訂正有価証券報告書-第38期(平成29年4月1日-平成30年3月31日)

【提出】
2018/10/16 13:31
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81項目

事業内容

(1)事業の特徴
<報告セグメント別の事業内容と特徴>当社は、オフィスや各種施設に関わるCM(コンストラクション・マネジメント)手法を用いた発注者支援事業を展開しており、そのサービスの内容等から、「オフィス事業」、「CM事業」及び「CREM事業」の3つに区分しております。
なお、事業区分はセグメント区分と同一であります。
①オフィス事業
オフィスの移転・新設・改修のプロジェクト・マネジメント、ICT・データセンターの構築、働き方改革、維持費削減を狙ったスペースの削減等、オフィスづくりと運用に関するあらゆる業務をサポートしております。また、オフィス移転等のコストは、当社に蓄積したコストデータベースに基づく見積査定と、CM手法による入札仕様書の作成、競争環境を構築した中での入札、その後の交渉を通して、コストミニマムを実現に努めております。
②CM事業
ビルや教育施設、生産施設、医療施設、鉄道駅施設、商業施設、その他各種施設の建設・運用に関する業務を、CM手法を用いて、基本計画の作成から、入札仕様書作成、入札実施、設計マネジメント、施工マネジメントまで、プロセスを可視化した中で、発注者のプロジェクトの成功をサポートしております。また、オフィス事業同様、コストミニマムの実現に努め、プロが発注者側につくことによる迅速な意思決定と工期短縮、発注プロセスの可視化による透明性の向上等、顧客本位のサービスを提供しております。
③CREM事業
発注者が自社保有資産の最適化を行うCREM(コーポレート・リアル・エステート・マネジメント)について、当社は発注者が行う保有資産の管理・運用業務や、発注者が保有する複数の施設の統廃合業務等について、CM会社としてその最適化業務を支援するサービス等を提供しております。発注者が行うCREMの中で、中長期修繕計画の策定支援等も行っております。
<全セグメント事業に共通するサービス内容と特徴>当社のセグメントは、対象となる施設及びCREMサービスであるかに応じて、前述のとおり3事業に区分しておりますが、当社が発注者へ提供する発注者支援事業の内容は全事業で共通しており、その内容と特徴は以下の通りであります。
①基本計画の策定
発注者の経営課題や要望に応じて、発注者の施設の調査・分析を当社が行い、施設の新築や改修、その実施方法等に基づいた複数の課題解決プランを、概算コストと想定される期間等の情報を含めて発注者へ提示し、発注者が選んだプランに基づき、当社が基本計画の策定を支援します。
②入札仕様書の作成
設計会社と施工会社を分けて入札する方法と、設計も可能な施工会社へ設計施工一括で発注することを前提とした入札方法について、当社が発注者へメリットとデメリットを説明し、発注者が入札方法を決定します。
また、単に応札コストによる比較のみではなく、応札者の実績や独自の提案等、発注者にとって魅力のある区分ごとに配点を予め定めた総合評価表を発注者とともに作成し、これに基づき比較します。
発注者が決めた入札方法に応じた入札を行うため、当社は、応札者へ配布する入札仕様書を基本計画書に基づき作成し、発注者へ提供します。
発注者にとってコストミニマムにつながる専門性の高いものであることが特徴であります。
③入札の実施
応札者が他の応札者の状況を分からないように当社が入札環境を工夫して設けることにより、競争環境における低い入札額を期待できます。また、各応札者の強みに関するアピールも受け付けるため、発注者にとって、単に金額だけではない総合評価方式による入札を行えることが特徴であります。
④発注者による発注先決定の支援
発注者が比較判断しやすい形式にて、当社が応札情報を資料にまとめます。
発注者は当社がまとめた比較資料を用いて、専門用語等に関する情報や、応札者の実績等の情報を当社から入手した上で、自ら発注先を選定することが出来ます。
当社は発注者に対して、発注先を推奨することはなく、発注者の意思決定を支援する役割であることが特徴であります。
⑤設計マネジメント
発注者によって選ばれた設計会社が、発注者の意思に沿う設計を行っているか、設計の品質を維持するための社内レビュー等のプロセスを行っているか等を当社が定期的に確認し、発注者へ報告致します。
当社は善管注意義務を負う中で高度な専門性に基づき設計会社をマネジメントし、設計責任は設計会社が負うことが特徴であります。
⑥施工マネジメント
発注者によって選ばれた施工会社が、発注者の意思に沿う施工を行っているか、施工の品質を維持するための各種プロセスを行っているか等を当社が定期的に確認し、発注者へ報告致します。施工後、発注者の意思により、工事内容が追加変更されることも多く、コストの変更履歴を当社が整理して発注者へ報告致します。
当社は、多くのコスト管理実績から、報告内容について発注者から高い評価を得ていることが特徴であります。
※オフィス事業では、原則としてオフィスの設計を当社が実施しますが、CM事業、CREM事業では原則と して当社は設計いたしません。
<設計&PM/CMサービスの範囲図>

