有価証券報告書-第31期(平成25年4月1日-平成26年3月31日)

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2014/06/26 12:37
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業績等の概要

(1) 業績
① 全体の業績
当社グループの業績は、3月中旬まではやや弱い状況で推移しておりましたが、3月後半から消費増税に対応した駆け込み申込みが著しく増加し、現金ベース売上高が前連結会計年度に比べて8百万円減の204億3千万円(同0.0%減)となりました。3月単月での売上高(単体)は前年同月を5億7千3百万円上回り、そのうち個人向けは約4億6千万円にのぼります。これら駆け込み申込み分は、ほとんどが翌連結会計年度の売上となるべく前受金繰入額として計上されることになり、前連結会計年度比9千5百万円減となりました。一方、前受金戻入額は、通年を通して現金ベース売上高が低調だったことから戻入れの水準が低く、同5億5千8百万円減(同8.8%減)にとどまりました。この結果、発生ベース売上高(連結損益計算書上の売上高)は205億2千6百万円(同4億7千2百万円減、同2.2%減)となりました。
コストについては、当社の主要な固定費の費目である講師料、賃借料及び人件費を中心に前連結会計年度の下期から大きくコスト削減を開始しており、当連結会計年度においても第3四半期連結累計期間までは削減額を維持したまま推移してまいりました。売上原価のうちの講師料は同5億1千9百万円減(同11.8%減)、教材の印刷費・DVDのダビング代等の外注費が同2億2千7百万円減(同9.7%減)、賃借料が同4億2千万円減(同12.6%減)とコストを抑制しております。一方、出版事業において刊行方針の変更(刊行点数・分野の絞り込み等)により在庫の処分を進めたことにより、期末在庫の減少により同3億9千6百万円負担が増加しております。また、廃棄率の上昇により返品廃棄損失引当金繰入額も同5千6百万円増加しております。これらの結果、売上原価は124億6千6百万円(同7億8千5百万円減、同5.9%減)となりました。
また、販売費及び一般管理費は、70億6千5百万円(同5億3千万円減、同7.0%減)となり、人件費が同5.4%減、広告宣伝費が同5.9%減、賃借料が同7.0%減等であります。以上の結果、当連結会計年度の営業利益は10億3千4百万円(同8億9千7百万円増、同7.5倍)となりました。
営業外損益については、円安傾向が継続しているため保有している投資有価証券の利息が計上されるとともに、J-REITの売却により投資有価証券運用益を2億9千万円計上したほか、支払利息2千7百万円、持分法による投資損失9百万円及び為替差損8百万円等を計上したこと等により、経常利益は同3.4倍の12億9千9百万円となりました。特別損失として固定資産除売却損5百万円、スクールの賃借面積一部減床を決めたことから減損損失4百万円を計上したほか、前連結会計年度に計上していた移転補償金がないため、当期純利益は8億1千6百万円(同16.5%減)となりました。
② 各セグメントの業績
当連結会計年度における当社グループの各セグメントの業績(現金ベース売上高)及び概況は、次のとおりであります。なお、当社ではセグメント情報に関して「セグメント情報等の開示に関する会計基準」等の適用によりマネジメント・アプローチを採用し、下記の数表における売上高を、当社グループの経営意思決定に即した”現金ベース”(前受金調整前)売上高で表示しております。
現金ベース売上高は、連結損益計算書の売上高とは異なりますので、ご注意ください。詳細につきましては、注記事項「セグメント情報等」をご覧ください。
各セグメントの
現金ベース売上高
当連結会計年度
(自 平成25年4月1日 至 平成26年3月31日)
金額(千円)前年同期比(%)構成比(%)
個人教育事業13,548,28498.366.3
法人研修事業4,258,085104.720.8
出版事業2,238,292100.911.0
人材事業430,515102.02.1
全社又は消去△44,62499.0△0.2
合計20,430,553100.0100.0

(注) 1.上記金額には消費税等は含まれておりません。
2.各セグメントの売上高にはセグメント間の内部売上高を含めて記載しております。
