有価証券報告書-第26期(令和3年4月1日-令和4年3月31日)

【提出】
2022/06/28 15:02
【資料】
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【項目】
113項目

事業等のリスク

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が提出会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。
(1)パイプラインに関するリスク
①既存のパイプラインの進捗に関するリスク(特に重要なリスク)
当社は、新規医薬品を創出することを目的に複数のパイプラインの研究及び開発を進めておりますが、当社のすべてのパイプラインは研究開発途中であり、臨床試験段階における有害事象の発生等により、開発中止や遅延等の可能性が常に存在します。また、当社が意図しない提携解消の可能性、臨床開発が一定の段階まで進捗した際にライセンスアウトできない可能性、ライセンスアウトできたとしても当社の望む契約条件とならない可能性等もあります。
これらが顕在化した場合、研究開発の遅延、研究開発コストの増加、将来の売上高の減少等により、投下資金の回収が困難又は遅延することとなり、株価の低迷や他のパイプラインへの悪影響等も想定され、研究開発計画及び経営成績等に重大な影響を及ぼすおそれがあります。
当社は後述のとおり小規模組織であるため、選択と集中によるパイプラインの優先順位付けと絞り込みを行い、経営資源の効率的な投入、プロジェクト管理の徹底及び強化、医療ニーズや開発トレンドに応じた開発方針の変更、提携先の探索、新規パイプラインの拡充等により本リスクの低減に努めております。
②新規パイプラインの拡充に関するリスク
当社は、現時点においては既存のパイプラインの進捗を最優先として推進しているものの、経営基盤強化のためには、新たなパイプラインを増やしていく必要があると考えており、研究段階プロジェクトの臨床段階へのステージアップ、提携やM&A等による他社の技術やパイプラインの導入も並行して検討を進めております。しかしながら、研究段階プロジェクトが想定通りに臨床段階へステージアップできない可能性、他社の技術やパイプラインの導入ができない可能性、導入できたとしても製造販売承認を取得できない可能性等があります。
これらが顕在化した場合、中長期的な事業計画、事業目標の達成が困難となるおそれがあります。また新規パイプラインの拡充は、既存のパイプラインのバックアップにもなりうるため、「(1)既存のパイプラインの進捗に関するリスク」が顕在化した場合のリスクヘッジ機能が低下するおそれもあります。
このため、研究段階プロジェクトのステージアップについては、優先順位付けと絞り込みを行い、経営資源を効率的に投入しております。また、他社の技術やパイプラインの導入については、対象となる企業、技術、パイプライン等に関する詳細なデューデリジェンスを行うなど、意思決定に必要十分な情報を収集し、企業価値、事業価値、シナジー等について慎重に評価検討することとしております。
(2)研究開発資金の確保に関するリスク(特に重要なリスク)
当社はいち早く新薬の製造販売承認を取得すべく研究開発に邁進しておりますが、新薬の開発には長期にわたり多額の研究開発投資を要するため、営業キャッシュ・フローがマイナスの状態が続いております。当社において研究開発資金の確保は重要課題の1つでありますが、これまでに実施したファイナンス等により当面の研究開発資金の確保、またライセンスインやM&A等の支出にも対応できる資金の確保までできていると判断しております。しかしながら、研究開発が計画通りに進捗する保証はないため、研究開発の遅延等が生じ、研究開発資金に不足が予想された場合には新たな資金調達が必要となります。適切なタイミングで十分な資金調達ができなかった場合には事業存続に重大な影響を及ぼすおそれがあります。
このため、選択と集中によるパイプラインや研究段階プロジェクトの優先順位付けと絞り込みを行い、経営資源の効率的な投入、プロジェクト管理の徹底及び強化、その他コスト削減策の実施等により支出を抑えております。また、資金調達が必要となった場合に備え、効果的かつ効率的な資金調達手段を検討しております。さらに、医療ニーズや開発トレンドに応じた開発方針の変更、提携先の探索等、多角的に本リスクの低減に努めております。
(3)小規模組織であることに関するリスク
①人材の確保及び特定人材への依存に関するリスク
