有価証券報告書-第64期(平成25年4月1日-平成26年3月31日)

【提出】
2014/06/24 15:33
【資料】
PDFをみる
【項目】
132項目

事業等のリスク

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがある。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものである。
(1) 景気が低迷するリスク
航空産業は、景気動向の影響を受けやすい業界であり、国内外の景気が低迷すると、個人消費の落ち込みや企業収益の悪化による航空需要の低下を引き起こす可能性がある。なお、国際貨物事業については、中国やその他アジア・北米への依存度が高いため、当該地域の経済状況により、輸送重量の減少及び輸送単価の低下の影響を受ける可能性がある。
(2) 経営戦略に関わるリスク
① フリート戦略に関わるリスク
当社グループは、航空事業において、経済性の高い機材の導入、機種の統合、中・小型機の活用を軸としたフリート戦略に則ってボーイング社、ボンバルディア社、三菱航空機株式会社、エアバス社から航空機の導入を進めているが、納期が財務上その他の理由により遅延した場合、当社グループの中長期的な事業に支障を及ぼす可能性がある。
さらに、かかる戦略は以下の要因により奏功せず、また、その所期する効果が減殺される可能性がある。
1) ボーイング社への依存
当社は、平成26年3月末日現在、上記のフリート戦略に従って導入を計画している機材の大部分をボーイング社に対して発注している。したがって、ボーイング社が財政上その他の理由により当社又は同社製品の保守管理等を行う会社との間の契約を履行できない場合には、当社グループのフリート戦略に沿った機材の調達又は保守管理等ができず、当社グループの中長期的な事業に影響を及ぼす可能性がある。
2) 三菱航空機株式会社による機材開発計画の進行遅延等
当社は、三菱航空機株式会社が開発中の「MRJ(三菱リージョナルジェット)」の導入を決定しているが、引き渡し時期について、当初の予定から約3年半の遅延が決定している。今後更なる遅延が発生した場合には、当社グループの中長期的な事業に支障をきたす可能性がある。
② 発着枠に関わるリスク
当社グループは、羽田空港・成田空港の発着枠拡大を最大のビジネスチャンスと捉え、各種投資や事業運営体制の整備を図っている。羽田空港の年間発着枠については、44.7万回へ増枠が行われたが、国際線定期便については、一部の発着枠が未配分のまま残っている状況にある。また、成田空港の発着枠については、現在の27万回から平成26年度末に30万回に増枠される予定である。以上の状況を踏まえ、首都圏における両空港(羽田・成田)の発着枠の割当てや、運航時期、当該路線の収支状況等が当社グループの想定と異なった場合においては、当社グループの経営計画の達成に影響を及ぼす可能性がある。
③ LCC事業に関わるリスク
LCC事業については、当該事業進出の目的である新規航空需要の創出に至らないことや、国内外の他のLCCとの競争激化、ANAからの過度の旅客転移の発生等により、所期する効果が得られない可能性、各出資会社の利益が一致せず、当社が適切と考える方法による合弁会社の運営ができない可能性、及び合弁会社の経営が悪化した場合に当社が経済的負担を負う可能性がある。また、当社以外の出資会社の経営悪化や同事業からの離脱の可能性がある。
④ 投資に関するリスク
当社グループは、更なる成長領域の拡大のために、新たな事業への進出あるいは他企業等への出資又は企業買収を行うことがあるが、これら出資等の展開が所期する効果を得られない可能性がある。また、アジアを中心とした海外諸国での展開や、航空事業との関連性が低い事業への進出については、事前に認識することができなかった不利益等を被る可能性がある。
(3) 原油価格変動によるリスク
航空機燃料は原油精製による製品のため、その価格は原油価格に連動する傾向がある。産油国での政情不安、新興国の急激な経済成長に伴う原油需要の増加、石油備蓄量又は埋蔵量の低下、原油への投機的な投資行動、自然災害等の要因により原油価格が当社グループの予測を超えて変動した場合には、当社グループの経営に以下のような影響を及ぼす可能性がある。
