有価証券報告書-第21期(平成31年4月1日-令和2年3月31日)

【提出】
2020/06/11 14:05
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【項目】
139項目

事業等のリスク

以下において、当社グループの事業の状況及び経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性があると考えられる主な事項を記載しております。当社グループは、これらのリスク発生の可能性を認識した上で、事態の発生回避及び発生した場合の対応に努める方針でありますが、当社の株式に関する投資判断は本項目以外の記載内容も併せて、慎重に検討した上で行われる必要があると考えております。
なお、文中における将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであり、当社グループの事業に関連するリスクを全て網羅するものではありません。
(1)日本電信電話㈱、㈱エヌ・ティ・ティ・データ及びそのグループ会社との関係について
① 日本電信電話㈱、㈱エヌ・ティ・ティ・データを中心とした企業グループ内における位置付けについて
当社は、㈱エヌ・ティ・ティ・データ(以下、「NTTデータ」という。)の子会社であり、NTTデータはNTT㈱及び日本電信電話㈱(以下、「NTT」という。)の子会社であります。
NTTを中心とするNTTグループは、地域通信事業、長距離・国際通信事業、移動通信事業及びデータ通信事業を主な事業内容としています。また、NTTグループに属するNTTデータを中心とするNTTデータグループは、公共・社会基盤分野、金融分野、法人・ソリューション分野、グローバル分野の4つの分野による事業活動を営んでおります。なお、NTTグループの主たる業務である通信事業とNTTデータグループの主たる事業であるIT事業は事業領域が異なります。
当社グループは、NTTデータグループにおける法人・ソリューション分野に属しており、Webシステム構築のための汎用化した商用フレームワーク及び業務コンポーネント群等を開発しパッケージソフト「intra-mart」として販売しているほか、「intra-mart」を利用したWebシステム構築に関するコンサルティング及びシステム開発等を行っております。NTTデータグループにおいて、パッケージソフトの販売、システム開発を行う会社はありますが、当社グループのようにWebシステム構築に活用されるフレームワークの開発・販売をしている会社はありません。また、NTTデータグループはホストコンピュータからWebシステムまで幅広く手がけておりますが、当社グループはWebシステムの構築基盤に特化しており、当社グループ製品と同じような機能を提供する他社製品と同一の条件で選定されるものであるため、直接的な競合等は現在発生しておりません。
しかしながら、今後、NTTデータグループの経営方針に変更があり、当社株式の保有比率に大きな変更があった場合、あるいは、同グループの事業戦略が変更された場合等には当社グループの事業運営及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
② NTTデータグループとの取引関係について
当連結会計年度におけるNTTデータグループとの取引の内容は以下のとおりであります。
(イ)製品の販売及びサービスの提供について
当社の特約店パートナの一部はNTTデータグループであり、当連結会計年度末では特約店パートナのうち38社はNTTデータグループであります。また、特約店パートナとしての取引の他、自社のシステム開発の用途としてNTTデータグループ各社に対し「intra-mart」を販売しており、当連結会計年度における売上高に占めるNTTデータグループの割合は21.9%であります。取引条件については、特約店パートナやエンドユーザと同様の条件となっております。
(ロ)受入出向者に係る費用等の支払いについて
後述「④ 従業員の受け入れ等について」に記載のとおり、当社はNTTデータグループから人員を受け入れております。当連結会計年度におけるNTTデータグループへの受入出向者に係る費用等の支払額は41,295千円であります。
(ハ)その他
上記の他、当連結会計年度において、NTTデータグループ各社とシステム開発等の業務委託、ソフトウェアライセンス料の支払、研修の委託等の取引があります。なお、NTTデータグループを除くNTTグループとの取引は製品の販売及びサービスの提供等の取引があります。
③ 役員の兼務関係について
本書提出日現在、当社は、NTTデータから溝渕敬司を取締役として招聘しております。
溝渕敬司については、当社の事業に関する知見を有し、かつ法人向けビジネスに関して優れた見識を兼ね備えているものと当社は判断しており、事業に関する助言を得ることを目的として、当社が招聘したものであります。また、当社及びNTTデータにおける役職は下表のとおりであります。なお、今後とも、NTTデータグループの役職員による当社役員の兼任体制は必要最小限にとどめる方針であります。
当社における役職氏名NTTデータにおける役職
取締役(非常勤)溝渕 敬司ビジネスソリューション事業本部
デジタルビジネスソリューション事業部長

④ 従業員の受け入れ等について