当事業年度末現在、当社は従業員数24名の小規模組織であります。限られた人的資源に依存しているため、従業員に業務遂行上の支障が生じた場合や大量に退職した場合には、各種業務に影響を及ぼすおそれがあります。また、事業ステージにあわせた採用計画を立案、実施しておりますが、想定したタイミングで適切な人材を採用できなかった場合も、各種業務に影響を及ぼすおそれがあります。
このため、教育訓練の実施、業務の文書化等、内部統制のフレームワークを活用した属人化の解消策等により、人材のバックアップ体制を拡充しております。また株式報酬制度の導入等による従業員へのインセンティブの付与や成果主義に基づく人事制度の導入等により従業員のモチベーション向上にも努めております。
②第三者への依存に関するリスク
現在当社は、医薬品開発企業として必要な機能のすべては有していないため、それらの業務については外部へ委託しており、主には、臨床試験については開発業務受託機関に、治験薬の製造については医薬品製造受託機関等にそれぞれ委託しております。これら受託機関等の倒産、契約の解消、当社が望む条件で契約締結又は更新できない等の可能性があり、当社は第三者への依存度が高い状況にあるため、これらリスクが顕在化した場合、代替機関の選定や移管のためのコスト増、臨床試験の遅延等が生じ、事業継続に重大な影響を及ぼすおそれがあります。
委託先とは相互利益の考えのもとに契約を締結しており、今後もこの考えを継続することで現契約の維持につながると考えております。また、定期的な連絡会議や担当者レベルでの日常的なコミュニケーション等により、関係の強化や認識の共有等にも努めております。万が一の事態に備え、代替候補先の探索検討を行うことでも、本リスクの低減を図っております。
③M&Aに関するリスク
当社は、医薬品事業の経営基盤構築及び関連事業や周辺事業の拡大のためには、提携やM&A等を通じた外部経営資源の活用や外部成長の取り込みを図っていくことが有力な選択肢になると考えており、適宜、探索や検討を進めております。また並行して、外部からのパイプラインの導入、製薬やバイオ企業への投資又は買収等も検討しておりますが、かかる導入、投資又は買収等が成功する保証はなく、想定した時期に提携やM&A等が成立する保証もなく、また、成立しても想定したシナジー効果が得られない可能性もあり、中長期的な事業目標が達成できないおそれがあります。
このため、提携やM&A等の検討にあたっては、対象となる企業に関する詳細なデューデリジェンスを行うなど、意思決定に必要十分な情報を収集し、企業価値、事業価値とシナジー等について慎重な評価検討を行うこととしております。
(4)その他のリスク
①競合に関するリスク
当社は現時点では主に抗がん剤領域の医薬品開発を実施しております。抗がん剤を含めた新規医薬品の市場は国内外を問わないことから、常に日本国内のみならず世界中の同業他社と競合状態にあります。当社としては、いち早く新薬の製造販売承認を取得すべく研究開発に邁進しておりますが、他社がより優位性のある製品を開発した場合、当社の医薬品開発の成功確率が低下する可能性があり、事業継続に重大な影響を及ぼすおそれがあります。また将来当社が製造販売承認を取得した後に他社がより優れた製品の製造販売承認を取得した場合、将来の売上高の減少等により、経営成績等に重大な影響を及ぼすおそれがあります。
このため、他分野への進出や他社の技術の導入等により本リスクの低減を図っております。
②知的財産に関するリスク
当社が現在臨床開発を推進しているパイプラインは、当社が保有又は当社が他者からライセンスインをしている特許権若しくは特許出願を基礎とするものであり、これらの特許は医薬品市場の大きい米国、ヨーロッパ及び日本を含むアジアを中心に出願されております。
しかしながら、現在出願中の特許が全て成立するとは限らず、また、当社が事業活動を行う全ての地域又は競合相手が存在する全ての地域において特許を出願しているわけではありません。また、特許が成立しても、当社の研究開発を超える優れた研究開発により当社の特許に含まれる技術が淘汰される可能性は常に存在します。これらが顕在化した場合、当社パイプラインの開発継続が困難になるなど、事業継続や経営成績等に重大な影響を及ぼすおそれがあります。さらに、当社の今後の事業展開の中でライセンスインする必要のある特許が生じ、そのライセンスインができなかった場合や、多額の実施料の支払いが必要になった場合には、研究開発コストの増加など、事業計画や経営成績等に影響を及ぼすおそれがあります。
