有価証券報告書-第35期(平成26年4月1日-平成27年3月31日)

【提出】
2015/06/24 16:37
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【項目】
83項目

事業内容

(1)報告セグメント別の事業内容
当社は、オフィスや各種施設に関わるCM(コンストラクション・マネジメント)手法のプロジェクト・マネジメント事業を展開しており、そのサービスの内容から、「オフィス事業」、「CM事業」及び「CREM事業」の3つに区分しております。なお、セグメントと同一の区分であります。
①オフィス事業
オフィスの移転・新設・改修のプロジェクト・マネジメント、ICT・データセンターの構築、ワークスタイルの変革、維持費削減を狙ったスペースの削減等、オフィスづくりと運用に関するあらゆる業務をサポートしております。また、オフィス移転等のコストは独自の設計&CM(コンストラクション・マネジメント)手法による見積査定・入札・交渉を通して、コストミニマムを実現しております。
②CM事業
ビルや学校、工場、医療施設、鉄道駅施設、商業施設、その他各種施設の建設・運用に関する業務をCM手法でサポートしております。また、オフィス事業同様、コストミニマムを実現しており、プロが顧客側につくことによる迅速な意思決定と工期短縮、発注プロセスの可視化による透明性の向上等、顧客本位のサービスを提供しております。
③CREM事業
企業の保有資産の最適化をサポートするCREM(コーポレート・リアル・エステート・マネジメント)として、固定資産の管理・運用業務、多拠点統廃合業務をアウトソーサーとして最適化するサービス等を提供しております。管財業務やファシリティマネジメントといった従来自社で行っていた業務をまるごと代行するサービスや、中長期計画を策定支援するサービスも行っております。
(2)サービス形態別の事業内容
当社は、これからの企業にとって欠かすことができない「生産性の高いオフィスづくり」や「ビルの新築・バリューアップ改修・用途変更」等の、ファシリティ(※1)に関する設計&プロジェクトマネジメントサービス(以下、「設計&PMサービス」という。)を提供しております。
具体的には、次のように顧客(発注者。以下同じ。)のプロジェクトの実現を支援するサービスであります。
①ファシリティマネジメント(FM)の考え方に基づいて、コンサルタントが顧客の経営課題や要望に応じたファシリティの調査・分析・提言等プロジェクトプログラミングを行う(以下、「基本計画の提言」という。)。
②インハウスのデザイナー、建築士、電気・空調・IT・AV・防災等の技術陣が、コスト・工期・品質の最適化を図るために必要な情報を顧客と共有しつつ、基本設計、実施設計、仕様書及び工程表等を作成し監理する。
③施工者や資材・設備等の最良な調達方法の選定や、発注先・価格決定の支援をして、発注段階及び施工段階のプロセス(※2)をオープンな環境の中でトータルにマネジメントする。
上記①、②については、顧客の経営戦略及び業務プロセスを検討し、更に特有の企業風土や制度まで加味してコンサルティングやプランニングも行っております。すなわち、当社では、顧客の経営課題や要望に応じたファシリティの基本計画を提言したうえで、品質を優先しながら、コストやスピードにおいても全体最適を図って設計することに主眼を置いております。
上記③については、顧客の補助者・代行者たる専門家として、透明度の高い競争環境のもとで施工者や資材・設備等の仕入先の選定を支援し、それら実際の調達価格を顧客に開示するコンストラクションマネジメント方式(以下、「CM方式」(※3)という。)を平成6年から開始しました。当社では、これを「設計&PM/CMサービス」と呼んでおり、CM方式によらない総合工事業者等が主として行う「設計&請負サービス」と区別しております。
このほかに、カスタマーセンターサービスとして、既存の顧客からの注文に応じて什器備品等の補給やレイアウトの変更などファシリティの維持保全業務も提供しております。
<設計&プロジェクトマネジメントサービスの範囲図>
(※1)ファシリティ/ファシリティマネジメント(FM)
ファシリティとは、企業・団体等がその事業活動のために使用する全施設及び利用する人の環境を包含する概念であり、ヒト、モノ、カネ、情報に次ぐ第5の経営資源と位置付けられる。ファシリティを経営的視点から総合的・戦略的に企画・管理・活用するための経営管理活動がファシリティマネジメント(FM)であり、その目的にはコストミニマム(設備投資、施設運営費の最小化)、エフェクトマキシマム(経営効率や知的生産性など効用の最大化)、フレキシビリティ(将来の発展性や状況変化への柔軟性)、社会及び環境との調和(地域社会や環境保全への配慮)などがある。
(※2)発注段階及び施工段階のプロセス
発注段階では、発注区分・発注方式の決定、入札仕様書の作成、入札参加者の募集、競争入札の実施、施工者や設備・資材等の仕入先の選定、施工者や仕入先が提示する見積書の査定及び価格交渉などのプロセスがある。施工段階では、施工者間の調整、工程管理、施工者が作成する施工図書のチェック、施工者が行う品質管理のチェック、設備・資材等の納品確認、追加変更のチェック、請求書の整理・管理などのプロセスがある。
(※3)CM方式
1960年代に米国で普及しはじめた建設生産・管理システムであり、各分野の専門家集団であるコンストラクションマネージャー(CMR)が技術的な中立性を保ちつつ発注者の側に立って、設計・発注・施工の各段階において、設計の検討や工事発注方式の検討、工程管理、品質管理、コスト管理などの各種のマネジメント業務の全部または一部を行うものと位置付けられている。
(3)サービス形態別の契約関係
当社が提供する設計&PMサービスには、CM方式による「設計&PM/CMサービス」とCM方式によらない「設計&請負サービス」があり、前者にはピュアCM方式とアットリスクCM方式があります。
①設計&PM/CMサービス(ピュアCM方式)
CM方式による設計&PMサービスであって、顧客が施工者と工事請負契約を締結し、当社は顧客と設計・CM業務委託契約を締結してマネジメントフィーのみを売上計上する形態であります。マネジメントフィーについては、原則として事前に顧客との間で業務内容毎にマンアワー(※4)ベースで計算した固定フィーが取り決められます。なお、コスト・工期・品質などが予想を超えて達成されたとき、当社に対する業務のインセンティブとして「ボーナスの支払い」を契約上定めておく場合もあります。
ピュアCM方式の契約関係は図1のとおりであります。
(図1)

