有価証券報告書-第21期(平成29年1月1日-平成29年12月31日)

【提出】
2018/03/29 15:01
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【項目】
67項目

業績等の概要

(1) 業績
当社グループは、経営者が意思決定する際に使用する社内指標(以下、Non-GAAP指標)及びIFRSに基づく指標の双方によって、連結経営成績を開示しています。
Non-GAAP営業利益は、IFRSに基づく営業利益(以下、IFRS営業利益)から、当社グループが定める非経常的な項目やその他の調整項目を控除したものです。経営者は、Non-GAAP指標を開示することで、ステークホルダーにとって同業他社比較や過年度比較が容易になり、当社グループの恒常的な経営成績や将来見通しを理解する上で有益な情報を提供できると判断しています。なお、非経常的な項目とは、将来見通し作成の観点から一定のルールに基づき除外すべきと当社グループが判断する一過性の利益や損失のことです。その他の調整項目とは、適用する会計基準等により差異が生じ易く企業間の比較可能性が低い、株式報酬費用や子会社取得時に認識した無形資産の償却費等を指します。
(注) Non-GAAP指標の開示に際しては、米国証券取引委員会(U.S. Securities and Exchange Commission)が定める基準を参照していますが、同基準に完全に準拠しているものではありません。
① 当期の経営成績(Non-GAAPベース)
当連結会計年度における世界経済は、中国を始めアジア新興国等の経済の先行き、政策に関する不確実性による影響等について留意する必要があるものの、米国を中心に緩やかに回復しています。日本経済は、雇用・所得環境の改善が続く中で、企業の設備投資や生産の増加を受け、緩やかな回復を続けました。
2017年6月、日本政府は「未来投資戦略2017」及び「経済財政運営の基本方針2017」を閣議決定し、具体的にはIoT(モノのインターネット)、ビッグデータ、AI(人工知能)、ロボット、シェアリングエコノミー等のイノベーションを、あらゆる産業や社会生活に取り入れる必要があるとしています。
このような環境下、当社グループは、他社に先駆けてこれらの分野の知見を集約し、メンバーシップ、ビッグデータ、ブランドを結集したビジネスの展開を加速化させています。MVNO(仮想移動体通信事業者)サービス事業、C2C事業、シェアリングエコノミーサービス、アドテクノロジー、インシュアテック、投資事業といった新しいビジネスポートフォリオも順調に成長しています。インターネットサービスの主力である国内ECにおいては、ロイヤルカスタマーの醸成や新規ユーザー獲得のための販促活動、顧客満足度向上のための取組に加え、スマートデバイス向けのサービス強化、楽天エコシステムのオープン化戦略等を積極的に展開し、流通総額及び売上収益の更なる成長に努めています。海外インターネットサービスにおいては、米国Ebates Inc.(以下、Ebates社)の順調な成長等により、業績は改善基調にあります。また、当社グループは、革新的な技術やビジネスモデルを持つ企業への投資を進めており、それらの投資についての株式評価益及び売却益を計上しています。FinTechにおいては、『楽天カード』の会員基盤の拡大により手数料収入が増加したほか、銀行サービスの拡大及び好調な国内株式市場の影響を受けた証券サービスの貢献により、売上収益及び利益が堅調に増加しています。また、クレジットカード関連サービスでは、ユーザーにより高い利便性を提供するための柔軟な運用と、長期的に会員が安心してクレジットカードを利用できる環境の整備を目的として基幹システムの全面刷新を行いました。
この結果、当社グループの当連結会計年度における売上収益は944,474百万円(前連結会計年度比20.8%増)、Non-GAAP営業利益は167,010百万円(前連結会計年度比39.6%増)となりました。
(Non-GAAPベース)
(単位:百万円)
前連結会計年度当連結会計年度増減額増減率
(自2016年1月1日
至2016年12月31日)
(自2017年1月1日
至2017年12月31日)
売上収益781,916944,474162,55820.8%
Non-GAAP営業利益119,615167,01047,39539.6%


