有価証券報告書-第123期(平成25年4月1日-平成26年3月31日)

【提出】
2014/06/26 13:55
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129項目

業績等の概要

(1) 業績
当連結会計年度(以下、「当期」という)の世界経済は、先進国を中心とした世界的な金融緩和や各種の政策対応により、底堅さが見られるようになりました。
景気低迷の影響が残る欧州経済に持ち直しの兆しが出てきており、米国では雇用情勢の改善を背景に景気が緩やかな回復傾向にあるなど明るい動きが見られました。また、中国では輸出などに牽引される形で経済は成長の減速傾向から持ち直してきましたが、ここのところ下振れリスクが懸念されております。他方、一部の新興国では当期半ばより資本流出などを契機に景気減速の動きが見られました。
一方、わが国経済は、政府の各種政策の効果が見られるなかで、東京オリンピック開催決定が更なる後押しとなり、景気は緩やかな回復基調を見せました。
当社グループの海運業においては、為替は前期に比べ円安に推移し、一部の船種では当期後半に市況の回復も見られましたが、全体としては、新興国の需要の鈍化により市況の低迷が続き、事業を取り巻く環境は大きくは改善しませんでした。このような事業環境の下、既存契約の有利更改をはじめとして、効率配船及び減速航行による燃料費削減に努め、収益改善に取り組みました。
不動産業においては、飯野ビルディングをはじめとする各ビルが順調に稼働しており、安定した収益を確保しました。
以上の結果、売上高は967億1百万円(前期比12.4%増)、営業利益は68億46百万円(前期比40.3%増)、経常利益は59億53百万円(前期比163.5%増)、当期純利益は49億20百万円(前期比321.9%増)となりました。
各セグメント別の状況は次の通りです。
①外航海運業
当期の外航海運市況は以下の通りです。
原油タンカーにおいては、当期前半の市況は低調に推移しましたが、当期後半以降は、冬場の需要期などの理由により市況は上昇しました。プロダクトタンカーにおいては、シェールオイル増産に伴う米国からの石油製品の輸出が増加したことなどから一時的な回復も見られましたが、市況は総じて軟調に推移しました。
ケミカルタンカーにおいては、新興国経済の停滞により石油化学製品の需要が伸びず、市況は冬場に一時的な改善が見られたものの、期初より総じて低調に推移しました。
大型ガスキャリアのうち、LPGキャリアは、中東積みや米国積みLPGの荷動きが増加したことから、市況は堅調に推移しました。LNGキャリアは旺盛なLNG需要に支えられ、当期前半の市況は堅調に推移していましたが、新造船の竣工により船舶供給が増えたため、当期後半は軟化基調となりました。
ドライバルクキャリアにおいては、秋に北米積み穀物の輸送需要が高まり、市況は一時的に強含む局面もありましたが、新造船の竣工による船舶供給の増加などから、市況は総じて低調に推移しました。
なお、当期における当社グループの平均為替レートは¥99.75/US$(前期は¥82.33/US$)、平均燃料油価格はUS$622/MT(前期はUS$665/MT)となりました。
このような事業環境の下、当社グループの外航海運業の概況は以下の通りとなりました。
原油タンカー及びプロダクトタンカーにおいては、支配船腹の大半を中長期契約に継続投入することにより安定収益の確保に努めました。
ケミカルタンカーにおいては、当社の主要航路である中東とアジア及び欧州を結ぶ航路では、石油化学製品の需要が低迷する中で、往復航とも数量輸送契約の貨物数量の割合を高めた結果、安定的な輸送数量を確保することができました。また、一時的に輸送需要が高まった局面では、船舶を市場から短期的に調達して対応することにより収益の確保に努めました。一方で当社と米国オペレーターとの合弁事業会社では大西洋域内を中心に数量輸送契約の貨物に加えてスポット貨物も取り込み、安定した輸送量を確保することができました。
大型ガスキャリアにおいては、LPGキャリアは前期末に竣工した2隻の新造船も含めて中長期契約に投入している船舶が順調に稼働することができました。LNGキャリアは既存の中長期契約へ継続投入しました。これによってそれぞれ安定収益を確保することができました。
