有価証券報告書-第25期(令和2年7月1日-令和3年6月30日)

【提出】
2021/09/28 14:08
【資料】
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【項目】
136項目

対処すべき課題

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
(1)会社の経営の基本方針
当社グループは、「エネルギーの黒子であろう」という企業理念のもとで、「人のための省エネ、人々のための再エネ」をベースコンセプトに、効率的なエネルギー利用と自然由来のエネルギー供給を通じて現代の課題に取り組んでおります。
省エネルギーの推進と国産再生可能エネルギーの利用により、温暖化ガスの発生量の低減、一次エネルギー純輸入量の削減、人間とそれ以外の自然環境との両立を継続することを目指してまいります。当社グループの推進する木質バイオマス発電は、森林資源や林業の活用、協力が不可欠であり、バイオマス利用の積極化を推進することで資源の有効利用、地域経済の活性化に取組んでおります。
(2)経営戦略等
当社グループでは、国内産の木質チップを燃料として二酸化炭素の排出量の極めて少ない木質バイオマス発電による再生可能エネルギー電気の製造販売を主軸とした事業展開をしております。再生可能エネルギーは循環して繰返し再生産が可能なエネルギーであることから、発電所の立地する地域経済の活性化や山林保全に寄与するとともに、持続可能な循環型の社会の構築に貢献するものと考えております。
当社グループの木質バイオマス発電所は、現行、FIT制度に基づく電力販売を実施しておりますが、本制度は新設発電所で送電開始から20年間の販売方式を担保するもので、当該期間の安定的な燃料確保を進めることが重要な施策であると認識しています。我が国の国土は約70%が山林であると言われておりますが、一方でその山林、立木所有者がご高齢の域にあり、また、地域によっては伐採する事業に携わる方たちも同様に次世代の後継に苦慮していること、そのことから林産事業に携わる方々の経験、ノウハウ等が次世代に継承されず断絶の恐れのあること等が問題となっております。山林経営は、その運営上、かなりの長期間にわたり事業の継続、持続が必要であり、木材素材の販売に加え間伐材や低品位木材を燃料として活用できる点では当社グループの事業との関連性は極めて優位なものであると考えております。このため、当社グループでは山林経営に着手し山林事業の収益性の確保を機械化を中心に効率的に実現させてまいります。
また、発電所のFIT制度の適用期限後について、制度外での環境負荷の少ないクリーンな電気を直接顧客へと供給する方法として、電力小売事業を展開し本来の再生可能エネルギー電気の活用を促進、拡大していくことが必要と考えております。
こうした中、当社グループでは以下の活動を通じて、さらなる事業の発展と社会貢献を果たしていくことを中長期の経営戦略としています。
「省エネルギー支援サービス事業」においては単なる機器の更新だけではなく、生産・業務システムとしてのエネルギー効率改善を支援してまいります。行政の求める省エネ基準を満たし助成制度を利活用することにより、国全体のエネルギーの節約に貢献するとともに顧客にとっては初期投資額の抑制を実現する提案をサービスの要点として展開してまいります。
「グリーンエナジー事業」においては、山林経営を含め木質バイオマス関連分野への投資を拡大してまいります。次世代の担い手である若い人たちに林業という産業の魅力と意義を継承し、発電事業はもとより山林事業の収益性の確保を実現することで長期の事業基盤を整備してまいります。
「電力小売事業」においては、当社グループ発電所で発電した再生可能エネルギー電気を環境価値とともに顧客へ供給する活動を通じて、持続可能なエネルギーの利用を促進してまいります。
当社グループは、環境に優しく国産の持続可能な資源によるエネルギー創出に資するべく、既存設備については発電所のさらなるオペレーティング技術の向上、適切な設備保守、最適燃料使用比率の追及をテーマに人材育成や地元の林業、木材関係者らとの協力体制の整備、強化を図ってまいります。新たな発電所の開発については、開発案件の立地調査、燃料調達ネットワークの構築等に精力的に取組み、継続的な開発着手を遂行してまいります。二酸化炭素フリーで安定的な電力の供給と地元関連産業の活性化を推進していくことが社会貢献につながり企業価値の向上に資するものと考えております
(3)経営環境
2020年10月に表明された「2050年カーボンニュートラル」の実現に向け、各行政機関が具体的な取組みに関する方針の策定に着手し、民間では再生可能エネルギー電気の利用に関心が集まりつつあります。顧客企業が自らの事業の使用電力を100%再生可能エネルギー電気で賄うことを目指す国際的なイニシアティブを獲得する企業が増える等、様々な分野で関心の広がりを見せております。