当連結会計年度末において、当社とNTTデータグループからの受入出向関係にある者は4名であり、システムエンジニアとしてエンタープライズソリューション本部に3名、営業担当としてセールス&マーケティング本部に1名所属しておりますが、一般社員であり、当社の経営上の重要な意思決定に影響を与える職位・職務には任命しておりません。当社は、「intra-mart」に関する知識を習得させることを目的として、NTTデータグループからの出向者を受け入れております。
なお、当社から、NTTデータグループ(当社連結子会社を除く)へ出向している社員は1名であります。いずれも当社グループ製品である「intra-mart」に関する知識の展開を目的として実施しております。
⑤ NTTデータの影響力について
当社グループは、自ら経営責任を負って、独立して事業経営を行っておりますが、当社がNTTデータの社内ベンチャー制度により設立された経緯から、重要な問題についてはNTTデータに対して報告を行っております。ただし、現状、当社の意思を妨げたり、拘束したりするものではなく、NTTデータにおいても、同様の考え方と確認しております。また、NTTデータは、当期末現在、当社の議決権の46.8%を保有しており、議決権の所有割合は50%以下でありますが、実質的な支配基準により、当社は同社の連結子会社となります。このような影響力を背景に、NTTデータは当社の株主総会における取締役の任免等を通じて当社グループの経営判断に影響を及ぼし得る立場にあることから、議決権の行使にあたり、NTTデータの利益は、当社のほかの株主の利益と一致しない可能性があります。
(2)事業内容に関するリスクについて
① 各種事業に共通のリスクについて
(イ)特定事業に依存していることについて
当社グループの事業は「intra-mart」をコアとして、「パッケージ事業」及び「サービス事業」を展開しております。「intra-mart」は、全社共通のシステム基盤上でオープンなアプリケーションの構築を図り、IT投資の最適化を図ろうとする顧客ニーズに対応した製品であります。しかし、今後、顧客ニーズが当社グループの想定どおりに進まない場合、「intra-mart」が他社製品に対して機能面、価格面で競争力を失った場合、また、製品自体の信頼性を失墜させる問題を起こした場合、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
さらに、新技術に対する見通しを誤った場合、又はWebと異なる予測不能な何らかの技術革新等により「intra-mart」が陳腐化した場合等には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(ロ)競合について
現在のIT環境は、ホスト・コンピュータ、クライアント・サーバ、そしてWebシステムが混在しております。ホスト・コンピュータ、クライアント・サーバシステムが多く採用されている基幹業務と呼ばれる大規模システムと、Webシステムが多く採用されている情報系システム及び誰もが利用する身近な中小規模のシステムにおいて、大きな競合は発生しておりませんが、技術的問題点や既存システムとの整合性の問題によっては、競合が発生することが考えられます。
また、Webシステムの世界は比較的参入障壁が低く、海外及び国内の競合各社から新製品が相次いで発表されております。当社グループは、Webシステム構築基盤の中で新技術への迅速な対応、オープン性、ワークフロー等の日本企業特有の内部統制制度に対応した独自の機能及び価格等を通じて、競合製品に対する差別化に努めておりますが、競合他社による製品強化等により、当社グループ製品のマーケットシェアが低下するなど、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(ハ)特約店パートナとの関係について
当社グループの事業における開発・販売は、特約店パートナとの関係に大きく依存しております。当社グループは製品開発及びシステム開発のため、特約店パートナから技術者を受け入れており、外注コストの変動が当社グループの経営成績及び財政状況に影響を及ぼす可能性があります。現時点では、優良な特約店パートナとの長期的かつ安定的な関係を維持しており、外注コストも適正レベルで管理しているものと考えておりますが、今後何らかの理由により適時適切に優良な外注先が確保できなくなった場合、又は外注単価が急激に上昇した場合等には、売上と外注コストとの適正なバランスが崩れ、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
また、販売にあたっては、主に特約店パートナを通じた販売体制を全国的に構築しており、今後も事業拡大に向け特約店パートナの支援強化を図ってまいります。当連結会計年度末では134社と特約店契約を締結し、安定的かつ長期的な取引関係の構築に努めておりますが、特約店パートナの事業方針変更等により当該特約店契約が維持・更新できなくなった場合、特約店パートナが当社グループ製品を利用しない場合、又は想定どおりに特約店の新規開拓が進まない場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(ニ)品質・不具合について
当社グループ製品は、完成後に各特約店パートナを通じて一斉に販売されます。そのため、万一、販売後に不具合が発覚した場合には、その対応のために多大の時間と労力が必要となる可能性があります。とりわけ不具合により顧客の事業が停止した場合には、その損害を賠償する義務が生じる可能性があるほか、製品に対する信用を失うことになります。現状、このような重大な不具合が発生した場合には、障害対応マニュアルに従い、可及的速やかに当該情報を特約店パートナやエンドユーザに公開、通知し、被害を最小限に留めると共に、不具合修正等を最優先して対応する方針をとっております。