ドライバルクキャリアにおいては、石炭専用船や木材チップ専用船での長期安定契約に加え、数量輸送契約により収益安定化を図るとともに、船舶の大型化を推進し収益力の向上を図りました。また、これまでの減速航行による燃料費削減に加え、港費等の削減にも努め、収益の底上げに努めました。
以上の結果、外航海運業の売上高は761億82百万円(前期比14.6%増)、営業利益は18億23百万円(前期比193.2増)となりました。
②内航・近海海運業
当期の内航・近海海運市況は以下の通りです。
内航輸送においては、LPGでは夏場にかけて内需の後退から荷動きが減少したものの、石油化学ガスでは内需回復の進展に加え、基礎原料となるエチレンをはじめとして生産量が前期を上回ったことに支えられ、年間を通じて荷動きは堅調に推移しました。
近海輸送においては、秋口に中国の在庫高と石油化学製品の需要減退により、アジア域内での荷動きが減少し、当期後半にかけて市況は軟調に推移しました。
このような事業環境の下、当社グループの内航・近海海運業の概況は以下の通りとなりました。
内航輸送においては、各荷主との契約に基づく専航船が安定収益の基盤となりました。LPGは季節要因による一時的な荷動き低迷が見られたものの、LPG輸送船を石油化学ガスの輸送に投入するなど、年間を通じて各船の稼働率を安定して維持しました。また、当期において新造船3隻が竣工する一方、高齢船2隻を処分し、船隊の若返りを進めました。
近海輸送においては、支配船腹の大半を中長期契約に投入し安定収益の確保に努めました。また、当期においてアジア域内で主力船型となる新造3,500㎥型ガスキャリア2隻の次期よりの用船を決定する一方で、前期より用船を開始した6,800㎥型ガスキャリア1隻についても契約を延長し、船隊の拡充とともに収益の拡大を図りました。
以上の結果、内航・近海海運業の売上高は91億21百万円(前期比10.5%増)、営業利益は8億5百万円(前期比178.2%増)となりました。
③不動産業
当期の不動産市況は以下の通りです。
都心のオフィスビル賃貸市況は、当期における新規物件の供給が限られたことに加えて、競争力の低下した既存オフィスビルの再開発始動により賃貸床面積の総量が減少する中、オフィスの統合・集約による移転需要の高まりなどにより、当期末の空室率は7%を切る水準まで回復しました。しかしながら激しいテナント誘致競争から、全体として賃料水準の改善には至りませんでした。
貸ホール・貸会議室においては、新築ビルに併設される競合施設が多く、厳しい施設間競争が続いた結果、使用料金の下押し圧力となりました。
不動産関連事業のフォトスタジオにおいては、雑誌販売の低迷から、使用料金の単価も低調に推移しました。
このような事業環境の下、当社グループの不動産業の概況は以下の通りとなりました。
賃貸ビルにおいては、所有する各ビルで良質なテナントサービスを提供することにより、空室率の改善が進み、安定稼働を維持しました。
貸ホール・貸会議室においては、講演会、映画試写会、その他催事の積極的な誘致により、稼働が改善しました。
不動産関連事業においては、スタジオ部門は稼働が低迷しましたが、ロケーション、レタッチ、プロデュースの各部門においては積極的な営業活動により、新規案件を獲得することができました。
以上の結果、不動産業の売上高は114億97百万円(前期比1.3%増)、営業利益は42億18百万円(前期比6.3%増)となりました。
(2)キャッシュ・フローの状況
当期の「営業活動によるキャッシュ・フロー」は、137億85百万円のプラス(前期は113億11百万円のプラス)となりました。これは主に税金等調整前当期純利益52億65百万円と減価償却費85億29百万円によるものです。
「投資活動によるキャッシュ・フロー」は22億24百万円のマイナス(前期は115億67百万円のマイナス)となりました。これは主に船舶への設備投資を中心とした固定資産の取得による支出92億54百万円が、船舶を中心とした固定資産の売却収入71億8百万円を上回ったことによるものです。
「財務活動によるキャッシュ・フロー」は38億62百万円のマイナス(前期は30億56百万円のマイナス)となりました。これは主に長期借入金の純減額84億20百万円と配当金の支払額7億33百万円が自己株式の売却による収入60億45百万円を上回ったことによるものです。
以上の結果、「現金及び現金同等物の当期末残高」は169億6百万円(前期末は86億70百万円)となりました。