有価証券報告書-第63期(平成26年4月1日-平成27年3月31日)

【提出】
2015/06/26 9:15
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【項目】
130項目

事業等のリスク

以下には、当社の財政状態、経営成績並びに現在及び将来の事業等に関してリスク要因となる可能性があると考えられる主な事項を記載しております。将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在(平成27年6月26日)において当社が入手可能な情報等に基づいて判断したものであります。また、投資家に対する積極的な情報開示の観点から、当社が必ずしも重要なリスクとは考えていない事項であっても、事業等のリスクを理解する上で投資家にとって参考となる情報は記載しております。また、以下の記述は、別段の意味に解される場合を除き、連結ベースでなされており、「当社」には当社並びに当社の連結子会社及び持分法適用会社(連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則(昭和51年大蔵省令第28号)の定義に従います。)が含まれています。
1.電気事業制度改革の進展等による当社の料金等への影響について
当社の営業収益の大半は、わが国の一般電気事業者10社への電気の卸供給による料金収入です。
小売供給の自由化をはじめとする制度改革により電気事業における競争が進展するなか、一般電気事業者は、低廉な電気料金を求める社会の期待に応え、顧客を確保するために、小売電気料金を引下げてきました。
当社の卸電気料金は、各発電設備、送・変電設備毎に、適正な原価に事業報酬を加算する方法により算定されているため(当社の卸電気料金については、「7.財政状態及び経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」を参照)、一般電気事業者による小売電気料金変更の影響を直ちに受けることはありません。しかしながら、当社は、これまでも一般電気事業者から卸電気料金の引下げを要請されており、料金原価の低減や更なる競争の進展等により、引下げの要請は強まる可能性があります。今後当社が卸電気料金を引下げる場合には、当社の業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
平成15年11月に有限責任中間法人日本卸電力取引所が設立され、平成17年4月より卸電力取引が開始されました。当社は、現在、卸電力取引所等での取引を行っております。当社は、現時点において、取引所における卸電力の取引が短期間に飛躍的に増加するとは予想しておりませんが、将来取引所における取引量が増加し、取引所における電力取引価格が価格指標としての重要性を増した場合、当社の料金水準が間接的に影響を受ける可能性があり、仮に、一般電気事業者と当社との間の相対契約における料金水準が価格指標を上回る場合は、当社の業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
加えて、将来的には平成25年4月に閣議決定された「電力システムに関する改革方針」に基づく電気事業制度改革によって当社を取り巻く事業環境が大きく変化する可能性もあります。平成25年11月の電気事業法改正により、平成27年4月に電力広域的運営推進機関が発足しました。また、平成26年6月及び平成27年6月の電気事業法改正により、小売参入全面自由化及び卸規制の撤廃(実施時期:平成28年目途)、送配電部門の法的分離及び電気小売料金規制の見直し(実施時期:平成32年目途)が行われる予定です。今後、改革内容の詳細検討が行われますが、これらの一連の改革の内容によっては、当社の事業や業績にも悪影響を及ぼす可能性があります。
2.発電所建設計画の取り止め等について
当社は、一般電気事業者向けの発電所建設に関しては、本格的な着工前に、受電予定会社の全量受電を前提として開発規模、運転開始予定時期、予定工事費等につき受電予定会社と合意します。その後、設備完成直前に電気料金等を定めた電力受給契約を受電予定会社と締結し、運転開始後の維持運転費とともに投資額を電気料金として回収しております。