このような環境の変化に対応するべく、当社グループでは、グループの木質バイオマス発電所の発電した電力を環境付加価値を付加して顧客へ提供する取組を開始いたしました。
また、木質バイオマス発電所の使用する燃料チップは、その元となる山林経営が健全に遂行されなければなりません。日本全国の山林資源は、後継者問題や伐採施業者の高齢化問題にさらされております。当社グループでは、山林資源の効率的な運用とこれらの問題克服に少しでも寄与すべく山林事業領域の拡充を加速させてまいります。
2022年6月期における各事業セグメントの事業環境及び活動予定は、次の通りです。
(省エネルギー支援サービス事業)
省エネルギー支援サービス事業の事業環境は、既存オンサイト自家発電プロジェクトの満期終了に伴いエネルギーサービス関連の売上高は減少するものと見込んでおります。このため新規案件先として、生産設備の老朽化対応としての省エネルギーを推進した設備の導入、更新等の要望に応える建設工事を含めた売上獲得に注力してまいります。一方、グループ内の発電所建設においては、現在、建設中の新宮発電所の工事を着実に進めてまいります。
これらを背景として、次期の見通しでは外部売上高、内部売上高はともに減収、セグメント全体としての利益については一定程度の水準を維持する見込みです。
(グリーンエナジー事業)
グリーンエナジー事業では、木質チップ燃料使用量全体の低減を継続して推進しノウハウの蓄積に努めるとともに未利用木材の利用率を向上させてまいります。発電所運営については、高稼働率の維持を目標としてきめ細やかな点検、保全の実施のほか、チップ加工設備を有するエフオン豊後大野、エフオン壬生発電所、加えて稼働までにはまだ一定の期間がありますがエフオン新宮発電所地域での原木の受入量を向上させてまいります。既存発電所木質バイオマス発電所4基の運営をもとにスケールメリットを活用し、共通して利用できる部材を一定程度まとめて調達することやメンテナンス情報を共有、蓄積化することでさらなるメンテナンス技術の研鑽を推進し、かつ、コストの圧縮を実現していく方針です。さらに森林資源の積極活用を目指し自ら調達した森林や伐採権を活用し伐採施業技術の習得に注力するほか、施業技術者の確保、育成、原木販売手法の確立及び原木資源のさらなる取得を実施してまいります。
次期については、これら施策を通じて引続き安定的な木質バイオマス発電所の稼働を推進してまいります。また、当社グループの発電したFIT電力に紐づく再生可能エネルギー電気の顧客への供給を加速してまいります。
これらの活動を通じて2022年6月期の業績については、連結売上高16,000百万円、連結営業利益3,100百万円、連結経常利益2,900百万円、親会社株主に帰属する当期純利益2,000百万円を見込んでおります。
(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当連結会計年度は、新型コロナウイルスの感染拡大が再発し当社グループにおいては発電所運営に支障のないよう人の移動制限や本社機能については在宅勤務等の施策を前年に引続き実施しております。各施設での感染防止策はもとより、罹患者が発生した場合に備え各発電所を相互に扶助する緊急対応策を策定しております。これらの経験を踏まえ、感染症リスクに対応する体制の維持は、最も重要な課題であると考えます。
当社グループの主力事業であるグリーンエナジー事業では、未利用木材利用率をさらに向上させ併せて燃費の向上に努めるとともに、高稼働率維持を目標としてきめ細やかな点検、保全の実施を継続し、安定稼働を実現してまいります。また、山林事業では、新たな施業地の獲得や人員の確保、教育に注力するとともに、各発電所に付帯するチップ加工センターの生産量の向上のほか、発電所の運営に連携して原木貯蔵時の含有水分量の低減に挑戦してまいります。このため、これらを担う専門的な人員の確保、教育、リモートでの業務の実践を継続することが重要な経営課題であると考えております。
エフオン新宮で建設中の新たな木質バイオマス発電所は、同発電所の稼働に必要な事業環境の構築、整備について、最も重要な課題と認識しております。
(5)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループでは、事業分野毎の収益性だけでなく、グループ全体での収益を最大化することが重要であると認識しております。これまで蓄積した省エネルギーや木質バイオマス発電所運営に関するノウハウを活用、展開することで、さらなる業績の拡大を目指してまいります。このため、連結での売上高及び営業利益率を重要な経営指標と考えております。