② Non-GAAP営業利益からIFRS営業利益への調整
当連結会計年度において、Non-GAAP営業利益にて控除される無形資産の償却費は7,758百万円、株式報酬費用は7,509百万円となりました。また、固定資産の減損損失2,399百万円を非経常的な項目としています。なお、前連結会計年度における非経常的な項目25,970百万円は、のれん及び無形資産の減損損失等の合計額です。
(単位:百万円)
前連結会計年度当連結会計年度増減額
(自2016年1月1日
至2016年12月31日)
(自2017年1月1日
至2017年12月31日)
Non-GAAP営業利益119,615167,01047,395
無形資産償却費△7,789△7,75831
株式報酬費用△7,344△7,509△165
非経常的な項目△25,970△2,39923,571
IFRS営業利益78,512149,34470,832

③ 当期の経営成績(IFRSベース)
当連結会計年度における売上収益は944,474百万円(前連結会計年度比20.8%増)、営業利益は149,344百万円(前連結会計年度比90.2%増)、当期利益(親会社の所有者帰属)は110,585百万円(前連結会計年度比187.8%増)となりました。
(IFRSベース)
(単位:百万円)
前連結会計年度当連結会計年度増減額増減率
(自2016年1月1日
至2016年12月31日)
(自2017年1月1日
至2017年12月31日)
売上収益781,916944,474162,55820.8%
IFRS営業利益78,512149,34470,83290.2%
当期利益
(親会社の所有者帰属)
38,429110,58572,156187.8%

④ セグメントの概況
各セグメントにおける業績は次のとおりです。IFRS上のマネジメントアプローチの観点から、セグメント損益をNon-GAAP営業損益ベースで表示しています。
(インターネットサービス)
当連結会計年度のインターネットサービスセグメントは、主力サービスの国内ECにおいては、前年に買収した株式会社爽快ドラッグ(現Rakuten Direct株式会社)の貢献等もあり、売上収益は大きく増加しました。また、売上収益の更なる成長を目指し、ロイヤルカスタマーの醸成や新規ユーザー獲得のための販促活動、顧客満足度向上のための取組に加え、スマートデバイス向けのサービス強化、楽天エコシステムのオープン化戦略等を積極的に展開しました。この結果、販促活動に伴う費用は増加しています。海外ECにおいては、Ebates社の順調な成長等により、業績は改善基調にあります。MVNO(仮想移動体通信事業者)サービス『楽天モバイル』、メッセージング及びVoIPサービス『Viber』においても、新サービスの導入、積極的な販促活動等が奏功し、売上収益が大幅に増加しています。また、革新的な技術やビジネスモデルを持つ企業への投資を進めており、それらの投資について株式評価益及び売却益を計上しました。
この結果、インターネットサービスセグメントにおける売上収益は680,306百万円(前連結会計年度比21.4%増)、セグメント利益は100,762百万円(前連結会計年度比81.3%増)となりました。
(単位:百万円)
前連結会計年度当連結会計年度増減額増減率
(自2016年1月1日
至2016年12月31日)
(自2017年1月1日
至2017年12月31日)
セグメント売上収益560,555680,306119,75121.4%
セグメント損益55,568100,76245,19481.3%

(FinTech)
当連結会計年度のFinTechセグメントは、クレジットカード関連サービスにおいては、『楽天カード』会員の増加に伴うショッピング取扱高やリボ残高が伸張し、売上収益の増加に貢献しました。同サービスにおいては、ユーザーにより高い利便性を提供するための柔軟な運用と、長期的に会員が安心してクレジットカードを利用できる環境の整備を目的として基幹システムの全面刷新を行いました。これによる費用増加を除くと利益は堅調に推移しています。銀行サービスにおいては、ローン残高の拡大に伴う貸出金利息収益の増加や費用の効率化等により、マイナス金利政策の環境下にも関わらず、売上収益及び利益拡大が続いています。証券サービスにおいては、国内株式市場の回復により株式売買手数料が増加し、売上収益及び利益共に前年同期を上回りました。
この結果、FinTechセグメントにおける売上収益は333,161百万円(前連結会計年度比12.5%増)、セグメント利益は72,811百万円(前連結会計年度比11.0%増)となりました。
(単位:百万円)
前連結会計年度当連結会計年度増減額増減率
(自2016年1月1日
至2016年12月31日)
(自2017年1月1日
至2017年12月31日)
セグメント売上収益296,066333,16137,09512.5%
セグメント損益65,58772,8117,22411.0%