① 原油価格が上昇した場合のリスク
原油価格が上昇すると、基本的に航空機燃料の価格も上昇するため、当社グループにとって大きな負担となる。このため、航空機燃料の価格変動リスクを抑制し、営業利益の安定化を図ることを目的として原油ならびにジェット燃料のコモディティ・デリバティブを利用して一定期間のうちに計画的、継続的にヘッジ取引を実施しているが、原油価格が短期間で高騰した場合、当社グループが実施しているコスト削減や運賃及び料金等への転嫁には限界があるため、ヘッジポジションの状況等によっては価格高騰の影響を完全には回避できない可能性がある。
② 原油価格が急落した場合のリスク
当社グループは原油価格の変動に対してヘッジを実施しているため、原油価格が期中で急落した場合、ヘッジポジションの状況等によっては市況下落の効果を即座に業績に反映することができず、直ちに利益に寄与しない可能性がある。
(4) 新型インフルエンザ等の感染症に関わるリスク
新型インフルエンザをはじめ重大な感染症が発生・蔓延した場合の被害増大は、国際線のみならず全事業の需要減退リスクになり得る。風評による顧客の航空利用の意欲の低下を含め、感染拡大や被害増大により、国内線及び国際線の利用客数が激減し、当社グループの経営に影響を及ぼす可能性がある。
また、感染力が強い新型インフルエンザ等が流行し、予想を超える社員・委託先での罹患者の大量発生や毒性の変化が生じ強毒化した場合等は、事業継続面で影響を及ぼす可能性がある。
(5) 為替変動によるリスク
当社グループの費用項目で大きなウエイトを占める航空機燃料の購入を外貨建てで行っていること等から、円安になった場合には収支に与える影響は少なくない。一方で、国際線収入の増加に伴い、円高になった場合の収入への影響も拡大している。これらのことから、同種通貨間においては、収入で得た外貨を可能な限り外貨建て支出に充当し、為替相場の変動によるリスクの抑制に努めている他、航空機燃料及び航空機材の調達に必要な外貨の一部については、為替相場変動による影響を緩和し支払額の平準化ならびに抑制を図るべく、先物為替予約及び通貨オプション取引を活用し、為替変動が当社グループの営業損益に与えるリスクの軽減を図っている。
(6) 国際情勢等の影響によるリスク
現在、当社グループは北米・欧州・中国・アジア方面を中心に国際線を展開している。今後、当社グループ就航地域で政情不安、国際紛争、大規模なテロ事件等が発生した場合、就航国との外交関係が悪化した場合等、当該地域路線の需要の減少等により当社グループの経営に影響を及ぼす可能性がある。
(7) 法的規制に関わるリスク
当社グループは、航空運送事業者として航空事業関連法規の定めに基づき事業運営を行っている。また、旅客・貨物を含めた国際線事業においては、条約、二国間協定、IATA(国際航空運送協会)及びICAO(国際民間航空機関)の決定事項その他の国際的取決めに従った事業運営が求められている。これらの規制により、当社グループの事業における運賃、飛行空域、運航スケジュール、安全管理等について様々な制約を受ける。更に、当社グループの事業は、運賃及び料金の設定につき独占禁止法その他諸外国の類似の法令の制約を受けることがある。
(8) 訴訟に関わるリスク
当社グループは事業活動に関して各種の訴訟に巻き込まれるおそれがあり、これらが当社グループの経営に影響を及ぼす可能性がある。また、当社グループは以下の事象について、今後訴訟の提起等を受ける可能性があり、あわせて他の国及び地域においても同様の調査が開始される可能性がある。
米国司法省から提起されていた国際航空貨物・旅客輸送にかかわる価格調整等の容疑については、諸般の事情を総合的に勘案した結果、司法取引に合意しているが、提起されている旅客輸送に関する集団民事訴訟については、現時点では具体的な請求額の明示はなく、詳細の把握及び分析は困難な状況である。
(9) 公租公課等に関わるリスク
航空事業に関する公租公課等として航空機燃料税や着陸料、航行援助施設利用料等があげられるが、航空機燃料税及び着陸料については現在、国の時限的な軽減措置を受けており、今後、軽減措置の縮小・廃止が行われた場合、当社グループの経営に影響を及ぼす可能性がある。