なお、CM方式によらない設計&請負サービスも年間で稀(年間の売上総利益の1.3%程度)にあります。
また、既存顧客からの机の追加等の要望に対応するカスタマーセンターサービスも一部(年間の売上総利益の0.1%程度)実施しております。
その関係は次表の通りであります。
CM方式の有無サービス内容契約形態サービス名売上高内訳平成30年3月期売上総利益
構成比(%)
CM方式による設計&PM/CMサービス準委任契約ピュアCM方式マネジメントサービス料収入94.3
請負契約アットリスクCM方式完成工事高4.3
カスタマーセンターサービス売買契約カスタマーセンターサービスその他売上高0.1
CM方式によらない設計&請負サービス請負契約設計請負完成工事高1.3

(※1)CM方式
1960年代に米国で普及しはじめた建設生産・管理システムであり、各分野の専門家集団であるコンストラクションマネージャー(CMR)が技術的な中立性を保ちつつ発注者の側に立って、設計・発注・施工の各段階において、設計の検討や工事発注方式の検討、工程管理、品質管理、コスト管理などの各種のマネジメント業務の全部または一部を行うものと位置付けられています。
(2)サービス提供に関する契約形態の特徴
当社サービスを発注者が利用する上で、発注者がプロジェクト毎に契約形態を選択することが出来ます。
そのサービス形態別の契約関係は次の通りであります。
当社が提供する「設計&PMサービス」の多くは、CM方式による「設計&PM/CMサービス」であり、ピュアCM方式とアットリスクCM方式があります。
①設計&PM/CMサービス(ピュアCM方式)
CM方式による「設計&PMサービス」であって、顧客が施工者と工事請負契約を締結し、当社は顧客とCM業務委託契約を締結してマネジメントフィーのみを売上計上する形態であります。マネジメントフィーについては、原則として事前に顧客との間で業務内容毎にマンアワー(※2)ベースで計算した固定フィーが取り決められます。なお、工期・品質・コストなどが発注者の期待を超えて達成されたとき、当社に対する業務のインセンティブとして「ボーナスの支払い」を契約上定めておく場合もあります。
(※2)マンアワー
サービス提供のために要した時間に、サービスを提供した社員の管理会計上の時間単価を乗じたアクティビティコストです。当社では毎日の全従業員の全アクティビティコストを定量化することで、プロジェクト毎の採算を的確に把握するマンアワーコスト管理システムを導入しています。
ピュアCM方式の契約関係は図1のとおりであります。
(図1)