(個人教育事業)
個人教育事業は、税理士講座や法律分野の各講座の不振、中小企業診断士講座・社会保険労務士講座の下振れ等に見舞われながらも、公務員講座(国家一般職・地方上級コース及び国家総合職・外務専門職コース)が牽引する形で推移してまいりました。消費増税を前に、3月中旬以降、駆け込み申込みが顕在化しましたが、現金ベース売上高は135億4千8百万円(同1.7%減)にとどまりました。
これに対して、講師料、教材制作のための外注費、賃借料等の営業費用は131億2千7百万円(同10.2%減)と大幅にコスト削減を実行しており、現金ベースの営業利益は4億2千1百万円(前年同期は8億4千8百万円の営業損失)と黒字転換いたしました。なお、発生ベースの営業利益も5億3千6百万円(同3億5千7百万円の営業損失)と黒字転換しております。
(法人研修事業)
企業研修は、アベノミクスによる景気回復を追い風に、前年同期比5.2%増と堅調に増加しました。財務・会計系研修は同横ばいでしたが、経営・税務分野が同46.4%増、金融・不動産分野の研修が大きく伸び、宅建同3.5%増、証券アナリスト同9.5%増、ビジネススクール同6.4%増となりました。一方、FP研修は同3.8%減となりました。情報処理研修も同3.8%増と好調を維持し、CompTIA研修が好調で同11.7%増となりました。
また、専門学校に対するコンテンツ提供は、宅建・公務員・情報処理が好調で同18.7%増、公務員講座が好調な大学内セミナーが同6.5%増となりました。一方、地方の専門学校ベースの提携校事業は同6.7%減と振るわず、自治体等の委託訓練が同9.5%減、税務申告ソフト「魔法陣」事業は同9.9%減となりました。これらの結果、法人研修事業の現金ベース売上高は42億5千8百万円(同4.7%増)、現金ベースの営業利益は12億3千2百万円(同17.7%増)となりました。前受金調整後の発生ベースの営業利益は12億1千3百万円(同8.7%増)であります。
(出版事業)
当社グループの出版事業は、当社が展開する「TAC出版」ブランド及び子会社の(株)早稲田経営出版が展開する「Wセミナー」ブランド(以下、「W出版」という。)の2本立てで進めております。当連結会計年度においてはTAC出版は452点(前年同期は522点)、W出版は160点(同169点)刊行し、刊行点数を絞り込みましたが、書店向けの提案営業、直販サイト「サイバーブックストア」の盛り上げ、アマゾンでの販売強化など、営業強化に注力した結果、売上高は22億3千8百万円(同0.9%増)と増収を維持することができました。これは定評のある簿記の教科書のほか、FP分野においても定番の教科書が人気になったほか、行政書士関係の書籍も貢献いたしました。一方、刊行点数や分野の絞り込みの一環で在庫の処分も進めたため、2億3千万円の廃棄損を含め、棚卸高の期首・期末差額で3億9千6百万円売上原価が増加しております。これにより、営業利益は2億5千9百万円(同40.6%減)となりました。
(人材事業)
子会社の(株)TACプロフェッションバンク(以下、「TPB」という。)が手掛ける人材事業は、当連結会計年度の各四半期ごとに引き続き好調を維持しています。会計業界向けの夏の就職説明会には大手4大監査法人がすべて出展を決める等、会計士市場は需要が活発化しております。また、冬の税理士合格者中心の就職説明会も過去最高水準の出展社数を集め、活況でありました。同時にコスト削減も継続して進めており、利益体質に転換しております。以上の結果、売上高は4億3千万円(同2.0%増)、営業利益は9千7百万円(同56.7%増)となりました。
③ 事業分野別の業績
当社グループの事業分野別の業績及び概況は、次のとおりであります。
事業分野内容当連結会計年度
(自 平成25年4月1日
至 平成26年3月31日)
金額
(千円)
前年同期比(%)構成比
(%)
①財務・会計分野公認会計士講座、簿記検定講座、建設業経理士講座、ビジネス会計検定講座3,404,70987.016.6
②経営・税務分野税理士講座、中小企業診断士講座、IPO実務検定講座、財務報告実務検定講座4,546,20494.722.1
③金融・不動産分野建築士講座、不動産鑑定士講座、宅建主任者講座、マンション管理士/管理業務主任者講座、FP(ファイナンシャル・プランナー)講座、証券アナリスト講座、DCプランナー講座、貸金業務主任者講座、ビジネススクール2,622,455106.612.8
