有価証券報告書-第59期(平成27年1月1日-平成27年12月31日)

【提出】
2016/03/25 13:25
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【項目】
126項目

研究開発活動

当社グループは、地震災害、斜面災害などに対する防災や減災、既存の社会インフラの維持管理などの問題に対して、最適なソリューションを提供するための技術及び製品の研究開発を進めております。
研究開発を推し進める組織体系としては、当社エンジニアリング本部、計測システム事業部が中心となり、各事業所及びグループ企業との連携のもとに行ってきました。また、研究開発を効率的に推進するため、外部機関の優れた技術の活用を図るために、公的研究機関、大学、民間企業との共同研究も積極的に進めております。平成28年4月にはエンジニアリング本部の一組織である技術研究所を商品開発により重点を置いた組織として「研究開発センター」に改称、強化し、商品開発とそれに必要な研究開発を世界水準で行っていく予定であります。
当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費の総額は、19億1千万円でありました。研究開発の主な内容は次のとおりであります。
(1) 調査・コンサルティング事業
調査事業に関わる研究開発は、重点事業7分野(国土マネジメント、維持管理、エネルギー、情報サービス、地球環境、地震防災、計測システム)に関して、自社開発だけではなく、他研究機関や他社との共同研究、国土交通省の助成研究等の様々な形態で進めております。
① 国土マネジメント分野
平成27年も、平成27年9月関東・東北豪雨による鬼怒川や渋井川の堤防決壊等、豪雨による災害が多く発生いたしました。このような豪雨による土砂災害や堤防決壊に対して、そのメカニズムを解明し、崩壊予測や対策技術を確立するために、現地調査やサンプリング技術、モニタリング技術、地質解析技術の研究開発を進めております。また、液状化対策技術として開発したピエゾドライブコーン(PDC:抵抗体を地盤に打ち込むだけで液状化判定が可能な技術)を普及させるとともに、更なる改良と適用範囲の拡大を図っております。
② 維持管理分野
社会インフラの維持管理に関しては、膨大な数のインフラ施設をいかに効率的に調査し、問題箇所を検出し、劣化等による災害・事故を未然に防ぐかということが課題となっております。そのため、道路下の空洞探査車(ロード・ビジュアライザー)の機能強化、効率的な橋梁床板の診断技術や既設トンネル点検の高度化・効率化のためのシステム、アンカー法面の健全度評価技術、河川堤体診断技術等の研究開発を行っております。
③ エネルギー分野
再生可能エネルギーとして注目される地中熱の利用に際しては、地形や地質の情報から適地を判定することが重要であり、そのために地盤情報データベースを用いた地中熱ポテンシャルマップの研究開発を進めております。更に、地熱資源開発に関しても、広範囲を探査できる空中物理探査技術の活用を目指した研究開発を行っております。また、温暖化対策の一手法であるCO2の地中貯留に関しては、高圧流体の大量圧入に伴う地盤変動等の解析技術(CO2-水-応力連成解析ツール)の実用化を進めております。
④ 情報サービス分野
国土交通省では三次元モデルを構築しながら土木構造物の設計や施工を進めるCIM(コンストラクション・インフォメーション・モデリング)の普及が進められていまして、地盤の三次元モデルはCIM全体の中で重要な要素になっております。このような情勢の中、これまでの現場経験から構築してきた三次元地盤情報モデリングを更に高度化するための研究として、次世代三次元地質図作成システムの研究開発を進めております。また、これらの三次元化の動きに合わせ、独自に開発し、既に社内で使用しているGIS(地理情報システム)ソフトウェアMAGISの機能の更なる強化に向けて継続的に取り組んでおります。
⑤ 地球環境分野
福島県田村郡三春町の応用生態工学研究所では、三春ダム周辺の生態調査、気象観測、水質観測を継続的に行っております。淡水域における魚類の効率的なモニタリング手法として、環境DNA(魚の糞や鱗などから溶け出したDNA)を用いた魚類の現存量の把握に関する研究を進めております。また、街路樹等の樹木の健全度(倒壊危険度)に関しては、物理探査手法を活用して診断する研究も行っております。世界的な砂漠化に対しては、中国の清華大学等と共同で、砂漠地域の緑化と生態環境復元に関する研究を継続的に実施し、砂漠緑化技術の確立を目指しております。
