有価証券報告書-第64期(平成25年4月1日-平成26年3月31日)

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2014/06/24 15:33
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業績等の概要

(1) 業績
当連結会計年度(平成25年4月1日~平成26年3月31日、以下、「当期」という)のわが国経済は、個人消費の増加や企業収益の改善、設備投資の持ち直しがあるなかで、景気は緩やかに回復した。先行きについては、当面、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動により弱さが残るものの、次第にその影響が薄れ、各種政策の効果が発現するなかで、緩やかに回復していくことが期待されている。
このような経済情勢の下、「2013-15年度ANAグループ中期経営戦略」で掲げている持株会社制への移行を契機としてグループ経営体制の強化に努めた。コスト構造改革については、外部環境の変化を踏まえて施策の見直しを行い、目標の達成に向けて遂行している。また、アジア航空市場の拡大を、航空に関連する事業のビジネスチャンスと捉え、引き続き戦略的投資を推進する。
以上の結果、当期における連結業績は、売上高は1兆6,010億円(前期比7.9%増)となったが、航空事業を中心に費用が増加したことから営業利益は659億円(同36.4%減)、経常利益は429億円(同44.2%減)、当期純利益は188億円(同56.2%減)となった。
セグメント別の概況は以下のとおりである。
なお、当期より報告セグメントの区分を変更している。詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(セグメント情報等)」に記載のとおりである。
◎航空事業
当期の航空事業における売上高は1兆3,952億円(前期比7.9%増)となったが、事業規模拡大に伴う費用増に加え、為替の影響により燃油費が増加したこと等の結果、営業利益は653億円(前期比26.6%減)となった。概要は以下のとおりである。
なお、英国スカイトラックス社(航空業界の格付会社)から、顧客満足度で最高評価の「5STAR」に、前期に続き2年連続で認定された。
<国内線旅客>国内線旅客は、ボーイング787型機の運航停止による影響を最小限に抑えた他、ビジネス需要が期を通じて堅調に推移し、プレジャー需要についても着実に取り込んだ結果、旅客数・収入ともに前期を上回った。
路線ネットワークでは、サマーダイヤから秋田=札幌線、成田=広島線を新規開設するとともに、羽田=石垣線、長崎・熊本=沖縄線を再開した他、ウィンターダイヤから羽田=広島・徳島線、伊丹=福岡・秋田線、札幌=仙台線を増便し、ネットワークの充実を図った。
営業面では、新運賃「旅割60」、「旅割21」、「旅割75」の発売や、「旅割」、「特割」各種運賃の予約・購入期間を最大6カ月先の便まで拡大した他、「特割」運賃を全路線に展開する等、需要喚起を図った。その他、ボーイング747-400型機の退役を記念した「THANKS JUMBO!キャンペーン」を9月以降展開し、過去の就航地への里帰りフライト等を実施した。
サービス面では、機内販売等において電子マネー「楽天Edy」をご利用いただけるようにした他、羽田空港第2ターミナルで搭乗エリアを4色に色分けして案内表示の視認性を高め、スムーズな搭乗を可能とする等、利便性の向上に努めた。また、福岡空港及び千歳空港のANAラウンジをリニューアルし、羽田空港のANAラウンジにおいて、日本のお酒“國酒”をお楽しみいただける特設コーナーを設置する等、快適性の向上をはかり、競争力の強化に努めた。
以上の結果、当期の国内線旅客数は4,266万人(前期比3.8%増)となり、収入は6,751億円(同1.4%増)となった。
<国際線旅客>国際線旅客は、ネットワークを拡充した北米線をはじめ、ビジネス需要・プレジャー需要ともに堅調に推移した結果、旅客数・収入ともに前期を上回った。中国線については、日本発プレジャー需要の落ち込みが継続しているものの、中国発が回復したことや北米間の接続需要を取り込んだことに加え、ビジネス需要が堅調に推移したこと等により、当期の中国線の旅客数・収入ともに反日デモ発生前の第62期(平成24年3月期)実績を上回った。
路線ネットワークでは、6月より成田=シアトル・サンノゼ線を再開したことに加え、9月より成田=シカゴ線の増便や成田=ヤンゴン線の機材を大型化しデイリー運航を行う等、ネットワークの充実をはかった。また、需要が旺盛なアジア方面において、ウィンターダイヤより機材の大型化を行う等、需給適合に努めた。
営業面では、「ビジ割」や「エコ割」等の各種割引運賃を全方面に設定する等、日本発プレジャー需要の喚起に努めるとともに、海外のお客様に対してANAブランドの訴求に努め、拡大基調にある訪日需要や北米=アジア間の接続需要の取り込みを強化した。
サービス面では、Facebookで投票を実施した「ANA機内食総選挙」の結果を、12月よりエコノミークラス(日本発)のメニューに反映させたことに加え、本年3月より一部の機材で機内インターネット「ANA Wi-Fiサービス」を開始する等、競争力の強化に努めた。
以上の結果、当期の国際線旅客数は633万人(前期比1.0%増)となり、収入は3,953億円(同13.5%増)となった。
<貨物>国内線貨物は、陸送へのシフトや競合他社との競争激化により、上半期は需要が伸び悩んだ。10月以降は、札幌・沖縄線を中心に宅配貨物が堅調に推移したことや、期末の消費税率引き上げ前の駆け込み需要等により、輸送重量は前期を上回ったが、収入は単価下落等の影響により前期を下回った。