④法律分野司法試験講座、司法書士講座、弁理士講座、行政書士講座、ビジネス実務法務検定講座、通関士講座、知的財産管理技能検定講座、法律関連講座2,026,06089.19.9
⑤公務員・労務分野公務員講座(国家総合職・一般職、地方上級、外務専門職、警察官・消防官、理系技術職)、マスコミ・就職対策講座、社会保険労務士講座5,352,297107.626.1
⑥情報・国際分野情報処理講座(ITパスポート、情報セキュリティスペシャリスト等)米国公認会計士講座、米国管理会計士・米国税理士講座、CompTIA講座、IT関連講座、CIA(公認内部監査人)講座、個人情報保護士・企業情報管理士講座、BATIC(国際会計検定)講座、TOEIC講座1,460,304101.07.1
⑦その他人材事業(人材派遣・人材紹介)、税務申告ソフト「魔法陣」、受付雑収入他1,114,84798.65.4
合計20,526,88097.8100.0

(注) 1.上記金額には消費税等は含まれておりません。
2.主要な相手先別の販売実績等については、当該割合が10%以下のため記載を省略しております。
(財務・会計分野)
公認会計士試験については、新規株式公開の活況を背景に大手4大監査法人は昨年から積極採用姿勢に転じております。本試験合格者はほぼ全員が採用されており、未就職者の問題は完全に終息したといえます。同時に、合格率は8.9%(同7.5%)と、わずかながら上昇に転じており、公認会計士試験の受験環境は良好になってきております。
一方で、当社の公認会計士講座は、新規学習者向けの入門コースは前年を上回り始めておりますが、再受験者向けの上級コースは受験生が減少しきっているため、十分な受講申込みを確保できず低調に推移しております。こうしたことから、当連結会計年度の公認会計士講座の現金ベース売上高は前年同期比12.9%減となりました。
簿記検定講座は、2級本試験が難化しており、その後の1級への進級や税理士講座へのステップアップが減少する等の影響が生じましたが、3級及び2級に関して新規顧客獲得のためのキャンペーンを積極的に実施したことにより、受講申込みが増加し始めております。しかしながら当連結会計年度前半の不振が響き、現金ベース売上高は同4.5%減となりました。以上の結果、当分野の売上高(発生ベース)は同13.0%減となりました。
(経営・税務分野)
平成25年の税理士試験の受験申込者数は55,332名(前年比5.3%減)と漸減傾向が続くとともに、最終合格者数も905名(同1,104名)と同18.0%減少しております。このような受験環境下、講座申込みも夏の本試験後及び冬の合格発表後ともに減少が続き、税理士講座の現金ベース売上高は同7.1%減となりました。
中小企業診断士講座は前連結会計年度における大量合格の影響により再受験者が減少しており、現金ベース売上高は同3.4%減となりました。以上の結果、当分野の売上高(発生ベース)は同5.3%減となりました。
(金融・不動産分野)
景気回復及び金融緩和により不動産市場が活発化つつあるといわれますが、不動産鑑定士の受験市場にはまだ波及しておらず、現金ベース売上高は同10.6%減と縮小が続いております。一方、宅建主任者講座及びマンション管理士講座は、前連結会計年度から引き続き好調であり、それぞれ同9.0%増、同12.0%増となりました。FP講座はリニューアルした出版物が好評でよく売れるとともに、市販書籍から講座申込みが促進される好循環につながった結果、同17.6%増と大幅に売上を伸ばしました。証券アナリスト講座は、NISA(少額投資非課税制度)対応でコールセンター要員に証券外務員試験を受験させる動きが活発で同13.5%増、ビジネススクール講座は企業研修が堅調に推移し同5.9%増となりました。このほか、企業研修向けのヒューマンスキル講座や建築士講座も順調に立ち上がっており、以上の結果、当分野の売上高(発生ベース)は同6.6%増となりました。
(法律分野)
司法試験講座は、予備試験受験者数が約12,600人を超えるなど、法科大学院よりも人気が出てきており、事業環境に明るい兆しも見えてきております。当社の「4A基礎講座」も初心者を中心に好評でしたが、全体的に司法試験講座の規模縮小の影響を受け、当連結会計年度の現金ベース売上高は同5.5%減となりました。司法書士講座は、前期に出版部門が好調だった反動及び新規の個人申込みが低調に推移し同6.6%減となりました。弁理士講座は、本試験合格者数が大幅に絞られ難易度が上がり、新規・再受験者向けともに敬遠され同12.3%減となりました。行政書士講座も低調で同9.4%減となりました。以上の結果、当分野の売上高(発生ベース)は同10.9%減となりました。