(10) 環境規制に関わるリスク
近年、地球環境保全の一環として、航空機による騒音、温暖化ガス(CO2等)の排出量、環境汚染物質の使用ならびに処理、主な事業所におけるエネルギー使用等にかかわる数多くの国内・海外法規制が導入、又は強化されつつある。当社グループは、これらの法規制を遵守するため多額のコストを負担しているが、2020年に向けて導入が決定されている国際的な温暖化ガスの取引スキームにより、世界共通の環境税等の新たな規制が導入された際には、事業活動が制限され、又は多額の追加的費用を負担しなければならない可能性がある。
(11) 航空業界を取り巻く環境のリスク
日本国内における航空政策の方針転換や競合他社の状況等、今後、現在の競争環境や事業環境が大幅に変化した場合、当社グループの経営に影響を及ぼす可能性がある。
(12) 競合リスク
今後、燃油費、資金調達コスト、環境規制への対応その他の要因により、当社グループの事業にかかるコストが上昇する可能性は否定できない。かかる場合、当社グループが利益を確保するためには、間接固定費の削減、機種統合による効率化の推進等のコスト削減を実施するとともに、かかるコストを運賃・料金等に転嫁する必要がある。しかしながら、当社は国内外の同業他社やLCCの他、一部の路線については新幹線等の代替交通機関と競合関係にあるため、かかるコストの転嫁により価格競争力が低下し、又は競合相手との価格競争上かかるコスト転嫁が大きく制約を受ける結果、当社グループの経営に影響を及ぼす可能性がある。
(13) 提携戦略が奏功しないリスク
当社グループは、スターアライアンスに加盟している。また、ATI(独占禁止法適用除外)認可に基づき、アジア米州間ネットワークにおいてはユナイテッド航空と、日欧間ネットワークにおいてはルフトハンザドイツ航空、ルフトハンザグループであるスイス インターナショナル エアラインズ、オーストリア航空との共同事業を実施している。
しかしながら、各国の独占禁止法の制約によりアライアンスの解体を余儀なくされた場合、他のアライアンスパートナーが、スターアライアンスを脱退し、もしくは事業方針を変更した場合、他のアライアンス・グループが競争力を強化した場合、又は2社間提携の解消や経営悪化・再編、提携先の信用力の低下等が発生した場合、もしくは外的要因で提携活動に対する規制が強化されるようなことがあった場合等には、提携効果が低下し、当社グループの経営に影響を及ぼす可能性がある。
(14) 運航リスク
① 航空機事故等
当社グループ運航便及びコードシェア便で航空機事故が発生した場合、当社グループに対するお客様の信頼や社会的評価が失墜し、事故直後から中長期的に需要が低下して当社グループの経営に大きな影響を及ぼす可能性がある。なお、平成24年6月20日にANA956便の機体が着陸時の衝撃により一部損傷した件、及び平成25年1月16日にANA692便が緊急着陸した件等については、現在国土交通省運輸安全委員会により原因の究明が続けられているが、今後、最終的な調査結果が発表される予定である。
また、他社において大規模な航空機事故が発生した場合においても、同様に航空需要が低下して当社グループの経営に影響を及ぼす可能性がある。なお、航空機事故が発生した場合、損害賠償や運航機材の修復・買換え等に多額の費用が発生するが、これらの直接的費用のすべてが航空保険にて填補されるわけではない。
② 耐空性改善通報等
航空機の安全性を著しく損なう問題が発生した場合、法令に基づき国土交通大臣から耐空性改善通報等が発出され、機体や装備品に対し指示された改善策を施すまで同型式機材の運航が認められない場合がある。また、法令に基づく耐空性改善通報等が発出されない場合であっても、技術的見地から安全性が確認できない場合、自主的に同型式機材の運航を見合わせ、修理又は交換を行うことがある。このような事態が発生した場合、当社グループの航空機の安全性に関する信用及び経営に影響を及ぼす可能性がある。特に、当社グループは、ボーイング787型機等、新型機種への集約を進めているが、当社グループが依存する新型機種について設計上の欠陥又は技術的な問題が発生した場合には、当社グループの経営により深刻な影響を及ぼす可能性がある。
(15) 顧客情報漏洩リスク