(※4)マンアワー
サービス提供のために要した時間に、サービスを提供した社員の管理会計上の時間単価を乗じたアクティビティコストである。当社では毎日の全従業員の全アクティビティコストを定量化することで、プロジェクト毎の採算を的確に把握するマンアワーコスト管理システムを導入している。
②設計&PM/CMサービス(アットリスクCM方式)
上記と同じCM方式による設計&PMサービスで、当社が施工者と直接工事請負契約を締結することで、施工に関するリスク(工期の維持、品質の確保、工事費予算の遵守、労働安全等)や法律上負担が義務付けられている責任(建設業法に基づく元請責任、労働安全衛生法に基づく統括安全衛生責任者の設置、廃棄物処理法に基づく排出事業者責任、民法に基づく瑕疵担保責任等)など工事完成に関するリスクをも負担する形態であります。当社の下請となる施工者との請負金額や資材・設備等の調達価格は顧客に開示され、コスト構成の透明性はピュアCM方式と何ら変わりありません。マネジメントフィーについては、ピュアCM方式と同様に業務内容毎にマンアワーベースで計算した固定フィー及びインセンティブ契約がある場合のボーナスに加え、工事請負金額に対する定率フィーが取り決められます。
なお、アットリスクCM方式では、当社は顧客との間でマネジメントフィーが確定した一括工事請負契約を締結し、完成工事高を売上高として計上しておりますが、設計・CM業務に対するマネジメントフィーが収益の源泉となっていることから実質的にはピュアCM方式と同じくフィービジネスであると当社では考えております。
アットリスクCM方式の契約関係は図2のとおりであります。
(図2)

③設計&請負サービス
総合工事業者(ゼネコン)と同様に建設工事の元請負人として、当社が顧客との間で設計施工請負契約を締結し、完成工事高を売上計上する形態であります。請負金額は顧客に提示した見積書に基づいて総額にて取り決められ、当社の下請となる施工者や資材・設備等の仕入先に支払う外注費及び材料費のコスト構成を開示しないで工事完成に関するリスクを負担しつつ、適正利益の確保を図ることからこのサービス部分はフィービジネスではないと当社では考えております。
設計&請負サービスの契約関係は図3のとおりであります。
(図3)

このように設計&PMサービスの2つの形態では、事業のコンセプト、顧客や施工者との契約関係、建設業法の規制、リスク及び収益の源泉、売上計上ならびに収益構造などが大きく異なっております。
当社では、CM方式のメリットを顧客にアピールすることで総合工事業者(ゼネコン)との差別化を図りつつ、顧客開拓や受注拡大に取り組んでおります。近年、発注者の意識変化を背景に、施工者の選定プロセス及びコスト構成の透明性が確保されるとともに、説明責任に資する「建設生産・管理システム」の一つとしてCM方式に対する関心が高まっており、CMの業務内容、顧客の補助者・代行者たる専門家としてCM業務に従事するコンストラクションマネージャー(以下、「CMR」という。)の役割及び立場、CMRと施工者との関係、マネジメントフィーなどに対する理解も得られるようになってきました。
④CRE・FMサポートサービス
建物とオフィスの両面を理解し、設計からCMまでをワン・ストップで行うことができる当社ならではのサービスで、企業が保有する不動産(CRE)の戦略的マネジメントサポートを行っております。ノンコア業務のアウトソーシングニーズ、コスト削減意識が高まる中、全国に分散している多拠点の統廃合プロジェクト支援や、自社で行っている管財管理の代行業務も行うサービスであります。
⑤カスタマーセンターサービス
前述の各サービス後の什器備品等の補給やレイアウト変更などの対応をカスタマーセンターと呼ぶ専門のチームが対応するサービスで、リピート受注と顧客との関係強化を目指しております。その契約関係は、設計&PMサービス実行時の形態に準じるケースが主です。プロジェクト実行時の基本計画に基づいて維持保全業務も行うという、ファシリティマネジメント本来の考え方に基づくサービスであります。
当社では、すべてのサービスにおいて、より効率的に業務を行うために、情報通信システムを活用した独自の情報共有の仕組みを用いております。
CM方式(ピュアCM方式、アットリスクCM方式)では、情報共有システムとしてビジネスプロセスコラボレーションシステム(※5)を顧客との間に導入し、設計図書の作成・発注・施工の各プロセスの情報をウェブ上で開示・共有化することで顧客の信頼確保に努め、また意思決定を支援するとともに、当社の業務効率の向上に活用しております。
(※5)ビジネスプロセスコラボレーションシステム(BPC)
ブロードバンドの普及に伴い大容量の通信が安価に可能となったことにより、顧客及び施工者等の関係者で行う一連の作業を閲覧するだけでなく、ウェブ上で共同作業できるBPCを構築。その共同作業に加え、全国地図上にプロジェクト情報をリンクさせ、プロジェクト情報を可視化した結果、関係者は該当地区の旗をクリックするだけで、その時点の詳細なプロジェクトの情報が表示・確認でき、複数の拠点及びプロジェクトが同時に進行するようなケース等で利用している。