②設計&PM/CMサービス(アットリスクCM方式)
上記と同じCM方式による「設計&PMサービス」で、当社が施工者と直接工事請負契約を締結することで、施工に関するリスク(工期の維持、品質の確保、工事費予算の遵守、労働安全等)や法律上負担が義務付けられている責任(建設業法に基づく元請責任、労働安全衛生法に基づく統括安全衛生責任者の設置、廃棄物処理法に基づく排出事業者責任、民法に基づく瑕疵担保責任等)など工事完成に関するリスクをも負担する形態であります。当社の下請となる施工者との請負金額や資材・設備等の調達価格は顧客に開示され、コスト構成の透明性はピュアCM方式と何ら変わりありません。マネジメントフィーについては、ピュアCM方式と同様に業務内容毎にマンアワーベースで計算した固定フィー及びインセンティブ契約がある場合のボーナスに加え、工事請負金額に対する定率フィーが取り決められます。
なお、アットリスクCM方式では、当社は顧客との間でマネジメントフィーが確定した一括工事請負契約を締結し、完成工事高を売上高として計上しておりますが、設計・CM業務に対するマネジメントフィーが収益の源泉となっていることから実質的にはピュアCM方式と同じくフィービジネスであると当社では考えております。
アットリスクCM方式の契約関係は図2のとおりであります。
(図2)

③設計&請負サービス
稀(売上総利益で全体の1.3%程度)に、顧客の要望に基づき、CM方式によらない「設計&請負サービス」を提供します。総合工事業者(ゼネコン)と同様に、当社が建設工事の元請負人として顧客との間で設計施工請負契約を締結し、完成工事高を売上計上する形態であります。請負金額は顧客に提示した見積書に基づいて総額にて取り決められ、当社の下請となる施工者や資材・設備等の仕入先に支払う外注費及び材料費のコスト構成を開示しないで工事完成に関するリスクを負担しつつ、適正利益の確保を図ることからこのサービス部分はフィービジネスではないと当社では考えております。
設計&請負サービスの契約関係は図3のとおりであります。
(図3)

当社では、CM方式のメリットを顧客にアピールすることで総合工事業者(ゼネコン)との差別化を図りつつ、顧客開拓や受注拡大に取り組んでおり、近年、発注者の意識変化を背景に、施工者の選定プロセス及びコスト構成の透明性が確保されるとともに、説明責任に資する「建設生産・管理システム」の一つとしてCM方式に対する関心が高まっており、CMの業務内容、顧客の補助者・代行者たる専門家としてCM業務に従事するコンストラクションマネージャー(以下、「CMR」という。)の役割及び立場、CMRと施工者との関係、マネジメントフィーなどに対する理解も高まり、その結果として、ほぼCM手法による事業になっております。
④カスタマーセンターサービス
前述の各サービス後の什器備品等の補給やレイアウト変更などの対応をカスタマーセンターと呼ぶ専門のチームが対応するサービスで、リピート受注と顧客との関係強化を目指しております。その契約関係は、設計&PMサービス実行時の形態に準じるケースが主です。プロジェクト実行時の基本計画に基づいて維持保全業務も行うという、ファシリティマネジメント本来の考え方に基づくサービスであります。
当社では、すべてのサービスにおいて、より効率的に業務を行うために、情報通信システムを活用した独自の情報共有の仕組みを用いております。
CM方式(ピュアCM方式、アットリスクCM方式)では、情報共有システムとしてビジネスプロセスコラボレーションシステム(※3)を顧客との間に導入し、設計図書の作成・発注・施工の各プロセスの情報をクラウド上で開示・共有化することで顧客の信頼確保に努め、また意思決定を支援するとともに、当社の業務効率の向上に活用しております。
(※3)ビジネスプロセスコラボレーションシステム(BPC)
顧客及び施工者等の関係者で行う一連の作業をクラウド上で共働作業できるBPCを構築。その共同作業に加え、全国地図上にプロジェクト情報をリンクさせ、プロジェクト情報を可視化した結果、関係者は該当地区の旗をクリックするだけで、その時点の詳細なプロジェクトの情報が表示・確認でき、複数の拠点及びプロジェクトが同時に進行するようなケース等で利用しています。