有価証券報告書-第27期(令和1年10月1日-令和2年9月30日)

【提出】
2020/12/28 15:52
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【項目】
125項目

事業等のリスク

以下には、当社の事業展開上のリスク要因となる可能性があると考えられる主な事項を記載しております。また当社ではコントロールできない外部要因や必ずしも重要なリスクとは考えていない事項についても、投資判断の上で、あるいは当社の事業活動を理解する上で重要と考えられる事項については、投資者に対する積極的な情報開示の観点から以下に開示しております。
当社はこれらのリスク発生の可能性を認識した上で、その発生の予防及び発生時の対応に努力する方針ですが、当社の経営状況及び将来の事業についての判断、本株式の投資判断については、本項及び本書中の本項以外の記載事項を慎重に検討したうえで投資家及び株主ご自身が行っていただくようお願いいたします。
1.当社事業に関するリスクについて
(1)ASPサービス事業における配信機能の停止について
当社は、自社所有のデータセンターを活用した外食企業向けのASPサービスが主な事業となっております。その性格上、社内外における様々なネットワーク・システム及びコンピュータ・システムに依存しております。
データセンターにおいては、セキュリティを重視したシステム構成、ネットワークの負荷を分散する装置及び24時間365日体制での監視等に取り組んでおり安全性を重視することはもちろんのこと、災害に強いといわれる外部電力に依存しない当社独自仕様のオフグリッド型のデータセンターを提供しております。当社データセンターは、アクセスの急激な増加等から負荷が一時的に増大することによるサーバーの動作不能、火災・震災・台風等による自然災害のための予期せぬ停電が長引くこと等から発生するシステム及びサーバーの障害が生じた場合、当社のサービスを停止せざるを得ない状況が起こる可能性があります。この場合、当社のシステム管理体制への不信を招き当社の業績に影響を与える可能性があります。
(2)人為的顧客データの流出について
当社では勤怠管理サービスを提供するため顧客企業の従業員に関する個人情報を保有しております。一方、2005年4月1日に施行された「個人情報の保護に関する法律」(個人情報保護法)にともない、当社では情報を取り扱う役職員を限定し、当社データセンターの監視者には入退室時の指紋認証、サーバーアクセス時のパスワード管理等を行い、ソフト、ハード面から個人情報の保護体制を構築しております。しかし、書類の盗難及びネットワークへの不正侵入等による個人情報漏洩の可能性は否定できず、万が一このような事態が発生した場合は、当社の業績に影響を与える可能性があります。
(3)システム機器の品質について
当社は、自社商品であるPOSシステム及びオーダーエントリーシステムの販売において、顧客企業への導入前の動作確認等の品質管理に重点をおいております。しかし、世界的な通信障害、急激なアクセス増加によるアクセス障害、自然災害等、予期せぬ不具合等が発生した場合は、顧客からの損害賠償訴訟等の発生は否定できず、当社の業績に影響を与える可能性があります。
(4)顧客のシステム投資計画について
当社の主たる顧客は外食企業であり、外食業界を取り巻く経営環境や季節要因等によるシステム投資計画によって当社のシステム導入スケジュールが左右される傾向にあります。その結果、売上高に影響を及ぼし、固定費(人件費、家賃、リース料等)が先行することによって利益に影響を与える可能性があります。
2.当社組織に関するリスクについて
人材の獲得・育成について
当社が今後成長していくためには、外食業界に精通したシステム営業、ITに精通した人材、データセンターの企画・運営及び組織拡大に対応できる管理担当など、様々な分野での優秀な人材の獲得及び育成が重要になってまいります。当社では優秀な人材の獲得及び育成に努めておりますが、適切な人材の配置が円滑に行えない場合は業績に影響を与える可能性があります。
3.その他リスクについて
(1)顧客対象が外食業界に特化していることについて
当社のASPサービス及び商品は外食業界に特化したものであり、売上高に占める割合も外食業界に集中しております。外食業界は、BSE、鳥インフルエンザ等による食材調達の問題及び食中毒等による衛生上の問題等、食の安全にかかる不測の事態、さらには新型コロナウイルス感染拡大により、業績に多大な影響を受けることがあります。外食業界の業績が低迷する事態においては、情報システム投資等も抑制される傾向にあり、そのような事態が発生した場合は当社の業績に影響を与える可能性があります。