(2) キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べ152,612百万円増加し、700,881百万円となりました。このうち、銀行事業に関する日銀預け金は、前連結会計年度末に比べ98,799百万円増加し、475,678百万円となりました。当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況及び主な変動要因は次のとおりです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは、162,056百万円の資金流入(前連結会計年度は30,700百万円の資金流入)となりました。これは主に、カード事業の貸付金の増加による資金流出が208,144百万円、銀行事業の貸付金の増加による資金流出が167,619百万円、証券事業の金融資産及び同負債が変動したことによるネットの資金流出が37,754百万円(証券事業の金融資産の増加による資金流出が768,747百万円、証券事業の金融負債の増加による資金流入が730,993百万円)となった一方で、銀行事業の預金の増加による資金流入が439,818百万円、税引前当期利益138,082百万円、減価償却費及び償却費54,376百万円等を計上したことによるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における投資活動によるキャッシュ・フローは、203,718百万円の資金流出(前連結会計年度は26,841百万円の資金流出)となりました。これは主に、有価証券の取得及び売却等によるネットの資金流出が50,041百万円(有価証券の取得による資金流出が61,937百万円、売却及び償還による資金流入が11,896百万円)、ソフトウエア等の無形資産の取得による資金流出が46,624百万円、銀行事業の有価証券の取得及び売却等によるネットの資金流出が46,148百万円(銀行事業の有価証券の取得による資金流出が312,593百万円、売却及び償還による資金流入が266,445百万円)、建物等の有形固定資産の取得による資金流出が31,874百万円となったことによるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における財務活動によるキャッシュ・フローは、194,458百万円の資金流入(前連結会計年度は45,200百万円の資金流入)となりました。これは主に、長期借入金の返済による資金流出が240,473百万円、自己株式の取得による資金流出が100,133百万円、社債の償還による資金流出が30,300百万円となった一方で、長期借入れによる資金流入が364,573百万円、社債の発行による資金流入が99,541百万円、短期借入金の増加による資金流入が66,039百万円となったことによるものです。
(3) IFRSにより作成した連結財務諸表における主要な項目と、日本基準により作成した連結財務諸表におけるこれらに相当する項目との差異
当連結会計年度(自 2017年1月1日 至 2017年12月31日)
①売上収益
当社グループが顧客による継続的なアクセスやショッピングを促す目的等で展開するポイントプログラムにおけるポイントに関する将来の負担について、日本基準では、ポイント引当金繰入額として販売費及び一般管理費に計上していますが、IFRSでは、そのうち、IFRS第15号「顧客との契約から生じる収益」に従って会計処理される、顧客に支払われる対価に該当するポイントは、付与時に売上収益から控除しています。この影響により、IFRSの売上収益は日本基準に比べ約60,123百万円減少しています。
当社グループにおける書籍等の販売等について、日本基準では売上高を計上し、関連する売上原価を総額表示していますが、IFRSでは、対象となる取引が、IFRS第15号に従って会計処理される、当社グループが他の第三者の代理人の立場で行われる取引に該当するものと判断されるため、売上収益を純額表示しています。この影響により、IFRSの売上収益は日本基準に比べ約40,923百万円減少しています。
②営業利益
のれんは、日本基準では一定の期間に亘って規則的に償却されますが、IFRSでは償却されず、減損テストの実施が求められています。この影響により、IFRSの営業利益は日本基準に比べ約20,109百万円増加しています。