当社グループは、ANAマイレージクラブの会員数約2,639万人(平成26年3月末日現在)に関わる会員情報をはじめ、膨大な顧客に関する情報を保持している。個人情報保護法により、これらの個人情報を適切に管理することが求められている。当社グループにおいては、プライバシーポリシーを定め、個人情報の取り扱いに関する当社グループの姿勢・考え方を広くお客様に告知するとともに、システム対策を含め情報セキュリティについては想定しうる対策を講じている。また、セキュリティーホールをなくすべく、業務手順の改定やシステム改修を継続的に実施しているが、不正アクセスや業務上の過失等、何らかの原因により大規模な個人情報漏洩事故が発生した場合、多額の損害賠償費用が発生し、また、信用失墜により、当社グループの経営に影響を及ぼす可能性がある。
(16) 災害等リスク
地震、津波、洪水、台風、積雪、火山噴火、感染症、ストライキ、暴動等により空港が長期間閉鎖される場合や飛行経路が制限を受ける場合には、その間当該空港又は当該経路を利用する運航便に影響が生じ、又は航空需要が大幅に減退することにより、当社グループの経営に影響を及ぼす可能性がある。
特に、当社グループがデータセンターを首都圏に設置していること、国内線・国際線全便の運航管理を羽田空港にて実施していること、及び当社グループの旅客の大半が首都圏空港を利用していること等により、地震、台風等の大規模災害が発生した場合、当該施設において火災等の災害が発生した場合、又はストライキ等により空港もしくはそのアクセスが閉鎖された場合、当社グループのシステムもしくは運航管理機能又は運航そのものが長期間停止し、当社グループの経営に重大な影響を及ぼす可能性がある。
(17) 損益構造に関わるリスク
当社グループは、航空機材費等の固定費、ならびに主として機種によって定まる燃料費及び空港使用料等、搭乗率の影響を受けない費用が全体のコストに占める割合が高く、経済状況に即応した事業規模調整の自由度が低位なため、旅客数あるいは貨物輸送量が減少した場合、損益に与える影響が大きくなる可能性がある。
また、当社グループの航空旅客事業は夏場に売上が増加する傾向があるため、かかる時期において需要が大きく減少した場合には、その事業年度における当社グループの業績に影響を及ぼす可能性がある。
(18) IT(システム)リスク
当社グループは、お客様へのサービス及び運航に必要な業務等、システム依存度が高い業種といえる。自然災害、事故、コンピュータ・ウィルス、不正アクセス、電力供給の制約や大規模停電等によりかかるシステムあるいは通信ネットワークに重大な障害が発生した場合、お客様へのサービス及び運航の維持が困難になるとともに、信用失墜により当社グループの経営に影響を及ぼす可能性がある。また、当社グループのシステムは他提携航空会社においても使用されており、その影響範囲は自社グループ内にとどまらなくなる可能性がある。
(19) 人事・労務に関わるリスク
当社グループの従業員の多くは労働組合に所属しており、当社グループの従業員が集団的にストライキ等を行った場合、当社グループの航空機の運航に影響を与える可能性がある。
(20) 人材確保に関わるリスク
LCCの運航開始等により運航乗務員等に対する需要が高まっている一方、運航乗務員等の育成には一定期間の教育訓練等が必要であり、当社グループが適時に適切な数の適正能力を有する運航乗務員等を確保できない場合には、当社グループの経営が影響を受ける可能性がある。
(21) 財務に関わるリスク
① 資金調達コストの増加
当社グループは、機材調達等のため銀行借入・増資・社債発行等により資金調達を行っている。しかしながら、今後、航空業界の事業環境が悪化した場合、金融市場が混乱した場合、税制、政府の金利政策や政府系金融機関の保証制度等が変更された場合、もしくは当社の信用格付けが格下げされた場合等においては、当社にとって有利な条件による資金調達が困難又は不可能となる結果、資金調達コストが増加し、当社グループの経営に影響を及ぼす可能性がある。
② 資産減損等のリスク
当社グループは、その事業の性質上多くの固定資産を保有しているが、今後各種事業収支が悪化した場合、あるいは資産売却を決定した場合等には、固定資産の減損又は固定資産の売却損の計上が必要となる可能性がある。