以上の結果、当期の国内線貨物輸送重量は47万7千トン(前期比2.9%増)となり、収入は321億円(同0.4%減)となった。国内郵便輸送重量は3万2千トン(同3.2%増)となり、収入は35億円(同1.2%減)となった。
国際線貨物は、日本発北米向けの自動車関連部品等が堅調に推移したことに加え、沖縄貨物ハブを活用した欧米発アジア・中国向け及びアジア・中国発欧米向けの三国間輸送等を取り込んだ他、需要にあわせた臨時便を積極的に設定した。また、8月より成田-中部-沖縄線を新規開設し、貨物便ネットワークの充実をはかった。
以上の結果、当期の国際線貨物輸送重量は71万トン(前期比14.3%増)となり、収入は1,047億円(同21.0%増)となった。国際郵便輸送重量は3万3千トン(同7.5%増)となり、収入は51億円(同33.6%増)となった。
<その他>航空事業におけるその他の収入には、マイレージ、整備受託、機内販売、バニラ・エア株式会社等の収入が含まれており、当期の収入は1,791億円(前期比17.8%増)となった。
10月にエアアジアブランドでの運航を終了したエアアジア・ジャパン株式会社は、11月に「バニラ・エア株式会社」に商号変更し、成田空港を拠点として12月より順次、沖縄線・台北(桃園)線・札幌線・ソウル(仁川)線に就航した。
当期における輸送実績は、エアアジアブランドとして運航した4月1日から10月26日については、国内線の旅客数は364千人、座席キロは581,562千席キロ、旅客キロは388,205千人キロ、利用率は66.8%、国際線の旅客数は162千人、座席キロは331,796千席キロ、旅客キロは219,578千人キロ、利用率は66.2%となった。バニラ・エア株式会社が運航を開始した12月20日から3月31日については、国内線の旅客数は119千人、座席キロは249,827千席キロ、旅客キロは176,431千人キロ、利用率は70.6%、国際線の旅客数は75千人、座席キロは164,520千席キロ、旅客キロは141,450千人キロ、利用率は86.0%となった。
◎航空関連事業
千歳空港、関西空港、成田空港等における旅客の搭乗受付や手荷物・貨物搭載等の空港地上支援業務の受託が増え、また株式会社OCSの売上が増加し、更には4月より新たに営業を開始したANAエアポートサービス株式会社の収入を計上したこと等の結果、当期の航空関連事業における売上高は1,896億円(前期比6.4%増)、営業利益は27億円(前期比57.1%減)となった。
◎旅行事業
国内旅行は、東京ディズニーリゾート等を目的とした関東方面や、新石垣空港の開港等による沖縄方面の旅行需要が拡大し、主力商品の「ANAスカイホリデー」やダイナミックパッケージ「旅作」が堅調に推移したこと等の結果、当期の国内旅行売上高は前期を上回った。
海外旅行は、「旅作」や「ANAワンダーアース」が好調に推移した他、10月以降に「ANAハローツアー」のハワイ・アメリカ方面の商品を拡充したこと等により、当期の海外旅行売上高は前期を上回った。また、訪日旅行については、東南アジアからの訪日ビザ発給要件が緩和されたことを受け、取り込みを強化したこと等により取扱高が大きく伸び、過去最高となった。
以上の結果、当期の旅行事業における売上高は1,734億円(前期比7.7%増)となったが、為替の影響により海外旅行商品の原価が増加したこと等により、営業利益は44億円(前期比1.1%減)となった。
◎商社事業
リテール部門では、空港物販店「ANA FESTA」が堅調に推移したことに加え、訪日外国人の増加により空港免税店「ANAデューティーフリー」の販売が好調だった他、通販サイト「ANAショッピングastyle」では企画商品の拡充等により取扱高が増加した。食品部門では、主力商品であるバナナの他、ドライフルーツ、ナッツ等の販売も好調に推移した。
以上の結果、当期の商社事業における売上高は1,102億円(前期比12.8%増)、営業利益は33億円(前期比14.5%増)となった。
◎その他
ビルメンテナンス事業や不動産事業等が好調に推移し増収となったこと等の結果、当期のその他における売上高は301億円(前期比4.4%増)、営業利益13億円(前期比24.4%増)となった。
(2) 連結貸借対照表
資産の部は、航空機を中心とした投資を継続して進めた結果、総資産は前期末に比べて363億円増加し、2兆1,736億円となった。
負債の部は、借入金等の返済を行う一方、社債の発行による資金調達や新会計基準適用に伴う退職給付に係る負債の計上により、前期末に比べて581億円増加し、1兆4,223億円となった。なお、有利子負債は、前期末に比べて623億円減少し、8,347億円となった。
純資産の部は、当期純利益を計上したものの、配当金の支払いや新会計基準適用に伴う退職給付に係る調整累計額の計上により、前期末に比べて218億円減少し、7,512億円となった。この結果、自己資本比率は34.3%となった。
(3) 連結キャッシュ・フロー計算書
税金等調整前当期純利益363億円に減価償却費等の非資金項目や営業関連に係る債権・債務の加減算などを行った結果、営業活動によるキャッシュ・フローは2,001億円の収入となった。
投資活動においては、航空機・部品等の取得や子会社株式の取得等があったことから、投資活動によるキャッシュ・フローは649億円の支出となった。これらの結果、フリー・キャッシュフローは1,352億円の収入となった。
財務活動においては、新規の借入や社債の発行を行う一方、借入金の返済や社債の償還、配当金の支払い等を行ったことから、財務活動によるキャッシュ・フローは855億円の支出となった。
以上の結果、現金及び現金同等物の期末残高は前期末に比べ496億円増加し、2,409億円となった。