有価証券報告書-第32期(令和3年4月1日-令和4年3月31日)

【提出】
2022/06/23 14:55
【資料】
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【項目】
138項目

研究開発活動

当連結会計年度における当社グループの研究開発活動は、研究開発及びその成果に基づくビジネス展開から構成されます。株式会社SRAの先端技術研究所においては、研究開発分野として、ソフトウェアに関わる基礎研究及び技術開発研究に取り組んでおります。高品質ソフトウェアに関する基礎研究、諸科学の発展に寄与するコンピューティング技術の開発と公開及びソフトウェア検証に関わるモデル検査技術の研究開発をテーマとして進めています。学術や産業、教育といった社会の多様な分野で、ソフトウェア技術を核としたデジタルトランスフォーメーションの推進を駆動するべく、専門家との共同研究や国内外の研究コミュニティの醸成を通して、オープンソース・ソフトウェアを基盤とする技術活用のための研究開発を継続しております。
これらは、主に特定のセグメントに区分できない基礎研究であります。なお、当連結会計年度での研究開発は、当社のグループ会社である株式会社SRAの先端技術研究所を中心に行っております。研究開発費の総額は174百万円であります。
(1) 高品質ソフトウェアに関する基礎研究
ソフトウェア開発研究の核として、ソフトウェアの信頼性や生産性を高める技術として注目されている、形式仕様の研究開発を継続的に進めております。形式仕様の中でも歴史が長いVDM(Vienna Development Method)の国際的な研究コミュニティである Overtureコミュニティに参加し、VDMの言語仕様の改訂などへの協力を継続しています。当社独自の形式仕様研究として、信頼性や生産性に加えて操作性や有用性を高めることを目的に、形式仕様とUI技術やアジャイル開発技術との連携によって、創造的なシステム仕様の策定を支援する開発環境 ViennaTalkを開発し、オープンソース・ソフトウェアとして公開しております。
ソフトウェア技術の研究に加えて、ソフトウェア技術を通して科学の諸分野に貢献することを目的に、量子化学の研究者が膨大な量の化学反応の経路をインタラクティブに探索するためのツール RMapViewer、生物学や環境学での数理モデルの構築及び検証に特化したマルチエージェントシミュレーション環境 re:Mobidyc の開発を進め、オープンソース・ソフトウェアとして広く一般に公開しています。
(2) 科学的コンピューティングのための技術開発
ソフトウェア技術を通して科学の諸分野に貢献することを目的に、さまざまな分野の学術研究者と協力して、研究を進めるための、または、研究成果を広く応用するための、プラットフォームとなるソフトウェアを開発しております。生物学や環境学での数理モデルの構築及び検証に特化したマルチエージェントシミュレーション環境 re:Mobidyc の開発を進め、オープンソース・ソフトウェアとして一般に公開しています。データサイエンスの応用支援としては、データ分析技術の応用を支援するための専用のデータ可視化ソフトウェアを開発しています。さらに量子化学の分野では、膨大な量の化学反応のデータに対して、反応経路のインタラクティブな探索や、分子構造の類似性によるナビゲーションを提供するソフトウェアを開発しています。
(3) ソフトウェアの正しさを検証する技術開発研究
先端技術研究所では、プログラムの振る舞いを自動的に解析して、その正しさを検査するためのモデル検査技術の開発研究を行っております。当連結会計年度では、多数の個体で構成される生物の集団行動が引き起こす創発的な性質を利用した新しい検査技術を開発し、その成果を国内及び海外の学術会議で発表しました。加えて、国際的な学術雑誌に投稿した論文が採録されております。集団行動が生む創発的な性質を利用したモデル検査技術に関しては、更なる性能向上が期待できます。今後の研究推進のために、独立行政法人日本学術振興会科学研究費助成事業(基盤研究(C))に3年間の学術研究計画を申請したところ、審査の結果、研究の学術的な価値が認められ採択されました。効率性とユーザビリティの双方を、高いレベルで達成する検査技術の実現を目指して研究開発に取り組んでまいります。
(4) オープンソース・ソフトウェア
オープンソース・ソフトウェアに関しては、以前よりWebアプリケーション・システムの開発環境を「GNU/Linux」、「PostgreSQL」を含むオープンソース・ツールキット群によって構築するための情報収集と整備を行っており、一般情報開示も行っております。このような活動から得た様々なオープンソース・ソフトウェアに対する各種の知見に、ソフトウェア工学の研究成果を組み合わせることによって、オープンソース・ソフトウェアをベースとするソフトウェア開発プロジェクトの統合管理環境「ProjDepot」、テスト自動化支援環境「Testablish」を構築し、改良を続けております。すでに、グループ内の多くの開発プロジェクトがこの環境を利用しており、プロジェクトの開発状況の可視化と生産性向上に寄与しております。
オープンソース・ソフトウェアのデータベースでワールドワイドに開発されている「PostgreSQL」においては、SRA OSS, Inc. が開発に貢献しており、合わせてビジネスでの活用を目的とした研究開発も行っています。
データベース分野では、PostgreSQLに「マテリアライズドビュー」の増分更新を高速化する技術開発、クラスタソフトウェアである「Pgpool-II」の継続開発、データベース関連学会や、国際カンファレンスで講演を行いました。
これらはいずれも、高度で高品質なソフトウェアの実現に有益となる技術・環境・ツールを目指して進めているものです。実務レベルへの適用を随時行いつつ、国内外の大学や研究機関との連携を通して最新の技術動向を取り入れながら、研究成果を継続的に構築していく実用型の研究です。これらの研究成果の一部は、コンサルテーションや他機関との協同研究開発作業等にも活かされております。