有価証券報告書-第19期(平成31年1月1日-令和1年12月31日)

【提出】
2020/03/31 17:15
【資料】
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【項目】
80項目

研究開発活動

(1)創薬活動
当社グループの創薬活動はCullgenを中心に展開しており、同社は、新しい創薬基盤技術であるuSMITE™(ユビキチン化を介した標的タンパク質分解誘導技術)を活用した、がん、炎症性疾患及び自己免疫疾患の新たな治療における革新的な新規化合物を見出し、医薬品として開発を行う目的で設立されました。 2019年4月にCullgenは大手グローバルベンチャーキャピタルであるSequoia Capital ChinaとHighlight Capitalから1,600万米ドルのシリーズA投資を受けました。この受領した資金は、将来の治験許可申請を見据えたCullgenのがん領域及びその他の疾患領域における既存の創薬研究に活用されます。 当事業年度において、Cullgenの数多くの研究開発活動は、円滑に進みました。Cullgenは、経口バイオアベイラビリティ(※)の高い、数千ものリード化合物の最適化を図りました。この治験許可(IND)申請については、2020年度の見込みです。Cullgenは、既に数件のPCT国際出願を行っています。
(※投与された薬物が、どれだけ全身循環血中に到達し作用するかの指標)
(2)臨床試験
① アイスーリュイ[中国語:艾思瑞®、英語:Etuary®]
a.放射線性肺炎(RP)
アイスーリュイの2番目の適応症として、RP治療薬の第2相臨床試験前パイロット試験を実施しております。これは、反復投与、多施設でのオープン試験を行うもので、2019年12月31日時点で11名の被験者が登録され、10施設が本試験に参加いたしました。当事業年度第2四半期に治験実施計画書の登録基準が変更されたことにより、プログラムには病院が追加されることになりました。従いまして、本試験は2020年度第3四半期までかかる見込みです。
b.糖尿病腎症(DN)
DNは、Ⅰ型糖尿病またはⅡ型糖尿病により引き起こされる慢性腎臓病です。中国では9,240万人が糖尿病に脅かされており、このうち20~30%がⅠ型糖尿病またはⅡ型糖尿病を患い、腎疾患を引き起こすと言われております。
当社グループは、2016年8月、国家薬品監督管理局(NMPA、旧中国食品医薬品局)からDN治療薬のIND申請に対する承認を取得し、且つ、第2相臨床試験に直接移行することを承認されております。本第2相臨床試験では、治験実施医療機関の施設改修終了後、当事業年度第2四半期より被験者を募集しております。
c.結合組織疾患を伴う間質性肺疾患(CTD-ILD)
2016年9月に、結合組織疾患患者の方の肺に炎症や線維症を引き起こす肺疾患であるCTD-ILDの治療薬として、4番目のアイスーリュイの適応症でNMPAより当該治療薬のIND申請に対しての承認を受けました。このIND承認により、全身性硬化症(強皮症)と皮膚筋炎(DM)の2つのCTD-ILD適応症について、直接第3相臨床試験に移行することが承認されました。
2018年6月には、強皮症およびDMの治療を対象とした第3相臨床試験の各段階において、無作為、二重盲検、プラセボ・コントロール、52週間の試験に第1期被験者を登録しました。2019年12月31日現在、被験者は強皮症では10名、DMでは26名が登録されています。強皮症には144名、DM試験には152名の被験者が登録される予定です。
d.じん肺治療薬(Pneumoconiosis Disease)
2019年5月、当社グループは、アイスーリュイの適応症として、じん肺治療薬としての治験許可(IND)申請に対する承認をNMPAより取得しました。じん肺疾患は、肺に炎症や瘢痕化(線維化)を引き起こす慢性的な肺疾患で、吸い込まれた粉塵や微粒子が、肺の細胞に蓄積することによって引き起こされます。中国には、およそ43万3千人の患者様がおり、更に、きちんとした診断を受けていない患者様が、最大60万人いると推定されています。
