有価証券報告書-第57期(平成25年1月1日-平成25年12月31日)

【提出】
2014/03/26 13:16
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【項目】
135項目

研究開発活動

当社グループは、地震災害、斜面災害などに対する防災や減災、既存の社会インフラの維持管理などの問題に対して最適なソリューションを提供するための技術及び製品の研究開発を進めております。研究開発においては、当社のエンジニアリング本部・計測システム事業部及びOYO CORPORATION U.S.Aグループが中心となり、各事業所及びグループ企業との連携のもとに行っております。
また、短期的に研究開発を推進し、外部機関の優れた技術の活用を図るために公的研究機関、大学、民間企業との共同研究も積極的に進めております。
当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費の総額は、12億9千5百万円でありました。主な研究開発内容は次のとおりであります。
(1) 調査・コンサルティング事業
東日本大震災により社会インフラに大きな被害が生じましたが、その後も豪雨による洪水・大規模な土砂災害、更には道路の老朽化問題など、毎年のように様々な新たな課題が生じております。これらの課題を解決するためには、従来にない調査技術の研究開発が必要になってまいります。私たちは、これらの課題解決のために、地質工学の枠を超えて、生物学、物理・化学、電子・機械工学、情報工学、更には社会科学まで連携した総合的な技術開発が必要との認識のもと、調査事業における研究開発を積極的に推進しております。特に、防災分野(地盤防災、地震防災)、地球環境分野(地盤環境、生態環境)、維持管理分野、及び情報サービス分野を重点分野と位置付け、強力に研究開発を進めております。
① 防災分野
地盤防災分野については、昨年度伊豆大島で発生した豪雨による表層崩壊の調査や計器設置を行うことで、そのメカニズムの解明を行い、表層崩壊予測や対策技術の研究を行っております。また、深層崩壊機構解明に関する研究、地すべりに影響を及ぼす地下水調査・観測手法の標準化に関する研究、降雨土砂災害を対象としたリアルタイムハザードマップシステムの開発を推進しております。また、東南アジアにおいては、斜面モニタリングへの遠隔モニタリング技術の移転を行っております。更に、既に開発している原位置で簡便・経済的に液状化発生を予測できる技術(ピエゾドライブコーン:PDC)の性能の更なる高度化、東日本大震災で液状化により大きな被害を受けた戸建住宅の調査用として小型化したPDCの開発、更にはより簡便で経済性に優れる新しいタイプのPDCの開発も進めております。
地震防災分野については、地震被害想定や地域防災をはじめとする社会的ニーズが高まっていることから、これらに関連した研究開発を推進しております。具体的には、地震防災監視システムの製品化と実証実験などを行っております。
② 地球環境分野
地盤環境分野については、福島第一原子力発電所事故を受けて、地下水や河川の放射能濃度を測定するためのサーベイメータの開発を行っております。また、トンネルなどの掘削の際に最近問題となることが多い自然由来重金属の分析を迅速かつ経済的に実施できる簡易・迅速分析法の研究を進めております。
生態環境分野については、福島県の三春町に所有する応用生態工学研究所で三春ダム周辺の生態調査、気象観測、水質観測を継続的に行い、データの蓄積を行っております。これらの成果は河川・流域の健全な水環境・物質循環による良好な水環境の創出や、水環境を保全・改善する河川流域圏の国土マネジメントの業務支援に資することを目的としております。また、中国の清華大学等と共同で、砂漠地域の緑化と生態環境復元に関する研究を推進し、砂漠緑化技術の確立を目指しております。
③ 維持管理分野
最近では高度成長期に建設された社会資本の老朽化が著しく、将来的に非常に多額の維持・管理費用が発生することが予測されております。このため、効率的で経済的な維持管理手法の研究は、将来にわたりインフラを健全に維持していくために重要であります。そのためには、各種センサーを組み合わせたモニタリングシステムによる計測や、非破壊調査による現況把握を行うことが重要になります。このような目的のために、鋼材の腐食環境評価技術の研究、アンカーのり面の健全度評価技術の研究を進めるとともに、路面下の空洞探査に用いるロードビジュアライザーの高性能化と、設備の増強を行っております。