(公務員・労務分野)
社会保険労務士講座は、景気回復期には受験者数が減少する傾向があることに加え、本試験受験者数が前年比4.7%減、合格者数が同27.0%減、合格率5.4%(前年7.0%)と、非常に厳しい受験環境に変わったことにより、合格発表後の受講申込みが極端に落ち、当連結会計年度の現金ベース売上高は同7.3%減となりました。
公務員講座は、国家総合職・外務専門職コースが同13.1%増と人気が回復し始めるとともに、国家一般職・地方上級コースが、景気回復により民間企業の就職状況が改善しているにも関わらず、同17.6%増と著しく成長しております。国家一般職・地方上級コースは、前年に引き続き単独で当社講座のうちNo.1の売上を誇る位置付けとなっております。また、新規開講の教員試験対策講座で売上が立ち始めております。以上の結果、当分野の売上高(発生ベース)は同7.6%増となりました。
(情報・国際分野)
情報処理講座及びCompTIA講座はともに企業研修中心の講座ですが、情報処理講座は前年を若干上回る形で横ばいとなったのに対し、CompTIA講座は同11.1%増と好調でした。米国公認会計士講座は、TOEICコースやBATICコースも健闘したものの若干及ばず、同1.0%減となりました。以上の結果、当分野の売上高(発生ベース)は同1.0%増となりました。
(その他)
TPBが行う人材ビジネスについては、夏に開催する会計業界向け就職説明会関連の売上高が好調だったこと及び景気回復につれて他の人材派遣・人材紹介関係の売上高も伸びてきた結果、人材事業売上が同2.0%増となりました。税務申告ソフト「魔法陣」の売上高は同9.9%減と低迷しました。その他、各拠点での受講申込みが低調なため、受付雑収入が同14.5%減となりました。以上の結果、当分野の売上高は同1.4%減となりました。
(2) キャッシュ・フロー
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前年同期比23億7千7百万円増加し、62億1千6百万円となりました。また、当連結会計年度におけるフリー・キャッシュ・フローは12億2千3百万円(前連結会計年度比4億9千万円増加)となりました。
(注) フリー・キャッシュ・フローは、以下の計算式を使っております。
フリー・キャッシュ・フロー=当期純利益+減価償却費(のれん償却費含む)-設備投資額-運転資本増加額-配当金の支払額
なお、運転資本は、売掛金+受取手形+たな卸資産-買掛金-支払手形で算出しております。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動におけるキャッシュ・フローは、同19億7千1百万円減少し、13億2千9百万円の収入となりました。増減要因の主なものは、前連結会計年度に計上していた新宿校の移転補償金が同17億5千万円の減少、受講料保全信託受益権の増減額が同23億4千2百万円の減少、売上債権の増減額が同2億1千9百万円の減少、滞留在庫の廃棄により棚卸資産の増減額が同4億5百万円の減少、前受金の増減額が同4億7千7百万円の減少等であります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動におけるキャッシュ・フローは、同12億4千4百万円減少し、1億4千9百万円の収入となりました。増減要因の主なものは、投資有価証券の売却及び償還による収入が同2億9千1百万円の増加、差入保証金の差入による支出及び同回収による収入の正味で同17億7千3百万円の減少等であります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動におけるキャッシュ・フローは、同35億3千5百万円増加し、8億9千8百万円の収入となりました。増減要因の主なものは、短期借入金の借入れによる収入が同7億8千5百万円の増加、長期借入金の借入れによる収入が同26億円の増加、(株)増進会出版社との資本・業務提携に伴い自己株式の処分による収入が9千6百万円の増加等であります。