これは、中国のみならず、世界中でアンメット・メディカル・ニーズ(有効な治療方法がない疾患に対する医療ニーズ)が存在します。BCは、病院との提携を進め、治験実施計画書を決定し、臨床試験を開始して参ります。
② F351(肝線維症等治療薬)
F351(一般名:ヒドロニドン)は、当社グループの医薬品ポートフォリオにおける重要な創薬候補化合物であり、他の世界の主要医薬品市場へ臨床開発活動を拡大する戦略の重要な部分を占めています。
F351は、アイスーリュイの誘導体である新規開発化合物であり、肝星細胞の増殖及び内臓の線維化に重要な役割を果たすTGF-β伝達経路の両方の阻害剤です。当社グループは中国、日本、豪州、カナダ、米国及び欧州各国を含む主要な国でのF351の特許権を保有しております。
a.中国
2019年8月にF351の中国における第2相臨床試験のデータ集積の終了を発表いたしました。本第2相臨床試験は中国全土の10の病院が参加し、無作為、二重盲検、プラセボ・コントロール、エンテカビル併用投与、用量範囲、多施設との条件で試験を行い、登録された177名の被験者の内、適切な試験を行うことが出来た149名の被験者の試験データ集積をもって本試験を終了致しました。
当社グループはNMPAが要求するその他の関連臨床試験または非臨床試験や肝生検から得られた多くの病理学的データを含む、第2相臨床試験の試験データの徹底的な解析を実施しております。他方、臨床試験プロセスの監査を実施しており、監査が完了しますと結果が発表できます。この臨床試験の最終結果は公開され、国際的な学会で発表する予定です。
一方、第3相臨床試験の実施方法や早期条件付き承認の可能性を含め、F351が早期に承認されるよう相談するため、すべてのデータをNMPAの医薬品評価センターに提出する予定です。
b.米国
米国の開発活動は、中国の第2相臨床試験の結果が発表されるまで一時保留しております。当社グループは、米国および中国のプログラムで収集されたデータに基づいて、米国で実施可能な試験の疾患適応および用法・用量を決定いたします。
③ タミバロテン(急性前骨髄球性白血病(APL)治療薬)
タミバロテンはAPLの治療薬です。APLは急性骨髄性白血病の一種で、前骨髄球が「がん化」する白血病です。共同開発者である東光製薬工業株式会社および当社グループのGNI Hong Kong Limitedは、2015年10月に「アムノレイク®錠2mg (一般名:タミバロテン)」を輸入医薬品としてNMPAに登録申請しており、その後、 NMPAは治験施設において文書審査および医薬品の臨床試験の実施の基準(GCP)査察を実施いたしまた。NMPAは審査後、申請側に対しより多くのCMC(化学、製造、品質管理)データを求めております。申請側は、追加データを2020年度第2四半期中に提出する予定です。
④ F573(急性肝不全・慢性肝不全急性時(ACLF)治療薬)
F573はアイスーリュイ及びF351に次ぐ3番目の創薬候補化合物として、カスパーゼを阻害する可能性を持つ強いジペプチド化合物であり、B型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス(HCV)、アルコール性肝硬変による重症肝炎に関連して発生する細胞死や炎症反応に重要な化合物です。2018年4月、F573のIND申請はNMPAにより承認され、第1相臨床試験の結果が満足できるものであれば、第2相臨床試験を実施することが認められております。
2019年3月にF573に関する権利はGNI Hong Kong Limitedより、Continent Pharmaceuticals Inc.(BCを子会社とするケイマン諸島の当社子会社、以下、CPIという。)に譲渡されております。従いまして、CPIは当社グループと連携して、臨床試験施設の選定を含む第1相臨床試験の開始を準備して参ります。
以上の結果、当連結会計年度における当社グループの研究開発費は、全体では758,129千円となりました。医薬品事業の研究開発部門に所属する人員は2019年12月31日現在36名で、主に中国で研究活動を行っております。