電力需要の予想伸び率の変化に伴い、一般電気事業者は、一部の発電所建設計画の繰り延べや取り止め、稼働率の低い火力発電所の廃止・長期停止を実施した例があります。当社においても、一般電気事業者向けの発電所建設に関しては、受電予定会社と協議のうえ、計画の一部について運転開始時期の繰り延べや計画の取り止め等を行った例があります。また、事業用地取得の難航等により、受電予定会社と協議の上で、計画の取り止め等を行った例もあります。これらの取り止め等にあたっては、そこから生じる費用について、受電予定会社と協議の上で当社が応分の負担をしております。
さらに、今後、国のエネルギー政策の見直しなど電気事業を取り巻く状況の大幅な変化、予期せぬ事態の発生等により建設計画の取り止め等があれば、当社の業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
3.地球温暖化問題について
当社は、LNG等他の化石燃料を使用する発電所と比較して、発電量当たりのCO2排出量が相対的に高い石炭火力発電所を多数有しており、一般電気事業者及び卸電気事業者12社で取りまとめた「電気事業における環境行動計画」に基づき、各社と共同して地球温暖化問題に対応する様々な対策に取り組んでおります。また、現在、電気事業全体でCO2排出を抑制するための自主的な枠組みづくりについて、新電力も含めた電力業界全体の枠組みの検討が進められております。
国内ではCO2を排出しない原子力発電の開発に取り組むとともに、廃棄物発電などの未利用エネルギー及び風力発電・地熱発電などの再生可能エネルギーの開発、石炭火力の発電効率向上などに取り組んでおりますが、今後、地球温暖化対策に関する新たな規制等が導入された場合には、当社の業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
4.海外発電事業をはじめとする新たな事業への取り組みについて
当社は、新たな収益基盤を構築することを目指して、海外発電事業や国内での新たな電力事業等の取り組みを進めております。
具体的には、海外発電事業については、これまで海外諸国でコンサルティング事業に従事しており、この経験を活かしてIPP(独立系発電事業者)プロジェクトへの取り組みを進めております。
また、国内電力事業については、IPPによる一般電気事業者向け電力卸供給、新電力向け電力卸供給、風力・地熱・廃棄物等の再生可能エネルギーを利用した発電事業等を進めております。
しかしながら、これらの事業は、状況の大幅な変化、需要の低下、規制の変更等の予期せぬ事態の発生等により、当社が期待したほどの収益を生まない可能性がありますし、また、これらの事情により事業計画の変更、事業の取り止め等があれば、これに伴う関連費用の発生により、当社業績に悪影響を及ぼす可能性もあります。さらに、これらの事業の中には、当社が少数持分保有者に留まる合弁形態で運営されているものがあり、また、海外での事業については、為替リスクに加え当該国の政情不安等によるリスク(カントリーリスク)が存在します。
5.資金調達について
当社は、これまで発電所等への多額の設備投資を行っており、そのための設備資金を主として借入れ及び社債発行によって調達してきました。当社の今後10年間(平成27年度~36年度)の主な新規開発地点である大間原子力発電所や竹原火力発電所新1号機の建設をはじめ、既存の債務の償還あるいは海外発電事業への投資等のために、多額の資金調達を必要とする見通しです。当社は、国内新規石炭火力、再生可能エネルギー(風力、地熱)、海外発電事業等の新規開発地点の着実な推進に向けた設備投資資金の一部への充当と、自己資本の充実による資金調達の柔軟性確保のために、平成27年3月に公募による新株式発行と自己株式の処分を実施致しました。今後の資金調達にあたり、その時点における金融情勢、当社の信用状態又はその他の要因のために当社が必要資金を適時に適正な条件で調達することができなければ、当社の事業展開及び収益性に悪影響を及ぼす可能性があります。

6.大間原子力発電所建設計画について
大間原子力発電所計画は、平成7年8月の原子力委員会決定によって、国及び電気事業者の支援の下、当社が責任を持って取り組むべきとされた全炉心でのMOX(ウラン・プルトニウム混合酸化物)燃料利用を目指した改良型沸騰水型軽水炉(フルMOX-ABWR)であり、軽水炉でのMOX燃料利用計画の柔軟性を拡げるという政策的な位置付けを持つものとされております。このため、全炉心でのMOX燃料利用に関する技術開発部分について、「全炉心混合酸化物燃料原子炉施設技術開発費補助金交付要綱」に基づき、政府から補助金の交付を受けております。また、既に沖縄電力㈱を除く一般電気事業者9社と基本協定を締結しており、その中で一般電気事業者9社による適正原価等での全量受電が約されております。