(2)知的財産について
当社は、自社企画した製品の名称及びサービスの名称の一部について商標登録を行なっており、独自に企画した顧客の注文をとる際に使う携帯型のオーダー端末「オーダーショット」に関しては2007年10月に、また「飲食店経営管理システム(R)」拡張機能の「自動発注システム」については、2017年1月に、それぞれ特許を取得しております。
当社は、第三者の知的財産権を侵害しないよう努めており、現時点において侵害していないと認識しておりますが、将来において第三者の知的財産権への侵害が生じてしまう可能性は排除できません。
当社が、自社企画商品及びサービスを提供する上で、第三者の知的財産権を侵害していることが発覚した場合、当社への損害賠償請求、信用の低下及びブランド力の劣化等により、当社の事業運営及び業績に影響を与える可能性があります。
(3)新型コロナウイルス感染症の影響について
当社は、新型コロナウイルス感染症の影響による当社の主要顧客である外食業界を取り巻く経営環境の変化と業績悪化により、当社のASPサービスの月額利用料の値引き要請の受け入れによる減収や、新規システムの導入見送りを継続することを決意し実施いたしました。そのため、当事業年度末時点においては、手元資金が減少しております。今後、新型コロナウイルス感染拡大による経済への影響が長期化することが懸念されており、当該リスクが顕在化した場合には、当社の経営成績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。
(4)提出会社が将来にわたって事業活動を継続するとの前提に重要な疑義を生じさせるような事象又は状況その他提出会社の経営に重要な影響を及ぼす事象について
当社は、2020年2月7日付「特別調査委員会の設置及び2020年9月期第1四半期決算発表の延期のお知らせ」にてお知らせしたとおり、当社のエネルギーコスト削減事業に関する売上計上時期の適切性等について外部から指摘を受けたことから、会計処理の適切性に疑念があることを認識し、特別調査委員会を設置の上、調査を開始いたしました。
その後、2020年3月16日付「特別調査委員会の調査報告書の受領及び調査結果等に関するお知らせ」にてお知らせしたとおり調査結果を受け過年度の有価証券報告書並びに四半期報告書を訂正しております。
また、有価証券報告書の虚偽記載内容があったことから、2020年6月26日に証券取引等監視委員会による課徴金納付命令を当社に対し発するよう金融庁へ勧告がなされております。2020年6月29日付「東京証券取引所への「改善報告書」の提出に関するお知らせ」にてお知らせしたとおり、過年度決算短信等を訂正した件につき日本取引所自主規制法人より、有価証券上場規程に基づく措置審査を受けました。その後、2020年7月15日付「課徴金についての審判手続開始決定に対する答弁書の提出及び特別損失計上について」ならびに2020年9月14日付「金融庁による課徴金納付命令の決定について」にてお知らせしたとおり、当該課徴金(35,770千円)の納付決定に伴い特別損失を計上しております。
上記のような状況から、特別調査委員会による調査報告書で指摘された再発防止策の策定、内部管理体制の不備の是正を優先的に対応すべき状況にあり、現在内部管理体制の強化等を通じて再発防止策に取り組むとともに全役職員一丸となって会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上に励み、信頼回復に取り組んでおります。ただし、こうした当該課徴金(35,770千円)、特別調査費用(97,940千円)その他、内部管理体制の構築費用といった一定の資金を要しております。
当事業年度(2020年9月期)においては、売上高は1,291,206千円(前事業年度比41.8%減)と減収となりました。利益面に関しましては、営業損失508,257千円(前事業年度は営業利益335,163千円)、経常損失532,603千円(前事業年度は経常利益267,747千円)、当期純損失655,473千円(前事業年度は当期純利益126,401千円)となり、当社は、新型コロナウイルス感染症の影響による当社の主要顧客である外食業界が甚大な影響を受けたことに伴い、当事業年度において多額の当期純損失を計上致しました。さらに財務面においては、当事業年度末の純資産合計は42,698千円と前事業年度末に比べ717,082千円減少しております。これらにより当社が取引金融機関との間で締結しているコミットメントライン契約及びシンジケートローン契約における財務制限条項に抵触致しました。これにより、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象又は状況が存在しております。
