有価証券報告書-第50期(平成31年1月1日-令和1年12月31日)

【提出】
2020/03/24 16:37
【資料】
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【項目】
165項目

研究開発活動

当社グループにおける研究開発活動は、主に連結財務諸表を作成する当社が行っております。
また、当社における研究開発活動はSI事業に係るものであり、その活動状況は次のとおりであります。
(1) 研究開発体制
当社の研究開発につきましては、PALRO事業部、再生医療研究部をはじめとする各研究開発部門において、最新の技術動向を調査・研究すると共に、実践レベルでの各種検証を行っております。
なお、当連結会計年度末の研究開発に従事する人員数は、119名であります。
(2) 研究開発費用
当連結会計年度において当社グループが支出した研究開発費の総額は、826百万円であります。
(3) 研究開発の概要
① AI技術
これまでに蓄積した知見やノウハウ、社内データを活用して、見積り精度の向上や社員のキャリア育成に有効なAIの研究を実施しており、ライン系やスペシャリスト系の育成を経て事業拡大に繋がる研究を本格化してまいりました。また、医療分野においては、AI技術を利用し、大学病院と共同研究を開始いたしました。さらに、従来のやり方では強力なCPUやGPU、大量の電力消費が不可欠だった深層学習において、小型化・軽量化する方法を研究しております。
また、市場の動向や研究で発表される新たな技術の調査・検証を進めると共に、開発の生産性や品質の向上、お客様へより良いAIシステムの提供に繋げられるよう、継続して研究を進めております。
② IoT技術
主に製造業向けのお客様をターゲットとして「工場内のデータ見える化・活用」をテーマに調査研究を行っております。特に大きな課題となっているのは、工場内の各種機器を製造業向けのIoTプラットフォームと連携させて、効率的にデータを収集することであり、当社がこれまで培ってきた通信・組込・ハードウェアの開発ナレッジを活かして各レイヤー(通信/接続方式・エッジ/フォグコンピューティング(*1)・プラットフォーム)の新技術の調査研究を推進しております。取り組み事例としましては、Litmus Automation社のIoTソリューション「LoopEdge & LoopCloud」を軸にした工場IoTソリューションビジネスの拡大をさせるため、製造業のお客様へのIoT導入にあたっては、製造業現場の業務効率化・見える化などを行うアプリケーション開発が必要であり、当社の強みであるソフトウェア開発力を活かしながら取り組んでまいりました。
さらに、研究開発活動の中心拠点として、国立大学法人電気通信大学のUECアライアンスセンター内における「電気通信大学オフィス」にて、産学連携を通じた研究開発をより一層推進する体制を取っております。
*1:エッジコンピューティング
各デバイスの近くに処理サーバを置くか、デバイス自体が処理能力を持ち、クラウドの負荷を軽減する
:フォグコンピューティング
ネットワーク機器にクラウド機能を拡張することで、クラウドの負荷を軽減する
③ サイバー・セキュリティ技術
国立大学法人横浜国立大学と連携し「IoTマルウェアの持続的感染要因分析」、「標的型攻撃の識別・検知」等についての調査研究を行っております。
また、社内システム・自社プロダクト・受託開発のセキュリティ強化のため、「セキュア開発・運用プロセス」、「脆弱性検査・管理」、「ハッキング・堅牢化手法」、「セキュリティアーキテクチャ」等の研究を実施しております。さらに、ビジネス推進を目的とした技術マップ、サービスメニュー作成のための調査研究も行っております。
④ ロボット技術
コミュニケーションロボットについては、多言語対応に向けた研究やロボット本体に搭載する要素技術を複合したセンシング技術の向上により人間に近い会話の実現に向けた研究を進めており、コンシューマシリーズの営業展開を開始いたしました。
高齢者福祉施設向けのロボットにおいては、導入先に適した機能強化と共に、従来から取り組んでいる生活支援や介護予防の機能、体操等の健康寿命延伸に繋がる機能、認知症予防に効果的な機能を搭載したロボットの試行検証を継続して実施しております。その他は、見守り、体操等において、病院・大学・自治体と共同で実証実験や機能強化を図っており、継続して調査研究を進めております。
⑤ 産業ロボット技術
国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)より「ロボット活用型市場化適用技術開発プロジェクト/ロボットのプラットフォーム化技術開発(ハードウェア)」に関わる開発委託の採択を受け、研究開発を進めております。
本研究開発では、未活用領域へのロボット導入を促進することを目的に、トータル3割以上のロボット導入コスト削減を目標として、ハードウェアプラットフォームのオープン化対応や、他製品との協調制御(*2)の実現を目指しており、ハードウェアプラットフォームの基礎機能の実装を完了させ、実証先への導入をしてまいりました。また、他製品との協調制御のための仕様検討を行っております。
当事業年度におきましては、ハードウェアプラットフォームの基礎機能となる、ロボット制御のオープン化、協調動作のレベル定義と仕様の確定、ティーチング方式の実装を完了させ、システム構築を容易とする部品開発、ユーザーインタフェースの実装及び実証先への導入をいたしました。また、「国際ロボット展2019」に研究活動の成果を展示する等、今後さらに実証導入での課題を基にインタフェースを充実させ、実用化レベルの向上に向けた研究を進めてまいります。
*2:協調制御
ネットワークを使用した製品間の高度な制御方法
⑥ 車載ソフトウェア技術
APTJ株式会社(*3)が取り組む「世界トップ性能と品質のAUTOSARベースBSW(*4)の開発」に、技術者及び出資協力を行っております。
また、Julinar(*5)のサブライセンス権をAPTJ株式会社から受けて、営業展開を開始しております。
*3:APTJ株式会社
国立大学法人名古屋大学発学内ベンチャー企業として2015年設立、自動運転システム向けのSPFの開発や、セキュリティ対策の強化により、将来的に車載制御システム向けSPFで国際的なトップクラスのソフトウェアを目指している。当社は2017年10月に、3回目の第三者割当増資を引き受けている
*4:BSW(Basic Software)
車載システムの基盤ソフトウェア
*5: Julinar
APTJ株式会社が開発している、AUTOSAR仕様準拠のSPF、及びサービスの総称
⑦ 再生医療技術
国立研究開発法人 日本医療研究開発機構(AMED)より「先天性顔面疾患に用いるインプラント型再生軟骨」に関わる新技術開発委託の採択を受け、産官学連携による研究開発を進めており、2017年5月までに、計画しておりました治験9症例全例の再生軟骨移植が完了しました。現在までに、9症例の術後2年までの有効性に関するデータを取得完了しており、いずれも当初設定した適合基準を満たすものでありました。また、特記すべき有害事象や不具合は発生しなかったことから、安全性に問題がないことが示唆されております。
また、2018年6月に、独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)より製造販売承認申請し、照会事項に対応しており、2019年1月にはGCP(*6)適合性調査を受け、指摘事項なしで終了しております。
*6: GCP(Good Clinical Practice)
治験を実施する際に守るべき省令