⑥ 地震防災分野
地震被害想定や地域防災の基本情報となる地震動に関しては、その予測技術を向上させるために、地震動予測計算手法の高度化と検証を進めております。また、世界的な地震ハザード/リスクモデルを開発することを目的とした組織であるGEM(Global Earthquake Model Project:世界地震モデル)に参加し、世界最先端技術の取得に努めております。更に、地震によって起こる火災の延焼をシミュレーションする技術も継続的に研究開発しております。
⑦ 計測システム分野
土砂災害等に対して、遠隔監視技術の高度化を図り、インターネットを介してクラウド上でデータを処理し、自然現象の予測等が出来るクラウド型遠隔監視システムを開発しております。また、GNSS(全地球型測位システム)を活用した高ポジショニング物理探査や多点同時通電による比抵抗モニタリング技術の開発も推進しております。
また、NCS SUBSEA,INC.(米国)では、超高分解能海洋地震探査サービスを提供しております。そして、ケーブルを使わずに海中の受信機の位置を把握できるフリーケーブルシステムを開発いたしました。現在、従来製品より使い易いナビゲーションソフトの開発も進めております。
(2) 計測機器事業(国内)
応用地震計測株式会社では、小型地震計EPDP CUBE-311とその専用の表示装置を開発いたしました。これらは免震ビル管理市場で順調に売上を伸ばしております。また、広帯域速度型強震計を内蔵した孔中地震計を試作し、製品化に向けた性能評価を開始いたしました。本装置は、微小地震の観測、地震発生機構の解明に役立つデータの収集が可能なため、地震、火山観測を行っている研究機関への販売を予定しております。
応用計測サービス株式会社では、全自動孔内載荷試験装置AUTO ELASTを開発いたしました。従来のエラストメーターは、高圧ハンドポンプを用いて手動で加圧制御を行っておりました。それに対して、本装置は、平成26年に開発したAUTO LLT2のノウハウを生かし、最大圧力20Mpaまで加圧することができ、応力制御はもちろん、タッチパネル操作で簡単に繰り返し載荷ができる高精度自動計測装置であります。平成27年8月に販売とレンタルを開始いたしました。
(3) 計測機器事業(海外)
① 地震観測・監視装置
KINEMETRICS,INC.(米国)は、地震観測機器の専門メーカーとして、地震計や地震観測システムの開発・製造・販売を行っております。広帯域小型地震計MBBを開発し、平成27年12月から販売を開始いたしました。また、地震観測システムを土台としたソリューションの提供へと事業を拡大させるため、緊急地震速報システム等の開発も進めております。
② 物理探査装置
GEOMETRICS,INC.(米国)は、弾性波探査装置、磁気探査装置及び電磁探査装置の開発・製造・販売を行っております。当連結会計年度は、陸域及び浅海域での不発弾探査市場において大きな需要が期待されることから、新型電磁法探査装置Metal Mapperを開発いたしました。また、従来製品に比べて小型かつ省電力なセシウム磁力計MFAMの開発を進めており、システムインテグレーター向けに評価キットの販売を開始いたしました。
GEOPHYSICAL SURVEY SYSTEMS,INC.(米国)は、地下レーダー探査装置において世界トップの市場シェアを持っております。人命探査レーダーLife Locater3の上位機種としてLife Locater4を発売いたしました。現在、コンクリート検査市場を対象としたStractureScan Miniの後継機であるStractureScan Mini XTと埋設管市場を対象としたUtilityScanの後継機であるUtilityScan HSの開発も進めております。
ROBERTSON GEOLOGGING LTD.(英国)は、ボーリング孔を利用した検層機の開発・製造・販売を行っております。当連結会計年度は、検層業界の世界的な潮流であるメモリ内蔵型検層機に対応するため、メモリ内蔵型自然放射能検層機を開発いたしました。また、次世代型検層システムとして、ネットワーク機能等を有した新型コントローラーMicrologgerの開発を進めております。