現時点では、重大な欠陥にあたるものはなく、製品の品質管理等については、計画している維持管理費用内で対応できておりますが、上記の理由の他、何らかの理由により不具合が発生し、当初の計画を大幅に上回る時間とコストがかかった場合などには、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
同様に、システム開発においても、開発したアプリケーションの品質・不具合によっては、開発工数の増加及び顧客への賠償が発生する可能性があります。
(ホ)知的財産権について
当社グループは、パッケージ事業、サービス事業を展開するにあたり、第三者の特許権、商標権、意匠権等(以下、「知的財産権」という。)を侵害していないものと認識しております。しかしながら、当社グループが把握できていないところで第三者が知的財産権を保有している可能性は否めません。また、当社グループの事業分野における第三者の知的財産権が新たに成立する可能性もあります。かかる第三者から、知的財産権侵害を理由として損害賠償又は使用差止等の請求を受けた場合は、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
また、当社グループは自社開発のシステムやビジネスモデルに関して、知的財産権の対象となる可能性があるものについては、その取得の必要性を検討していますが、現在までのところ権利を申請し取得したものはありません。
他方、当社グループの知的財産権が第三者により侵害される可能性も否定できず、その場合には顧客の喪失、損害賠償請求又は使用差止請求等の訴訟費用の発生により、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
(ヘ)情報管理と情報漏洩について
当社グループで扱う情報は、大きく「技術情報」と「個人情報」があります。「技術情報」はオープンソース・ソフトウェアではない当社グループの商用製品に関するもの、そして顧客システムに関するものです。また「個人情報」は製品サポートの登録者情報、セミナー・イベントの参加者情報、そして営業活動の訪問者情報となります。
当社グループでは、これら情報を取り扱う役職員を限定し、個人情報へのアクセスに当たってはパスワード管理、アクセスのログ管理を行い、サーバは施錠された別室で管理しており、ソフト・ハードの両面から個人情報の管理体制を構築しております。
しかしながら、当社グループが保有する情報の流出が万が一発生した場合には、当社グループの信頼喪失及び当社グループの企業イメージ悪化につながり、損害賠償請求訴訟等により事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
(ト)訴訟等を提起される可能性について
本書提出日現在、当社グループにおいて係属中の訴訟はありません。
しかしながら、当社グループの開発・販売等の事業活動に関連して、前述の“(ニ)品質・不具合について”、“(ホ)知的財産権について”、“(ヘ)情報管理と情報漏洩について”で説明したリスク等により、当該第三者が当社グループに対して損害賠償請求訴訟等を提起する可能性があります。これらの結果、訴訟等の内容及び結果によっては、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(チ)売上の四半期ごとの変動について
当社グループの製品及びサービスは、企業のインフラ構築を目的に導入されることから、企業内でシステムを稼働させるタイミングがエンドユーザの事業年度の開始時期に合わせることが多いため、当社グループの売上高計上時期は、四半期末、特に9月及び3月に集中する傾向があります。そのため、当社グループの年間の売上高は平準化されたものとはなっておりません。当社グループにおきましては第2四半期以降に売上が偏重する傾向にあります。これに対して、営業費用の中で大きなウエイトを占める人件費、賃借料等の固定的費用は毎月発生するため、第1四半期の収益性が他の四半期と比較して低くなる傾向にあり、他の四半期に比較して営業損失を計上する可能性が高くなっております。
② パッケージ事業特有のリスクについて
(イ)開発計画等について
当社グループの事業であるWebシステム開発の分野は技術革新が非常に速く、最先端の技術を常に製品に反映していくには多大な経営努力とコストを要します。現時点では、適正レベルの投資によって最新技術情報の収集及び製品への迅速な反映を実現しているものと考えておりますが、今後も継続できる保証はありません。また、技術革新に上手く対応できた場合においても、何らかの理由により製品開発の完了時期及び新製品の販売時期が当初計画よりも遅延した場合等には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
さらに、今後当社グループが、最新技術を熟知・習得した技術者の確保・育成に失敗した場合、それら最新技術を製品に反映するにあたって計画を大幅に上回る時間とコストがかかった場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(ロ)オープンソース・ソフトウェアへの依存について
