・人財の流動化による離職者の増加
<機会>・高度人財、異業種等の多様な人財の確保
・人財の流出、不足によるガバナンス低下と事業運営能力低下・幅広い人財活用によるダイバーシティ&インクルージョンとワークライフバランスの実現
・活き活きと働き続ける職場作り
・女性、高齢者、障がい者の活躍支援
・従業員意識調査の実施、エンゲージメントの強化
・グループ共通の社内教育プログラムの実践による優秀な人財の確保
<今後の検討事項>・サクセッションプランの作成とそれに基づく人財登用・育成
・成長の機会と場の提供(タレントマネジメント、教育)
(ⅳ)
④退職給付債務<リスク>・予期しない市況変動による運用利率の低下
・割引率や死亡率等の数理計算上設定した前提条件の変動
<機会>・予期しない市況変動による運用利率の上昇
・掛金、積立金増額による会社負担の増加
(参考)
2019年度末退職給付に係る負債348億円
・退職給付債務の将来予測に基づく定期的な資産運用の見直し
<今後の検討事項>・確定拠出型年金の導入
・リスク分担型企業年金への移行
⑤資金調達環境の変化<リスク>・金融市場混乱による資金調達環境の悪化
・金融ボラティリティの増大による金融機関の統合、再編、破綻
<機会>・資金調達手段の多様化(サプライチェーンファイナンス、クラウドファンディングなど)
・資金調達時の金利上昇による支払利息の増加
(参考)
2019年度末有利子負債4,587億円
・最適資本水準(デット/エクイティファイナンスの最適化)
・借入金の固定、変動調達比率の調整
⑥国際貿易における保護主義の台頭<リスク>・自国産業保護、優遇(補助金、減税措置、他国輸入品への関税率引き上げなど)による国際貨物輸送の停滞
<機会>・域内ビジネスの機会増加
・事業展開地域の事業縮小・情報収集体制の強化、影響の分析
・主要事業展開国のマクロ指標、治安情報のモニタリング
・事業展開地域の見直し
・域内顧客の新規開拓
(ⅳ)
⑦政策、公的規制の強化<リスク>・環境アセスメント、許認可取得、SDGsへの対応
<機会>・競争優位性の向上
・新規事業、サービスの開発
・対応長期化による経費発生
・株価の下落
・顧客信用の低下による事業機会の損失
・環境長期目標におけるCO2排出削減目標の設定と達成に向けた取り組み強化
・環境関連法制や制度への適合のための情報把握と具体的対応策の決定、実施
・環境関連の課題に密接な事業、部門における外部認証取得と第三者機関の審査による管理徹底
・SGDsと経営戦略の一体化
(ⅴ)
⑧気候変動<リスク>・温室効果ガス排出価格の上昇
・サイクロンや洪水などの極端な気象事象の過酷さの増加
・平均気温の上昇
<機会>・より効率的な輸送手段や、生産及び流通プロセスの使用
・事業活動を多様化する能力
・資源の代替/多様化
・気候変動に関する税負担の増大や温室効果ガス排出に対する規制強化・導入によるコスト増加
・極端な異常気象の激甚化による物流業務の停滞
・平均気温の上昇による労働環境の悪化が起因となり、人材確保が困難
・環境管理体制の構築と活動の推進
・地球温暖化防止の施策立案実行(省エネ、節電対策)
・グリーンロジスティクスの推進
(ⅴ)

(3)オペレーショナルリスク
リスク
ファクター
リスク・機会の内容リスク顕在化の影響当社グループの取り組み
①コンプライアンス違反(労働法規違反、贈収賄、人権の侵害等)
[重点リスク]
<リスク>・時間外労働規制などの違反
・同一労働同一賃金に対する当局との解釈の相違
・贈賄、競争法などの各種法令違反
・社会規範の逸脱
・情報漏洩
・人権の侵害(各種ハラスメント、児童労働、低賃金労働)
・社会的信頼の低下による企業価値の毀損
・顧客の信頼、社会的信用の低下による売上、利益の減少
・日立物流グループ行動規範を制定し、教育を実施
・各地域の法務部門による調査、教育の実施
・勤怠管理システムの管理体制の整備
・賃金算定の明確化
(ⅴ)
②事故の惹起
[重点リスク]
<リスク>・労災、火災、車両、製品事故などの惹起・事故、火災等の惹起による製品や被災者への損失補償、被災者への損害賠償支払い
・顧客の信頼、社会的信用の低下による売上、利益の減少
・設備の保全計画の策定と実施
・事故発生時の初期対応、報告体制の整備と訓練の実施
・社内での教訓、知見、優良事例の共有
・安全テクノロジー導入による安全職場の確立
(ⅴ)
③サービスの品質低下
[重点リスク]
<リスク>・サービスの品質悪化、納品遅延等の惹起・顧客の信頼、社会的信用の低下による売上、利益の減少
・惹起による弁済等の損失補償
・品質管理部門によるKPI項目の管理
・プロセスマネジメントによる品質管理
・内部統制システムに基づくモニタリング、監査の実施とサポートの強化
(ⅴ)

(4)ハザードリスク
リスク
ファクター
リスク・機会の内容リスク顕在化の影響当社グループの取り組み
①甚大な災害、世界的な感染症拡大(パンデミック)の発生
[重点リスク]
<リスク>・従業員への被害
・物流網の遮断
・当社グループ資産(建物、設備等)、顧客商品への被害
・事業への影響(操業停止等)による売上、利益の減少
・復旧にかかる費用の発生及び資産の減損損失
・地域に応じた事業中断リスクの評価と早期の事業復旧に向けたBCP策定
・パンデミック発生時のグローバル組織としての情報収集、就業規則などのルール整備
・BCM(事業継続マネジメント)の遂行
(ⅴ)
②資本に関する脅威
[重点リスク]
<リスク>・大株主の資本政策の変更
・特定投資者による当社株式の大量取得による経営支配権の異動
・経営の混乱
・現経営陣のイニシアティブ低下
・事業の混乱
・企業価値の向上による株式時価総額の引き上げ
・成長機会への投資
・株主還元の増加
③戦争テロ、政情不安(地政学的リスク)<リスク>・従業員への被害
・事業への影響
・当社グループ資産(建物、設備等)、顧客商品への被害
・事業への影響(操業停止等)による売上、利益の減少
・復旧にかかる費用の発生及び資産の減損
・定常的な情勢分析、モニタリング
・異常発生時の意思決定の迅速化
・海外拠点BCP(事業継続計画)の策定
(ⅴ)
④情報の消失、漏洩<リスク>・情報セキュリティ事故、サイバー攻撃、大規模なシステム障害等による顧客情報等のデータ消失又は漏洩・社会的信頼の低下による企業価値の毀損
・顧客の信頼、社会的信用の低下による売上、利益の減少
・復旧にかかる費用の発生
・顧客からの損害賠償の発生
・内部監査や社内研修等を通じた情報資産管理の強化
・情報セキュリティに関するルールの整備と周知
・サイバー攻撃に対応する体制の構築と最新の対応技術への継続的なブラッシュアップ
・定期的なリスクアセスメントと対策の実施
(ⅴ)
⑤事業展開地域の経済停滞<リスク>・実体経済の悪化による顧客事業の低迷
・通貨安による資本流失、金融危機の発生
・顧客の事業悪化に起因する物量減少等による売上、利益の減少・マクロ環境変化が顧客に与える影響を注視、分析
・他地域でのバランスを持ったプレゼンスの活用