大間原子力発電所計画は、全炉心でのMOX 燃料利用の原子力発電所として、地元大間町、青森県の同意を得て、平成11年8月に電源開発調整審議会により電源開発促進法で定める国の電源開発基本計画に組み入れられました(平成15年10月の電源開発促進法の廃止に伴い、電源開発基本計画の制度も廃止となりましたが、同計画の有していた機能を引き継いだ重要電源開発地点の指定制度に基づき、平成17年2月に地点指定を受けております。)。また、平成20年4月には「核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律」に基づく原子炉設置許可、5月には電気事業法に基づく工事計画認可(第1回)を経済産業大臣から受け、着工に至っております。この時点で予定していた建設費は4,690億円でした。その後、平成23年3月に発生した東日本大震災直後より工事を休止しておりましたが、平成24年10月より工事を再開しております。
当社は、平成25年7月に施行された原子力発電所に係る新規制基準への適合に向けた取組みを踏まえて、平成26年12月16日に原子力規制委員会に対し、原子炉設置変更許可申請書及び工事計画認可申請書を提出しました。具体的な取組みは多岐に亘りますが、シビアアクシデントを防止するための設計基準事故対策として、地震・津波への想定や対応策を強化するとともに、新規制基準において新設された重大事故等対策として、炉心損傷の防止及び格納容器の破損防止のための対策を行っております。さらに、航空機衝突等のテロ対策として、原子炉格納容器の破損による外部への放射性物質の異常な放出を抑制するため原子炉の減圧等の遠隔操作を可能とする特定重大事故等対処施設を設置することとしています。上記申請の中でとりまとめた追加の安全強化対策の工事は、原子力規制委員会の審査において当社の申請内容が新規制基準に適合することが認められた後に開始されます。当社は、かかる追加工事の工事費として約1,300億円を見込んでおります。今後、当社は、原子力規制委員会の適合性審査に真摯かつ適切に対応し、必要な安全対策等を着実に実施することで、全社をあげて安全な発電所づくりに取り組む所存です。
なお、追加の安全強化対策工事については、平成27年11月に開始し、平成32年12月に終了することを目指しておりますが、原子力事業を取り巻く状況の変化、原子力規制委員会の審査の状況、新規制基準への追加の対応等により、工程が延伸する可能性があります。また、これらの場合には、建設費が更に増加する可能性があります。加えて、原子力発電においては、国の原子力政策の見直しなど原子力事業を取り巻く状況の大幅な変化や予期せぬ事態の発生等による計画変更等のリスク、また、運転開始後には、放射性物質の貯蔵と取扱いに関するリスク、他の発電設備と同様、自然災害、不測の事故等のリスクも存在します(「8.自然災害、不測の事故等」を参照)。当社は、これらのリスクに対して可能な限り対策を講じる所存ですが、仮にリスクが顕在化した場合、当社の業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
7.石炭火力発電用燃料について
当社の石炭火力発電所は海外炭を主たる燃料としております。また、石炭火力発電に係る販売電力量は当社の販売電力量の約83%、石炭代は当社の営業費用の約33%を占めております。
当社は、海外炭の調達にあたっては、供給の安定性と経済性を同時に追求するため、オーストラリア、インドネシア、ロシア、南アフリカなどに調達地域を多様化しております。また、石炭の安定確保のために、一部の炭鉱においては権益を保有しております。なお、当社による海外炭の調達は、主として長期契約又は期間1年程度の契約により行われており、補完的にスポットでの購入も行っております。長期契約に基づく石炭の購入価格は、通常、1年に1回市場価格を踏まえて調整されます。