当社グループ製品である「intra-mart」には、オープンソースのアプリケーション・サーバである
「Resin」及びオープンソースのビジネス・プロセス・マネージメント実行エンジンである「Activiti」及び
Apache Software Foundation、Eclipse Foundationなどのオープンソース・ソフトウェアが組み込まれておりますが、何らかの理由により当該ソフトウェアが使用できなくなる場合、当該ソフトウェアの更新がされず品質の改善や技術革新に追従しない場合、当該ソフトウェア自体が無くなる場合、又はオープンソース・ソフトウェアの利用が減速する場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(ハ)使用許諾を受けているソフトウェアについて
当社グループ製品である「intra-mart」のコンポーネントのうちグラフ描画機能、帳票デザイン機能、シングルサインオン機能等については、他社製品のライセンス提供を受けて、「intra-mart」のオプション機能としてOEM販売しております。これらの他社製品に係る使用許諾契約が更新拒絶・解除等により終了した場合、当社グループは当該製品を販売できなくなりますが、それにより「intra-mart」の利便性等が減退し、パッケージ事業の業績に影響する可能性があります。
③ 海外事業特有のリスクについて
当社グループは海外に子会社を設立する等、海外市場での事業展開を進めております。各国政府の予期しない法律又は規制の変更、経済情勢の変化、為替などの経済動向、商習慣の相違、労働環境の変化及び人材の採用と確保といった様々な要因の影響により、事業展開が当初の事業計画どおり進まなかった場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(3)事業体制に関するリスクについて
① 優秀な技術者の確保について
当社グループの事業の継続的な発展及び急速な技術革新への対応には、優秀な技術者の確保が不可欠であります。現時点では、優秀な人材の中途採用及び新入社員の計画的な育成により、必要な人員は確保されておりますが、さらに、今後の事業拡大に伴い、優秀な人材の採用及び育成の強化を進める方針です。
しかしながら、一般的に、IT業界は優秀な技術者にとっては売り手市場であると言われており、人材確保が難しく、今後従業員が大量に退職した場合、又は労働市場の流動性低下等により、計画どおりに必要とする優秀な人材を確保できなかった場合には、当社グループの事業の円滑な運営に支障をきたす可能性又は機動的な事業拡大を行えない可能性があります。さらに、優秀な人材を確保・維持し又は育成するために費用が増加する可能性もあります。
② 特定人物への依存について
当社の代表取締役社長である中山義人は、NTTデータにおけるイントラマートプロジェクトの創設者であり、当社設立以来代表取締役を務め、その豊富な知識、経験及び人脈により、当社グループの事業運営において重大な役割を担っております。従って、何らかの理由により、中山義人が現状の役割を果たせなくなった場合、又は離職した場合等には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(4)その他リスクについて
① 配当政策について
当社は株主に対する利益還元を経営の最重要課題の一つとして位置付けており、今後の当社の配当政策の基本方針としては、株主への利益還元と内部留保充実のバランスを総合的に判断し、業績と市場動向の状況に応じた柔軟な対応をとっていく所存です。
なお、今後におきましても中間配当及び期末配当による株主への利益還元に努める所存ですが、重要な事業投資を優先する場合や、キャッシュ・フローの状況によっては、配当を実施しない、あるいは予定していた配当額を減額する可能性があります。
② 自然災害について
当社グループは、地震等の自然災害、伝染病、その他の災害等の発生時にも、重要な事業活動継続のための事業継続計画(BCP:Business Continuity Plan)を策定しております。しかしながら、想定外の自然災害、事故等の発生により、当社グループの事業所及び従業員の多くが被害を被った場合には、販売等事業活動に大きな影響が生じるため、当社グループの経営成績及び財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。
③ 新型コロナウイルス(COVID-19)感染症について
世界における新型コロナウイルス感染者の拡大ペースは、2020年4月以降、頭打ちとなってきたものの、依然として高水準で推移しております。
国内のみならず、各国で経済活動が強く制限され感染収束時期が見通せないなかで、順調に正常化に向かうのか予断を許さない状況です。
感染症の拡大により、各国において都市封鎖、外出制限等が実施された場合、当社グループの事業活動が一時的に停止するもしくは計画どおりに進捗しない可能性があります。
また、世界経済へ与える影響により当社製品、サービスの需要減少をもたらし業績に大きな影響を与える可能性があります。
更にアフターコロナ、ウィズコロナにより働き方を始めたとした顧客ニーズや価値観の変化に対して、適切な当社サービス等を提供できない場合、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。