なお、抵触した財務制限条項は以下の通りです。
(コミットメントライン契約)
各年度の決算日の貸借対照表における純資産の部の金額を前年同期比で80%以上に維持すること。
(シンジケートローン契約)
各年度の決算日の貸借対照表における純資産の部の金額を2016年9月期の決算日の貸借対照表における純資産の部の金額の80%以上に維持すること。
取引金融機関との間で締結しているコミットメントライン契約及びシンジケートローン契約における財務制限条項に抵触したことにより、各取引金融機関とは調整を行った結果、同契約条件での借入を維持しております。
当社としては、このような状況を解消すべく取引金融機関と協議を行っており、財務制限条項に係る期限の利益喪失につき権利行使をしないことについて、当該取引金融機関の合意が得られる見込みと判断しております。
また、当該事象又は状況を解消するための対応策として、当社は引き続き以下のような収支改善施策に取り組んでおります。
① 高粗利の「飲食店経営管理システム(R)」「自動発注システム」への経営資源の集中
2018年9月期の62店舗の「自動発注システム」導入先の獲得から、市場ニーズの増大により、2019年9月期第4四半期のみで302店舗、2019年9月期通期では458店舗の「自動発注システム」の導入を獲得しております。特に今後の外食産業のニーズから「飲食店経営管理システム(R)」「自動発注システム」周辺のサービス事業が当社の継続的な収益拡大に貢献できる重要事業であると認識しており、当社のPOSシステムとオーダーエントリーシステムに加え、他社製品とも積極的な連動を行い「飲食店経営管理システム(R)」、ASP/クラウド型の統合業務パッケージ「FOOD GENESIS」との融合を高め、すべての業態のニーズに合致し、人手不足の解消や食品ロス対策として、安定的かつ効率的な「自動発注システム」の構築を図ることが必要であると認識しております。「自動発注システム」は収益性が高く、こうした人手不足の解消や食品ロス対策に対するクライアントニーズも存在することから、今後、需要の拡大が続くものと予想しており、当システム分野に経営資源を集中させることで、収支の改善が見込まれるものと考えております。
② 更なるソフトウェア販売へのシフトと、代理店販売の拡充
当社の創業時はソフトウェア販売のみに集中し、販売チャネルはほぼ全てを代理店経由として、自社としての販売諸経費を極限まで圧縮していたため、営業利益率67.7%%の水準でありました。2020年9月期は外部からの指摘事項を受けての対策費用の一時的増加及び、新型コロナウイルス感染拡大による影響により508百万円の営業赤字に転落しておりますが、新型コロナウイルスの影響のなかった2019年9月期においても、営業利益率が15.1%と創業当初と比較しても大きく減少しております。当社としてはこうした利益率の改善を課題として考えております。当社ハードウェア専用機とソフトウェアをセット販売することで、これまで「飲食店経営管理システム(R)」を販売していた大手ハードウェアベンダーが競合相手となったため、すべてを直販に切り替えざるを得なくなり、直販体制に移行しました。しかしながら、ハードウェアについては製造委託先の人件費や部品代の高騰、さらに為替の影響等により仕入コストは上昇傾向にあるため、さらなる仕入コストの増加が予測されていたため、当社ハードウェア専用機型から安価な汎用機型にシフトし、ソフトウェア開発販売を主軸とする事業展開を推進しております。今後は、ハードウェアの競合から外れた上で、現在の直販体制を、過去の代理店ルートを再開拓し、代理店販売体制に移行することにより、収益力の向上を図ってまいります。
このようにソフトウェア販売への注力を進め、現在の一部残っている直販体制を、緩やかに代理店販売体制への移行による販売諸経費圧縮を実施し、創業時に近づけるべく営業利益率の向上を目指します。
また、上記の収支改善施策に加え、第三者割当増資等も含めた資本政策により財務基盤安定に取り組んでまいります。
以上より、主要取引銀行の支援体制も十分確保できており、借入に関しては問題なく借り入れができていることから、継続企業の前提に関する重要な不確実性は認められないと判断しております。
(5)配当政策について
当社は、安定的かつ継続的な配当による利益還元によって株主に対する責任を果たすことを経営の重要課題として考えております。外食業界に特化したシステムソリューション開発に努め、積極的な設備及び開発投資と、さらなる業績の向上により内部留保を充実させ、配当の継続的実施に努めていく方針であります。