④ 情報サービス分野
国土交通省は、三次元モデルを構築しながら土木構造物の設計や施工を進めるCIM(コンストラクション・インフォメーション・モデリング)の普及を強力に進める方針であります。この動きは地盤の分野にも共通の課題で、地盤の三次元モデルがCIM全体の中で重要な要素になると考えられます。このような情勢の中、これまでの現場経験から構築してきた三次元地盤情報モデリングを更に高度化するための研究を進めております。また、これらの三次元化の動きにあわせ、既に独自に開発し、使用しているMAGIS(当社独自のGIS(地理情報システム)ソフトウェア)機能の更なる強化を継続的に行っております。
計測分野については、遠隔監視技術の高度化を図り、クラウド上でGISを操作し、将来の自然現象の予想や予測が出来るクラウド型遠隔監視システムを開発しております。
(2) 計測機器事業(国内)
応用地震計測株式会社では、東日本大震災以降に住宅メーカーから要望のありました戸建住宅用の地震計の開発を行ってまいりました。当連結会計年度では、前連結会計年度までに開発した成果を基に、廉価で扱いやすく、被災度の判定が可能な標準的な小型地震計を目指して、さらに汎用化を進める開発を行いました。この製品は廉価な点を活かし、地震災害が懸念される新興国の地震計ネットワーク市場への販売も期待されております。
また、グループ会社であるKINEMETRICS,INC.(米国)が開発した地表型ポータブル広帯域地震計「PBB」のセンサー部分を組み込んだ小孔径用の複合孔中地震観測システムの開発にも着手いたしました。
防災啓蒙教育グッズ(ぶるるシリーズ)については、製品によっては販売開始から10年を超えるものもあるため、更新作業を行っております。一部の製品については、近日中に更新版の販売を開始する予定であります。
(3) 計測機器事業(海外)
① 地震観測・監視装置
KINEMETRICS,INC.は、地震観測機器の専門メーカーとして、地震計や地震観測システムの開発・製造・販売を行っております。当連結会計年度では、世界的な地震観測需要の高まりを背景に、ストラックカイゼン社(スイス)と共同で行っていた孔中広帯域地震計「STS-5A」の開発が完了し、製品化いたしました。また、海底地震計システムの開発を行っております。
② 物理探査装置
GEOMETRICS,INC.(米国)は、地震探査装置、磁気探査装置及び電磁探査装置の開発・製造・販売を行っております。当連結会計年度では、鉱物資源探査などの今後成長が期待される市場に対応するため、三次元電磁法探査システム「GeodeEM3D」を開発し、製品化いたしました。また、地震探査装置では、多数の観測点をネットワークで繋いで大規模探査に対応できる上位機種の探査システムの開発を行っております。
GEOPHYSICAL SURVEY SYSTEMS,INC.(米国)は、地下レーダー装置において世界トップの市場シェアを持っております。当連結会計年度では、主力のデータ処理・収録装置である「SIR-3000」の上位機種として、測定機能を向上させた「SIR-4000」を開発、発表いたしました。また、救命救急市場を対象とした人命探査レーダー「Life Locator3」の上位機種として、「Life Locator4」の開発を行っております。
ROBERTSON GEOLOGGING LTD.(英国)は、ボーリング孔を利用した地下検層装置の開発・製造・販売を行っております。需要が増大している非在来型の石油・ガス資源探査市場に対応するため、小孔径検層装置の製品ラインナップ強化に取組んでおり、当連結会計年度は、電気的に孔壁を画像化する装置の開発を行い、製品化いたしました。
平成25年4月に海洋資源探査に必要なポジショニングやナビゲーションサービスを行うNCS SUBSEA,INC.(米国)を買収いたしました。当連結会計年度では、高分解能地震探査を行う上で必要となる地震計ストリーマーの海上での位置を高精度に決定する技術を開発いたしました。また、従来製品より使い易いナビゲーションソフトの開発にも取組んでおります。