当社の燃料費は、海外炭の価格変動、輸送船舶の需給状況、燃料調達先の設備・操業トラブル等により影響を受けますが、燃料費は、火力発電所について一般電気事業者との間で2年毎(価格の変動が著しい場合は、1年毎)に行われる卸電気料金の改定にあたって、原価主義に基づき料金に反映されるため、石炭価格の変動等による当社の業績への影響は限定的です。但し、卸電気料金の改定後、次回の改定までに石炭価格の急激な上昇等があった場合、これに伴う燃料費の上昇分を料金に反映させるまでにタイムラグがあるため、一時的に当社の業績に悪影響を及ぼす可能性があります。また、石炭価格が大幅に下落し、当社が権益を保有している炭鉱の業績に影響が生じた場合、当社の業績にも悪影響を及ぼす可能性があります。
8.自然災害、不測の事故等について
自然災害、人為的なミス、テロ、燃料供給の中断又はその他の不測の事態により、当社の発電設備若しくは送・変電設備又はこれらの設備を運転制御する情報システム等に重大な事故があった場合、当社の事業運営に支障を来たし、ひいては周辺環境に悪影響を及ぼす可能性があります。当社は、わが国における重要なインフラストラクチャーである発電設備及び送・変電設備の事故防止、関係者の安全確保並びに周辺環境の保全のため、保安・防災体制の確立、事故・災害の予防対策及び応急・復旧対策並びに環境モニタリング等に全社を挙げて取り組んでおります。
しかし、事故等のために当社の発電設備又は送・変電設備が操業を停止した場合、さらには事故等のため周辺環境に悪影響を及ぼした場合には、当社の業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
9.法的規制について
当社事業の大半を占める卸電気事業については、電気事業法による規制を受けております。
当社は、同法に規定される卸電気事業者として、事業許可(第3条)、事業の譲渡し及び譲受け並びに法人の合併及び分割の認可(第10条)、電気事業用設備の譲渡し等の届出(第13条)、事業の休止及び廃止の許可、並びに法人の解散に関する認可(第14条)、供給義務(第18条)、料金その他の供給条件の届出(第22条)、供給計画の届出(第29条)、保安規程の届出(第42条)等の事業規制及び保安規制、並びにこれらの規制に伴う変更・中止命令及び事業許可の取り消しに関する規定の適用を受けております。この他、当社の事業運営は様々な法令の適用を受けております。このため、当社がこれらの法令・規制を遵守できなかった場合、又はこれらの法令・規制の改正があった場合には、当社の事業運営や業績に悪影響を及ぼす可能性があります。なお、平成26年6月に改正された電気事業法に基づき、平成28年以降、卸規制(事業許可制や料金規制)は撤廃されることとなります(「1. 電気事業制度改革の進展等による当社の料金等への影響について」を参照)。
また、平成23年8月10日に、原子力事業者による相互扶助の考え方に基づき、将来にわたって原子力損害賠償の支払等に対応できる支援組織(原子力損害賠償支援機構。その後、平成26年8月に、組織名称を原子力損害賠償・廃炉等支援機構に変更)を中心とした仕組みを構築することを目的として、「原子力損害賠償支援機構法」(現:「原子力損害賠償・廃炉等支援機構法」)が公布・施行されました。当社は、同法第38条に基づき、原子力事業者として原子力損害賠償・廃炉等支援機構の業務に要する費用に充てるための負担金を納付することを義務付けられ、負担金の額によっては当社の業績に悪影響を及ぼす可能性があります。なお、今後、当社が進めている大間原子力発電所計画について、同発電所が「原子力損害の賠償に関する法律」に定める原子炉の運転等を開始した場合に、当社は負担金を納付することとなります。
10.特定の販売先への依存度が高いことについて
当連結会計年度において、当社の電気事業営業収益は営業収益の78.4%を占めており、電気事業営業収益のうち一般電気事業者に対する売上は95.0%を占めております。売上比率が当社の電気事業営業収益の10%以上を占める販売先は、東京電力㈱(20.7%)、中国電力㈱(19.8%)、関西電力㈱(18.1%)であります。当社は、一般電気事業者が、今後とも当社の最も重要な販売先であると考えており、したがって、当社の業績は、一般電気事業者の小売電力市場におけるシェアや国内における電力需要の動向等により影響を受ける可能性があります。
11.業務情報の管理
当社は、個人情報をはじめ機密を要する多くの重要な情報を保有しています。これらの情報については情報セキュリティ対策の推進、従業員教育等の実施により厳重に管理しておりますが、外部に流出した場合、当社のレピュテーションや業績は悪影響を受ける可能性があります。