なお、当事業年度末現在において、当社の開発に関連した特許権等の知的財産権について、第三者との間で訴訟やクレームが発生した事実はありませんが、他者が当社と同様の研究開発を行っていないという保証はなく、今後も当社が他者の特許に抵触するような問題が発生しないという保証はありません。このような問題を未然に防止するため、当社及び特許事務所等を通じた特許調査を実施しており、現時点において当社技術が他者の特許に抵触しているという事実は認識しておりません。しかし、当社のような研究開発型企業にとって、このような知的財産権の侵害に関する問題の発生を完全に回避することは困難であり、第三者との間で特許権に関する紛争が生じた場合又は当社が共同研究開発の相手方と第三者の紛争に巻き込まれた場合には、事業戦略や経営成績等に重大な影響を及ぼすおそれがあります。
③製造物責任に関するリスク
医薬品の開発及び製造には、製造物責任のリスクが内在します。将来、当社が開発し製品として販売された医薬品が健康障害を引き起こした場合若しくは臨床試験、製造、営業又は販売において不適当な点が発見された場合、当社は製造物責任を負うこととなり、売上高の減少や損害賠償費用等、経営成績等に重大な影響を及ぼすおそれがあります。また、たとえ当社に対する損害賠償の請求等が認められなかったとしても、損害賠償請求が与えるネガティブなイメージにより、当社及び当社が開発した医薬品に対する信頼性に悪影響を及ぼし、事業継続に影響を及ぼすおそれがあります。
現時点において当社の医薬品事業は研究開発段階であるため、本リスクの可能性は製造業務、つまり委託先に内在すると考えており、製造委託機関への監査等を実施することで、品質管理とその維持に努めております。(化粧品事業については、「(4)化粧品事業に関するリスク」を参照)
④化粧品事業に関するリスク
当社は株式会社アルビオンとの化粧品の自社技術を用いた共同開発により、化粧品事業を展開しております。当社は主に、同社に対し化粧品の材料供給を行っております。
化粧品業界は、参入障壁が低いこともあり、激しい企業間競争にさらされておりますが、当社は同社とともに既存の製品にない画期的な製品を開発し、また同社の持つブランド力、マーケティング力及び販売力を活用することにより、現時点において化粧品事業は堅調に進捗しております。しかしながら、他社がより優位性のある製品を発売した場合や、顧客のニーズの移り変わりなど、市場から受け入れられなくなるリスクは常に存在し、これらのリスクが顕在化した場合、化粧品材料供給収入の減少等、経営成績等に影響を及ぼすおそれがあります。このため、消費者ニーズのタイムリーな把握による製品の改良、新製品の開発等により本リスクの低減に努めております。
また、化粧品事業は株式会社アルビオンに対する依存度が高く、契約の解消や当社の望む条件で契約更新できなかった場合等、化粧品事業の継続に重大な影響を及ぼすおそれがあります。同社とは相互利益の考えのもとに契約を締結しており、今後もこの考えを継続することで現契約の維持につながると考えております。また、定期的な連絡会議や担当者レベルでの日常的なコミュニケーション等により、関係の強化や認識の共有等にも努めております。
さらに、当社の供給する原材料等の品質管理には検査の徹底等により万全を期しておりますが、品質や安全性について疑義が生じた場合は、化粧品材料供給収入の減少等により経営成績等に影響を及ぼすおそれがあり、また結果的に当社の製品及び原材料に品質欠陥や安全性に関する問題が生じなかった場合においても、風評被害等により、同様の影響を受けるおそれがあります。このため、製造受託機関による品質適合検査の実施及び当社による検査結果の確認等により、品質管理とその維持に努めております。
(5)新型コロナウイルス感染症に関するリスク
今般の新型コロナウイルス感染症の感染拡大により、世界各国の経済活動に影響が及んでおります。当社は医薬品等の研究開発段階にあるため、当社への影響は限定的と考えておりますが、①臨床開発段階のパイプラインにおける患者登録の遅れに伴う試験期間の延長、②百貨店等における化粧品の店頭販売の低迷等に伴う当社化粧品材料供給収入の減少等の可能性があり、本リスクは今後、新型コロナウイルス感染症の収束後数ヵ月から数年程度存在すると予想しております。①については、治験登録施設の追加等を実施しておりますが、臨床開発の遅延による開発コストの増加、将来の売上高の計上時期の遅れ等の可能性があり、②については、対策が困難であるため、化粧品材料供給収入の減少等の可能性もあり、いずれも経営成績等や事業展開に影響を及ぼすおそれがあります。